汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
マルス達がアリティアへの帰還を決断した時
「獣、だと?」
手負いのガトーは自然の掟に絡め取られつつあった
ガトーは知らぬ事だが、このアカネイア大陸における獣達は集団での狩りを行なう
何故か?
この大陸には絶対的強者たる竜族がいるからであった
狡猾にして、冷酷
それがこの大陸における獣達
ゲレタは以前リンダやカチュアに対して『森の中での出血の危険性』を語っている
不思議に思わないだろうか?
ゲレタは仮にも音に聞こえたサムシアンの一員
まして、魔道書をハイマンから渡されて以降ガルダに侵攻してきたグルニア遠征軍を二度に渡って仲間達と共に倒している
では、その脅威をゲレタは何時知ったのだろうか?
と
そうこの大陸に住まう獣達は
武装し警戒した人間であっても、油断できるものではなかったのだ
ガルダにて雇われたカシム
原作における英雄戦争の際、マルス達に協力したマケドニアのウォレン
彼等の能力は即マルス達アリティア軍の一員として戦えるものだ
唯の
この事実は重い
僅か2人とは言え、避難先のタリス或いは解放したアリティアにて鍛練した軍の練度に比肩し得るだけの経験を2人は持っていた
そう言えないだろうか?
つまりそれは
アカネイア大陸にいる獣達の危険性を物語りはしないだろうか?
----
ガトーも弱ったとはいえ、それでも高い戦闘能力を持つ
しかし、何処ぞの元山賊の様にガトーは目立たない闘い方をする事はない
何故か?
ガトーは竜であった頃から強者なのだ
力を思う儘振るえばそれで事足りる
そうであるが故にガトーは全力を発揮できない
何せ自分を落としたモーゼスとその配下の魔竜達が未だに上空にて眼を光らせていないとも限らないのだ
流石のガトーもこの体調でモーゼス達と
ガトーは全力を出す事は叶わず、時間が経てば経つ程に彼は負けへ向かっている
「ガハッ」
ガトーは何度目か分からない獣達の体当たりを受けて、大地を転がった
これまでにガトーは動きの悪い獣を数頭仕留めている
流石は大賢者
そう称賛しても良さそうなものだ
しかしそれは、カシムやウォレン
ゲレタならば絶対にやらない
してはならない悪手だった
獣達は言うまでもなく獲物を狩らねば生きていけぬ
となれば子供達もいつしか狩りを学ばねばならない
そこで獣達は相手が明らかに弱っていたり、少数の場合
つまり自分達襲撃者側が有利な時に狩りを教え込む
今のガトーはそのどちらにも該当している為、獣達は子供を狩りに参加させたのだ
そして、ガトーはその子供達を真っ先に狙い、殺した
残された獣達はガトーを見逃すという選択肢をそれにより捨てた
許せる筈もない
家族を奪われたのだ
そして
「が」
追い詰められたガトーは崖から転落
その意識を失った
----
ガトーが危惧していたモーゼスとその配下の魔竜達
しかしガトーの予想に反してモーゼス達はドルーアへと帰還していた
神竜の女性を見つけたのだから
----
騎士の国、グルニア
大陸最強の黒騎士団を擁する事から一部ではそう呼ばれていた国は
「返しなさい!息子を!」
「何で
何でアンタは生きているんだ!」
「帰れ
お前達を見たくもない」
ベルフ、ロベルト、ライデンの三人は打ちのめされていた
彼等は黒騎士カミュに忠誠を誓う騎士
今のグルニアにおいて最も憎悪されている者達だ
彼等は主君カミュの心を考え、グルニアの外で亡くなった者達の遺族の元を訪れていた
それがどれだけの苦痛になるか
それすら理解せぬままに
「陛下
まだ黒騎士団を派遣なさらぬのですか?」
少し前までならばあり得なかった文官達による催促
最早カミュによる利敵行為はカミュやグルニア軍内に留まる話ではなくなっていた
グルニア王に対する拭いがたい不信感を生み出し、兵士達を集めようにも民はそれを拒んだ
何せ命懸けで家族を守る為に軍に入る
にも関わらず、実は軍のトップの1人であるカミュがアカネイアに通じていたのだ
そんな馬鹿らしい事に誰が協力すると言うのだろうか?
加えて、ドルーアからの資金援助が打ち切られた事により、グルニア国内において食糧危機が発生する可能性が出てきている
軍とは巨大な武装集団であり、存在しているだけで多くの物資や資金を消費するものだ
ましてや黒騎士団という騎馬を大量に必要とする騎士団を擁するとなれば、その負担は軽いものでは決してない
軍は誇りだ、名誉だと喚いているが、政治を担当している文官達からすれば知った事か
戦争は兵力を
つまり国民の命をまるで薪の様に浪費していくもの
故に戦争は短時間で終わらせるに越したことはない
グルニアは生き残る為にドルーアに与した
それは陛下の決定であり、当時ロレンスやカミュも直接聞いている筈だ
その後に行なわれたのがパレス攻略
「陛下
恐れながら、黒騎士殿には死を賜らすべきではないかと」
「それは、ならぬ」
文官の提案を国王は即座に却下した
「では、どうされると?
ドルーアが我等を滅ぼそうとするやも知れませぬ」
それは現実問題として充分あり得る話
彼等とてカミュが戦力として優秀なのは認めている
が、立場を考えた言動をしてもらわねば困るのだ
それが出来ないならば一兵卒にすべき
しかし、カミュの実力と実績がそれを許さない
つまりカミュはグルニアの将軍として不適格の烙印を押された時点で死ぬ以外の方法は残されて居ないのだ
加えて直属の騎士三人はカミュに忠誠を誓っている
グルニア軍でも、国王陛下にでもなく
グルニアの将軍であるカミュに
それがどれだけ危険な事なのか?
彼等もカミュも理解していない
故に文官達はカミュを殺す様に迫っているのだ
結論から言えば、この問題はカミュ率いるグルニア騎士団がパレス攻撃に向かう事で一先ずの決着を見せた
しかし、既に時遅くドルーアからの『要請』を受けたマケドニア王国軍竜騎士団がパレスへ向かう途上のグルニア軍を強襲
マケドニア軍指揮官ルーメルは
「仕えるものすら見えぬ者達を討つ程度の事で失って良い命など我等マケドニアには1つとてない
全軍、槍を投擲せよ。然る後撤退する」
とアリティア軍がマケドニアへ侵攻した際行なわれた『死の雨』がグルニア騎士団へ降り注ぐ
常軌を逸した蛮行とも云えるマケドニア軍の所業であったが、音に聞こえたグルニア騎士団は辛うじて壊滅的被害を免れる
カミュや彼に従う騎士達は回避出来たが、運の悪いものや咄嗟に動けなかった者達は苦痛に喘ぐ事となった
カミュは被害の大きさと同盟国である筈のマケドニアからの攻撃を受けた事を問題視、グルニアへと兵を戻そうとする
だが、ドルーアは既にグルニアを明確な敵として判断しており、傷付いた彼等をメディウス配下の魔竜ゼムセル率いる部隊が攻撃をかけた
その結果、大陸にその名を轟かせていたグルニアの黒騎士団は壊滅
指揮官であるカミュも生死不明となったのだ
----
そしてこの(アカネイアにとっての)朗報は直ぐにアカネイアの知るところとなり、当然アカネイアのニーナの元へも届く
「そんな」
その事を知ったニーナはショックを受け、病に倒れた
ニーナ付きの女官を勤めているミディアは必死にニーナを励ます事となる
が、そんなニーナについてアドリア伯やミニディ侯爵、ディール侯爵は一切何かをする訳ではなかった
果たすべき責を放棄した小娘に構う理由も暇も
そして余裕も彼等にはなかったのだから
----
「何とかせねばならん」
「アドリア伯爵領、ミニディ侯爵領
更にディール侯爵領が相次いで教会を閉鎖
現在は我々のやり方に異を唱えるシスターや神父による組織を編成している」
「更に三家が動いた事により、国内の子爵領などでも」
「国外は、どうか?」
同時刻、教会総本山において緊急の話し合いがなされていた
何せ彼等の代理人たるボアが危うくアカネイアの中枢から除かれるところだったのだ
「···グラ、マケドニアにおいては現地の教会が反旗を翻しました
アリティアは現在復興の只中故に民に負担をかけるべきではない、と
グルニアはそれどころではなく」
「タリスは?」
「タリス王は現地の教会の存続の為のものならばいざ知らず、民に過剰な負担を押し付けるならば不要である
と」
「忌々しい
たかが辺境の蛮族の国風情が」
教会の衰退はアカネイアの体制の危機であると言うにも関わらず、総本山の復興は遅々として進まない
それどころか、王国での儀礼を任されていたボアが危うくパレスから追放されそうになったのだから、彼等の不満は高まるばかり
それについてはニーナの側に仕える女官を動かす事で事なきをえたが
教会はマルス達の縁談を推し進めようとした
何故か?
ニーナの相手として考えられていたハーディンに比べ、マルスは復興したばかりのアリティアの王子だ
となれば、後見人など居るとも思えない
何せタリス王国ともシーダとの婚約を解消させたならば、関係が悪化するのだから
そしてマルスの後援に教会が入り、ニーナとの婚儀を取り仕切り
生まれてくるアカネイアの次代に対し、確固たる影響力を持つのだ
されば、教会の勢力は磐石なものとなろう
彼等は道を探す
生き残る為に
望む未来の為に皆踊る
力尽き、倒れるその時まで
と言うわけでカミュ退場
グルニアに滅亡フラグ(強)が立ちました
別キャラルート ヒロイン
-
パオラ
-
エリス
-
ミネルバ
-
シーマ
-
ニーナ
-
ミディア
-
マリア
-
クライネ
-
カタリナ
-
その他