汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
ヴァイス·ブレイブには様々な英雄がいる
召喚のタイミングにより同じ人物だとしても色々変わる事もざらだ
更に並行世界から喚ばれた者もいるだろう
さて、今回はある時間線の話をしよう
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アルフォンスは困っていた
と言うのも
「ゲレタ殿の奥方が召喚出来ておられぬとの事ではありませぬか
であれば、早々に招くべきでしょう」
とヴァイス·ブレイブに日頃から懐疑的、と言うよりも批判的だった人物から召喚の催促をされたのだ
(何だかなぁ)
アルフォンスとしては複雑な心境だ
何せゲレタとその娘であるチキ(異聞)の所属がヴァイス·ブレイブではなく、アスク王国となっているのだ
勿論アスク王国の農業指導や狩猟部隊の創設などに感謝していない訳ではないのだが
「···ですから」
「分かっている、分かっているんだエクラ」
エクラの言葉をアルフォンスは遮る
それが失礼な事と分かっているのだが
「··········まぁ、しますけどね」
憔悴しているアルフォンスを見たエクラは苦笑いをしながら、召喚式を起動した
それがあんな事になるとは誰ひとり思っていなかったのだ
断章 譲れぬ戦い
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「···あれ?」
召喚式の発動により起きた煙が少し晴れた時、エクラは困惑した声を思わず出した
何せ
「······私は神竜族のチキ
何か用なのかしら?」
そこにはチキの姿があったのだから
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(本当に懲りないのね)
召喚されたチキは戸惑うと言うよりも呆れていた
仮にも『神竜の巫女』と呼ばれる事となった自分を召喚したのだ
どう考えても面倒事だろう
父の話を嬉々として聞いてくれたルキナやドニ達がいるならまだしも、そうでないならば憂鬱な日々を過ごす事になるだろう
父
今でも鮮明に思い出せる最愛の人
もう会えないと分かっている
分かっているのに、それでもと探してしまう
訳の分からない召喚の符の話を聞いた時には、
そう期待したものだ
····だが、居なかった
悲しくもあったが、あの程度の術式で父の能力が再現出来る筈もなかったので複雑な気持ちではあったりするが
寧ろあの父に今でも勝てる気がしない
「かすり傷ひとつ
いえ、耳や目に口などを隙と言えるのはお父様だけでしょうね」
だが、逢いたかった
でも敵として会えば間違いなく命を落とすだろう
それでも良かった
愛する父の手にかかるならば、父が私を
·····そんな事が叶う訳もないのに
そんな風に過ごしていたら、訳の分からない所へと召喚されたらしい
そして彼女は耳を疑う事となる
「···えっと、チキさん
こういう質問はどうかと思うけど、お父さんってゲレタさんでいいのかな?」
白フードの女性の言葉にチキの目は大きく開かれる事となる
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「···えっと、チキさん
こういう質問はどうかと思うけど、お父さんってゲレタさんでいいのかな?」
「そうね
でも驚いたわ。お父様の名前を知っている人がいたなんて
勿論、お父様は後世に名を遺して然るべき事をしたと思うし、それは誰にも否定させないわ」
エクラの言葉にチキの纏う雰囲気が柔らかなものに一変する
「私はエクラ
貴女を召喚したのは私。ごめんなさい」
「久しぶりにお父様の名前を聞けたから良しとするわ」
エクラの謝罪を小さく笑って受けるチキ
「僕はアルフォンス
このアスク王国の王子で召喚した人達を纏める立場になるのかな?」
「そうなのね
召喚した人達と言ったけど、戦争をしているのかしら?
だとすれば、流石に趣味が悪いと思うのだけど」
アルフォンスの言葉を聞いてチキは少し不機嫌になったらしい
「もしお父様がいれば
······いえ、詮無き事ね」
「あの、ゲレタさんって
強いんですか?」
チキの呟きにエクラが問い掛ける
と言うのも、エクラはヴァイス·ブレイブの中心的な人物。ゲレタは『元』ヴァイス·ブレイブであり、現在はアスク王国狩猟農業相談役という地位になっているのだ
勿論そんな大仰な役職や肩書きをゲレタは好まなかったのだが、生前地位や名誉を求めなかったが為に父或いは師ゲレタの名前や功績が極一部の地域のみにしか伝えられていなかった
それをリンダやチキにパオラ。クライネやカタリナにゲレタに師事したクリス達や マルス等は苦い思いであったのだ
例外はグラ王国であり、グラがアカネイアに統合されるまで『名もなき魔道士』として語り継がれている
またゲレタ達が生活した農村では『護り手ゲレタ』として永く語り継がれた
しかしチキ達からすればその程度で収まる話ではないのは明白
何せ地に眠る祭壇にて復活したメディウスをマルス達が打倒するまでの間、ゲレタは正しく無双の働きを以て闇の部族や地竜を蹴散らし続けている
その余りの働きにさしもの地竜の中から命惜しさに逃げ出すものすら出た程
と言えば、その
しかも50を越える地竜を倒しておきながら
「終わったな、帰るぞ」
とあっさり切り上げている
闇の部族もその恐ろしさにゲレタを狙う事は次第になくなった(なおリンダやチキ達を狙うので敵として処理される事は変わらない模様)
だからこそ、
それ故にゲレタは断りきれなかったのである
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その為、エクラはゲレタの戦闘能力を知る機会はついぞ無かった訳だ
何せアスク王国として必要不可欠となったゲレタに戦場へと赴かせる意味はない
「たった数人を倒す事と
将来的な問題解決の手段を講じる事
······これが同価値とお思いですかな?」
ゲレタの処遇についてアルフォンスが抗議した際、そうアルフォンスは言われてしまい、反論出来なかった
なお既に収穫の早い作物や土地自体の改良策等をゲレタは提言しており、アスク王国官僚達は日夜議論を重ねている
加えて、ヴァルハルトやアシュナードにトラバントやハーディン等と共に害獣駆除なども行なっており、チキやクライネはそれらの肉の有効活用法の研究に没頭していた
「敵を倒す事を否定するつもりはねぇさ
だが、何の為に戦っているのか?
何が今必要なのか?
それはいつも自身に問い掛けるべきだろうさ」
ゲレタは必要以上に殺す事をしない人間だ
だが、それは甘いと言う事では決してない
徹底した戦力保全主義にして、情報隠蔽を至上とする
優先順位を定め、常に先々の事を考えた
でなければ死ぬからだ
ゲレタはヴァイス·ブレイブに英雄と呼ばれる者達が多数在籍している事を知った
ならば他に必要な事はないのか?
そう考え日々を過ごす事となる
ゲレタは○○○○と呼ばれていた頃、どちらかと言えば争い事を好まない人物
晴耕雨読を何よりも望んでいた
色々あったが、最終的には妻と娘に看取られて長い旅路を終えたのだ
必要ならば武器を取るが
必要ないならば鍬や弓などを取る
それでゲレタは満足できるのだ
無論、有事の際の為の備えは必要であり
幸いにもチキやクライネが自身の事を語っていた(少し誇張が過ぎる気もするが)為、誰もが手合わせをしてくれた
だが、今すべきはそこではない
そう思ったからこそ、大層な役目を引き受けた部分もある
それに
「身近な人物に諭されるのと、隔意を抱いている者からの話では受け取り方が違うだろう?」
正論が常に選ばれる事はない
人は時に感情で生きるのだから
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(お父様らしいわね)
チキはゲレタの考えをある程度予想すると微笑ましさ感じる事となる
だが
「チキも居るんだけど」
そのアルフォンスの言葉に
何ですって
密かに
だが確実にキレた
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現在ゲレタの側にいるチキはまだ拗らせていない(当社比)
が、このチキはイーリス聖王国
つまりクロム達と共に戦っている
当然だが、この拗らせ具合はもう1人のチキの比ではない
自分がこんなにも苦しい思いをしているのに
そして彼女はエクラとアルフォンスとの話を終わらせると一目散に敵の元へと向かった
なお、ゲレタの姿を見たチキは思う存分抱擁し
もう1人の自分に対するあれこれについてはあっさりと忘れる事にしたそうな
ゲレタ(FEH仕様)
スキル
無慈悲なる死神
ダメージを与えた相手に対して確率で即死効果
弱者の意地
相手からの戦闘時、確率で先制
???