アヴァロンより帰還して一週間。
私はいつも通りにポアロでのバイトと周辺での神秘痕探しに勤しんでいた。
しかしまぁ、忙しいことはこの一週間変わらない。
ホールに立てば四方八方のお客さんから「アーサー君こっち向いてー!」と黄色い声を掛けられ。
川沿いの霊脈を調査すれば「陛下、ここに我々には見えぬ何かがあるのですか?」とFBIの面々にシリアス顔で尋ねられ。
いろんな意味で心が休まらない日々である。
ともあれ、一度アヴァロン探索の成果について振り返ろう。
キャメロット城で回収した宝具は、すべて高機動大広間「
「
Fateにおいては高機動の名の通り、水陸両用の移動型大広間となっている。
見た目は英雄王の持っているヴィマーナの白色バージョンみたいな感じだが、攻撃能力がなくあそこまで速く動くことはできない。
私は今回、これを水陸空対応の万能飛行艇として宝具運搬のために使わせてもらった。
水陸両用の宝具で空対応をどうやったかって?
それは簡単。風王結界を使って無理やり風で包み、浮かび上がらせただけだ。
相応の魔力は食うものの、前回私が生身で地上まで頑張って登ったのが信じられないくらい楽に地上に戻ることができた。
いやぁ。前もこのヴィマーナもどき、もといエハングウェンを使って地上へ浮上しようとはしてたんだよ。
けれど常識的に考えて、巨大な飛行艇が突如都市部に浮上するのは悪目立ちが過ぎる。
こんなサイズのものを透明化できるほどブリテン製透明マントは────ブリテン島の13の宝だ────万能ではない。
加えて目印なしで登ると浮上地点もランダムになりがちだし。
そこで今回は日本近海にFBIの船を待機させて、それをアンカーとしてアヴァロンより浮上させてもらったのだ。
風王結界は浮遊用であるとともに浮上して海中に出てしまったとき溺れないよう空気を確保するためのもの。
便利魔術さまさまである。
そういやあ、霊基の記憶をたどっても戦闘に使うばかりでこんな風に小技を効かせた使い方をしたことはなかったらしい。
発想次第でいくらでもやれることがありそうなのに勿体ない。
では、お次は戦利品の紹介だ。
目的はキャメロット中央、王城の円卓に残された13の宝具だ。
なぜかここには円卓の騎士たちの宝具が、何かのメッセージのように円卓に突き立ててあった。
宝具に触れれば僅かに残された意志を感じ取れる細工付き。
「王よ、ご武運を」「あなたの道行にご加護のあらんことを」etc。
本当にキャメロットに何があったんだと言いたいのに誰も説明はしていかないのが憎いことよ。
一人ぐらい事情を言ってってくれよ…。
さて、そんなイカれた宝具たちを紹介するぜ!
弦ではじいた空気を敵へと飛ばす弦楽器宝具「
ベディヴィエールの宝具である「
それらはどれもシンプルかつ強力なものばかりだ。
なぜ「
なんにせよこれだけで王の財宝とはいかずとも、ひと財産あることは確かだ。
あの厄ネタの空気漂うアヴァロンへ置いておくのは不安だったからな。
FBIに預けるのも若干どころでなく悪用の不安が残るが、型月的巨悪の手に渡るより多少はマシだろう。
また、マーリンの研究室にあった素材、つまりは魔獣の一部やら妖精の羽やらもどっさりある。
タペストリーや使用人服を含むキャメロットの各種調度品も持って帰ってきたが、これはFBIの要望によるものだ。
史料的な価値があるとかで、研究担当のおじさんが靴でもなめそうな勢いで懇願してきたのが思い出深い。
そ、そんな土下座せんでも持ってくるぐらいするから……ね、頭上げて……靴に口づけは結構だから本当に……。
加えて、念のためキャメロットにあった保存系宝具の中に残る保存食のたぐいも持ち帰っている。
賞味期限云々の前に現代の人間が食べていいものなのかは不明だが、最悪「毒物の有無を判別できる酒器」の宝具で見分けてもらえばいい。
……私は食べたくは無いが。
ちなみにだが、宝具の数々を持った私達を歓迎した捜査官たちは相変わらず外人四コマみたいなテンションであった。
だから宝具の胴上げはやめようね。落としたら危険だよ下手したら不敬で首落ちるよ。
一応、今後の管理はFBIに預けるのに不安の残る宝具を私が預かり、その他をFBI預かりとしてある。
私預かりになった宝具は、具体的には柄の疑似太陽が暴発したらFBI本拠地が蒸発してしまう「
それと救世主を貫いた世界でもっとも有名な槍「
ギャラハッドとベイリンにより二重の拘束がかけられているし、何より別に私情でふるわなければ無害なのに。
「神罰が下るかもしれない」って、取り越し苦労過ぎるぞ。
もし私情で振るった場合、「嘆きの一撃」とよばれる天罰を受けることになるが、持っているだけで何かあるわけではない。
騎士道に反した行動を取ると折れる聖剣より全然有情な槍なのだ。
……え?無害なら文句言わず私の手元で預かっとけばいいじゃないって?
情けない偽プーサーに失望した槍が神罰を下すかもしれないじゃんよぉ!!
前言撤回って言わないように。分かっていても怖いこともこの世には存在するのだ。
と、アヴァロンから持ってきた戦利品は上記のとおりである。
なんの成果も得られませんでした!!!にならなくて本当に良かった。
実際、行くたびにやや座標が変わるので迷子になる可能性もあったから、情けなくも手ぶらで帰還という可能性も否定できなかった。
それにしても、この間のキャメロット城での赤井さんは騎士感が凄かったな。
すぐにでもキャメロットに登城できそうな完璧な騎士ムーヴだった。
そんなん現代社会のどこで身につけたの?と思わず聞きたくなってしまう中世騎士っぷりよ。
事件の捜査には絶対不要だろそのスキル。 うーん、潜入捜査でなら使えなくもないか……いやねーよ。どこに潜入する気だよキャメロットか?
「アーサー君!ぼうっとしてないでお会計!」
「っとと。すまないアズサ。それと、3番テーブルのお客さんはナポリタンを3つだそうだよ」
「うっそまた!?もうケチャップが少なくなってきてるのに……急いで安室さんに買い出しへ行ってもらわないと」
つらつらと考えごとをしていたが、現在バイト中につき忙しさは据え置きである。
先ほどシフトに入ったばかりなのだが、私が入ってからどんどん客足が増えている。
女子高生やお姉さま方を中心にした黄色い声援が早くも飛び交い、王子様系ホストクラブ?と問われれば否定する要素が見つけられない。
安室さんはというと、この頃は増えたバイトプーサーという枠を隠れ蓑にしてホールでも気配を消している時がまま見受けられるようになった。
あんな目立つ潜入捜査もどうかと思ってたから良いのだけれど。
それよりも、お客さんたちに交じってチラチラFBIの面々がいるからって剥き身のナイフみたいな殺気を飛ばさないでほしい。
彼らは「陛下に飲食店のバイトをさせるなんてとんでもない!」みたいな意見でもって私のバイトをはらはらと見守っているだけなのだ。
彼らの反対を押し切りバイトをつづけるのにも結構苦労しているのだから。
あっ、また満面の笑みで女子高生にハムサンド出しながら右端のFBIさんに殺気送った!
そのうえ調理場に入って人目がなくなった瞬間スンッって表情消すの止めなよ怖すぎるぞ!
声に出して嘆けないのが口惜しい。
普通の人間に殺気とか分かるわけないし、誰が誰に殺気を放ったなんて余計に分かるはずもないからね。
無理をおしてバイトをしている以上、下手なことをして職を失うことだけは避けねばならない。
実際にはFBIへの宝具貸出料がバカにならない収入になっているからバイトなんてする必要はないのだが、あれだ。
FBIのヒモになって米国の税金で豪遊する気はさらさらないってことだ。
社会人としての良識もあるが、聖剣もポキっといきそうだし。
宝具貸出料については現在、FBIに作ってもらった米国の個人口座に振り込んでもらっている。
正直私が利益を得るのは道理が違うので無償貸し出しを提案したのだが、それでは申し訳ないとかFBIが言い出して貸出料を振り込んでもらえることになったのだ。
そしてなぜか時を経るごとにバンバン金額が上方修正され、今や私の口座は大金がうなっている。
流石にもらい過ぎと慌てたのだが、FBIいわく「これは天の国に富を積んでいるだけ」とのこと。
無意味に金を溜め込みすぎてしまっているので、頃合いを見計らってNPOとかに寄付と称して放出しておかなければ。
そんなこんなで日々を過ごしているある日。
ルパン三世来日の噂がニュースで騒がれ出した。