汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
今回は思想強めでお送りします
「貴方がゲレタ殿ね
ヒューベルトから話は聞いているわ
私はエーデルガルト=フォン=フレスベルグ」
「⋅⋅⋅⋅こりゃまた、めんど
もとい大物が来たもんだ。⋅⋅⋅⋅⋅確かアドラステア帝国の皇帝、だったか?」
ゲレタの元に1人の女性が訪れていた
なお、ゲレタは明らかにアレな態度だったりする
「そうね
とは言え、今は唯の一個人よ」
エーデルガルトは敢えて相手の問題となる発言をスルーした
世界も文化も違うのだ
己が杓子で相手を断ずるのは余りにもおかしな話であると理解していたからである
「⋅⋅⋅⋅驚いたな
普通ああ言えば、憤慨とまではいかないだろうが此方に良い感情は抱けまいに
⋅⋅⋅⋅⋅⋅非礼を詫びさせてくれ、エーデルガルト嬢」
「構わないわ。私が此方に訪ねて来たのだから
貴方も決して暇ではない事を知った上での事。そのくらい言われても仕方ないわ」
頭を下げるゲレタに軽く笑って応ずるエーデルガルト
(やはり、元山賊と聞いてはいるけど、確かな知性と高い教養を感じるわね)
ゲレタの噂は彼女も聞いている
決して良くないものであったが、彼女からすれば寧ろ反発を受ける事を理解してなお、その様な事をしていると見えた
加えてヒューベルトからの話では、おおよそ尋常ならざる魔法の使い方をするとも
故に興味は尽きなかった
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「大したものは出せんが」
「気にしなくても良いのだけど」
ゲレタが出した飲み物と握り飯
彼女はそれに迷う事なく手をつける
「⋅⋅⋅独特な風味ね
けど、悪くはないわ」
「悪いが元皇帝に胸を張って出せる様なものはないんでな。そこは勘弁願いたい」
「⋅⋅⋅⋅そこまで私は横暴でも横柄でもないわ」
少し憮然としながら、握り飯を口にするエーデルガルト
「こういう簡素なものも良いわね」
「⋅⋅⋅⋅まぁ、生産者を知らなきゃそれで済むわな」
「生産者?」
ゲレタの言葉にエーデルガルトは首を傾げる
「それ育てたの
メディウス達なんだよなぁ」
「っっ!?!?」
ゲレタのぼやきにも似た呟きを聞いた彼女は、己の名誉の為に必死で吹き出そうとする己を律した
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メディウス、ギムレー、ロプトウスの3人はヴァイス・ブレイヴの者としての活動よりも、ゲレタやチキ達と共に農業に従事する事が多い
3人としては、チキのやっている狩猟もしてみたくはあるのだが、何せどいつもこいつもその実力はある程度抑えられているとはいえ規格外
獲物が怯えて逃げてしまうのだ
その点については、父ゲレタから文字通り叩き込まれたやり方を考えるのも億劫になる様な年数磨き続けたチキーズには遠く及ばない
「というより、あのレベルの者が気配を殺して近付いて来るとか
下手なアサシンよりも危険では?」
とはロプトウスの談
まぁ、比較対象が広範囲索敵兼殲滅型魔道士ことゲレタなので危険はやや低めではあるが
最近ではメディウス達の中で『物を育てる』事がブームらしく、稀に他の大陸の竜人族等にも楽しそうに語っていたりする
その分、ゲレタの負担が増えたのは
ご愛嬌なのだろう
余談となるが、エレブ大陸勢のとある人物は故郷に似て
しかし、決定的に異なるゲレタの用意した環境に内心ウキウキしていたりするそうな
食とはメディウス等上位存在とでも言える者達からすれば、供されるものであり、自身の手で摘み取る事はあれども育てる経験などありはしない
毎日、自分の畑を見て
芽が出て、花が咲き、果実が実る
それは彼等にとって全く見る事のなかった景色
⋅⋅⋅⋅いや、彼等が余りにも高くにあり過ぎたが故に、認識する事が出来なかったもの
ささやかな
しかし、確かな幸せなのだ
故にそれを奪わんとする者達に対する慈悲や温情など微塵も存在しない
敵側にとって幸いなのが、ゲレタが管理を任されている地区はアスク王国の中でも国境から離れた場所
敵がそこに進出するには、ヴァイス・ブレイヴの駐屯する区域を突破せねばならない為、脅威となり得る者が足を踏み入れる事はないだろう
メディウス達やゼフィール等はゲレタの指示を良く守り、他の開拓民とエリアが被る事のない様に努めている
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「⋅⋅⋅⋅話には聞いていたのだけど、実際に見聞きするのとではやはり違うものね」
どうにか女性としての最低限の矜持を守り抜いたエーデルガルトは軽食を済ませた後、ゲレタとの話に戻った
「ま、そんなもんさ
いくら理屈立てたところで、所詮それは机上の空論
実際にやってみん事には分からない事もあろうよ」
それはエーデルガルトにも理解出来る話だった
フォドラにおけるファーガスとレスターとの戦争において、幾度となく彼女達は想定外の事態に振り回されたのだから
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「⋅⋅⋅1つ聞いてみたい事があるのだけど、良いかしら?」
「あのなぁ
元山賊の農民に聞いてどうにかなる話ならともかく」
「貴方は戦争をどう思っているの?」
ゲレタの言葉を敢えて遮る様にエーデルガルトはそう口にした
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「戦争、ねぇ
究極の資源や人命の無駄遣いとしか俺は思わんが」
「無駄遣い?」
ゲレタの言葉にエーデルガルトもその真意を理解しようと口に出してみたが
「理想論なのは理解しているがな
戦争になって一番困るのは誰だ、って話よ」
「⋅⋅⋅それはそうだと思うわ
けど、そうしなければ解決しない事もあると思わないのかしら?」
エーデルガルトはヒューベルトから聞いたゲレタの話や周囲から聞いた話
そして、今日実際に会って話をした事から、決して絵空事だけで動く人物ではない。そう確信していた
「『闇に蠢くもの』だったか?
確かにあれは控え目に言っても唾棄すべき連中だろうさ。その排除自体は理解出来る
⋅⋅⋅⋅が、どうにも好きにはなれん
「ええ、そうね
良く知っているのね」
ゲレタはアカネイア大陸の者と聞いている
にも関わらず、自分達の事を知っているというのは違和感しかない
「知っている、ではなく
ま、それは置いておくとしよう」
「エーデルガルトにも事情はあった
が、結果としてフォドラ全土を巻き込む戦争になった訳だ
少なくとも、
それでも犠牲は出ただろう?」
「⋅⋅⋅そうね」
如何に為政者と呼ばれる人物でも
英雄と呼ばれる者であろうとも
力なき民を残らず救う事は叶わない
何故なら、略奪は力なき者達相手にされるものなのだから
「金鹿の学級には他の学級に比べて平民が多い
それが士官学校での認識だったと聞く
が、平民と言ったところで武器を手に『戦う事を選べる』時点で一般的な平民と考えが少し違う様に思えるがな」
「そう、なのかしら?」
「平民ってのは土地に縛られ、家に縛られるもんだ」
「家に?」
ゲレタの言葉にエーデルガルトは疑問を抱く
それはまるで
「貴族や王族とは少し違うな
日々の生活に余裕があるなら、家族の我が儘も聞いてやれるだろう
が、余裕が無ければ家業
俺の知っている限りでは農業や生産職だが、それを継がせたもんだ
新しい道を切り拓ける程に余裕がないから、ギリギリであろうとも安定を求める」
「戦争はその余裕を奪い去るのね」
「エーデルガルトみたいに長い目で戦争に向けて準備しているならいざ知らず、戦争ってのは予期せぬ状況で発生する事が多いと考える
となれば、臨時の徴収や徴兵もあるだろうさ
常備兵を置いていたとしても、戦争になりゃあそれらを前線に回したくなる
空いた場所はどうなる?」
「⋅⋅⋅そうね。そうなると山賊の被害に遭うのでしょう」
「上の人間は平気で「逃げれば良い」と口にしようさ
⋅⋅⋅逃げたとして、そいつ等はどうやって生活を再建するよ?
戦時ともなれば、余裕は次第に失われる
その状況で何もないに等しい余所者を受け入れられるか?
そいつがどんな人間なのか、すら定かでないのに」
「⋅⋅⋅だから貴方は戦争を無駄遣いと言うのね」
「主義主張が違うのは当たり前だ
生まれた国や地域の文化が違う。立場なども異なる
経済状況も一致しない
これで同じ方向を目指すのは余程の事だろうさ
極論、戦争したければすれば良い
周囲に全く迷惑をかけない様にして、遺恨の残らねぇ様にしてからな」
そこには隠しきれない嫌悪が見え隠れする
「誇りだ、やれ名誉だ
などと宣う連中がいるが、そいつ等は誇りや名誉だけで生きていけると思ってやがる
実に滑稽じゃねぇか。戦争をやるには様々なものが必要になる
それら全てを整えられて戦ってんのが騎士サマだろう
挙げ句、そんな下らないものの為に祖国を結果として滅ぼしているのに、それでもそれにしがみつこうとする」
「⋅⋅⋅⋅」
エーデルガルトは何も言えなかった
「じゃあそいつ等の戦い方を見てみりゃあ、バカらしくなるわ
戦争なんざ殺し合いを拡大させたものに過ぎんだろうに随分と正道に拘ってやがる
反感を買う事は分かっているが、騎士道だなんだと嘯いたところで、所詮やってる事は獸以下の殺し合い。何をほざきやがる、ってのが本音だな
効率的に、無慈悲に敵を殺してしまった方が結果として犠牲は少なくなるだろうによ」
「⋅⋅⋅それが、貴方の戦い方の原点なのね」
エーデルガルトはようやく理解した
あの異端過ぎる戦い方の意味を
「此処に来ても、さして変わらない
戦争は手段であって、避け得るならば避けるべきものだろう?
戦争によって培われた憎悪や怨念はいつしか、新たなる戦争の引き金に変わるだろうに」
彼女の脳裏に復讐の鬼となった嘗ての学友の姿がよぎる
「殺し合いなんだ
自分だけ全てを守れる、なんて思うなら自分が修羅道に落ちて敵対する全てを殺し尽くすしかねぇ
親友が、家族が
死んだからと憎悪に飲まれるくらいなら、戦争なんて最初からすんなよ
俺はそう思うがね」
「そう
ありがとう、参考になったわ」
ゲレタの言葉を聞き、エーデルガルトは頭を下げて礼を口にした
「あと、俺はいつも思ってんだがな
明日が当たり前のように来ると思っている奴と話をしたところで話にもならんと思う
⋅⋅⋅⋅まぁキュアンみたいな奇特な奴もいるんだろうが、な」
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「それはそうとして、王政でない世界もあると聞いたのだけど
どう思うかしら?」
「君主制を否定する気は更々ないが
そもそも、権力とは嫌でも人を変える力がある。俺はそう思っている
個人としては善人だとしても、権力を持てば大悪党
なんてのは普通にある話だと思うが」
「⋅⋅⋅そうかも知れないわね」
エーデルガルトの脳裏にはアドラステアの政変の時排除した人物の姿が浮かぶ
「真っ当な王族や貴族はそれらの危険性や重責を次代にも伝える
だから腐敗を抑制出来るところもあるんじゃないかねぇ」
「⋅⋅⋅⋅個人の自覚による
そう言う事になるわ。それだと」
ゲレタの言葉にエーデルガルトの表情は曇る
「他に何があるよ
監視体制を築こうが、それを抱き込めばどうとでもなる。
大抵、その手の人間は無駄に自分を守る方法には通じているからな
そんな人間を権力者の座につけないのが一番だろうが」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅貴方はいったい何者なのかしら?」
エーデルガルトの問いに
「さてな
親しくなったら教えるかもしれんが、ね?」
ゲレタはそう薄く笑った
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「如何でしたかな、エーデルガルト様」
「
「⋅⋅⋅⋅なるほど
実は彼方に防衛用の戦力を置く事をアルフォンス王子は考えているそうですが」
「必要かどうか、甚だ疑問ね
下手な者を置けばトラブルの元にしかならないでしょうに」
エーデルガルトは戻るなりヒューベルトと話をする事にした
「どうにも件の人物の有用性を理解したらしく、何とか戻そうとしている様にも見えますな」
「やるべき事は理解して、出来る範囲でやっているでしょう
下手に手を入れた方が揉めるわよ」
この後、エーデルガルトはヒューベルトを始めとしたアドラステア関係者を伴ってゲレタの元へ行く事が増えたそうな
別キャラルート ヒロイン
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パオラ
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エリス
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ミネルバ
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シーマ
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ニーナ
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ミディア
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マリア
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クライネ
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カタリナ
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その他