悪食のヴェスタリヌ ~ヒーロー公安委員長と始めるヒロアカ生活~   作:積み木紫苑

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VS 傲慢

 

 ここで、私の今の、吸収した個性を紹介していこうと思う。

 

☆怪力……お母さんの個性。見た目はムキムキじゃないのに、すごい筋力を発揮できる!

☆俊足……お父さんの個性。ウサインボルトよりも速く走れるし、それを持久走にも応用できる!

☆炎……どっかの死刑囚の個性。肌から火が出せる! 個性が身体に馴染んだ後は、ヤケドしなくなった!

☆水鉄砲……どっかの以下略。指先から水を発射できる! 火の消火用でバランスとるために食べさせられたのかな。

 

 以上、これだけです。ポケモンの技制限かな???ってくらい少ないね。

 でも仕方ない。私が孤児院に来てから、まだ一か月も経っていないのだ。研究なりなんなりもあったし、そもそもの人肉の調達が大変そう。そりゃ、食べられた個性も少なくなる。

 

 さて、このロリコン(侵入者)を殴るにはどうすればいいのか。なにせ、堅牢な孤児院の壁を突き破ってくる男だ。多分、結構強いんじゃないかな。怪力と俊足だけじゃ心もとない。

 そういえば、さっきこうも言っていたか。

 

『俺様の嫁になりたいロリはどこだ? あとついでに、志村転弧も貰っていく』

 

 何気にテンコくんも狙いらしい。もしかして、AFOの手下だったりする?なんてね。AFOがテンコくんを狙う理由が思いつかない。この孤児院、位置も存在も秘匿されているらしいから、結構手間だと思う。せいぜい、委員長やオールマイトへの嫌がらせとか……。え、AFOってそんなに嫌がらせに命かける人なん?

 

「こちら、孤児院。ヴィランが敷地内に侵入!! 」

 

 公安職員が、無線でそう伝達する。他の孤児の様子を見ると、予想外の事態に皆目を見開いていた。ガクブル震えている者もいる。

 

「せ、先生……」

 

 俺様少年(侵入者と違って、俺様なんていう一人称じゃないけど)が、腰を抜かしながら職員を呼んだ。ここの職員は、基本先生と呼ばれている。一応ヒーロー免許も持っている彼らは、安心させるように微笑んだ。

 

「戦闘許可が下りた。君たちは部屋の外で固まっていなさい」

 

 バインダーを床に置いた四人の先生は、拳に熱を纏ったり爪を長くしたりしながら、侵入者へと向き合う。

 うーん。先生が代わりに殴ってくれるようだ。シチューの仇を自分で討てなかったのは残念だが、ここはおとなしく指示に従っておこう。

 

 食堂の外へと、私たちは逃げた。ある孤児は、泣きながら。ある孤児は、顔を険しくさせながら……。ある孤児は……。

 

「ホークスくん、キョロキョロしてどうしたの?」

 

 辺りを見回しながら、廊下を走った。

 

「……テンコがおらん」

「エッ」

 

 なんで!? テンコくん、足が竦んでしまったのだろうか。それとも、あの不審者の男に個性かなんかで攫われてしまったのか……。

 ホークスくんは無言で、剛翼のうちの一枚を、さきほどの食堂へと飛ばした。

 

 

「筋力プラス3、命中プラス3、敏捷プラス2、タフネスプラス1!!」

 

 男の拳が、最後に立っていた職員の顎先を狙う。

 

「ぐわぁッ!!」

「ハーッ、はっはっはっ!! 弱っちいなあ。俺様つええええええ!!!」

 

 男は狂ったように高笑いをした。

 その周りには、スーツを着た四人の大人が血まみれで倒れている。

 

「あ、ああ……」

 

 テンコの脚は、その場に縫い付けられたように固まっていた。

 

「先生……!!」

「ん? 志村転弧、そこにいたのか。ちょうどいい! 依頼が秒速で終わったな! あとはハーレム要員のロリを複数人ゲットできれば完璧だな。俺様ってば! 天才なんだから! ハーッ、はっはっはっ!!」

「あ、う、あ……」

 

 男が、こちらに向かってこようとする。が、その男は足がもつれる感覚がした。

 

「テ、ンコ……逃げなさい……」 傍に倒れていた職員のうちの一人が、男の脚を掴んだのだ。

「先生!!」

 

 男――郷間 真一は、「チッ、興が冷める」と面白くなさそうにその職員の顔を蹴りつけた。

 

「ガッ」

「せんせ、」

 

 テンコの口から声が漏れ出る。

 郷間が、ようやく足が竦んでいる少年へと足を進めた。

 そのとき。

ヒュッ。

 

「うわっ!」

 

 テンコの服の襟が、何かに引っ張られた。そのまま、部屋の外へと連れ去られていく。

 

 男は「ハッ」と、鼻で笑った。

 

「そこにいるんだな」

 

「テンコの馬鹿。俺がおらな、どげんなるところやったんか、わからんと?」

「ごめんなさい……」

「まあまあ、無事でよかったじゃん。テンコくんは……」

 

 私たち十三人の孤児は、倉庫に隠れた。ホークスくん、バリ博多弁で罵るなあ。ちなみに背の高い少女の個性:静寂で、息遣いすら外からは聞こえないようにしている。

 

 倉庫の中は薄暗く、埃を被った家具から積まれたドリルまであった。その奥の方に、私たち孤児は縮こまっていた。

 

 テンコくんが、小さな声で言う。

 

「あの変な人、筋力プラスうんたらとか、命中率プラスなんとかって言ってた……」

「増強系の個性?なのかも」

「それで、先生皆やられてた……」

「まじかあ」

 

 先生らは、おそらく通信で応援を呼んだはずだ。存在が隠されている孤児院だ。来るのは公安直属ヒーローだろうか。それを待つしかない。これで、オールマイトとかが来たら笑っちゃう。公安直属ヒーローじゃないオールマイトが呼ばれる事態だなんて。どれだけ強いんよ、あのロリコンは。

 つーか、絶対あのロリコン襲撃者、レディ・ナガンと委員長がいない日を狙ったよね。言っていることはアタオカだけど、計画的な犯行を目論んでいたということである。

 ……しかし。

 

「絶対、テンコくんを運んだ方向を追ってくるよね、アイツ」

「「「えっ」」」

 

 みんな、私の発言に声を合わせた。

 

「どうしよう……」

「これもテンコが逃げ遅れたせいじゃん!」 俺様少年が、テンコくんを指さす。

「うう……」 指を刺された彼の目は、泣きそうだった。

「やめなさい」「ウッ」

 私は俺様少年の頭を軽くデコピンした。

 

「これから、どうするか決めよう。私に案がある」

 

 最大の防御は、攻めだ。

 私は、おしゃべり少女を見た。

 

「コーデリアの能力が必要で、危険かもしれない」

「! ……全然! 任せて?」

「えっ、コーデリアだけズルいのだわ! 私も加えて欲しいのだわ!」

 

 「なのだわ」少女――イボンが挙手する。

 

「ぼ、僕も……」

 

 意外にも、スケベ美少年も手をあげた。

 

「お前らだけ良いとことって、ズルいぞ!」

「俺たちも!!」

 

 双子も手を挙げる。

 

「皆……」

「しゃーねーな、今回のリーダーはお前だ! テディ・リリア! 俺は後方支援側だけど……協力するよ」

 

 俺様少年が頬を膨らませながら言った。

 

「……うん!!」

 

目標・大人の援護が来るまで、皆無事でいて、連れ去られないこと!!

 

 今回の作戦に不参加なのは四人。テンコくん、本好き少年、コミュ症っぽい女の子、おっとり屋少女だ。

 

 テンコくんの個性は崩壊。接近戦になるけど、ショタの間合いじゃ分が悪い。スケベ美少年も接近戦が必須だけど作戦に加わっているのは、スケベ美少年の方が体格的に成長しているからってのがある。それに、もし「個性伸ばし」で伝播する崩壊を使えていたとしても、私たちまで自滅してしまう。

 

 本好き少年の個性は、記憶写し。見聞きしたものをホログラムにして表示できる。そもそも戦闘向きじゃない。けど、私の作戦をわかりやすくホログラムの図にしてくれました。

 

コミュ症っぽい女の子は、今精神的に不安定で、透明になったり不透明になったりを繰り返している。多分作戦に参加できる精神状態じゃない。

 

 おっとり屋少女も、戦闘向きの個性じゃない。ヒーラーだからね。個性は癒しの息。息を吹きかけたところを治癒する。

 

ってことでまず、作戦に参加する孤児は全員、俺様少年の個性:士気向上(モラルアップ)を使ってもらった。彼の言葉を聞くと、運動神経に対して大きなバフがかかるらしい。

 

「お前ら……いや、俺たちならできる!! 必ずだ!!」

 

 彼の言葉を聞いて、全身に力が満ち溢れる感覚がした。おお、これはすごくない? 神経の一本一本までを、確実に素早く動かせる気がする。

 

そのあと私たち作戦参加ガールズ(私、おしゃべり少女、「なのだわ」少女)は一旦倉庫の外に出た。襲撃者を待つ。

 

 こつり、こつりとした音が近づいてくる。思わず、唾を飲んだ。

 三人で顔を見合わせる。――作戦通りに。

 そして、正面を向いたとき、そこには思った通りのヴィラン――襲撃者がいた。

 

「なんだあ? ここにロリが三人……」

「お兄ちゃん、私たちをお嫁さんにしてくれない?♡」

 

 思いっきり、可愛い子ぶった声を発した。極めつけに、小首を傾げて上目遣いをして、グーにした両腕を顎の下に持っていく。

 

 ――秘儀・色仕掛け!!

コイツのエンカウント時の発言がものすごくアホらしかった。ハーレムがなんだとか、ロリがなんだとか。……もし、AFOに命じられたテンコくんのことは本当についでとしか思っていなかったら? つまり、あの発言は私たちを錯乱させるためのものでもなく、本心から言っていたのだとしたら? ……使える。

しかも後述するが、別に錯乱させるための嘘だったとしても、別にいい。

 

「おぉ~!! マジか……ロリハーレムきたー!!!」

 

 え、マジの発言だったんかコイツ。

 

「まあ、俺様って強いしな~」

 

一人称が俺様なことといい、ロリハーレム作る発言といい……うわ~、ドン引き。

 そんなドン引いている私を尻目に、「なのだわ」少女とおしゃべり少女はセリフを言う。

 

「でもお兄さん、私たちを攻撃したり、でぃーぶいしたりしないよね? なのだわ」

「しねえよ!」

 

 そのセリフを聞いて、おしゃべり少女はエサが糸に引っかかった蜘蛛のような笑みを浮かべた。顎を引いた妖艶な笑みだ。彼女曰く、こちらが本性――個性障害の一端だそうだ。本当は、いろんな人を支配したくて堪らないらしい。

 

「じゃあ……お兄さんは、その場から動けないね」

「は?」

 

 おしゃべり少女――コーデリアの個性は、論理的じゃない決めつけによって、相手の動きを縛ることができる。しかし、予め彼女の個性を警戒していると、効果は薄まる。

 そう、私たちはお兄さん――襲撃者を嵌めた。警戒心を薄れさせて、子供の戯言と思わせるために。

 

「今なのだわ!!」

 

 「なのだわ」少女がそう叫ぶと同時に、襲撃者側の視界が埋まるほどの花吹雪を掌から出した。

 

「ぐわっ!! お前ら……俺様を嵌めたな?!」

 

 よしよし。反応からして、襲撃者は私たち――公安チルドレンの個性を知らない!!

 

 「なのだわ」少女の合図に、控えていた孤児たちが扉を蹴破る勢いで出てくる。

 

「おらあ!! 行くぞ!!」

「「「おう!!!」」」

 

 まず切り込み隊長の双子が、倉庫に置いてあった六法全書を鈍器として両手で持ち、男に殴りかかる。

 

「クソガキどもが……!! 個性耐性プラス5、筋力プラス2!!」

 

 しかし、テンコくんの言っていたとおり、男は「プラスがうんたら」と言った。そしてなんと、おしゃべり少女の個性を破って見せた。動いたのだ。

 

 ええっ?! どんな個性よ……!!ただの強化系なら、個性を防ぐことはできないはず。……転生者か?

 

 だがあくまでも、双子の動きは錯乱。双子は公安で「偵察用ヒーロー」としての教育を受けているようだ。偵察隊は生きて情報を持って帰ることに価値がある。つまり、回避がとても得意と言う事。

 

「ちょこまか動きやがって……!! 敏捷プラス6!!」

「ぐっ」

「カズマ!!」

 

 男はまた、個性発動時の呪文を唱えた。その結果、双子の片割れが、男に捕まってしまった……!! だがしかし。転生者疑惑のあるヴィランの頬を、赤い羽根が掠めた。掠めたところから血が流れる。

 

「ッ!! チッ!!」

 

 遠くの方から、ホークスくんが援護射撃をしてくれる。男はバランスを崩し、双子の片割れを放さざるを得なかった。

その刹那……音が止まる。背高少女の個性:静寂だ。これで、襲撃者に気配を勘付かれるの一つの情報を失くした。

 

 しかも、完全にはおしゃべり少女の個性は抜けていないようで、男の動きは鈍めだ。その隙を突いて、音もたてずに、彼が男に触れた。

 

 スケベ美少年だ。男の脚に巻き付いて、個性:吸収を使用した。

 

 無音の世界で、男はもがき苦しむ。襲撃者は彼を引き剝がそうと、脚を振る。だがスケベ美少年は、個性の酷使で顔が真っ赤になるまで彼の脚にしがみついていた。

 

「ごめん、私じゃここまでが限界!!」

 

 背高少女が叫んだ。途端、世界に音が戻ってくる。

 

「十分ナイスだよ!!」

 

 男は、ハッとして私のいるところを見た。それは……背後だった。

 私は高く飛び上がっていた。

 

「ハルキくん、離れて!!」

 

 スケベ美少年に、男から離れるように言う。慌てて、彼は飛びのいた。

 

『怪力』プラス『炎』。

 

本当は、『筋骨発条化』プラス『瞬発力×4』プラス『膂力増強×3』プラス『増殖』プラス『肥大化』プラス『鋲』プラス『エアウォーク』プラス『槍骨』とかできたらテンション上がるんだけど、仕方ないよね。

 

「ロリコン野郎、シチューの仇だ!! お前を殴る!!」

 

 ファイアーパンチ!! 私は首めがけて放った。

 

「おらァァ!!!」

「ぐああっ!!」

 

 じゅう……と、男の肌が焼ける音がすると同時に、男は壁へと激突した。そして、ピクピクと痙攣している。

 

「やったな!!」

「うぇーい!!」

「テディ、流石だ!!」

「ありがとう、みんな」

 

 駆け寄ってきたチルドレンとハイタッチを交わしていく。すっかり打ち上げムードだ。

 

「クソが……!」

 

 だが……。

 

「……筋力、回避率、タフネス、敏捷、運、個性耐性。オールステータス、セブン!!!」

 

 男は、まだ意識があった。そう宣った後、のそりと起きあがる。

 そうして今までの雰囲気と、明らかに違うオーラを纏い始めた。

 

「なにこれ……?!」

「ふはははは……俺様の本気を出させるとは、やるじゃねえか……。お前ら全員死ぬけどなあ!!」

 

 私たちは身構える。背中がゾゾゾってしている。命の危険を、本能的に感じているのだ。

 どうしよう、どうしよう。子供にできることなんて、やはりたかが知れているのか……?!

 

 そのとき。

 

「フンッ!!」

「おわーッ!!?」

 

 金色の巨体が、ソイツを吹っ飛ばした。

 

「もう大丈夫だ!!」

 

 襲撃者を見ると、ぴくりとも動かなくなっている。

 

「私が、来た!!!」

 

「は、あはは……ホントに来ちゃったよ」

 

 つまり、先生たちがそれくらいヤバいと判断したヴィラン相手に、私たちは戦っていたのだ。パネエな。

 彼は、こっちを見て腰に手を当て、太陽のようにニカリと笑う。

 

「オールマイト!!!」

 

 

 結局あの後。

 

「オールマイト! 助けてくれてありがとう!」

「あの……俺、ファンです!!」

「サイン頂戴!」

 

 オールマイトにチルドレンが集まっていた。ナンバーワンヒーローはというと、「はっはっはっ、順番にね!」と言ってファンサービスをしていた。

 その後方で、他の公安直属ヒーローたちが、公安職員と共に後処理をしている。あ、その中にサー・ナイトアイもいる! そっか、まだオールマイトと喧嘩別れしていないからか。

 転生者疑惑のある襲撃者を見ると、護送車の中の、拘束具のメイデンに入れられていた。

 

 

「……テンコ、オールマイト好きなの?」

 

 横から声がする。見ると、もうなんだかお馴染みの風景になりつつある、テンコくんとホークスくんだった。

 

「う、うん……!!」

「ふーん、握手してくれば?」

「えっ、行ってみようかな……?!」

 

 テンコくんは、そわそわとした様子でオールマイトに近づいて行った。

 

「握手? もちろんいいよ!」

「わあ~!」

 

 テンコくんの両手は、中指と人差し指だけ布のついた手袋をつけている。オールマイトは、そんな彼の手を優しく握っている。

 

「なんだか冷めた態度だね、ホークスくん」

 

 私がそう言うと、ホークスくんは「そりゃ……」と言って懐からエンデヴァー人形を取り出した。

 

「俺はエンデヴァーの方が好きだし」

「そっかあ~」

 

 本当に好きねえ。微笑ましいわ。

 

 

 

 

 襲撃者の名前は、郷間 真一。個性:『傲慢』。筋力、回避率、タフネス、敏捷、運、個性耐性。その六つのステータスを、ゼロから七の段階まで強化することができる。ただし、オールステータスを七にすると、段々と理性が薄れて獣と化する。

 

 彼は一般家庭出身だ。しかし、中学に上がる前に親に勘当されてしまった。理由は、金・女・力への欲求が異常だったから。本能のままに生きている彼には、両親も手をつけられなくなっていた。そのまま、彼は道を踏み外し、裏社会で有名な殺し屋ヴィランとなった。

 

 そんな彼の今回の依頼者は、AFOである可能性が高いという。

 

 公安直営孤児院の孤児は、基本外に出られない。しかし、私は委員長の命令で今日、特別に外にいた。――タルタロスでの面会だ。部屋は真っ白で、窓一つない。

 透明な板の向こう側にいる傲慢――郷間さんは、部屋に入ってきたときは緊張した顔だったが、私の姿を見るなりニヤニヤし始めた。

 

「よお、元気か? ロリっ娘」

「彼女はおかげ様で元気だよ」

 

 委員長が私の代わりに口を開く。

 

「お前には訊いてねえよ」

 

 郷間さんはそう言うなり、ムスリとした。感情表現豊かだな。しかし、委員長は気にせず話し続ける。

 

「君、AFOと繋がっていたでしょ」

「はん、誰が口を割るか」

「それは、AFOからのペナルティがあるからかい?」

「単にお前らが気に入らないからだ」

 

 どうやら、AFOによって個性因子に爆弾を仕込まれたりはしていないらしい。

 そこで、委員長が爆弾発言をした。

 

「君は前世からの記憶があるようだね?」

「……! それをどこで知って、」

「いいや、ただのハッタリだよ」

「……チッ」

「ここでの会話は聞かれているが、看守たちには秘匿命令を出すから安心してほしい。ああ、そうだ。この娘、テディ・リリアという名前なんだけど。リリアも前世の記憶があってね」

「軽率に個人情報バラしてくやん」

「AFOに関する情報を全て吐いたら、君の話相手としてリリアを月に一度向かわせよう」

「エッ」

 

 そんなこと私、全く事前に聞かされていなかったんだが。

 

「チッ、そういうことなら、しゃーねーな!!」

 

 そう言って、傲慢は身を乗り出した。

え、今の条件でいいの?

 

「いいか、まずAFOは転生者……チート級の個性を持つ七人の存在を知っている」

「ええっ?!」

「俺が話したからな」

「お前かい」

「うん、続けて」

 

 委員長が続きを促す。

 

「だから、次にアイツが個性を狙うとすれば、転生者なんじゃないかと思うんだよな」

 

 意外と、傲慢は頭がキレるらしかった。委員長も「そうだね」と頷いている。

 その後も、委員長による傲慢への尋問は続いた。

 

 タルタロスからの帰りの車の中で、私は委員長の隣の席に座っていた。

 

「ねえ、委員長~。傲慢さんとの交換条件について私全然、聞かされてなかったんだけどー」

「ああ、これは君へのペナルティだよ。勝手に他の子供たちに個性行使と戦闘をそそのかした、ね」

「ウッ」

 

 確かに、私はあの時やらかしていたと言えよう。実際に、オールマイトが帰った後に、私先生たちに滅茶苦茶怒られたし。ニッコリと笑う委員長から目を逸らした。

 

 多分、この後委員長は「傲慢、怠惰、暴食」以外の転生者を探すんだろう。見つかると良いね。……もしかして、私AFOの囮にされたりするんかな?

 

 そして一か月後約束通り、私はタルタロスの面会に来ていた。

 

「ハーッ、はっはっはっ!! 待っていたぞ、リリアちゃん! 」

「私の名前、よく覚えてるよね……」

「当たり前だ! お前がいない間、獄中でナマモノ創作していたからなあ!!」

「そういうのって本人に言っちゃ駄目だと思う」

 

この人、一人でも楽しそうだな。

 

「ってかアレ? タルタロスってPCとか持ってこれるんだっけ?」

 

 今の時代、アナログで色々創作するには大変である。そもそも、タルタロスに紙とペンすら持ち込めるのか?

 

「全部脳内創作だ!!」

「う、うーん。そっか」

「暇すぎてな。ナマモノ創作の他に、異世界転生した経験を生かして、異世界系一次創作も考えた! 第一章から語るから、聞いてくれ!!」

「ええー、まあいいけどさ」

 

 彼の妄想はまあまあ、なろう系と揶揄されるものだったと思う。だがしかし。

 

「その場には血痕が遺されていた……というところで第一章完結だ」

「え……おもろ」

 

 複雑に絡み合う緻密な世界観とミステリー要素。そのうえに立つ魅力的なキャラたち(男女比でいうと女多め)。女の私でも許せるぐらいキャラを掘り下げた上に成り立つハーレムと、胸キュンを兼ね備えた恋愛要素。え、めっちゃ面白い。

 

「本当か?!」

「うん。世界観も展開もキャラも魅力的だと思う」

「よっしゃー!!」

「貴方にこんな才能があったとは思わなかった」

 

 そう言うと、彼は切なげな笑みを浮かべた。大口を開けて「ハーッ、はっはっはっ!!」と笑っているような男から出ることは、想像つかない表情だった。

 

「前世では、ラノベ作家を目指していたからな。……その合間に、好きなヒロアカの二次創作を書いていたりもしていた。公募に受かったところでトラ転だよ」

「そっか……」

 

 時は、巻き戻せない。いくら私たちが「前世に戻して」と願っても、それは無理な話なのだ。

 委員長が言っていた。

 

『きっと、彼の強すぎる欲求も、神からの障害なんだろうね』

 

この人も、私みたいに個性障害に振り回されたのだろう。そして、運が悪かった。だからここ……タルタロスにいる。

 

「それで、頼みがあるんだ。リリアちゃん」

 

 真剣な表情で彼は切り出す。知らず、私は心を整えるために息をのんだ。

 なんだろう、外にいる大切な人への言付けとかだろうか。

 ――そして、しばらくしてから、彼は口を開く。

 

 

 

「結婚してッ……!!」

 

 してッ、してッ、してッ、してッ、してッ……!!!(エコー)

 

 静かな面会室に、その声はよく響いた。

 管制室の看守も「コイツは何を言っているんだ」と呆れたであろう。

 

「お断りします」

 

 幼女相手に何言ってんだこの人。

 先ほどとの温度差が凄い。寒暖差でグッピーが死ぬわ。

 

 

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