とある五条の無下限呪術   作:助5103

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第五話「上条さんと五条くん③」

五話「上条さんと五条くん③」

 

 

 

 

白井黒子

 

常盤台中学に籍を置く中学一年生。風紀委員の第一七七支部所属でありレベル4の大能力者であるが…そんな彼女は途方に暮れていた。その理由は二つ。

 

一つは、一週間前から多発した謎の怪奇事件はの調査が思うように進まず難航している事。

 

二つは…それとは全く関係ない所ででくわした事件への処理である

 

「はぁ…」

 

「まさか、ただの私の勘違いだったとは…不覚ですわ」

 

「前々からの能力者絡みの面倒くさい事件に追われてばっかりで、疲れているのでしょうか…」

 

そんな小言を呟きながらもツカツカと風紀委員が主に活動場所としている一室へと向かっていた。今非常に忙しい彼女はそこにいた二人の高校生に今手を煩わしていた。いつもならば軽い処置とお咎めで済まして例の事件へと移りたい所だったのだが…その男、特に白髪の男が非常に面倒くさい人間であり今その男に手を焼いている

 

「あー!どーもー!くろこちゃんもここに座りなよ」

 

扉を開けると、初めて来客したとは思えない程馬鹿馴染んでいる五条がソファーでくつろぎながらコーヒーを飲んでいた。同じく風紀委員の初春飾利と、上条当麻もまた楽しく談笑していた。人がこんなにも苦労しているというのに…と、疲労のストレスが溜まっているのか苛立ちが爆発しそうになっていた。

 

「…」

 

やべ、と彼女の黒いオーラを発しているのに気づいた上条はそう呟く。

 

 

「(この男…)」

 

「悪い、五条の奴がここに居たいって聞かなくてよ…」

 

どうやら、彼の我儘でここに長く居続けているみたいだ…

 

「べっつにいーじゃん。強盗事件を光の速さで解決した僕からすればこれでおあいみたいなもんでしょ?」

 

「そのあたりに関しては私達に非があると謝罪します…が」

「それはそれとして!」

 

表情を一変させ黒子は目を開かせる

 

 

「能力を下手に行使するのは違法行為ですわ…それが例え事態を収めたとしても」

 

「許される行為ではありませんの!」

 

 

如何にも、正論といえる黒子の発言に「ですよね…」とぐぅの音も出ない上条と、対して軽薄な態度を変えない五条は黒子に反抗を示す

 

 

「厳しいね〜、能力者なんて山程いるんだから行使する必要性はあるんじゃないの?」

 

 

「あ・り・ま・せ・ん!」

 

 

「貴方のような人間が一番困るのですの、そうやって自分の勝手な判断で決めて事件に首を突っ込まれるのは!」

 

正義感が強い彼女の捲し立てるような言い分に耳を塞ぐ。彼にとってこういう生真面目で規律に煩い人間というのが基本的には苦手な分類にある。ただ、対する彼女も五条のような適当で無責任な人間は心底嫌っている。相性は最悪なのは目に見えて分かり、側から見てもその対応の冷たさは上条にも伝わっていた

 

 

「まーまー、そんな硬い事言わないでよー」

 

 

「ねー、初春ちゃん」

 

「あ、貴方ねぇ…いつの間にそんな仲良くなりましたの…?」

 

「し、白井さん…顔が怖いですよ…?」

 

「そ、それに私はそんなつもりで近づいたんじゃ…」

 

たった数分でここまで距離を詰めていたとは、と黒子はそう思いながらも彼への警戒心を一層強める。オホン、と話を切り替え上条の方へと顔を向ける

 

「大体、貴方も貴方…複数相手に単独で向かうのは賢い判断とは言えません」

 

「…悪かったって」

 

上条は五条よりも性格は幾分マシであるため、黒子への忠告をすんなり受け止めた。となれば…やはり問題なのは、この男。「でも、勇気ある行動だと思うよ」と反省の余地もない五条が彼を称賛している。そんな彼の態度に黒子はまたも深い溜息をついた

 

 

「……んで、ちょっとお願いがあるんだけど」

 

 

「?お願いぃ?」

 

「君らは能力者に関係する事件を捜査している訳なんだよね」

 

「左様ですが…それが何か?」

 

「僕達、そういうの興味あるんだけどさ…見学とか、してもいいかな?」

 

 

嫌な予感はしていたが、この男はどうやら自分達の活動に興味があるらしい。理解は出来るが、まるでそれを社会見学かのような軽い感じで頼み込んでいるのが無性に腹が立つ。

 

「あ、あのぉ…五条さん、今“僕達”って言ってますが…何故俺も含まれているんですか?」

 

何故?と敬語で五条に尋ねる上条。彼はその気ではないが、そんな事は一先ずどうだっていい

 

「…な〜にを考えているのかわかりませんが、貴方が変な考えを持っていらっしゃる珍妙な人間であるだけはよ〜く分かりましたわ」

 

 

「さぁ、さっさとお帰りなさいまし」

 

無論、そんな事は許されない。それにこんな男らと絡んでいるのも時間で無駄であり一刻も早く仕事に取り書かなければならない動物を追い払うようにジェスチャーで二人に退去命令を出すがそれでもこの男の考えは揺るがない

 

「…やだね〜。実際、さっきの事件の解決したのは僕だもん。」

 

 

「君の拒否権はあるようでないものさ」

 

「……貴方ねぇ」

 

「(こ、こいつ…面倒くさ過ぎますわ…なんなのですの、本当に…)」

 

あからさまに嫌な顔を五条に向ける。この男に妥協という言葉はないのか…?

 

「なぁ五条…変に突っかかんのはやめよーぜ…?」

 

「えー?」

 

 

「そもそも俺達が同行したってなんも得なんかねーって…ここは大人しく元の生活に戻って…」

 

 

 

「仕方ありませんわね」

 

「え?」

 

 

上条は黒子に視線を移しその返事に腑抜けた声を上げた。

 

「そこまて言うのなら…見学の一つや二つ、かまいませんわ」

 

「ですが、その間は特に能力を行使する事は一切禁じる事…その条件を飲んでくださるのなら」

 

「おっけーおっけー!勿論変な事しないよ!君の活動を側から見るだけだから!」

 

事態は進み、何故か五条の同伴が認められる事となった。どういう気の変わりが起きたのか理解が追いつかない上条の肩に、ポンと手を置く五条はにこやかな笑顔を浮かべ

 

「と、言う訳だから…行こうか!」

 

「…は?」

 

「何度も言うけど、当麻は今日用事とかはないんでしょ?」

 

「いやいや!だから何で俺も行かなきゃならないんだよ!」

 

「ね?いいよね?僕達、“見る”だけなんだし!」

 

「…勝手にして下さいまし」

 

そんな冷たい態度を変えず、早速現場へと向かう為に準備に取り掛かる。しかしそんな彼女の対応に疑問を持ったのか初春が話し掛ける

 

「あ、あのー」

 

「白井さん、本当にいいんですか…?」

 

「何がですの?」

 

「さっきまで否定的だったのに急に提案を飲み込むなんて…私、てっきり断り切るのかと思ったので」

 

「まぁ…別にああいう人は少なくありませんもの、好奇心見たさでそういうのにつっかかったり…自分には大きな力があると過信、慢心を持っていたり…」

 

「言葉で言っても如何にもならないのなら、少し痛い目を味合えば少しは現実を知る事になるでしょうし…」

 

あの二人(特に五条)は多少のお灸を据えなければ、分かる事も分からない。そう考えた黒子はいっその事今対処している事件がどれだけ凶悪で面倒なものか…それを目の当たりにさせ、自分の判断が誤っている事を分からせようとするのが今の彼女の思惑である。

 

 

「そう案じなくとも、大ごとにしませんわ…」

 

「そ、そうですか…?」

 

しかしながら五条はともかく、上条に関して半ば強引に連れ回されているようで可哀想な気がした初春は「不幸だー!」と叫ぶ上条を見ながらそう心配そうに見つめていた

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「へぇ…“幻霊夜行”、ねぇ」

 

 

 

「えぇ、最初に事件が起きたのは8日前…夜中に起きた事件をきっかけとして立て続けに同じ現象が各地で広がっていますの」

 

 

五条達は彼女の後ろについて行き、事件の詳細を耳に受ける。黒子が口にした“幻霊夜行(ゴーストトーカー)”というのは所謂多数発生した怪事件の総称であり彼女を悩ます事件の一つである。

 

「被害にあられた方は原因不明の昏睡に見舞われ、その治療方法も今のところ見つからず…とにかく今まで能力者絡みの事件とは異質ですの」

 

 

「異質?」

 

黒子はその話を続けた

 

「調査によれば被害者には“見えない何か”がのしかかっているような感覚が襲い、その何かというのがその事件の原因である事は分かっているのですが…それらしい足取りも掴めず…」

 

「それどころか、そういった現象が“伝播”するように人から人へと取り憑かれて…被害件数も徐々に増加…」

 

 

「もう手がつけられませんわー!ってな訳で困っているってわけね」

 

白い目で五条のふざけた言動に怒りを露わにする

 

「…馬鹿にしてますの?」

 

「いやー?」と白ける五条に上条が苦笑いを浮かべる。

 

「…とにかく、私達“風紀委員”はその事件の調査で手一杯ですの…」

 

「バンクにもそれらしい情報や手掛かりになる物も見つかりませんしねぇ…」

 

 

彼女から発した“バンク”というのはこの学園都市における総合データベースめあり学園都市最大の武器である「科学的な叡智」の集合体。各学校生徒の情報や成績表から超能力開発に使用する。個人情報などの機密度の高いデータは風紀委員や警備員など特殊な立場の人間か関係者しか閲覧出来ないがソレでも尚薬品や機材、各種研究の成果や学園都市の超兵器など、学園都市に関する情報のほぼ全てが登録されている。

 

つまり、大体はそれを元に調べれば不可解な事件でも突き止める事は可能なのだがこの事件に関しては一切の手掛かりが得られず解決の糸口が見出せずにいた。

 

「なぁ、俺達…どこまで着いていきゃあいいんだ…?」

 

「あともう少しで目的の場所に到着しますので…」

 

無理やり連れてこられた上条は心配そうな顔持ちで黒子に尋ねた。

 

 

「なぁ…五条」

 

 

「ん?」

 

「ほんとに見るだけなんだよな?」

 

 

「うん、そうだけど…何か心配事でも?」

 

 

「なんか…お前の顔見てるとそんな気一切なさそうな感じするだけど…」

 

会って半日だがこの男の事は大体分かってしまっている。今の彼は明らかに見るだけでは済まなさそうな雰囲気が漂っていた。

 

 

「…何の事かさっぱり」

 

 

そんな本人は依然としてその本心を明かす事はなかった。

 

 

「着きましたわ」

 

その声と共に、三人が足を止める。それは、とあるマンションの一室である。

 

 

 

「成程、ここが現場って訳ね」

 

常人ではこの悲惨な光景を目の当たりにすればまずゾッとするような感覚が襲うだろう。電気や水道は止まっており明かりが着いていない為暗くてよく見えないが、不気味な形を歪めた家具が散乱し黒いシミのようなものが辺りに飛び散らかっている。さっきまで人が住んでいたとは思えないような腐食の進行がかなり進んでおり、上条は思わず鼻を塞いだ

 

「ええ…交戦の最中は危険ですので、今回は現場での調査だけですが…」

 

「こ、これは…」

 

「昨日までは普通の生活をされていたみたいで…しかし、ある時突然人が変わったかのように暴走…その結果被害に遭った方は今病院に搬送され命を取り留めましたが…」

 

「意識はまだ戻っていない、と…」

 

「酷いな、これは…」

 

「これで、分かりましたでしょう?」

 

「貴方達が思っている程、私達の仕事は遊びではありませんの」

 

「貴方のように軽率な態度でいるようでしたら尚更…」

 

「面白そうだね」

 

 

このような凄惨さを目の当たりにしても、彼は顔色一つ変えずそんな事を口にした。

 

「…は?」

 

 

「僕には分かるよ、この事件の原因がね」

 

 

彼はこの怪奇の謎がなんなのかよく知っている。彼の“六眼”から感じるこの忌まわしいエネルギーの残骸から、これは“呪い”による物だと推察する。

 

しかし、それを知らない黒子にとって彼の発言には解せないでいた

 

 

「(この男…本当に何を言っていますの…?)」

 

「(お間抜けにしてはこの異様なまでの自信満々な態度…ここまで来ればただ威勢では無いように見えてきましたが…)」

 

「おいおいおい…!何言ってんだよ五条!」

 

「…つーかやっぱり手を出そうとしてんじゃねぇか!」

 

ビシ!と彼に向け指を指しながらそう突っ込んだ。しかし彼が最初からそのような目的でここに来た訳ではないので事実でこの事件がまさか“呪い”が関わっているとは、彼も予想外だった。

 

「…いやいや、本当に見学のつもりで来たんだけどね」

 

「(まさか、僕がこの学園都市に来た事でこんな事が起きるとは…ね)」

 

 

「これは、呪いだよ」

 

「君たちじゃあ観測出来ないけれど…君が言っていた“見えない何か”っていうのがソレなんだよ」

 

「の、のろいぃ?貴方何言ってるんですの?」

 

「さっきから意味が分かりませんわ…」

 

半信半疑な黒子は五条の訳のわからない言葉にハテナマークを浮かべる。

 

「科学が証明出来ない物だからね…だから、そのバンクとやらで特定出来ない訳だよ」

 

「は、はぁ」

 

「信じてないの?」

 

「…えーと、つまり、これは呪いとかなんとかのオカルト的な要素が関わっていると…?」

 

「オカルトじゃないよ、そーゆーもんがあるって事」

 

はぁぁ、とまたもや深い溜息をつきながら彼の言葉に一切信じず冷たい目でこう言い返す

 

「…呆れましたわ」

 

「これでそのおめでたい態度が変わると思っていたのですが…」

 

「え?」

「お前の事だよ…」

 

誰?と自分の事だと思っていない五条に上条も黒子と同じようなしら切った目で突っ込みを入れる

 

「もうお帰り下さい…あなた方には何も期待などしていませんが、もうこの事件には首を突っ込まないこと…いいですわね?」

 

 

「だってよ、ホラ…帰ろうぜ」

 

 

「…えー」

 

もうちょっと居たいのだが、これ以上変な事いうとマジギレしてしまうかもしれない。

 

「(…ま、いいや)」

 

「あっちがその気がないんだったら」

 

 

「無理やりでもその気にさせちゃえばいいよね…?」

 

 

ククッ、と彼はまだこの事件に興味を無くしてはいなかった。




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