五条悟が属する“五条家”は、日本唯一の呪術家系であり彼は当代の主でありほぼワンマンチームとして現在は成り立っている。脳の覚醒が起こっていないだけで術式が刻まれている人間も存在するが、科学による能力開発によって国内の呪術師は年々上昇傾向にある。
五条家はその成り立ちに“科学”という異分子を取り込ませない為に今に至るまでその存在と呪術をひた隠しにしてきた。
しかし、五条悟の問題性によってそれは崩れる事となり学園都市は彼の“無下限呪術”の存在を認知するようになる。
そんな五条悟が現着したのは広大な敷地面積を持つ“学園都市”へと訪れた。学区がそれぞれ切り分けておりとても地図に見ながら探訪するには容易な場所ではない。
「伊地知」
「は、はい…?」
「とりあえず暫くは自由時間ね。午後5時にまたここで集合」
「い、一体どこにいかれるのですか?」
「五条家である事は学園都市から身分を隠している状況ですのであまり目立った行動は…」
釘を刺すような言葉に五条は嫌気をさす
「わかってるよ、何度も言わなくても。」
「ちょっと面白い店がないか遊びに来ただけだから」
伊地知の不安っぷりはあふれるように止まらない。彼が最強といえどこの街は異能が集約する特異地点…そこに保証があるとは思えない
「じゃっ」
素っ気ない言葉で五条は、無下限による圧縮により瞬間移動を行った。こうなった五条は、もう誰にも止められないのだ
「へぇー…ここが学園都市、ねぇ」
上空役500メートルへと座標転移した彼は、途轍もない面積を目の当たりにする。
「上からみると、まるで大きな実験台みたいだな」
規則正しく当分された街々は工業、商業、学業etc…と一つのカテゴリーごとに区切られている。
「とりあえず、まずはあそこに行ってみようかな」
そんな彼が目についたのは第五学区。美味しいお店がないか、五条は次の座標地点に合わせる為に向かった。
そして、無事地上に降り立った五条は辺りを見渡した。学区ごとに纏められてるだけあってよりどりみどりのお店が取り揃っている。
「和菓子とかないかな…?」
そうこうしている内に、五条はある事に気づく
「あ、そういえば…僕ってここの事あまり知らないな…」
「うーん、やっぱり現地の人に聞いた方がいいよなぁ」
なるべくならいい店に短時間で回りたいという我儘な五条はその為に詳しそうな人に聞き込もうとした。そんな時
「もー、なんで取れないのかなぁー…」
そう言いながら自販機の下に探し物があるのか中学生程の女の子が屈んでいた。
「(お…)」
悪ガキの五条はよくない事を思いつく。ここで今徳を積んでおけば、その恩にありつこうという算段だった。実に私利私欲な考えだが、大体なんでも出来る彼の能力に不可能な事はない。大方、小銭が落ちたとかなんかなのだろう
「ちょっと、そこのお姉さん」
「はい?」
「で、でっかー…」
少女はその高身長ぶりに目を丸くさせる。高校生時点で180もある五条の圧迫感に若干気押される。
「もしかして、小銭を落としてしまったとか?」
「…あ、そ、そうですっ!いやぁ〜…なんともないはずなんですけど、これがまた手が届かなくって」
「僕が取ってあげるよ」
クンっ、と五条が人差し指を動かすと小銭が五条を中心にして吸い寄せられていくようにその姿を表した。これは無下限による応用だが、少女はその能力の事は一切知らない為一体何が起こったのか分からなかった
「はい」
「あ、ありがとうございます…」
「どうもー」
「あ、それでさ…ちょっと尋ねたい事があるんだけど…」
「いいですよ!それでお礼になるのなら、なんでも質問して下さい!」
しめた、と良い案内人が出来たと心の中でニヤける五条はその恩に早速ありつける事となった。後に彼はこの学園都市に初めて訪れた人間であると打ち明かす
「成程、今日ここに来たばっかりなんですね!」
「そうなんだよねー。ここって超複雑でさ、地図みても中々分かんない訳」
「私も来て暫く経ちますけど、未だ分かんないんですよねー」
どうやら、暫く住んでいる住人ですらこの街を理解するには長い年月を用する程らしい。
佐天、と言われるこの女の子は見るからに制服らしきものを着ている。
「君、もしかして学生さん?」
「あ、そうですそうです!…あ!」
五条は何か思い出した彼女に顔を向ける。
「ん?」
「お、思い出した…私、行かなきゃならない所があったんです!」
「学校?確かに今丁度9時ごろだし登校時間なのかな」
見た所、彼女は中学生なのか制服を着ていた
「いえ、今日は祝日なので学校はありせんが…それはとてもとても重要な事で…!」
五条はせっかくの縁という事でその“重要な事”について行った。そして着いたのは______
「________って、これが重要な事?」
「はい!はぁ〜、良かったぁ〜…!」
彼女が欲しかったのは小さいアクリルキーホルダーただ一個…特に物凄い貴重品と言われればそんな物ではなく可愛らしいカエルがデフォルメされたいかにも愛嬌のあるキーホルダーである。
「そのカエルの奴がそんなに欲しかったの?」
「私っていうか、これはある人に頼まれたんです。どうしても欲しいから代わりに買ってきて欲しいって」
「そんなに売れてるんだねぇ」
意外にも、こういったグッズは殆どど“SOLDOUT”と表記されておりどうやらこの街ではこのキャラクターは中々の人気を持っているらしい
「結構人気なんですよ、これ」
と、意気揚々に話していたが五条の話が途中であった事を思い出す
「あ、すみません…話ほっぽりだしちゃって。」
「あー、いいよいいよ。話ながら歩こうか」
しかし、そんな彼には気になる事が一つあった
「(今思ったけど、この子は祝日なのに制服着てるのか…?なーんか変なの)」
この学園では基本的に生徒達のみが殆どであり、周りを見れば制服を着用した人間がちらほらいる。そういう制度なのかは分からない
「(って、人の事言えなかったわ)」
と、呪術師だった時を思い出した五条は高専でも常に制服だった事に気づく。それと同じようにこの街では普通な事なのだろう。それから彼女からは学園都市の事について幾つか説明をしてもらった。
その一つは学園都市における治安維持組織“風紀委員”について…生徒(能力者)によって形成され、原則として校内を管轄とする。風紀委員になるためには九枚の契約書にサインして、十三種の適正試験と4ヶ月に及ぶ研修を突破しなければならない。つまりそこに所属しているのは軒並みエリートという事になる。五条の“呪術師”のような役目がこの街にもあるらしい
「へぇー、学生がねぇ…立派じゃないか」
「やっぱりそう思いますよね!私も最初来た時はびっくりしましたよ、中には私と同じ中学生の人達で優秀でカッコいい人達が一杯いるんですから」
「その口ぶりからして、その子達に強く憧れているんだね」
「はい、勿論です!」
「だからこそ、憧れちゃうものなんですよね。強くて聡い人達が私の目の前にいるので」
「強くて、聡い…か」
彼女は能力を持たない“無能力者”と呼ばれる人間らしく、それ故に能力社会であるこの街にとってそれは“腫れ物扱い”をされてしまう立場であった。だが、そんな中でも“強い人間”に対して深い想いが彼女の中にはある
「実は、恥ずかしながらそんな強い思いがあってか前にやらかしちゃった事があって」
「幻想御手…これ、知ってますか?」
能力のレベルを簡単に引き上げる事が出来る道具であり、どこかの学者が残した論文だとか、料理のレシピだとかその正体については複数の噂話がある。そんなシステムの正体はその正体は共感覚性を利用して使用者の脳波に干渉する音声ファイルで、それをきっかけに彼女は巨大な騒動に巻き込まれる事となった。
「正直言うと、その時の私は力がない事がコンプレックスだったんです…人を助けたいという気持ちがあっても力が無ければしたい事も出来ないんだって、風紀委員の人達を見てそう思ったんです」
「でも…」
「でも?」
「もう、いいんです。私、諦めんたんで」
「例え超能力が無くても…人の為になれる方法はいくらでもあるって先輩方に教えてくれたのから!」
どうやら、彼女の悩みはもう解消されてらしい。いや、「事実を受け止めた」というのが正しいだろう。
「青いねぇ」
かつての生徒と無意識に重ねた五条は、そんな淡い青春を感じ小さくそう呟いた。
「はい?」
「いーや、これは独り言」
「…なんか変な話しちゃいましたね」
「そんな事ないさ、大事な事に気づいたってワケなんだよね」
「はい…あっ」
電話が鳴り響いたの佐天は確認し「ちょっとすみません」と、送られたメールらしきものを確認する。
「ごめんなさい!ちょっとこの後用事が出来たので、失礼しますね!」
どうやら、誰かに呼び出しをくらったのだろう。まぁ、彼女からの話で大体の仕組みは分かった。後は追々知っていければ良いだろう
「では!」
「ありがとねー、付き合ってくれて」
「こちらこそ!」と、爽やかな笑顔をこちらに向いて商店街の道の向こうへと消えていった。この世界は良くも悪くも人間は能力によって大きな影響を与えている。“風紀委員”や“幻想御手”も、全ての根源はその能力にある…まるで大きな目的の為に何か試されているような…五条はこの学園の意図について思考をめぐらせていた。
「……それにしても」
「このキーホルダー、大事なものなんじゃなかったっけぇ…?」
ジャラ、と五条は彼女の忘れ物を手に取ったそう呟いた。どうしてしまおうか、無視するのは簡単だが五条は佐天から受けた少しの恩を感じていない訳ではない
「(とはいえ流石に僕もそこまで非道い人間ではない。せっかくだ、返しに行こう)」
今なら間に合うだろうと五条は瞬間移動で走っていった佐天の元へと向かった
◇◇◇◇◇◇
「それにしても、イケメンだったなー。さっきの人」
「外国人みたいな目してたけど、日本語で喋ってたから日本人なのかな…」
あの五条悟という男は不思議だ、微力ながら能力を使った事から無能力ではない事は確かだがそれとは別に何か不思議なオーラを放っているように見える。碧眼で白髪、高身長など…一般人とは隔絶した見た目をした男なのだからそう思っても可笑しくはないが…
「佐天さん!」
駆け寄る一人の女子に目を向ける。それは先程メールの返信した本人で彼女の“おつかい”の成果を聞き出す為に急遽彼女を呼んだ。
「あ、おはようございます御坂さん!無事にあれ手に入れましたよー!」
それは名門の常盤台の生徒であり、最高位“レベル5”の第三位であり、その実態は電気を操る『電撃使いエレクトロマスター』。あらゆる能力者をも寄せ付けない“最強無敵の電撃姫”である
「ホントに?助かったー、いつでも買えると思って余裕ぶっこいてたけどまさかアレ期間限定とは思わなかったわ」
「いやー、これが結構ギリギリだったんですよ?残り一個で…あ」
「え?」
「お、置いてきちゃった…」
そう、大事な物を忘れてしまった事を思い出したのは彼女がそう話を持ち出した時だった。その瞬間、この世の終わりのような顔に早変わりし御坂にその事を伝える
「ど、どうしよう…!今から取りに行かないと…!」
「だ、大丈夫だから!私も一緒に行くし!」
「ちょっとー」
「これ、忘れ物だよ」
突如として、どこからともなく現れた男が慌てふためく二人を前にしてそう言い放った。その手には、彼女が忘れていたキーホルダーを持っていた
「五条さん!」
「すみません、わざわざ…!」
「ま、そんなに離れてなかったからね」
「佐天さん、その人誰?」
と、御坂は一人だけ話に置いてかれていると感じ得体の知れない男の存在を尋ねる。
「この人はついさっき困ってた所で助けてくれたんです」
「どもー」
あっけらかんとした態度とは裏腹に五条は密やかに御坂の能力を解析していた。能力者から特殊な波長を発するAIM拡散力場はその“六眼”も視覚対象に入っている。その強力な力は御坂と呼ばれる少女からも強く現れている。
「(電気か…)」
「(僕の眼は術式の解析も出来るケド…それ以外の異能力でもある程度の推察は出来る)」
「(この子は特に強い何かを感じるな)」
彼女は只者ではないと、その眼を通してそう警戒心を強めた
「僕は五条悟、よろしくね」
「この人凄いんですよー!学園では一二を争う程の実力者…“レベル5”の一人と呼ばれているんです!」
「ちょっと、やめてよ」と強く煽てる彼女に対して謙虚な反応を示す御坂。
「……へぇ」
と、性格に支障アリ(凄く)の五条がちょっとした悪戯を思いつく。
「君が欲しいのはコレなんだよね」
「はい、そうです…」
と、彼女にカエルのキーホルダーを渡そうと近づかせるが
「あーげないッ!」
バッ、と渡す瞬間に腕を上げてそう叫んだ。五条という男は、ただふつうに渡すような普通の人間ではない。
「え?」
「だーって普通にあげても面白くないでしょー?君が実力者って言うのなら、僕からこれを奪ってみてよ」
「さぁ!カモンカモーン!」
非常にうざったい挙動をしながらも煽り全開で彼女にそう言う
「ちょっと…佐天さん?」
「随分と厄介な奴連れたみたいだけど…?」
佐天の目の前で怖い顔をしながら詰め寄る。あの男がめんどくさい奴だと直ぐに直感的に感じた。あのツンツン頭といい、何か大きな問題を呼び起こしそう感じといい、五条には何か“既視感”を感じていた。
「え、えぇ?あんな人じゃなかったんだけどなぁ」
「あれ〜?欲しく無くなったのかぁ〜?」
さっきからずっと小馬鹿にする態度をとる彼に、ついにその堪忍袋がはち切れた。
「お、来たね!」
その電撃は確かに五条目掛けて直撃する筈だった。だが、その一撃は彼の肌に触れる事なくかき消された
「何で…」
「(効かなかった…というかは“通らなかった”…?)」
その能力は一見しても判別出来ない程五条の能力は未知に溢れていた。彼女の能力を知らずに、舐めてかかって襲う人間も少なくはない。そういった人種は大概返り討ちに遭い、後悔をしながら逃げていく光景を彼女は何度もその目で見ていた。
しかし、目の前にいる人間は違う…その攻撃を“無かった事にした”のは初めての感覚だった
「アンタ、何者なの!」
「…果たして何者でしょうか!?」
そして、ここまで飄々とした態度を取る男と出会ったのも初めてだった。
「ッ!…いい加減に、しろォ!」
1キロ先にある信号が点滅する程の超電撃が五条の周りで爆散する。流石市街地で放つような威力ではないが、激昂した彼女にそれを考慮する余裕はなかった
「ちょ、やりすぎですよさん!五条さん死んじゃいますって!」
「仕方ないでしょ!なんかすんごいムカつくしアイツ!」
冷静さを欠いた彼女は五条に対して苛立ちが止まらない。だが…
「いやぁ〜凄いね〜!」
「え!?」
またしても彼は余裕綽々と言わんばかりな口ぶりで傷ひとつなくそこに立っていた。
「でも、周りに危害を加えるのはナシじゃない?」
「あ、アンタどうやって今のを…!」
「み、御坂さん!アレ来ちゃってます!」
「あ…」
その電撃のせいか、警備ロボットが危険を感知して彼女らに向かって集まってきた。【能力者の攻撃を感知】と音声を流しながら増援を呼んでいた。
「人に迷惑をかけちゃ駄目なんだぞ〜!」
と、その張本人は瞬間移動でその姿を眩ました。
「ちょ、待ちなさいよコラァ!」
理不尽な男に対して怒号を放つ御坂は多くの警備ロボットに追われる事になった