汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
「はぁ!?」
チェイニーは耳を疑った
今目の前の男は何といったのか
「人の話はキチンと聞くもんだ
····まぁ人の名前ひとつ覚えようともしないお前に言ったところで無駄かも知れんがな」
「ガトーを殺した!?
自分が何をしたか、本当に分かってるのか!」
ゲレタの言葉に激昂するチェイニー
なおゲレタはかなり重要な事を言っていたのだが、彼はそれに気付いてない
「分かってる、とは?」
チェイニーの様子を見て尚も惚けたような事を口にするゲレタ
「ガトーは気に入らない人物だとしても、必要な人物だろう
殺して良いわけないだろうが」
「必要、ねぇ
では聞くが
ガトーがいたから回避できたものとは何ぞ?」
ゲレタの温度を感じさせない視線と感情の読み取れないさながら作り物じみた表情
その人物から発せられた言葉にチェイニーは勢いを殺されたのである
「回避できたもの?」
「今しがた自分が口にしただろうが
ガトーは必要なのだろう?
ならどこに必要なんだ?」
「いやそれは人が滅んでないだろ?」
チェイニーはそう答えるが
「····あっそう」
ゲレタは意にも介さない
その事がチェイニーには腹立たしかった
「····あんなのでも、ガトーなりに世界を守ろうとしてた
、それを」
「その為なら、大恩ある
だが、彼の言葉はゲレタの冷たい視線と共に放たれた言葉により停止する事となる
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「何でもチキは力の制御が出来ぬからと、永い事ラーマン神殿に閉じ込めていたらしいじゃねぇか
理解に苦しむな
ラーマン神殿と言えば、忌まわしき盗っ人アドラによって他ならぬヒトとの共存を求めたナーガの意思を守ろうとした者達が殺された場所
なんでそんなところに
結局、ガトーは面倒な事を避けて好きな事だけしたかった。そんな風にしか俺には思えんが」
「なん、で」
チェイニーの言葉に
「言ったところでさしたる意味はねぇよ
結局封じた張本人たるガトーは側に居らず、やれカダインやアンリやらと思うがままに振る舞ったんじゃねぇのか?
バヌトゥさんはナーガの従者だったか?あまりな仕打ちにチキを連れ出すのも無理はねぇだろう
仮にも『大賢者』なんて呼ばれてやがる。少なくともメディウスを倒す武器たるファルシオンを若者に授けたんだろうが
ナーガの牙たるファルシオンを、な
にも関わらず、力を制御する術1つ教える事もなく封印し続けた
····アホかよ」
ゲレタの顔には隠しきれない嫌悪の色があった
「御せねぇから隔離して封印する?
で、その封印されたチキは何時になったら封印から解放されんだ?
それともあれか?
チキは封印されながらも成長出来るってのかよ」
「」
チェイニーは言葉を発せられない
「人ってのはな
そいつの立ち振舞いや言動から、そいつがどんな人物であるかを想像すんだよ
···お前、俺達の名前すら覚えようともしてないだろ?
見りゃ分かる」
チェイニーは見た
ゲレタの魔力がここら辺一帯をまるで獲物を探すかの様に拡がっていく事を
「竜族や竜人族は人に比べるのもバカらしくなるほどに長生きだ
神竜族の生き残りだか知らねぇが、ガトーもチェイニー
お前も結局のところ、相手をマトモに見ようともしねぇ
···なんなら、構わねぇぜ?
お前相手の能力をコピー出来るんだろ?」
「···大した事無かった気がしたけどな」
ゲレタの言葉に皮肉を込めて返すチェイニー
自分の能力を知られている
それは余りにも恐ろしい事だと、彼は知っているから
「能力の多寡だけで勝ち負けが決まるなら苦労しねぇよ
だからこそ、策を巡らす
罠にかける。ガチンコ勝負を竜や竜人族に挑む程無鉄砲にはなれないし、なっちゃならんからな」
ゲレタはチェイニーの挑発など意にも介さない
「···どうかと思うけどな、俺は」
「そりゃ強者の傲慢よ
力があって、初めて選択肢が出来る
力のねえ奴にはその選択の権利すら碌に与えられもしないんだがな?」
「で、強者であるガトーは思うがままに振る舞った
結果尊敬される事も讃えられる事もあったろうさ
しかし、不満を思う奴もいた
······そうそう、モーゼスとやらに会ったが相当ご立腹だったみたいだな?」
ゲレタの言葉を聞きチェイニーは溜め息と共に
「何でお前生きてんだよ」
と愚痴るが
「共通の敵がいれば団結できる
どうやら人も竜人族も同じらしいな」
そう皮肉る
「此処で妙な事をしなけりゃ何もしねぇ
⋅⋅⋅⋅が」
チェイニーは死神の鎌が自身の首元に触れているのを自覚するだろう
「何もしないって
しようとした瞬間、首が落ちるイメージしかないってのに」
「そうか」
ゲレタはそれだけ告げるとチェイニーの元を離れた
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「あ、師匠」
ゲレタにそう声をかけてくるのはカタリナだ
村に来た当初は身体が衰弱していたものの、適切な食事と適度な運動(当社比)により健康になった
魔道士という尊敬する師と同じクラスにあるカタリナ
ゲレタの愛娘であるチキ
自分達よりも早く師に出会ったレイ
自分よりも師を尊敬している姉クライネ
その誰よりも師の教えを理解出来、実践出来る事に優越感を感じなくもない
⋅⋅⋅⋅その場合、高い確率で噛みつかれる(意味深)事になったりするのだが
なお、師を相手にチキと弟子全員で挑むのだが
まず勝てない
村の人達は自分と姉で師の代わりが出来ると思っているらしいが
「無理言わないで!」
と言うのが本音だ
リンダさんの様な
そう強く思う
問題として、余りにも処理するものが多すぎる上に
常にそれが変化するので、
⋅⋅⋅⋅というよりも、アレを平然とやってのける師は果たして同じ人間なのか?
真剣に悩むところではある
彼女にとって嬉しいのが、ゲレタ式とも言える独特の魔力行使
それを継承出来るのは自分だけ、という事
何せ控え目に言っても
気が狂いそうになるのがゲレタの魔力操作
その上、微細な魔力操作をするにあたって高い魔力は寧ろ足枷にしかならない
かと言って鍛練を怠るなんて事は敬愛する師の名前を汚しかねないので論外。勿論、数少ない師との時間を削るなどあり得ないのだ
「⋅⋅⋅⋅んー、難しいか?」
「正直難しいというレベルではないと思うのですけど」
カタリナはゲレタに自身の今の実力を見てもらっていた。薄く魔力を拡げるのは何とかものに出来そうなのだが
「これだと相手が動いている場合、捕殺出来んぞ?」
「⋅⋅⋅⋅あの、先生
流石に捕殺をそんな無造作に出来る人は多くないと思うんですけど」
サラっとヤバい事を口走る師にカタリナは思わず苦笑い
「そうか?」
「そうですよ?」
こんな日々が続けば良い
そう彼女は強く思った
守ったら負ける!攻めろ!
との電波を受信したので連続投稿
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