汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
どうしよう?
「…くっ、どれだけの敵がいると言うのだ
ジェイガン殿、このままでは押し切られる!」
「ふん!
…勿論理解はしている。だが」
前線で奮闘しているハーディンとジェイガン
マルス達にとって守りの要とも言えるドーガを欠いたままの戦闘と言うのは経験があるものの、それはあくまでも小規模な戦闘の場合
ハーディンにしても、機動力で撹乱する戦術を多用してオレルアンでは戦闘を繰り広げてきた
…しかし、この地には到着したばかり。加えて背後には港町ワーレンにその向こうには険しい山岳地帯
その上、海賊達も混乱に乗じて動いているとなるとはっきり言ってマルス達だけでは手が足りていなかった
さらにさらに面倒な事だが、ワーレンにはニーナがいる
その護衛にも人を割かねばならなかったのだ
そして
「うわぁっ!」
「ゴードン!?」
今まではそこまで数の居なかった
それが今回の戦闘においては類を見ない数が動員されているのだ
遠距離攻撃の出来るゴードンにせよ、カシムにせよ、マリクにせよ
彼等に共通するのは防御力の低さ
…何処ぞの山賊崩れの様に効率的に、効果的に敵を処理する事は彼等に元々考えからしてなかった
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カダインは魔道士を輩出するアカネイア最大の組織と言える
それはそのままカダインの国際的な地位を守る事にもつながっており、魔道士の価値がそのままカダインの価値に直結していると言っても過言ではない
故に、カダインで教えを受けている魔道士達は
戦場に出た者全てが平等に報酬を貰えて、評価される訳ではない
悲しいかな
アカネイアにおいては血統主義、即ち『自家や自身に近い者』を取り立てようとする考えが貴族などにおいて横行している
つまり
誰の戦果か分からないものについて、可能ならば自身の功績とする
という事が罷り通っていたのである
その為、戦場働きをする際自身の存在や功績を周囲に示す為に何らかの手段を講じようとするのは何ら不思議な話ではない
魔道士とは魔力を行使して様々な現象を引き起こす事が出来る
しかしこれは、一般の者には不可能な事をしている
という事であり、魔力を持たぬ者や上手く扱えぬ者には炎や雷、風などを引き起こす事は出来ない
その為、それら引き起こされた現象が魔道士のものである
そう素直に認められれば問題はなかった
…しかし、大陸最大の国家アカネイアにおいてその様な殊勝な考えを持つ者は少なく、魔道士達の功績は横取りされるが常であった過去がある
その為カダインの当時の指導者達は考えた
ならば我々の戦果である事が周囲にわかる様にすれば良い
と
その結果、現在の様な魔道士のスタイルが成立したのである
つまり
魔道士のオーバーリアクションとも言えるものは彼等の功績を周囲に示す為のものであった
そして、これはカダインに属していない魔道士にも広まる事となり、いつしかそれが大陸における標準となっている
という訳なのだ
しかし、激戦においてそれは唯の隙を見せる行為でしかなく、だが彼等彼女達はそう教わっていた為にそれを貫く他なかった
そしてその考え方は大なり小なり、大陸に生きる者に共通するものとなっていた
その為、割と隙だらけに見える様な戦闘が行われる事となっていたのである
それは目に見えぬ鎖
彼等が生まれる前からあったもの
故にその歪さに気づく事なく、彼等の命を
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「…まだ突破出来ないのか!?」
「申し訳ありません
敵の前線には竜がおりまして、その突破は難しいかと」
砦の指揮官は声を荒げる
そして
「そこだけが突破口ではあるまい!
別方面に圧力をかけて粉砕せよ!」
そう命じる
「…カナリスめ
回復役を手配しておればもっと楽に戦闘が出来ようものを」
男は忌々しげに呟いたのだった
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「…流石に向こうも諦めたか?」
「…はぁ……はぁ
そうだと、良いんだけど」
ゲレタとリンダは自分達の方向へと敵が来なくなった事で漸く一息ついていた
無慈悲なまでに効率厨とも言えるゲレタはまだ平然としているが、基本的に魔力を全力で叩き込む
「…とりあえず、これでそこの木陰で身体を拭いてこい
流石にそれだと体調を崩すぞ?」
「…そうね
少しだけ待ってて」
ゲレタは出来るだけ彼女の方を見ないようにして、布を渡す
彼女も気持ち悪かったのだろうか?自分の荷物の入った袋を持って木陰へ行き着替える事を選んだ
「…しかし、我ながら良くやるもんだ」
ゲレタはそう感慨深そうに呟く
彼の目の前には数えるのも億劫になる程の騎士と馬の死体が広がっている
しかも中には味方に踏み潰されたものもある為、中々に直視したくない様な惨状がそこら中一帯に広がっている
「…折角身ぐるみ剥がして換金出来ると思ったのに
余計な事をしやがって」
ゲレタは不愉快そうに呟いた
「流石にそれはないと思うわよ、ゲレタ」
その冷酷無比な呟きを聞いたリンダは苦笑しながら彼の元に歩みよる
確かに目の前の光景は残酷なものだろう
…だが、彼女とて黙って殺される理由はないのだ
「全部は無理だが、武器くらいは確保したい」
「………そうね
換金出来るものとして鎧は嵩張るし」
そして2人は淡々と騎士の亡骸から武器を回収していったのだ
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「………これは」
「なんと」
何とか激戦を犠牲なく終わらせたマルス達は敵拠点の制圧の為に北上していった
峠を下ろうとしてマルスはふと東を見る。そして、その光景に愕然とする
地面が見えない。騎士や騎馬の死体で埋め尽くされていたのだから
そして所々に踏み潰されたと思われる無惨な死体が
「…うっ」
余りにも凄惨で、残酷な光景にシーダとレナは口元を抑える
あの戦闘から少し経過した為だろうか?
遺体の幾つかは獣によって喰われているらしく、それが更にその光景の悍ましさを高めていた
…そしてジュリアンは気付く
余りにも死体が綺麗すぎる
と
それに気がついた瞬間、彼の背筋に冷たいものが差し込まれた様な感覚に陥った
「…どうした?」
そんな彼の異変に気がついたのか、ナバールが声をかけてくる
「…多分俺達は最悪の奴を逃した」
ジュリアンの言葉と目の前の光景にナバールも
「……奴か」
ある男の姿を思い浮かべ、眉間に皺を寄せた
この日マルス達は漸くゲレタの生存を知る事となる
「…大丈夫か?」
「ありがとう。少し楽になったわ」
ゲレタはリンダを背負いながら険しい山道を登っていた
本来ならば宿屋などで休息すべきなのだろうが、それでは逆に彼女の精神に余計な負担をかけると思い、山の中で休息する事を選ぶ
リンダはゲレタと共にいる事を選んだ
ゲレタはあの後
「これだけの戦力を注ぎ込む相手なんてアリティアの連中くらいだろう。…リンダ、お前さんの目的のためならアイツらに合流した方が良いと思うが」
と彼女に告げている
「ありがとう
でも私はあなたと一緒に旅をするわ」
しかしリンダはその提案を断った
「…俺の目的は復讐だぞ?
それが成し遂げられたら、それで終いなんだが?」
怪訝そうなゲレタに
「…ならゲレタ
その復讐が終わってからで良いわ」
「あん?」
「貴方の人生を私にちょうだい」
そうリンダは笑って話したのだ
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何が
「貴方の人生を私にちょうだい」
よ!
お陰でゲレタと話しづらくなったじゃない!
もう、何であんな事を私は言ったのよ!?
そう内心悶絶しているリンダの姿があったとかなんとか
なお、彼女はゲレタに背負われている事を念の為に追記しておく
恋愛要素は無いと思ったんです
なのに勝手に生えてきたんですぅぅぅぅ!?
などと雑兵は主張しており、現在アカネイア軍による取り調べが始まろうとしております
…あのー、お気に入りと評価が増えすぎてビックリしています
え?この作品需要あるの?(滝汗)
方向性とかに迷っているので感想やご意見下さい(切実)
カオスルート
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いる
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いらない