本日は土曜日。
早朝でまだまだ人の出入りが少ないポアロで、コナン君一同が梓さんに話しかけている。
「それで梓さん聞いた?ルパン三世来日ですって!それも愛しのキッド様と同じ日同じ時間に、同じ宝石を狙ってるのよ!」
「い、愛しのって……園子ってば京極さんがまた怒っちゃうわよ」
「でもでも、キッド様は別腹っていうか。愛でるだけならタダというか」
女子高生たち────天下の主人公ご一行だ─ 本当に二人は原作どの辺までの関係なのやら。
───は来週に迫るルパン三世の話題で盛り上がっている。
とはいえ、女子高生なのに話題が芸能界のスキャンダル等々キャピキャピしたものではなく、殺伐とした国際犯罪なのはどうかと思うが。
いや、ルパンVSキッドだしジャンルとしてはこれもある意味芸能界かな。
「ルパン三世と怪盗キッドとブッキングですか?それはまた荒れそうですね」
「……安室さん意外だね、ルパンに興味あるんだ」
「コナン君はアイスコーヒーでいいかい? …探偵だし、人並みには興味あるよ」
「ふぅん。あと僕はオレンジジュース」
おっとここで若干目が鋭い安室さんがエントリー。
せっかくの和やかな空気が殺気立った安室さんに汚染されてサツバツ空間へと早変わりしてしまった。
本当に二人は原作どの辺までの関係なのやら。
コナン君もそれに合わせるかのようにゼロの執行人風の空気を漂わせ、さながら旧き良きアニメ2時間スペシャル(ゲスト:安室透)のAパートのようだ。
そこにルパコナ要素とキッドを盛るなど要素過多ではあるまいか。
ルパコナアニメスペシャル2安室さんを添えて?
なにそれ見たい。絶対見てやる。
「今回のルパンのお目当ての品は何なんだい?」
「あっアーサーさん!今日もバイトお疲れ様です」
「キッドも狙ってるビッグジュエルだよ。60カラットのピンクダイヤモンドで別名ピンクドリーム。……って今日のテレビでやってた!」
「このガキンチョはまた妙な知識ばっかり仕入れてきて。そうよ。次郎吉おじ様の蔵品で、キッドとの対決のために用意した世界でも稀なビッグジュエルなのよ!」
ふむ。一瞬私の持つ宝具関連かと疑ったが、取り越し苦労だったようだ。
怪盗KIDと獲物が被るなんて、ルパンの側も人が悪い。
どう考えても若い同業者を揶揄ってやろうという気配が満載である。
そういえば、ルパンといえばファンタジーに両足どっぷり浸かったトンデモ系お宝とトレジャーハントが定番だ。
探偵世界において私のような半ゴーストライナー的存在は設定外でしかないが、ルパンならば存在していてもおかしくない。
超能力も実際に登場したし、魔法っぽいのもかなりあった。
ならば私がアヴァロンにて目覚めてしまった原因────例えば聖杯など────があってもおかしくはないだろう。
つまりルパンならプーサー起床の原因を知っているかも。
これは割合高い確度の話だ。
聖杯というのも単なる想像でしか無いが、ルパンなら持ってておかしく無いというのも頷ける話だ。
FGOで変な事件が起きたらまず聖杯を疑え。
古事記にもそう書いてある程度には定番の事件原因だからな。
そろそろ私も本格的に目覚めてしまった理由を探さなければならないと思っていたところだ。
FBIの面々がキラキラした目で「日本に何があるんですか?」やら「お目覚めになったということは、ついに王として返り咲く時が来たのですか?」やら聞かれて困っていたのだ。
特に理由なんてないし分からんとか、王の尊厳にかけてそんな適当な回答はできない。
アヴァロンの三階層目にいるやつのことをちょっと昴さんに相談したときなどはとんでも無かった。
翌日シリアスな顔をしたお偉いさんが「理想郷に封印されているという”黙示録の獣”について、詳細な情報を伺いたい」とかって会談の予約入れてきたのだ。
黙示録の獣!?何それ知らん……怖……と一人で戦慄していたものだ。
アヴァロン三階層目にいるのは封じられたフォウ君だよ。
……今思えば黙示録の獣って言われても問題ない感じだな。まぁいいか。
ともかく。
これ以上話が広がる前に私の方で正確な情報を掴まねば!
そこで園子嬢がぱっと思いついたような顔をして、私に願っても無い提案をしてくれた。
「そうだ!アーサーさんも一緒にどうです?来週の18日に宝石のお披露目パーティーが企画されてるんですよ。あたしのおじ様主催で」
「い、いやいや。僕なんかが出席しても大丈夫なものなのかい? ルパンのこともあるし、警備も厳重なんだろう?」
「いいのいいの。宝石は基本別館だし、見るのがこのガキンチョと小五郎のおじさまだけってのも勿体無いしね」
園子嬢は軽く手を振って見せた後、「それにアーサーさんもイケメンだし華は多い方が良いっていうか」と小声でまったく正直な感想を述べた。
蘭ちゃんが困ったような声をあげる。
「もう園子ったらぁ!」
「あはは。そうだね、もし僕でよければ参加させてくれると嬉しいな。ところでアムロは?」
「僕の方は先日お誘いいただいたのですが、先約がありましたから遠慮させてもらいました。残念です」
まったく残念そうに見えない困り笑顔で安室さんが肩をすくめた。
そりゃトリプルフェイスなんて人外の業務量をこなしていたら、行事ごとに付き合う時間なんて無いに等しいだろうな。
安室&コナンで協力してルパンに立ち向かう絵面を想像していたので私の方も少しばかり残念だが、この際致し方あるまい。
何はともあれ聖杯だ。
日本にやってきたルパン一味を捕捉し、なるべく穏便に聖杯とか、何か不穏なアイテムを所持していないかどうか聞く。
ついでに私が目覚めた原因になっていそうな事件に心当たりがないかも聞き出せればベスト。
そのためにコナン君を尾行し、ルパンと接触した時を見計らって魔術的なアンカーをしかけておく。
風王結界も今回は光の屈折を利用した姿隠しの魔術として機能させよう。
私は本日の予定を考えながら、内心頷いて取らぬ狸の皮算用を巡らせた。
うんうん。いうなれば。
ワイルドハント(嵐の夜/狩りの夜)の始まりだ。