汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
今更ではありますが、ご理解下さい
「⋅⋅⋅何故」
ミネルバは込み上げてくる激情に耐えながら、兄ミシェイルの近衛騎士団と激戦を繰り広げていた
近衛騎士団
つまり、ミシェイル自身がマケドニアの中で引き上げた者達であり、その実力もさることながら忠誠心はルーメルやリュッケに勝るとも劣らない者達
それらが前線に出ている
つまり、ミシェイルは此処に居ると言うこと
「どけっ!」
ミネルバは武器を振るい、敵を退けようとする
赤い竜騎士
そう称されたミネルバ。彼女の実力はマケドニアでも屈指のものであり、たとえ近衛騎士団相手でも引けを取るものではない
マトモに相対すれば、ミネルバが勝つだろう
だが、誰一人としてミネルバに挑みかかる事を止めない
「お前達は!」
ミネルバは問いたださねばならない
なのに
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マケドニア軍による奇襲はアカネイア、グルニアそしてアリティアにとって危険な状況を容易く作り出した
何せ彼等はマケドニアに向かう船団の中にあり、戦闘を行なえる状況ではなかったから
マケドニア軍は一番船隻の多いアカネイアや最早烏合の衆とすら思えるグルニアになど目をくれること無く一目散にアリティアを狙った
それがどの様な理由であったのか?
それを知る手立てはもう残されて居なかったが
洋上での戦闘
それは高い
一見すれば空を制しているマケドニアが優位にも思えるが、先のマケドニア遠征を挫いた様な非道でも選択せねば一方的な戦闘となり得ない
何故か?
彼等もまた船上にいる者達に攻撃する為に高度を落とさねばならないから
そして船上で落ちれば敵地
洋上ならば死地
そんなところで竜騎士が戦う理由などない
だが、彼等は敢えてそこを
その理由を同じ竜騎士であるミネルバは痛い程に理解できる
カチュアも敵に拘束され動けない
アカネイアからの掩護射撃はさしたる効果がない
大陸一の弓使いとやらがいるらしいが、その腕をもってしてもどうにもならないらしかった
「ミシェイル!」
ミネルバは届く筈のない相手の名前を叫んだ
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「アリティアのマルス王子だな」
マルスの目の前に突如現れた人物
彼はマルスを見据え、こう言った
「貴様の覚悟、見せてもらう」
と
「貴方はミシェイル王!?」
「⋅⋅⋅⋅どうでも良い事だ
貴様に出来る事はただひとつだけ
この私の頚を落とし、マケドニアを屈服させるか
それとも死ぬか」
「貴様以外が動くならばそれも良いだろう
⋅⋅⋅その時は貴様達全てが海の藻屑となるだけだ」
マルスの前に出ようとしたジェイガン達の動きが止まる
ミシェイルは少しだけ視線を上空に向ける
マルス達も見上げると
其処にはマケドニアの竜騎士達の姿があった
「⋅⋅⋅卑怯な」
アベルのその言葉に
「卑怯?
⋅⋅⋅⋅ふん、一度国や民を見捨てておきながら他国の力を借りて取り戻した
その国や民よりも他国の都合を優先した貴様らに言われる筋合いはないな
国を再び取り戻したとしても、失われた命は戻って来ぬ
⋅⋅⋅⋅さて、今一度問おう
アリティアのマルスよ。俺と戦うか?
それとも此処で全てを失うか、選べ」
言うまでもなく、マルスに選択肢なぞ在りはしない
「分かりました」
「ふ、ならば其のような物では足りまい」
ミシェイルはマルスに向けて、あるものを投げ渡す
「!?
これは」
「その程度の武器を持たずに殺せると思われては困るのでな」
驚くマルスに対してミシェイルは嘲笑を向けると
「では、ゆくぞ?」
挑みかかった
結論から言えば、マルスはミシェイルに勝ち
その命を絶った
それが
マルスの手にはファルシオンがあり、何故これをミシェイルが持っていたのか?
そして、それを自分に渡したのか?
それら全ては闇の中
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マケドニアを降したアカネイア連合軍
しかし、このまま解散とはならない
今回マケドニアを降したのはハーディンの功になるだろうが、それだけでは不十分
そもそもマケドニアとの戦いと言えば聞こえは良いが、それらはアリティアのみが行なった様なものなのだ
これではアカネイアの存在意義が失われる
それがアカネイア軍の本音だった
ハーディンは指揮官ではあるが、あくまでも箔をつける為に今回の遠征は計画された
確かにハーディンの指揮は的確だったのは認めざるを得ない
マケドニア軍による強襲
輸送『船団』である以上、下手な進路変更は意思統一されてない状況において危機的状況を招きかねない
加えて、上空に位置するマケドニア軍に対する射撃ならいざ知らず、船上において戦闘を行なっている竜騎士に対する射撃をハーディンは認めなかった
何せ再建途上などと謳ってはいても、その練度たるや目を覆わんもの
ジョルジュはまだマシであったが、それならば上空にて孤軍奮闘しているミネルバやカチュア。そしてエストの援護をさせる方が幾分マシ
そう判断した
この時点でハーディンの非凡な能力は理解できるものだが、何せ相手は
見たいものは見るが、見たくないものはとことん見ない
を最早国是であるかの様に上も下もやっている腐敗国家
そもそも論として、
「ちょっとウチ立て直す為に力を貸して?」
と言い引っ張ってきておきながら、その癖その力量を計ろうなどと傲岸不遜以外の何者でもない
「己らが力貸せ言うたやんか!」
とキレ散らかしても責められる謂れはない筈だ
だが、そんな当たり前が通じないのがアカネイア
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「正気とは思えんな」
「しかし、このまま帰国など出来る筈もありません!」
⋅⋅⋅⋅正確には騎士見習い、だったりする
何せ、開戦初期のドルーアとの戦闘によりアカネイアの主力は壊滅
各地に散った諸侯の軍はマルス達がパレスを解放するや否やパレスに駆けつけるか
或いはこれでアカネイアの再建が叶うとして国内のドルーア軍残党(と思い込んでいた)討伐に動く
前者はそのままアカネイア軍へと
後者はドルーアによる逆撃を受け
その所属を変えた
そして再建途上にあったアカネイア軍はドルーアによる再び行なわれたパレス侵攻に伴うパレス防衛戦でその屋台骨をへし折られる
とどめにグルニア遠征軍の壊滅
戦力の再編どころかどうやって軍としての体裁を保つか?すら議題となった
更に元騎士隊隊長のミディアや解任された歩兵隊隊アストリア。この2人を職に復帰させるべきでは?
との議論が真剣に行なわれている
と言えば、その戦力の枯渇具合は理解して貰えるのではないだろうか
更に更に
アカネイア軍では『組織の空洞化』が起きてしまっている
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アカネイアにおいて、騎士とは兵士を束ねる者であり
また一兵士として戦う事もある
その為、騎士は大陸全ての軍においてその数は決して少なくない
しかし、騎士
特に軍馬に騎乗して戦うソシアルナイトなどは単純な技量のみならず、騎乗時の戦闘
取り分け馬上槍に精通しておかねばならない
その上、建物内において軍馬はその消耗が激しい為に使うべきではない
当然だが、騎乗時とは違う戦い方を強いられる
となれば、自然と騎士になる為の基準というものは高くなる
しかし、現在のアカネイアにおいては聖騎士としては力量に疑問のあるミディア。彼女を騎士隊長に戻す話からも分かるように
人材が足りていない
その為、騎士になる為の基準が大幅に引き下げられたのだ
既にアドリア伯ラングはアカネイア軍に関わっておれる立場になく、ミニディ、ディール両侯爵は軍務に明るくない
その為、アカネイアの歪みとも言えるものが此処で顕在化したと言えるだろう
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「ならぬ
戦争とは事前に綿密な計画あっての事
まして今回の様な大規模派兵ともなれば、尚更だ」
「し、しかし!」
「無計画の侵攻の結果、グルニアやマケドニアで敗北した事を知らぬのか
マケドニアはミシェイル王の死により混乱している
此処で我等がマケドニアの地を踏み荒そうものならば、マケドニアの民や残った戦力。これ等が我等に対し抵抗してこよう
⋅⋅⋅⋅それこそ、死ぬまでな」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅承知しました」
ハーディンの言葉を聞き
(くっ、たかが辺境の田舎騎士風情が)
騎士は内心の憤りを押し隠し、その場を離れた
「⋅⋅⋅⋅やれやれ。これが続くと言うのか
今から気が滅入るな」
ハーディンはそうぼやいた
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「⋅⋅⋅⋅兄、上」
ミネルバは事切れた兄ミシェイルの亡骸の前で立ち尽くした
分かっていた事だ
こうなると
だが、それでも
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マルス達の空気は重い
何せ敵はミシェイルが死んでからも
⋅⋅⋅⋅いや、寧ろミシェイルが死んでから我が身を捨てて殺しにかかってきた
衝撃的だったのは、ミシェイルの愛竜はミシェイルが死んだ瞬間、マルスを食い殺さんとその瞳に殺意と憎悪を宿して迫ってきた事だろう
何とかジェイガン、アベル、カインが斬り殺した
しかし、竜は最期にミシェイルの方を向いて絶命している
捕虜は無し
敵側に生存者は1人として居なかったのだ
今更になって、マルス達は戦争の意味に向かい合わねばならなかった
何が正しく
何を求めて戦うべきか、を
ファルシオンのくだりは次回辺りにするので、悪しからず
別キャラルート ヒロイン
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カタリナ
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