汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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エクラとゲレタ


同じ様で違う2人は何を思うのか?


異伝 常識()

「···ゲレタさん

貴方はもしかして、私と同じ様な世界の人だったんじゃありませんか?」

 

エクラはゲレタにそう問いかける

ゲレタは無表情で

リンダは悲痛に顔を歪め

大人のチキは不快げにエクラを見据え

チキは不安そうにゲレタを見た

 

 

 

此処にはゲレタの家族とエクラしかいない

 

 

 

 

 

エクラが頼んだからである

とは言えゲレタとしても他聞を憚る話であるのは事実

 

 

 

 

『面倒なやつ』と言うのはいつの世も、何処にでもいるものなのだから

 

 

 

 

 

 

 

----

 

 

 

 

 

リンダは悲しみに暮れていた

 

 

 

(嫌な予感はしていたのだけど、やっぱりこうなったのね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンダがその話をゲレタから聞いたのは、ある意味でリンダとゲレタの関係が決定的に変わったあの日の事

 

 

しかし、リンダにとってゲレタが大罪人であろうが人でなかろうが関係無かった

 

例えゲレタにどんな過去があろうとも受け入れる

 

 

 

そう思い、気持ちを交わしたのだ

何故たかだか別の世界から来た程度の事で彼を厭わねばならないと言うのか?

 

 

それは娘となったチキにも良く言い聞かせていたし、チキもまたそんな事は些末な事としていた

 

 

ゲレタの特異性

 

 

 

 

 

あの時代にあって、ゲレタは異質そのものだった

 

 

 

騎士道

正道

 

 

それらは常に正しいものであり、それに従い

沿うのは当たり前の事とされていた

 

 

 

 

今にして思い返せば、それらはアカネイア(大陸最大の国家)にとって都合の良いものであったと言えるだろう

 

正々堂々の戦いとなれば、数で優るものが優位に立つのは自明

となれば大陸全土に影響力を持っていたアカネイアがその歪な支配体制を維持出来るのは道理

 

 

それもドルーア帝国の復活により、崩壊への道を転がり落ちていった訳だけど

 

 

ゲレタのやり方はそれらに真っ向から喧嘩を売るようなものだったのだから

 

 

 

 

 

ゲレタは気がついたら山の中だったと言っていたわ

 

 

元居た世界では武器を取って戦うなんてあってはならない例外的なものだったそうだ

 

想像するのも難しいけれど、そういうものとして受け入れた

 

 

ゲレタの元の世界の話は興味深いし、楽しい事も沢山ある

だが、目の前の愛しい人を悲しませてまで聞く価値があるか?

そう問われれば、リンダは勿論2人の娘も首を横に振るだろう

 

 

····どうにも気のせいだと思いたいのだけど、2人ともゲレタ()の事を恋愛対象として見ている気がしてならないのだ

 

仮に

そう、もし仮に

 

娘がそう思っていたというならば、少し『オハナシ』をしなければならないだろう

 

 

或いはまだ自分がゲレタとの間に子供が出来ておらず、手段を選んでいなかった時ならば渋々認めたかも知れないが

 

 

今となっては認めるつもりは一切ない

 

 

 

ゲレタの伴侶は私1人

辛うじて、焚き付けた感のあるパオラなら

 

·······許す様に努力するわ

 

 

 

と言うか、もしチキが迫って手を出したとしたら

ゲレタは罪悪感から死を選びそうなのがね?

 

 

 

 

勿論それだけ私が愛されているって事でもあるから嬉しいのだけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が逸れたわね

 

 

ゲレタは基本的に平穏な生活を望み、野菜が大きく育ったり

村の子供が大きくなった事でも喜ぶ事の出来る人物

 

 

誤解されがちだけど、ゲレタの感覚は本当に庶民的なもの

確かに知識は相当なものがあるから、畏敬の念を持たれる事はありはしたが、ゲレタからすれば自分の居た世界ではありふれたものでしかない

 

 

あの特異な戦い方にせよ、ゲレタの趣味と山賊としての窮状

それに戦うにしては心許ない魔力

 

 

 

 

それらを1つの形として作り上げた

歪であると知りながら

 

 

何一つなく、それこそ泥水を啜ってでも生きていこうとしたゲレタ

 

アスク王国の王子や王女に隊長から護られて過ごしてきたエクラ

 

 

 

例え同じ世界の出身であるとして

何も思わないとでも思っているのかしら?

 

 

貴女は知らなかったの、エクラ

でもゲレタは知っていた

それでも声をかけなかった

 

 

その事実を貴女は少々軽く考えているみたいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

私は思わず魔法を放ちそうになる自分を抑え込みながら、娘2人に視線を送った

 

 

 

----

 

 

 

 

遂にこの日が来たのね

 

 

私は内心で大きなため息をつく

 

 

 

お父様が死んでから私は気の遠く成る程永い時を生きた

人との関わりは最低限のものとしたが、それでも人の本質は変わる事はないと何度も思わされたわ

 

思わされたわ

 

 

 

 

邪竜ギムレー

 

ヒトとはどうして過ぎた力を求めるのだろうか?

それを制御しきれる自信は何処にあったのか?

今でも不思議でならない

 

 

 

お父様が安らかに眠るあの村を踏みにじったのは許せることではないけれど

 

 

 

 

 

 

「人の本質は苦しく、追い詰められた時や地位や財産を持った時に表に出てきやすい」

 

私やもうひとりの私なら、お父様の言葉を忘れる筈がない

 

 

お父様はある一件から軽い人間不信に陥っていた

···いえ、元々お父様はあの混沌した時代を生きるには優しすぎたと思う

 

 

ねぇ、召喚士さん?

貴女には助けてくれる人や組織がある

 

 

それがどれだけ幸運なのか

それがどれだけの不幸を招くのか?

 

分かっていないでしょう?

 

 

 

 

お母さんやお父様の前でなければ、貴女を私は責めていたわ

 

 

「何故お父様を苦しめるのか?」

 

 

 

 

----

 

 

 

(とと)様は人が嫌いな訳ではない

 

 

ただ自分で自分の事をしようとしない

立場などを平気で捨てる、などと放言出来る者に父様は何もしない

 

元々父様は太陽のように明るい人ではなかった

どちらかと言えば、闇の中で人々を見守る星の様なもの

 

 

 

様々な出会いと別れがあった

 

ともすれば、もう1人の母となったかも知れない女性もいた

 

 

 

誇りを持ち、その誇りを胸に父様に倒されたもの

高みから人々を見下ろし、そして世界を混乱に落としても何も感じない人でなし

 

生きる為に殺さねばならなかった者達

 

 

父様はその命を背負って生きてしまった

割り切る事の出来ない不器用で

優しくないのに優しく出来る人

 

 

再会出来たのは嬉しい事だ

 

 

でも、お母さんももうひとりの私もクライネも思っている筈

 

 

 

どうしてお父さんを安らかに眠らせてくれないのか?

 

 

此処にいる英雄達は戦う事を厭わない

 

 

 

英雄

 

嗚呼なんて素晴らしく、そして下らない言葉なのだろうか?

 

 

話すに値しないとメディウスやギムレー、ロプトウス達は言っていたが、此処でもまだ寝言を言う者がいるらしい

 

 

「召喚された以上

英雄である以上は戦うべきだ」

 

 

笑わせてくれると本気で思う

 

 

 

 

国を裏切り、兄を倒し

そして何が変わった?

 

部下はその貴女を認めなかった

それらを倒し、マケドニアはその存在を歴史のものとした

 

さぞや満足だったのでしょうね?

 

 

 

 

自分の信念とやらに従い、国を窮地に陥らせ、姿を隠し

仮面で顔を隠し、何食わぬ顔で祖国の為と槍を取った

 

戦後、姿をくらまし、別の大陸でその生涯を終えたそうね

 

貴方は満足したのでしょう?

その貴方の自己満足の為にどれだけの人が人生を狂わせたのか、わからないでしょうね

 

 

 

そんな者達が父様を公然と否定する

 

父様は勿論、私達は話をする理由などない

 

 

 

 

あなた達はどう言おうと、国を滅ぼした

父様は村を死ぬまで護り続けた

 

それが結果

 

 

 

 

 

綺麗な所ばかりでは生きていけないの

時には泥水を啜り、土を噛む事も必要と父様は言っていた

 

それを吐き出さずに生きていけるか?

とも

 

 

 

ねぇ?

さぞかし楽しかったでしょう?

 

したい事、やりたい事だけをして生きていけたのだから

 

 

 

そうでしょう?

ミネルバ

カミュ

 

 

 

 

あなた達はどうなのかしら?

アルフォンス、シャロン

 

 

父様は貴女の事をある程度知っていた

でも何もしなかった

 

 

それが貴女の

····いえ、あなた達に対する父様の評価なのよ?

エクラ

 

 

 

 

----

 

 

 

「·······仮にそうだとして、それが何だと言うんだ?」

 

「え?」

 

ゲレタの言葉にエクラは虚をつかれる

 

「確かに同郷の者かも知れんな

が、既に俺は異界のアカネイアでその生涯をまっとうしている

········とは言え、思う事が無いわけではない

で?何を話するんだ?」

 

エクラは失念しているが、ゲレタは正式にアスク王国の役職に任じられている

 

農政特別担当官

 

それがゲレタの役職

 

 

 

そしてこの役職は臨時に置かれる事となったポストであり、農政部門トップの直属となっている

 

 

 

なので本来、彼の業務を妨げる事は許されない事だった

 

 

後日、農政筆頭からアルフォンス(ヴァイス·ブレイヴ総責任者)に正式な抗議が届く事になる

 

 

 

 

「····その」

エクラはゆっくりと話をする

 

召喚士としては活躍しているのかも知れない

でも、他の人達は戦ったりしている

 

 

このままで良いのか?

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど

それはアルフォンス王子に聞いたのか?」

 

「勿論聞いた

でも」

 

ゲレタの言葉にエクラは表情を暗くした

 

(余裕がないからか?

それとも召喚士(替えのきかない存在)だからか?

どちらにしても、ちっとばかり気遣いが足りんなぁ)

 

そもそも彼女を召喚という有無を云わさない方法で呼びつけておいて、満足なメンタルケアすら行なえてなさそうにも見える

 

(文化の違いと言えばそこまでだが

···········やれやれだ)

 

 

ゲレタは曲がりなりにもアスク王国の役人となった事で王国内におけるアルフォンスやシャロン、アンナの評判を聴くことが出来た

 

アルフォンスは武芸に長じ、シャロンは心優しい

 

(·····ルネスの兄妹かよ)

 

ゲレタは人知れず頭を抱えた

 

 

とは言え、アルフォンスも英雄が揃ってきた事で前線に出る回数は見るからに減っているとも聞く

 

 

その割には国内政治に対しての動きがないに等しいと思えてならないが

 

 

「俺が何をしろ

なんて言うつもりは毛頭ない。少なくともエクラ

アンタは俺と同じ様な境遇なら価値観も理解できるだろう?」

 

「うん」

 

「うんは流石に草なんだが

まぁ良いか

取り敢えず、木工細工でも覚えてみたらどうよ?」

 

「出来るかなぁ」

 

「知るか

ソフィーヤやイドゥン辺りからエレブ勢に広まっていると聞いた

先ずやるところからだ。木工品も取引されるからな」

 

「····そうだよね」

 

「最初から大きな事なんざ出来るかよ

積み上げてけ」

 

「ありがとう、ゲレタ」

 

「あとお互い立場があるんだから、多少は気にしとけよ?

特にお前はやべえからな」

 

「気をつけるよ」

 

さて、どれだけ俺の言葉が届いたのやら

 

 

 

 

 

なぁエクラ?

俺は臆病者だ

 

だからこそ加減は出来んし、姿は出来る限り隠していた

 

 

誰かを守る

確かに素晴らしい事さ

 

 

 

でもな?

自分が他者を助けられる状況に無い者が、下手に手を差し伸べたとしても

 

 

共に沈む事なんてザラにあるんだぜ?

 

 

 

 

 

既にアスク王国へ来てから数年経つと言う

 

 

そろそろお前の存在は隠しきれなくなりつつあるだろう

 

 

 

 

「夢を見るには対価が必要なのがこの世界

甘い夢は時に人を殺す

はてさてどうなるんだろうな?」

 

一応キュアンやシグルド、エルトシャン辺りやジャファル達にも頼んではいるが

 

 

 

 

 

 

 

エクラの去った後、ゲレタは憂鬱そうにため息を漏らした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なおエクラが帰った後、妻と娘が可愛らしく(ゲレタ的には)拗ねた為に久し振りに家族全員で風呂に入る事となったらしいが

 

真偽は闇の中だった

 

 

 

 

 

 




なおゲレタ·ホームには露天風呂が用意されており、かつてを思い出させる風呂にまったりした(約1名を除く)出来たらしい




余談であるが、某銀髪美少女系邪竜は


「え?我は?
そこは未来の義娘(むすめ)である我も含めるべきでは?」
と宣ったので


「は?
師匠の一番の弟子である私をさしおいて、何をぬかしやがりますか」
と某弓姫がお怒りになったそうな








因みにゲレタの一番弟子の話になると普段はどちらかと言えば引っ込み思案のカタリナやゲレタが村に来た当初から慕っていたレイが激おこになる模様

別キャラルート ヒロイン

  • パオラ
  • エリス
  • ミネルバ
  • シーマ
  • ニーナ
  • ミディア
  • マリア
  • クライネ
  • カタリナ
  • その他
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