DATE・A・LIVE~再成~   作:Kyontyu

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前回、思いの外コメントをもらいまして、少し驚いてます。
この調子でドンドンいきますよ!


PART2

PART・2

 

 士道は目を覚ました。

 また見知らぬ天井。むくりと起き上がる。白い清潔感あふれる部屋だったが、どこか冷たい雰囲気が漂っている。

 奥には背筋をピンと伸ばす長い夜色の髪の少女が立っていた。

「十、香……?」

 士道は少女に訊ねた。彼女にどこか違和感があったからだ。

「いや、私は厳密には『夜刀神十香』ではない。『水無月潤』だ」

「水無月……」

 士道は必死に記憶を手繰り寄せる。そうだ。彼女は来禅高校に転校してきた十香にそっくりの銀髪の少女だった。だが、少し雰囲気が変わった……?

 よく見ると、大きく開かれた水晶の瞳には赤い環が描かれていた。

「困惑するのも無理はない。だが、今は落ち着いてほしい。直に終わる」

 潤は部屋の出口に歩いていく。

「待ってくれ! 『直に終わる』ってどういうことだよ!? 十香はどうしたんだよ!?」

 潤はそれらの問いに答えないまま、部屋を出て行った。

「一体何が起きてんだよ……!」

 士道はシーツのすそを握りしめた。

 その時、部屋のドアが再び開き、長身の青年が入って来た。

「やぁ、士道君。『この世界』では、初めまして、だね」

 青年はフッ、と微笑んだ。

「誰……?」

 

 

                             ◆◇◆◇◆

 

 

「逃げられたな」

 〈リヴァイアサン〉の艦橋で、ユミと天話は話していた。

「だが、手がかりも掴めた。恐らく、もう一回『扉』を開くつもりだろう。もしそうなったら次こそ、世界は破壊される」

「すまなかったな。私が鍵を守れれば……」

「いや、気に病む事は無い。鍵はそれ相応の人物の元に委ねられる。人間が封じていられるものでは無かった、それだけだ」

「分かってはいるが――」そう言って眼鏡を外して目がしらを押さえる。

「――それよりも、その先の方がむしろ心配だよ。何せ、予測が全くつかないのだからね」

「どちらにせよ。奴らは全て叩き潰す。世界を崩壊させた事を後悔させてやる」

 拳に力を込めた。

 

 格納庫では珍しく眼鏡をかけた真耶がCR-ユニット〈ヴァナルガンドMk.2〉の整備をしていた。

 手元に持ったパッドで、機体の状態を確認しながら微調整を行う。

「まだ調整が終わらないのか」

 一未が声をかけた。真耶は眼鏡を外して答える。

「そうですね。こいつ、なかなかピーキーでいやがりますから」

「確か、搭載できるS-ユニットは、【参番式】だったか?」

「ええ、奴と組むなんて吐き気がしやがりますよ――」吐き捨てるように言った。

「……一未さんは誰とも組まないでいやがりますか?」

 そうだな、と左腕を示す。

「俺にはこれがあるからな」

「……『悪魔』……確かそれで〈プリンセス〉を?」

 一未は首肯した。そしてあの時の事を語り始めた。

 

「『悪く思うな。人間。世界の為だ』」

「『消えろ! 精霊!』」

 そう言って十香を左手の悪魔で握りしめる声は一未では無かった。

「し、シドー……」

 十香は下にいる士道を見下ろした。

 士道が何か叫んだ瞬間、

 

 

 

 十香は、血を撒き散らしながら、潰れた。

 

 

 

 その時、地面、いや、大気が震えた。

 

―――ヴヴヴヴォォォォォォォン!

 

 士道の背中から二対の翼が伸び、大きく広がる。

 地面から夥しい数の土柱が隆起する。

 重力が全て無効になり、土の破片や、はじけた水しぶきが浮かび上がる。

 そして目の前がまばゆい光に包まれたかと思うと、意識を失った。

 

「こうなったのも全て俺の責任だ。最後の決着は、俺が付ける」

 左手で拳を作る。

「……あのバカ兄様」

 たった一人の女の為に世界を滅ぼしかけやがって……

 悔しさと同時に、妬ける。

「私だって、決着つけねーといけねーことがあるんです。それまで、戦い続ける。それが今の私の存在理由です」

「存在理由、か……考えた事も無かったな」

 そう言って、フ、と小さく笑う。

 そして手を振って格納庫から出て行った。

「初めてみやがりました。笑うとこ」

 

 

                             ◆◇◆◇◆

 

 

「誰……?」

 士道は首を傾げる。

「僕は、ソラ・タチバナ。よろしく」

 ソラは士道に手を差し出す。

「ああ、どうも。俺は……って分かってるんでしたよね」

「うん。五河士道君、だよね」

「でも、なんで俺の事を?」

 ソラは再び小さく笑う。

「それは、僕が、『違う世界』から来たからさ」

「違う……?」

「そう。君たちが『隣界』と呼ぶ所だよ」

 『隣界』、精霊がいると呼ばれる異世界。士道もその話は琴里から少し聞いていた。

「空間震とは、隣界からこの世界に来るために作ったワームホールを通り抜けた時に生じる衝撃なんだ」

「……難しいです。ちょっと、分からないです」

 ソロはベッドの横にある椅子に腰かけた。

「まぁ、無理もない。それと、まだ理由を答えてなかったね――僕の世界にも、いたんだよ。五河士道がさ」

「え、俺が!?」

「世界を救う、とか言ってどこかに行ってしまったけどね」

 君と同じだよ、と苦笑する。

「世界を救うって……一体何が」

「聞きたいかい?」 

 そう言ったソラの目からは笑みが消えていた。それほど重要な事が起きたのだろう。

「はい。お願いします」

 士道はしっかりとソラの目を見た。

「……僕らの世界は、『精霊』と呼ばれる生体兵器によって、人類が死滅した世界だ。いずれ君たちの世界もそうなる」

「生体、兵器……」

 ソラは語を続ける。

「精霊とは本来、とある博士によって開発された人工生命体だった。でもその時、その博士は自分の愚に気づいていなかったのさ。彼女は、神にも等しく、悪魔より残酷な事をしたんだ。そして結果、精霊たちは暴走を始め、今に至る」

「そんな……」

 そんな事があったなんて、じゃあ十香も……

 さぁ、とソラが立ちあがる。

「ある人に呼ばれていてね。士道君もだよ」

 

 ソラに押されるがままに、薄暗い施設を進んでいくと、そこには潤が立っていた。

「すまないな。ソラ」

「いや、元々は僕のワガママだからね」

「……そうか。本部が呼んでいる」

「了解。じゃあね、士道君。また会おう」

 ソラは士道に手を振りながら去って行った。潤が士道に向き直る。

「士道。見せたい物がある。君が真実を受け止める覚悟があれば、ついて来てくれ」

 

 潤の後についていくこと数分。二人は古びた頑丈そうなドアの前に立った。潤がドアを開ける。

 

 そこに広がっていたのは、灰色の大地だった。

 

「なんだこれ……」

 さらにその奥には〈フラクシナス〉に突き刺さる〈フラクシナス〉と同じ形の空中艦。

「あれは〈ヘルヘイム〉だ。霊力を得て暴走し始めた〈フラクシナス〉を封印する為に自らを犠牲にして封印したんだ」

 地平線に目を向けると夥しい数の人骨。しかもそれには黒い釘のような物が刺さっていた。

「精霊になりそこなった人間達の成れの果てだ。気にするな。こうならなくてもいずれは死ぬ。そもそも高濃度霊波を浴びれば人間は死ぬのだからな」

「これを、俺が……」

 士道はガクリと膝をつく。

 もしかしたらあの中に、友達がいるかもしれない……

「直接ではなくとも、ある程度は影響しているだろうな」

「………」

「士道。見て欲しいのはこれでは無い」

「?」

 すると、潤がおもむろに自分のシャツのボタンを外し始めた。

「な、ななななな何を!?」

 士道は顔を覆う。

「よく見ろ! 士道!」

 潤に強制的に右腕を引きはがされる。恐る恐る目を開けてみる。すると彼女の鎖骨の下に紫色の宝玉が埋め込まれていた。

「これは……」

 同じような物を見た事があった。

「霊結晶(セフィラ)と呼ばれる結晶体だ。精霊の心臓と言っても過言ではない。私はこれを『強制的』に埋め込まれた」

「一体何故……?」

「自分たちの手駒となる精霊が欲しかったのさ。奴らの目的は精霊と人間の完全なる共生だ。そのためには手段を選ばない。そういう奴らだ」

「奴らって、DEM?」

 いや、と潤は士道を見つめる。二人の間に風が通り抜ける。

「〈ラタトスク機関〉だ」

「――――」

 その時、ピピッと潤の耳に付けられたイヤホンマイクが音を発した。

「はい……了解」

「?」

「士道。〈ラタトスク〉の最高司令官が呼んでいる。すぐ行くぞ」

 潤は士道の手を取って走り始めた。

 一瞬、潤の姿が十香と重なった。士道は自分に言い聞かせるように目を逸らす。

……十香は、もう、いないんだ……

 

 連れて来られた部屋は、薄暗く、奥の方には唯一の光源である青い光で照らされた水槽があった。クラゲがユラユラと漂っている。水槽の手前のデスクに誰かが座っている。シルエットだけでは判断できないが、どこか見覚えのある人物だった。その両横には二人の女性が立っている。

「五河、士道」

 その声は、紛れもなく村雨令音のものだった。

「令音さん? 何してるんですかこんなところで」

「君からの質問は一切受け付けない。君は我々の言う事を聞いていればいい」

 令音は冷たく突き放した。

「一体なんですか! 何がしたいんですか! 俺は何の為にここに来たんですか!」

「指令を説明する――」

 構わず続ける。

「令音さん!」

「――君にやって欲しいのはただ一つ。潤とデートして、デレさせろ」

「!?」

 令音が真剣な空気に似合わぬ言葉を発したので、士道は思わず言葉が詰まる。

 当事者である潤は何も言わなかった。

「君なら、簡単だろう」

「えっ、でも――」

「――以上だ。潤」

「了解」

 潤は再び士道の手を取り、室外へと連れ出した。

「これで人類は救われる。良い意味でも、悪い意味でも」

 何処にいたのか物陰からスッとソラが出てきた。

「そうだな。精霊と、人として生まれた精霊の交合が完遂されれば、人類としての種は滅びるが、新たなる人類が生まれる。それこそが、完全なる共生。我々〈ラタトスク〉が望む未来だ」

「そして、あなたの望みでもある。でしょう?」

 令音は、何も言わなかった。

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