悪食のヴェスタリヌ ~ヒーロー公安委員長と始めるヒロアカ生活~   作:積み木紫苑

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VS 兄

 

 リリアという存在により、爆発した燈矢の本音。見えないように隠してきたものを、突き付けられた。

 

『俺は……俺は何のために……』

 

燈矢の、そのか細い声を反芻する。すると、後ろに気配を感じる。

 

「……炎司さん。燈矢とリリアちゃんが外に飛び出していきましたけど……。……。……もう一度、燈矢ときちんと話合ってはどうですか?」

 

 静かに、でもその声には確かな決意が込められていた。冷が呼びかけると、燈矢の部屋で立ち尽くしていたエンデヴァー――炎司は、ふと振り返った。

 

「……冷……」

 

彼の瞳には、後悔と罪悪感があった。自分はそれでも突き進むと決めたはずなのに何を揺れているのだろう、と炎司は内心自嘲した。冷は、その彼の沈黙を感じ取りながらも、話し続けた。

 

「燈矢は、あの子はずっと、ずっと、誰かに求められたかったんです。あなたに……」

 

 炎司は一瞬息を詰まらせる。それから黙って冷の言葉を聞いていたが、どこか遠くを見つめるような眼差しをしていた。

自分はヒーローの世界しか見せられない。燈矢を「ヒーロー」に近づけるのは、とても危険だ。だから、遠ざけた。見ないようにした。自分がそもそも悪影響を及ぼすから。

だが……。

 

「今からでも、遅くないと信じています。……もう一度、家族として向き合いませんか? 言葉を交わすのが難しいのなら、どうか抱きしめてあげてください」

 

 冷の言葉には決して揺るがない決心が感じられた。自己保身は一ミリも無い、子への、母親としての精一杯の愛だ。その真摯な想いが、彼女自身を突き動かしている。

 

『いいですか? ここが分岐点ですからね!!』

 

 リリアの言葉を思い出す。……どこか、天啓のように感じられた。

炎司は息をつき、無言でうなずいた。深く考え込むようにその場で瞳を閉じると、やがて静かに目を開いた。

 

「……ああ」

 

 炎司は家族を抱きしめるために、瀬古社岳へと向かう覚悟を決めた。

 

 

前回のあらすじ・燈矢くんと瀬古社岳で殴り合いしていたら、AFOがやってきた。

 

エンデヴァーさんは?!

 

てか、本当になんで? 来るとしても五年後の、瀬古社岳の山火事のときだよね? なんで今?

 

「僕の友達がね、教えてくれたんだ。君のこと」

 

 傲慢さんが「本気」を出した時以上の気迫が私に迫る。ゾゾッとするのが止まらない。私は燈矢くんから一旦退いて、彼の手を掴んで起こした。燈矢くんは、ひたすら困惑している。

 

「な、なあ。この人誰?」

「……ヤバい人。早くここから逃げたほうがいい」

「酷いなあ、僕はただの親切なおじさんだぜ」

 

 小声で言葉を交わし合ったはずなのに、バッチリ聞こえているようだ。奪った個性の一つだろうか。

 

「上須田りぬちゃん。君は公安会長の娘だそうだね」

「……?!」

「訳あって一般家庭に預けられた三年後に、義理の両親を殺害。そのまま実の父親のもとへと戻ってきた」

「え、ちが」

 

 私は混乱した。一つは、AFOが私の本名とおおまかな経緯を知っていたから。……もう一つは、なぜか委員長の娘ということにされていた、から。

 

違いますけど?!

 

 あー、もう! AFOがそう話す意味がわからん!! 時系列は前倒しだけど原作通り、コイツの目的は燈矢くんってことでいいのかな?!

 

 冷静になれ私。第一の目的は、逃げること。だってさ、AFOって普通に強いもん。それに、攻撃したとしてもAFOは『衝撃反転』とか『反射』とかいうバリアの上位互換個性を持っている。私たち、それで戦闘不能になって拉致られて、何されるかわかったもんじゃない。

 

 よし、方針は定まった。

 さっきまでの私と同じように、「わけわからん」といった顔の燈矢くんの手を引き、AFOに背を向けて走り出した。あらかじめ、私たちの背中側に空気壁のバリアを貼っておく。

 

「うーん、そうか。僕はデマを掴まされたのか」

 

 『噓発見器』で、私の言っていることが本当なのがわかったのだろう。AFOは言った。デマ……? つまり、AFOに「私が委員長の娘」と伝えた人がいるってこと? 誰なんだ? ……いや、そんなことを気にしている暇はない。急いで足を動かす。

 

「『電波』プラス『押し出す』プラス『重荷』」

 

――電波に質量を負荷、それを手のひらから押し出すゆえの衝撃波……!!――

 

 私の空気壁バリアは、使い始めて日が浅い。

 

「うっ?!」

 

 空気壁が防壁になってはくれたものの、完全に相殺しきれなかった。余波で、前の方へと燈矢くんと共に吹っ飛ぶ。

 そこは、数メートルくらいの小さな崖だった。

 咄嗟に燈矢くんを右手で抱き寄せ、私は仰向けに落っこちる。そして、落ちる直前、左手でバン!と受け身を取った。いたた……左腕折れたな、これ。

 

「いったあ……」

「お、おい、大丈夫かお前」

「左腕折れたかもだけど、平気。それより、隠れよう」

 

 ズキズキ、と腕が痛むのを無視して、私たちは入り組んだ森を歩く。

 燈矢くんは、下を向きながら私よりも遅い歩き方をしていた。

 

「燈矢くん、早く歩かないと。ハリーアップ」

 

 そう急かすと、顔をあげた。

 

「うっせえな。つか、どこに逃げるんだよ」

「麓まで降りられたら一番なんだけど。燈矢くん私より土地勘あるよね」

「当たり前だろ」

「なんか……近道とか無い?」

「……この崖の下は来た事ないから知らねえ」

「うーん、そっか。 ……!」

 

 やばい。私の気配察知が知らせた。エアウォークか何かの個性で、さきほどの気配が近づいてきている……!!

 

「燈矢くん、さっきの人来るよ!」

「はっ?!」

「早く隠れよう!! ッ?!」

 

 咄嗟に、燈矢くんと私の前に空気壁を張る。

 その瞬間、視界が一気に開けた。

 

「見つけた」

 

刃のような黒い触手状の、AFOの個性:鋲突で、木々がなぎ倒されたのだ。

 そのまま、三又に別れた鋲突は私たちを狙う。

 一か八かだけど……!!

 私は『俊足』で燈矢くんの前に出て後ろに突き飛ばし、『炎』プラス『旋風』プラス『発火物質』で、鋲突に火をつけた。鋲突は変形させた腕だ、2000度で焼けばさすがに怯むはず!!

 しかし、焼けた鋲突はそれでも止まらない。

 

「ぐはっ」

「リ……リリア!!!」

 

 燈矢くんが叫ぶ。今まで「そこのブス」とかいう呼び方だったのに、ようやく名前を呼んでくれたな。呼び捨てだけど。

私はお腹を切り裂かれた。内臓、大丈夫かな。大丈夫だといいんだけど。お腹を見ると、傷口が真っ赤で中身がどうなっているのかは見えない。無事でありますように。

 

「能力の複数持ち……脳無の実験は殻木くんを取り押さえられて破棄された。公安が内部で密かにその研究を継続させていたのか? 」

 

 AFOは、こちらに近づいてきながらつぶやいた。

 

「それにしてはよくできた精密な能無だ」

 

 郷間真一との取引場にて。その男は、酒のせいか、それとも尊大で傲慢な性格のせいか、よく喋った。

 

「転生者」

「そう! 俺様は実は前世で、神にチート個性を持たされた男なんだぜ?」

 

 いきなり何を言い始めるかと思いきや。面白い冗談だ、と思って、少し話を聞いてやろうと思う。

 

「じゃあ、君の個性も神からのギフトということなのか」

「そうだ! 俺様の個性はパラメーター操作! ステータスオープン! なぁんてできはしないし、鑑定スキルなんて持っちゃいないが、これだけで成り上がってきた」

「へえ」

 

 AFOは、ワイングラスに口をつけて一口中に含んだ。急にゲームやコミックのような話をし始めたな。……いや、そもそもこの世界がコミックの世界のようなものか。

 

「確か……俺の他にこの世界に六人ぐらい転生させられているらしいぜ」

「おや、なぜそう思うんだい?」

「思うも何も、見たんだよ! 自称神と会った時、俺は火の玉になっていた。そこに、俺の他に六つの火の玉がウヨウヨしていたんだよ」

「火の玉ねえ」

「そいつらは、ヒロアカ読者っていう共通点があるらしくてさー」

「ヒロアカ読者?」

「おっと、言い忘れたな。……この世界は、『僕のヒーローアカデミア』っていう漫画……コミックの世界なんだ」

「はあ?」

 

 思わず、間抜けな声が出てしまう。

 

「がははは!! なんだよAFO、その顔は!! ラスボス様がする顔にしちゃ可愛すぎるぜ!」

「僕がラスボス……」

「そうだぜ、お前はラスボスだ。ふぅ、良いワインだったぜ。っと、個性耐性プラス5、敏捷プラス7、タフネスプラス7、筋力プラス7」

 

 ここはコミックの世界。転生者は七人。そして、己の計画をことごとく潰し、殻木博士すらをも何処から嗅ぎつけたのか、取り押さえたアイツは……。

 

「ああ、なるほどね……」

 

 現ヒーロー公安委員会会長。

彼は、転生者だ。

 郷間真一に、詳しく『ヒロアカ』とやらの話を聞かなくては。そう思い、彼の首筋に鋲突を当てようとしたとき。

 

「それじゃ、アデュー!!」

 

 瞬く間に窓辺に移動し、AFOの依頼金が入ったスーツケース片手に、彼は高層ビルの窓ガラスを突き破って落下した。

 どいつもこいつも。

 そんな回想をしながら、AFOは目の前の出血多量の幼女に向き直る。

 自分の娘に脳無改造か。いや会長の娘というのは、違うんだったけか。しかし転生者とやらは、悪趣味だな。いや、いいか。だってこれから彼女の記憶を消して「教育」して、僕の手駒にするんだから。多芸多才なほうが良い。

 

 

「リリア!! おい!!」

「燈矢く……君だけでもいいから、逃げて……」

 

 私のそばに駆け寄り、険しい表情をする燈矢くん。しかし、そんな私たちに構わず、AFOは更なる個性の使用をした。

 

「『粘着糸』プラス『飛沫拡散』プラス『空間配置操作』プラス『電流操作』」

 

 そう唱えた直後、白いナニカが私たちの方へと飛んでくる。

 

「何だこれ?!」

 

 燈矢くんと私周辺に付着したそれは、ベタベタとしていた。鳥もちみたいなものだろう。燈矢くんが腕についたソレを引っぺがそうとするも、指が捕まってしまう。

 そして、AFOが指をパチンと鳴らした。

 

「あがああああああああああ!!!」

 

 燈矢くんと私に、電流が流れた。

 痛い。左腕もお腹も痛いのに、今度は全身がマジ痛い。公安の研究並みに痛い。いや、ヤバいことやってんな公安も。

 そうだ、私は人を襲わないための訓練などで電流に耐性があるからいいものの、こんなものに耐性の無い燈矢くんは大変だろう。叫び続けている燈矢くんに手を向けて、五指から『水鉄砲』を最大出力で使う。せめて、水で電流の伝導を弱めなくては。

 

「ハハハ、無駄な足搔きだねえ」

 

 そう言ってゆっくり歩いてくるAFO。クソ……!!

 だがしかし。

 

「……俺の息子たちに、何をしている。ヴィランめ」

 

 私たちの後方から、声が聞こえる。その刹那、温度が急上昇した。

 

「赫灼熱拳! ジェットバーン!!!」

 

「エン……デヴァ……さん!!」

「お、お父……さん!!!」

 

 エンデヴァーさんが、ようやくやってきたのだ。良かった、来てくれた……!!

 炎を怒りのように燃え上がらせた彼は、膝裏や足から炎を出して推進力にし、拳を炎に纏わせて攻撃した。今日は彼は非番だ。私服の長袖のシャツが、対炎性なんだろうけど、わずかに焦げている。それだけの火力ということだ。

 

「おっと」

 

 しかし、AFOはバリアの個性を張り、エンデヴァーさんの攻撃を防いだ。エンデヴァーさんの拳が、黄色の波紋が出る壁に阻まれていた。AFOの顔にあと数センチというところなのに!

 

 すると、空気がズン、と重くなる。精神的なものではない、物理的に重い。どうやら、AFOの個性のようだった。エンデヴァーさんが、急な負荷に対して前かがみに耐性が崩れる。

 

「?!」

 

重力でひざを折らせたところで、AFOがスピード増強系でエンデヴァーの背後に回り込み。エンデヴァーが振り返ろうとしたところに、右頬にストレートを入れた。

 

「ぐっ……!!」

「頑、張れ……!! お父さん……!! 負けるなよ、そんな化け物なんかに……!!」

 

 燈矢くんが、祈るようにつぶやいた。それが聞こえていたのか。

 

「……フンッ!!」

 

エンデヴァーさんの動きが、数舜の間で各段に速くなった。火事場の馬鹿力ってやつか?! 背後からの追撃をかわしつつ、燃え盛った炎の拳をAFOに叩きつけた。

 

――ちなみに、このバトルステージは山の中の森だ。エンデヴァーさんの個性との相性は悪い。下手したら山火事になって、私たちを巻き込んでしまう。だから。

 

彼はAFOの両肩をガシリと掴み、足裏に炎を噴射した。そしてそのまま、上空へと敵を連れ去った。

 

 

――巷で噂される、個性複数持ちの悪の帝王・AFO。もしかしてコイツのことなのか……!? なぜか燈矢とリリアを狙っていた……いや、考えるのは後だ!!

 

エンデヴァーは、飛行機すら飛んでいない遥か上空で、AFOに技を見舞おうとしていた。

 

「プロミネンス、バーン!!!」

 

 エンデヴァーはゼロ距離で、男に火炎を浴びせた。

 

「ア?!!!!!」

 

「熱い」なんていう暇も無く、男は焼けた。……大丈夫だ、流石に息子を襲ったとはいえ、殺してはいない火力だ。

 

一件落着。……かのように思われた。

 

「なんてね」

「?!」

 

 焦げた男の肌は……みるみるうちに、健康な色の肌に戻っていった。赤い瞳が、困惑したエンデヴァーの顔を射抜く。

 

「早めにもらっといてよかったよ、超再生」

 

AFOは、着ていたスーツが燃えて裸になった上半身から、紫色の顔がついた触手を生やす。そして、エンデヴァーの脇腹に噛みついた。

ビリッ。

 

「がッ!!?」

「ゼロ距離で攻撃されたお返しだ。さようなら、エンデヴァー」

 

 エンデヴァーは、そのまま高さ数千メートルから落下する。……はずだった。

 

「っ?! ガッ……!!?」

 

 下からやってきた、目に見えぬ速さの物体が、AFOの喉元を蹴り上げた。そのままAFOの胸を下に蹴り、エアウォークを発動し損ねた彼を地面にした。そしてそのまま、落下していく。

 

「貴……様……」

 

 その、何者かの両腕に抱きかかえられ、横になったエンデヴァーが謎の存在Xを睨んだ。Xは、口を大きく開いて、角度をあげた。

 

「はっーはっはっはっは!! ……会えて嬉しいよ、AFO」

「オール……マイト!!!」

 

 

 数分前。腹から血を流した私はエンデヴァーが駆けつけたことによる安心で、疲労により目を瞑っていた燈矢くんの横で意識を飛ばしそうになっていた。

 

「君たち!! 大丈夫か?! っ、ナイトアイ……!!」

「ああ、救急車を呼ぼう」

 

 若干二名の声で、目が覚める。誰……? 言っていることから、ヴィラン側ではないみたいだけど。ナイトアイ、と呼ばれた人が、向こうで「こちら瀬古社岳、重傷者が二人……」などと電話をしているようだ。ナイトアイって……。

 

「オールマイト……?」

「君は……あの孤児院にいた少女じゃないか」

「なんでここに……?」

「公安会長から、ここに出動するように命令があったのさ」

 

 安心させるように、優しく彼は笑ってくれる。公安会長って、委員長が……? なんで委員長が、ここにAFOが来ることを知っているんだろう。予見していなきゃ、オールマイトとナイトアイをここに行くよう命令しないはず。もしかして、私って普通にAFOの囮に使われた感じですかね? なんか、AFOには「転生者がいるぞ」というよりは「委員長の実の娘がいるぞ」という謎の情報を掴ませていたけど。

 

「AFO……ヴィランはどこに?」

 

 あ、喋るのもしんどくなってきた。オールマイトが原作開始時点のように大怪我しないかという心配はあるけど……一応安心したら、痛みが増してきた。

その代わり無言で私は、天を指した。

 

「わかった、ありがとう。よく頑張ったね! あとは安心してくれ」

 

 そうして、オールマイトは先ほど地上でエンデヴァーさんとAFOが交戦していた位置に向かい(開けた場所だからだろう)、思いっきり跳躍して、空を跳んだ。

 

 電話が終わったのであろうナイトアイが寄ってくる。ヒーローが戦いに子供を巻き込むわけにはいかない。満身創痍の燈矢くんと私を抱えて、麓まで駆けだし始めた。

 

 

 踏みつけられたAFOと、エンデヴァーを抱えたオールマイトは、瀬古社岳の木々が伐採された先ほどの開けた場所に、空から戻ってきていた。その三人以外は、おそらく自然の勘で危機を察知したのであろう、雀どころか虫一匹いない。倒れていた子供たちの避難は、ナイトアイがやってくれた。

 

「ああ、君は悍ましいよ、オールマイト。僕の『友達』をどんどん壊した」

「壊した? いいや、あるべきところに送っただけだ」

 

 あるべきところ、とは刑務所などのことである。

 オールマイトは横抱きにしたエンデヴァーを、優しく地面におろした。

 

ヒュンッ。

 

 その隙にオールマイトの鋲突が飛んでくるが、素早く力強いパンチ一発で迎撃する。

 そのとき、熱烈な火炎放射がAFOの左側を燃やした。すぐさま、AFOは再生するが。

 

「……貴様と共闘か、不本意だが……相手が相手だ。仕方ない」

「……立てるのかい?」

 

 オールマイトが前を、AFOの方を向きながら問う。後ろから立ち上がったエンデヴァーは返す。

 

「舐めるな」

 

自分にしてはやけに冷静だと自覚していた。息子を虐げた男。自分は、さっさとこの男を倒して息子を抱きしめなくてはいけない。その予定と静かな怒りが、エンデヴァーを立たせる原動力となっていた。

口から出た血を袖で拭きながら、エンデヴァーは続ける。

 

「奴はお前の言う通り、おそらく個性複数持ちの男・AFOだ。超再生を持っている」

「そうか……厄介だな」

 

――突破するには、脳や中枢神経を攻撃するしかないか。超再生を発動させている、意識そのものを奪う……!! そのためには――

 

「エンデヴァー、」

「わかっている。手加減は無しだろう」

「……ああ」

 

――炎で脳を焼く!! さすれば、意識を奪っている時間をさらに稼げる――

 

(なんて、考えているんだろうね)

 

 AFOは胸中で二人を哂った。

 

(さて、どうしようかな。このままトップツーに背中を見せて尻尾巻いて逃げるのは、僕が誰かが流していないトイレの水を飲むくらいに在り得ない選択肢だ)

 

 オールマイトとエンデヴァーの拳を自分の周辺に到達させないために、AFOは顔のついた触手や鋲突などの飛び道具を使う。だが、二人は間一髪のところでそれを避ける。

 

(オールマイトが引きつけている間に、エンデヴァーの拳――赫灼熱拳が僕の頭蓋を割る。だなんて作戦なのかな。まあ、それが出来てしまうのがこの二人の恐ろしいかもしれないところだ)

 

――『空気を押し出す』プラス『筋骨発条化』プラス『瞬発力×4』プラス『膂力増強×3』……人間空気砲!――

 

 向かってきたオールマイトに対して浴びせる。彼は一キロ先の木々に激突した。

 

「オールマイト!? ッ……糞が! イグナイテッドアロー!!」

 

 オールマイトが吹っ飛んだことに対して動揺しつつも放つエンデヴァーからの炎槍の投擲を、

 

「反射」

 

 個性を使って打ち返す。エンデヴァーは数ミリ顔を避けて事なきを得た。いや、ここは森だ。炭素が多い。瀬古社岳の森に、火が燃え広がっていた。

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

 雄たけびを上げながら、炎を纏いし拳を素早く、AFOの頭蓋に向かって振り上げるエンデヴァー。

 

――バリアを張るのが遅れた――

 

 咄嗟に腕で拳を受け止める。筋肉増強をいくつか使い、熱の伝導を防ぐ。

 しかし、エンデヴァーの目から熱光線が間近で放たれる。が、今度こそAFOはバリアを張る。

 

 されど。

 

「デトロイト! スマッシュ!!!」

――背後に!!――

 

 AFOは片手も筋肉増強して、それを受け止めようとした挙句、衝撃反転を使う。

 

「ぐアッ!!!」

 

 オールマイトの方にダメージがいった。

だが、こちらも風圧で吹き飛ぶ。

 体勢が崩れるAFO。だが、エンデヴァーとオールマイトはそれを見逃さなかった。刹那、互いに目配せをした後、二人は必殺技を出すことにした。

 

「ミズリー!」

「プロミネンス!」

「スマッシュ!!」

「バーン!!」

 

 オールマイトは助走をつけて脳を、エンデヴァーは周囲への被害を考えずに、彼に全身火傷を負わせることを狙う。

 

「ッ!!」

 

 AFOの身体は、破壊された。

 

「おりャアアアアッ!!!」

「うおおおおおおっ!!!」

 

 破壊したからといって油断はできない。

 

 

――脳や心臓がある上半身を……!!――

 

 拳で追撃を見舞うエンデヴァーとオールマイト。……だが、それが失策だった。

 

――『衝撃反転』プラス『反射』――

 

「「ガッ?!」」

「……やれやれ。脳みそと心臓を最小化して、脚へ移動させといて良かった」

 

 怪我を負ったエンデヴァーとオールマイトは、呻きつつも立ち上がろうとする。

 エアウォークで、AFOは宙へと浮かんだ。彼の身体はみるみるうちに再生していた。

 

「僕が、汚水を飲まされることになるとはね」

「待て……AFO!!」

 

 返事もせずそのまま、傷跡一つない身体のAFOは空を飛び、どこかへと飛び去った。

 

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