汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
「王都だけで手一杯だと言うのに」
グルニアの将軍であるロレンスは自室で呻いた。
何せグルニアの民の暴動を抑える事で彼等は手一杯。
ただの暴動ではない。
ある意味正当な理由での抗議の延長線のものなのだから。
しかも、騒ぎの発端は「家族は何時になったら戻ってくるのか?」という至極当たり前の疑問にすら答えようとしなかった自分達のせい。
家族や知人は帰らず、それでいて勝っていた筈の戦いに負けていたともなれば到底納得出来る筈もないだろう。
加えて、未だにグルニア軍の中にはカミュを神聖視するものがいるらしく、民の悲痛な声は城門で阻まれていた。
「…いや、それは言い訳にしかならぬ。
我等が向き合っておらなんだからこそ、この様な事態に陥ったのだ」
ロレンスはともすれば、他責しそうになる己を戒める。文官達からの視線は痛い、などと生ぬるいものではない。
戦争において主導権は常に軍にあった。そして、それを陛下も是としていたのであれば、その責は軍が取らねばならぬ。
「この皺首ひとつで収まるならば、それに越した事はないのだがな」
陛下の病状も宜しくなく、このままではユミナ王女かユベロ王子がグルニアを継ぐ事となるだろう。
…安定とは無縁となってしまったグルニアを。
更に辺境の部族も不穏な動きを見せるだろう事はほぼ間違いなく、それへの手当てもまた必要。
が、それで現在の混乱を鎮められなければ、それも許される話ではない。
グルニアは国土が決して狭くない。
その国土を曲がりなりにも維持出来たのは強大な武力。
それが揺らいだとなれば、
「アカネイアやアリティアに援軍を頼むか?」
それは流石に都合の良すぎる話である事はロレンスとて理解している。
が、そうでもしなければグルニアは国体の維持すら難しい局面に立たされていたのだった。
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「…思ったよりも物資が集まらん。どうなっている!?」
「そうは言うがな。長く続く戦争で大陸全土が疲弊している。何時終わるかすら分からん以上、物資を出し渋るのは仕方なかろうさ?」
グルニアの混乱すら、自分達の成り上がる機会としか考えていない者達。
彼等もまた苦悩の中にあった。
「アリティア軍がタリスやオレルアンで物資を確保していたからな」
「忌々しい。亡国の王子の為に我等が利益を損ねるなどと」
大陸全土を巻き込んだ戦争。
その中で比較的被害の及んでいないのが、辺境のタリス王国だった。
彼等商人はタリスでの仕入れを期待したのだが、ガルダの海賊の残党対策などもあり、タリス国内の作物についてタリス王は国内での消費を推奨していた。
当然ながら、他国の商人による買い付けが上手くいく筈もなく、彼等の思惑は外れてしまう。
では、オレルアンならばと思い直すもサムスーフに居座っていた悪名高きサムシアン。
この集団が壊滅した事により、余所からの山賊や盗賊がサムスーフに居座る事に繋がってしまう。
タリス、オレルアンにおいては、挙兵したマルス王子率いるアリティア軍、或いはアカネイア再建を願うニーナ王女に少なからぬ戦力を支援。
結果、双方の境界線にあたるサムスーフの賊対策に回せる戦力が用意しにくい状況となってしまう。
無論、オレルアン公とてサムスーフから降りてくる賊への対策を講じなかった訳ではないが、積極的にサムスーフへ兵を向けるのは難しいとの判断を下していた。
その為、ガルダ~オレルアン間の輸送経路の維持こそ成されはしたものの、それはサムスーフを迂回するものとなってしまう。
当然ながら、ガルダとオレルアンの経済的な結び付きは強固なものとなる筈もなく、商業的に考えて旨味の少ない地域となっていたのである。
更にオレルアンとて、マケドニアによる侵攻を受けていた。それに便乗した賊の活動もあり、その生産力は平時よりも落ち込み、それが改善するには今暫くの時を要する。
「アカネイアではディール、ミニディにアドリア伯が動いている。
グラの新女王も国内優先としている。
…となれば」
「アリティア、か。
確かにあの国は解放されこそしたが、その内情は酷いものだろう。」
アリティアではエリスがマルスの代理として、治安回復や国土再建に尽力してはいる。
が、彼女の元に参じる者の殆どは元騎士などであり、統治について実績のある者は居ないに等しい。
賊への対策はそれなりに行なえていたとしても、それ以上となると難しい。
そして、アリティアにおいて財のある者達の多くは今のアリティアに不満を感じている。
「いつまでアカネイアと共に戦争をしておられるのだ、マルス王子は?」
これは単純に立場と視野の違いによるものだったが、アリティアの治安を回復して、その上でのアカネイアへの協力こそ必要。
との論調が高まりつつあった。
勿論、彼等による仕込みだった。
何せアリティアのマルス王子とはアカネイアの支配体制を取り戻そうとする敵なのだ。
彼等にとっては
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アカネイアを中心とした強固な体制。それはドルーアにより打ち砕かれた。
それは彼等にとって喜ばしい事。
何せアカネイアの
特に彼等が喜んだのはアカネイア王族唯一の生き残りがニーナであった事。
何せ、彼女は満足に王族としての教育を受けている訳でも、
何せ、ドルーアの手から逃れた。
などと受け止められているが、つまるところニーナにとってアカネイアの有力者は信じるに値しない存在である。
そう公言しているも同然なのだ。オレルアンに逃れたと言うことは。
その時点で生き延びた多くのアカネイア貴族や有力者はニーナに従う事に対して難色を示した。
当然だろう。自領にでも逃れてくれるならば、誠心誠意尽くしそうとも思うだろうが。
挙げ句、アカネイアの至宝たるファイアーエムブレム。これをオレルアンにて尽力していたオレルアン公でも、オレルアン公弟ハーディンにでもなく、アリティアのマルス王子に託したのだ。
確かにアリティア軍の助力なくばオレルアンでの巻き返しは出来なかっただろうが、少なくとも自国を巻き込まれてでもマケドニア軍に抗ったオレルアンに配慮しないのは如何なものか?
商人達はこのニーナの動きを聞いて確信した。
付け入る隙は充分にある、と。
彼等はアカネイアにおける栄達を目指し、各地で物資を集める。
が、彼等の予想以上の速度でアリティア軍はパレスを解放。アカネイア貴族の一部はそれを受けてパレスへ参集。
その中で商人とのやり取りに比較的慣れていたラング等が権を握る。
これは彼等にとって誤算であり、容易いと思われた権力中枢への接触が困難となってしまう。
ではアリティアに食い込もうとするも、行商人アンナが既に重要な立場となっていた。
その結果、彼等はグルニアで武器や食料を売りさばき、資産を増やそうとしたのである。
それはそれとして、自分達の成功を阻んだアリティアへの意趣返しも忘れるつもりはなかった。
…お門違いにも程があるが、彼等にとって害を与える者達への恨みは忘れないのである。
その結果、グルニアがどうなるか?など彼等にとって知ったことではないのだから。
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大陸全土の混乱は道を外れるものを大量に生み出し、それは歪みとなって弱きものを喰らう。
「くそっ、なんだあの村は」
「お前のところもかよ」
「これだけの数なら、あの村を」
誰も知らぬ戦いが始まろうとしていた。
こちらのゲレタはマルス達と基本関わらないので、展開に困る今日この頃。
まぁ草案はあったのですが、勢いのままに書いた為、見事に脱線しました(n敗)。
プロットをその場のノリで逸脱してはならない(戒め)。
此方は戦争や人の醜い所を徹底的に書き上げるタイトルに相応しい話にしたい(今更)。
別キャラルート ヒロイン
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パオラ
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エリス
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ミネルバ
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シーマ
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ニーナ
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ミディア
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マリア
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クライネ
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カタリナ
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