とある五条の無下限呪術   作:助5103

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第一話「無下限使い」

 

20XX年 12月7日午前5時10分36秒

 

その日、日本の某産婦人科にてその男は爆誕する。

 

 

名は、五条悟

 

彼は幼き時に悟った、【ここは“あの時”とは異なる世界】である事を…。それは過去の世で繰り広げた“呪術”の戦いで、五条悟は“一度死んだ”

 

 

だが、再び有象無象の社会で降り立った彼は少年ながらにして唯一無二の異能を発現した。この究極の超常社会では珍しい事ではない。だが、彼が秘めるその力は偶然にも前世と同じ“無下限呪術”と呼ばれる能力だった。

 

 

しかしそれは、能力とあらゆる科学が集約されている完全独立教育研究機関“学園都市”にて、それを認知される事は無かった。

 

 

 

 

 

「______それで、お前が【五条悟】か…?」

 

 

「そうだけど、アンタ誰?」

 

 

 

其は、彼が17の歳月を迎えた事だった。その場所は夜の街にそびえ立つ超高層ビルの屋上でありヒマに明け暮れていた五条悟の前にワインレッドのブレザーを着こなす青年が彼の名を指して確認した。少し冷たい夜風が五条の髪をたなびかせ、その吸い込まれるような繊細で麗しき瞳で一見同い年に見えるその少年“垣根帝督

”を見る。

 

 

 

「これは…」

 

 

「(16のガキとは思えねぇ“眼”をしてやがる…)」

 

「(まるでこの世界の全てを知っているかのような…)」

 

彼は“特別”である。

 

現在存在している“科学”と“魔術”のどちらにも当て嵌まる事のない未知なるその瞳はあらゆる情報を即座に読み取る事が出来る。そこにいる少年の体温やAIM拡散力場の感知、そして内部の奥底を読み取る事でその人間の能力をある程度まで解析する事。その目で可能な事は上記で解説された他にも色々ある。そしてその瞳によって解析を終了した五条悟はお気に入りのぬいぐるみを見つけたかのように無関心な表情から一転、彼に興味を持ち始める

 

 

 

「もしかして、またオレの首目当て?まぁイイけどさぁ負けても泣かないでよ?」

 

 

「…クソガキが、舐めてんじゃねぇぞ」

 

五条悟は生まれながらにしてその身体を多額の賞金を引き換えにその命を狙われる事が幼少期から多々あった。特定の近代魔術師(アドバンスドウィザード)と呼ばれる現代を生きる魔術師に狙われる傾向が多く、神にも等しきその力には多くの魔術組織がその神域にて手を入れようとしていた。しかしそれは絶対的な不可侵領域であり五条悟を屠る者も、又は彼の能力に到達した者は誰一人として存在しない。

 

 

だが、目の前にいる彼は魔術師や魔導士のような雰囲気は感じられず、単なる金目当ての小物だろうと五条は酷く下から目線で見下していた。

 

 

「レベル5は現時点じゃ七人存在する」

 

「だが、その上…その壁を越える“6”の高みに到達した奴は誰もいねぇ」

 

「新たな物質を作る俺ですら…二位止まりだ」

 

 

「それで?何」

 

「テメェはレベル5じゃ収まらねぇ力を持ってる…樹形図の設計者の計算上では“レベル6”に到達出来る奴はお前を含めてたった“二人”だけなんだよ」

 

 

「ったく、聞いてムカつくぜ。そーゆー事なら第二位の俺が“二人目”だと思ったんだがな…」

 

「ふーん」

 

「それで、だ。要するに何が言いてぇかっつーと」

 

「お前の能力は“厄介”過ぎるって事だよ」

 

 

 

彼のその言葉はアレイスター=クロウリーが進める計画を指しており、その目的は「あらゆる位相を破壊して魔術を絶滅させ、人間が位相の生み出す悲劇に振り回されることのない、まっさらな世界を作る」…という事である。それにより、五条悟という存在が必要不可欠でありどんな魔術すらも撃滅させる程の圧倒的力を誇る五条の“能力”はまさしくアレイスターの宿願を叶えるにはうってつけであった。そんな五条が再び授かったその天賦の才は、第二位と己で名指す“垣根”の逆鱗に触れたのだった。

 

計画上では、その垣根と言われるその男はアレイスターの画作する“第一候補”の座を獲得する為に、現在一位の最強能力者“一方通行”の撃破を目論んでいた。しかし、その策略は破綻______五条悟という男が誕生した事でその序列は全てひっくり変えってしまった。

彼は、五条が口にした“無下限”の脅威性をいち早く潰す為こうして現れたのだ

 

 

「んじゃ、ちゃっちゃとやっちゃおうか」

 

「随分と余裕そうだな」

 

「(…成程ね。“未現物質”か)」

 

「(新しい物質の生成なんて、いい能力もってるなぁ。本当に第二位か…?)」

 

五条の“六眼”が体質上特別な物で、無下限の操作補助と能力者の解析を可能とする。具体的には、垣根から発する微弱な“AIM拡散力場”を可視化させ予測している。流石は第二位、と五条は心中で納得する

 

 

「(こいつの能力はまだよくわからねぇ…この学園都市で何故か“使用した実例”がねぇし、その詳細は特にブラックボックス…)」

 

 

「(だが、とてもとは言えないがコイツの能力にはまだそこまでの脅威性は感じられない…)」

 

 

「知ってんなら、おとしなしくした方が身の為だ」

 

 

「だから黙って______」

 

 

「いやいやいや」

 

「勝てる訳ないっしょ、僕に」

 

 

アハハ、と恐らく学園二位の準最強とも言える男に嘲笑を浮かべる五条。このような事は少年自身も初めてである…ただ一人を除けば最強となる自分にここまでの態度と台詞を投げかけらたのは…。故に、まだ高校生というのは柄ってあったからか怒りによって血圧が一気に上昇した。

 

 

「んだァ…そらァ______ッ!!」

 

 

 

バッ、と鳥類の威嚇のように6枚の白の翼を展開した垣根。並の能力者であればこの段階でその次元の違いを痛感し恐怖するが、五条は違う

 

 

「そんな事も出来るんだ」

 

 

 

へー、と五条は彼の能力に興味を示す

 

 

 

その軽薄な態度によって垣根は彼に対して完全なる敵対視を五条に向ける。五条の発現通り、彼の能力は仮想の物質を生成する“未元物質”という能力であり、その能力の常識は現実世界とは大きくかけ離れている。物理法則を無視し、自分だけの独自のルールを作り出す事が出来る垣根は奴がどんな能力であってもそれを突破する事が出来るだろうと考えていた。

 

垣根から放たれる“ソレ”は空を切るように五条に向かって飛んでいく。しかし、直撃した瞬間、その攻撃が“なかったことに”なったような感覚が垣根を襲う。

 

 

 

「あ…?」

 

 

「お」

 

 

「他の奴とは少し違う…少しだけ俺の“無下限”に近づいたかのような…この感覚」

 

 

「面白いね、アンタは少し“強そう”だ」

 

 

「なめんじゃねぇよ…ッ!!」

 

 

 

決してバカにしている訳ではない。実際、五条の言う“無下限”に垣根の能力は少し通用していた。このままでは突破される可能性も少なからずある…

 

 

「オラァっ!」

 

 

垣根は上空で、絶対に辿り着かないであろうその空域で波動砲を生成し五条に殺意を向けたその攻撃を向ける。ゴリゴリ、とビルの屋上は抉られるが、そこに彼の姿はいない

 

 

 

「こっちこっち」

 

 

すでに後ろにいた事は、垣根の頭にはなかった

 

「なんでッ______」

 

 

即座に繰り出される五条の打撃。だがそれはただのパンチではない。深く、そして芯をとらえたその打撃で天空で羽ばたいていた垣根は地面へと叩きつけられる

 

 

「おぇッ…!?」

 

 

「な、なんなんだよ…今のは…ッ!」

 

 

「(何か吸い込まれたような感覚だったッ…!サイコキネシスか…ッ!?いや、そんな能力ゴロゴロいるだろうがッ…あのアレイスターが目標を変える程奴の能力は悉く、そして恐ろしいッ…!)」

 

 

「テメェッ一体なんなんだ!」

 

 

 

「君と僕の間には、無限が存在している」

 

 

「分かるでしょ?無限…決して辿り着く事のない、果てなき概念さ」

 

「それを僕は現実に持って来るだけ」

 

 

緻密な呪力操作、この世界でいう高度な演算能力を持ち合わせる事でその能力の発揮が実現する。その補助として、彼の目が必要不可欠でありそれらを双方授かるのは数百年に一度とされている。

 

 

「……噂じゃ聞いたが、大層な能力だな。アクセラレータと張り合えるとかなんとか…そんなもん戯言だと思ってたが」

 

 

「んなもん、貫いてやるよ」

 

だが無限の概念を前にしても、垣根帝督はあくまで強気な姿勢を崩す事はない。

 

 

「…!」

 

「…へぇ、そういうことね」

 

 

肌が徐々に焼け始めているのを確認した五条は少し驚く。やはりこの男、未知にして無限の可能性を持っているという事か…五条に張りめぐされたニュートラルの“無下限”は無害物質と有害物質に分けてフィルターをかけてある。酸素、光は五条にとって必要不可欠な為“無限”の侵入対象だ。垣根はそれ踏まえて光を利用した物質で五条にダメージを与える。

 

五条は彼を「弱い」と一言向けたが、それは間違いだったと五条は垣根の脅威を体感する。

 

「わかんだろ?言わずもがな…お前の無下限なんざ、所詮はただのハリボテ…」

 

 

勝ちを確信したような薄ら笑いを浮かべる垣根。だがそれははっきりとした誤りである……きっと無下限を打ち破れば、五条は余裕のない表情に変わるだろうと予想していたがそんな事決してなかった。

 

 

「クッソ、こいつ…!」

 

垣根の反応速度を越えるスピードで五条の蹴りを喰らう。その尋常ではないその機動力と破壊規模は明らかに人間の幅を越えている。これは能力によって応用した動きであるのは確かだがその詳しい原理は全く分からない。だが、そんな事はどうでもいい。五条悟は無下限を貫かれても尚、その果敢な攻めを垣根に仕掛けていく。

 

「ちょっと押されてるんじゃない?」

 

「(無下限を突破すりゃ、後は俺のペースに持ってけると思ってたが…)」

 

 

「(能力以前に、コイツ肉弾戦が単純に強え…!)」

 

それは垣根にとって非常に盲点な事実であり、その経験値の差は“未元物質”で対処する事が出来ない。格闘戦は能力者にとってあまり必要性もない技術故に、それに長けた者は多くはない。その弱点が垣根にとって最大の痛手だった。

 

「よっと…っ!」

 

 

「がぁ…ッ!」

 

単純な力では五条を上回る事は叶わない。サンドバッグ状態の垣根はなす術もなくその乱打の餌食となり彼は苦痛の顔を浮かべる。

 

「君みたいに能力に頼った戦い方はざらにいるけどさ、殴り合いにはめっぽう弱いのは知ってるんだよね」

 

 

「分かる?何が人間一番強いって…それはフィジカルなんだよ」

 

「じゃないと、こうして無下限を突破された時に対処出来ないからね」

 

五条は無下限という絶対能力に依存している訳ではない。その慢心さとは裏腹に近接格闘や無限に適応された時の戦いは既に経験している。

そして怠る事なく、彼は肉体の強度を上げ絶え間なく鍛錬を続けていた。

 

五条悟と垣根帝督には、その“差”があった

 

 

「それは君も…同じことなんじゃないかな?」

 

 

「…あぁ?」

 

 

睨みつけたその先に煌々と赤く光る“ソレ”は五条の指先に収束する。

 

 

「“術式反転”【赫】」

 

 

無下限を応用した五条の【赫】…発散のエネルギーに無限を付与したその攻撃は垣根のいる方向に向けて発射される。垣根もその攻撃の危険性にいち早く察知し防御体制に入る

 

 

「ちぃ…ッ!?」

 

 

あの小さな物質から放たれる威力は規格外であり、翼を展開してガードした垣根は間一髪で直撃を避けた。

 

「くたばれやぁッ!」

 

ここで折れる訳にはいかない。これは自分の仕掛けた勝負…あの無下限に対策が出来る以上垣根の勝算は存在する。

 

だが

 

 

「(あたらねぇ!)」

 

 

洗練された無下限の使用によって垣根の斬撃は交わされる。例えそれが即死の攻撃であっても、それをわざわざ当てにくるような相手などいない。避けてしまえば問題はない、と余裕綽々な表情で彼に接近する五条は右手に呪力を込める。

 

 

 

「ちょっと乱暴するよ」

 

 

 

“黒閃”‼︎

 

 

打撃と呪力の衝突が重なる事で生じる黒き雷。

それは彼の威力を大幅に底上げし、もろに食らった垣根は向こうのビルを貫通しまた更に先の建物へと吹っ飛んでいった。五条の打撃のみならず、術式を絡めた打撃である為他の術師とは比べ物にならぬ程の威力…その光景に五条はありゃりゃ、と少し眉をひそめる

 

「ちょっとやり過ぎかな…?」

 

 

「…まぁ、いいか」

 

 

五条は垣根の能力に関して高い興味を示していたが、とはいえこれ以上の戦いは自分にとって不利な状況になる。幸いあの能力であれば五条の黒閃を喰らってもなお生存の可能性は高いだろう。「とりあえず、僕の勝ちだね」と一言吐き捨て、戦場と化した屋内から逃げるように去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

五条家は隠された名門家とも言われ都市伝説として存在の有無が確認されていない程謎に包まれた家系である。それは、“呪術”というロストテクノロジーを保護する為に学園都市から離れた辺境の地に本丸は建てられている。

そして、これは五条悟が垣根を撃退した数日後…贅沢に寛いでいる五条の前に、一人の気弱な男が現れる

 

 

 

「転校ォ?」

 

 

 

「は、はい…どうやら学園都市からの直々の申請らしく、こちらの高校へと移って欲しいとの事で」

 

 

伊地知潔高

 

彼の身の回りを補助するいわば“執事”のような役割を持ち、血筋ではないにしろ唯一五条自身が信頼を寄せている極秘人物の一人である。

彼は、1通の手紙を読むんだ五条に対してか細い声でそう答えた

 

「なんだよそれ…ま、別にイイけどさ」

 

 

「……何か心当たりは?」

 

 

「…ないよ」

 

 

と、いいつつも自分があの第二位とやらを痛めつけた事を覚えていない訳ではない

 

 

「ま、ちょっとガキんちょを軽く捻っただけだよ」

 

 

「(絶対ソレだ)」

 

伊知地は察した。この問題児は何かやらかしたのだと、そしてそれは決して可愛いものではなく相当の事であったと

 

 

「大丈夫だって、別に死にやしてねぇって…多分」

 

 

「た、多分!?多分ですか!?」

 

 

その当たり障りのない発言に不安が更に加速する

 

「あともう一つ…」

 

 

「引越しの手続きも、あちらの方で賄うと…」

 

「はぁ!?住む所も変えなきゃいけないのぉ!?」

 

ガタッ、と悠長に座っていた五条は声を荒げた

 

 

「そ、そのようです…」

 

 

「そんな遠い所でもなさそうだけどなぁー」

 

 

「私もそう思っていますがあの方達の真意が分からなくて…」

 

 

「(どーせ僕の力目当てなんだろうけど)」

 

学園都市は能力開発に注力されたテクノロジーに特化した日本最大の能力発展国だ。そんな彼らにとって五条の能力は喉から手が出る程欲しいものだろう

 

 

「ま、何とかなるか」

 

然程問題ではないと五条はニヤケながら椅子から立ち上がる

 

 

「伊地知」

 

「は、はい?」

 

 

「とりあえず、下見にいこっか」

 

 

「え?」

 

 

「え、ってその学園都市って所だよ」

 

 

「話じゃ、僕みたいな能力者がいるって事でしょ」

 

「だから車回してよ、今」

 

 

 

「…わかりました」

 

 

 

彼が学園都市に訪れれば、きっとただではいかないだろう。ただでさえ問題が絶えないこの男を制御出来る者は長年付き添ってきた伊知地ですらないのだから。しかし、学園都市に来る事によって凶となるか、あるい彼を矯正する存在にもなるかもしれないと伊知地は本心である不安を紛らわそうとそんなどうしようもない期待を胸に抱き車庫へと向かっていった

 

 

 

「面白くなってきたなぁ」

 

 

それは、興味深い玩具を見つけ輝けせる男児のように五条は“学園都市”という未知なる領域に足を突っ込もうとしていた______!

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