悪食のヴェスタリヌ ~ヒーロー公安委員長と始めるヒロアカ生活~ 作:積み木紫苑
――それから、私の公安での日々は始まった。
私の公安直営孤児院での一日を紹介しよう。
朝、私は女子部屋で目覚める。
同室の少女たち五人を紹介しよう。実質当作品のオリキャラだ。皆さまのワーキングメモリーに負荷をかけて申し訳ない。彼女たちの名前は別に覚えなくてもいい。私は内心、彼女たちのことを属性で呼んでいる。他人には言えない、他人の顔を早く覚えるためのライフハックだ。
その1、私よりも小柄なおしゃべり少女・コーデリア。個性はパラドクススピーチ。発言が「逆説的な真実」として作用する。例えば、「あなたは動けない」と言えば、対象はなぜかその場に留まってしまう。発言は論理的でないほど効果が強くなる。スターアンドストライプ並みの強個性なんじゃない、これ?
ちなみに、「小柄なおしゃべり少女」というのが属性だ。たまに「個性:パラドクススピーチ」みたいな言い方もします。よしなに。
その2,私よりも背の高い少女・スフィア。個性は静寂。自分の周囲に音を完全に消す空間を作ることができる。小柄なおしゃべり少女――コーデリアと仲が良い。性格も見た目も大人びているよね。
その3、怖がりなコミュ症っぽい女の子・アオイ。個性は透明化とすり抜け。個性の発動条件が恐怖、らしい。
私が、ここに来てから一番話してるのが小柄なおしゃべり少女と背の高い少女である。逆に、一番話してないのが、この怖がりなコミュ症っぽい女の子である。……これから、じっくり人柄を知っていこう。
その4,「なのだわ」少女・イボン。語尾が「なのだわ」な女の子。個性は花吹雪。可愛い個性だね。
その5、おっとり屋少女・レスオブラ。個性は癒しの息。語尾を伸ばしたおっとりとした喋り方をする糸目の、ザ・おっとりって感じの子。将来は巨乳になるんじゃないか。
孤児院の館内放送が鳴り響く。
『午前六時です。みなさん、朝の支度を始めましょう』
「おはよー」
「おはよう」
「スフィア~!! 起きてー!!」
「ううん、あと五分……」
朝六時。そんな彼女たちと迎える朝は、騒がしすぎもせず、静かすぎでもない。
五分後、公安の職員(なんでも教員免許持ちらしい)がやってきて、私たちに指示を出すそれまでに着替えと、歯磨きと顔洗いを終わらしておくのだ。しかし職員が出す「指示」と、いっても……。
「今日の朝食はチキンライスだ」
「「「やったー!!」」なのだわ!」
「早く食堂に行きなさい」
ほぼほぼ、朝食のメニューの伝達である。
食堂前の廊下に行くと、男子達に遭遇することになる。
「おはよぉ~!! テディちゃん!!」 一人の少年が、私に抱き着いてくる。
「おわっ、おはよ」
この小柄な男子は、男子ナンバー①のスケベ美少年・ハルキ。個性は吸収。触った人の体力や気力を吸い取り、自分に取り込むことができる。今のところ、だるくなったりはしていないので、個性を発動はしていないのだろう。では、なぜ彼がこんなスキンシップを取るのかというと……。
「うっへへ、ツルペタで薄いテディちゃんの身体最高! いい匂いするぅ」
「変態臭いよ。そろそろ離れようか」
顔は儚い美少年なのにな、この子。峰田実枠である。
私が「離れろ」というと、スケベ美少年はおっとり屋少女に「おはよぉ」と抱き着きに行った。個性:癒しの息は「あらあら、おはよー」と平然としている。
しかし、男子のセクハラはこれに留まらない。
「うぇーい!!」
「熊のパンツ~!!」
「うわあー」
次は何が来たかというと、男子ナンバー②&③の双子、カズマ&ユウマである。こうしてたまに、スカートめくりをしてくる。つまるところ、スケベ美少年とは違うベクトルのクソガキである。個性はシンクロ。互いの視覚や感覚を共有できる。ザ・双子って感じだね、偵察に向きそう。
「おい、ごめんなさいは?」
「テディがキレた~!!」
「逃げろ~!!」
二人は食堂の中へと逃げて行った。
「はぁ~……」
つい、眉根を寄せる。すると、肩に手をぽん、と置かれた。
「おはよう」
「あ、サイくん。おはよう」
「うん。……どんまい」
そう言って、彼はこれから食事をするのにもかかわらず、本を片手に食堂へと入っていった。哀れまれちゃったよ。彼は男子ナンバー④、本好きの冷静な少年・サイだ。どちらかというと常識人な、寡黙な子である。個性は記憶写し。一度見聞きしたものを、ホログラムで出せる。
「おい! みんな! 俺の前を行くんじゃねえ~!! 後に続け!! 俺が王道だ!!」
そう言いながら、食堂へ駆け込んだのは男子ナンバー⑤のリーダー気取りの俺様少年・リット。元気だなあ。
「おはよ、リリアちゃん」
「おはよう、ホークスくん、テンコくん」
「……おはよう」
そして、最後にやってきた男子二人が、皆さんご存知の原作キャラ(幼少期)のホークスと志村転弧である。この世界線のテンコくんは、兄貴分のホークスくんにべったりだ。彼の後ろをついて回っている。
ちなみに、テンコくんの髪色は白みがかった青だ。つまり、崩壊の個性が発現したあとということ。
「そういやテンコくん、今何歳なの?」
「え……四歳……」
「あれ、私と一緒だ」
志村転弧の崩壊が発現したのは、たしか五歳ごろ。あれ~?
*
朝食後は、それぞれ公安の職員らに連れられて「個性延ばし」をさせられる。多分、それぞれ訓練のメニューは違うんだと思う。
私は当初、吸収した個性――お母さんの「怪力」とお父さんの「俊足」が、どう身体に馴染んでいるのかの研究を一日中行われていた。具体的に何をしたかというと、初期デクくんみたいに身体が真っ黒になるまで運動させられたりとか。
最近は、私に与える人肉の量によって個性吸収に、どのような影響が出るのかを研究しているらしい。ステーキ状の肉にナイフを入れる。左手のフォークで、嚙みつき防止用マスクを外した口に運ぶ。うまうま。やはり、私の身体は人肉を摂取すると満足が持続するらしいな。ちなみに、この死体は死刑囚のものだそうだ。遺族が泣くぞ……いいのか公安。
*
「研究結果から導くに。君の身体は2キロの肉を食べなきゃ完全に個性を吸収できないみたいだ。それ以下の人肉――個性因子は、一時間で抜けてしまう。2キロ食べられれば、一週間ほどで個性に身体が慣れるようだね」
「ほへえ~」
今日の午後は、公安委員長との面会があった。彼は一人一人、毎月孤児院の子供と話をするらしい。
「あと思ったんだけど……」
「何? 委員長」
「君、メンタル強いね」
「ありがとう」
「うん、どういたしまして」
しばらく沈黙が流れる。委員長はニッコリとメガネの位置を直した。
「いや、普通は『人肉を食べなきゃ個性が発揮できない』なんて言われたら、もっと取り乱すでしょ? あと、両親死んだのに引きずらないね」
「いや~、前世で色々な二次創作読んでたからね。もはや何が来ても驚かないっていうか」
「さすが、格が違う」
とか言ってみたけど、普通に今世の両親を殺したことは引きずっています。でも「殺したお前が言うな」だと思うし、誰にもそんなことは言えない。それに、病は気からだ。能天気なサイコパスになりきるほうが、心はきっと楽だ。
「でもさぁ、2キロの肉って結構な量だよね。単調な味付けなら飽きるかもしれない」
「まったくその通り。じゃあ、希望の調理法があれば、次回の実験で取り入れておこうか?」
「わーい」
そんな軽いノリで、一対一の面接は進む。ちなみにこの部屋、無人センサーやAI搭載監視カメラでガチガチに警備されているらしい。音は拾っていないみたいだけど。万が一にも在り得ないけど、もし私が委員長を襲ったら即刻物理的に首が飛ぶ。
「委員長、訊きたいことがあるんだけど……」
私はそう切り出した。なぜなら、転生自覚後で子供の私は、この世界が今どうなっているかの情報が無い。知りたい。
「うん、三つまでね」
「少な?! なんで?」
「明日、護衛のナガンを連れて大阪支部まで出張だからね。準備で色々と忙しいのさ」
「ええ~……」
「さあさあ。早くしないと他の子の面接予定時間が迫ってしまうよ」
「えーと。えーと……
なんでテンコくんの髪が黒くないんですか!!」
「それはね、孤児院に来る直前に志村転弧が覚醒したからだねえ」
「というと?」
「ほら、志村弧太郎の好きなもの:家族じゃん? 志村家は、転弧くんを孤児院に預けるのを相当渋ったんだよね。話し合いを重ねて、AFOと繋がってるところからも脅して、ようやく納得してくれたんだけど」
「脅してんじゃん」
「別れる直前、突然の親離れに混乱した転弧くんが大暴れしてね。それで個性:崩壊が発現した」
「そうなんだ。だからあの髪色なんだね」
「そういうことだ。次は?」
「えっと……
委員長と私の他の転生者って見つかってるの?」
「おや、私は転生者なんて一言も言ってないよ」
「いや、絶対転生者の言動だよ」
「まあ、それは置いといて。
一人だけ見つかっている。
彼の個性は『怠惰』」
「わお。すごいじゃん」
「お褒めに預かり光栄だ」
「その、『怠惰さん』も個性障害持ちなの?」
「うーん。なんというか、心臓が弱い」
「思ったのと違う方向に大変そうだ」
「さあさあ、次は?」
「えっと……
AFO、タルタロスにいますか?!」
「いません!!」
「ええ!!」