TV撮影だよ!
なにやら世間一般に私の紹介をするとかで、撮影のため一週間だけ米国にお邪魔している今現在。
その程度ならフォウ君も動きはないだろう、ということと今後各方面からの要望もあったので短期の出張である。
どうもここのところ、偉い人の間では「アーサー王を見世物にするだなんてとんでもない!」派と「でもアーサー王復活なんて国民が納得しない!」派の熾烈な闘いがあったらしい。
一応私が「TVにちょろっと出て、ついでに剣舞ぐらいなら見せられるよ」と答えたので戦いは終結したが。
私もたまにはプーサーの体を動かさないといけないからな。剣舞はいいきっかけになるだろう。
でぶっちょプーサーなど流石に許されざるよ。
まぁ、撮影だけでなく米大統領との会談、米国に数台しかない計測機器でのエクスカリバー測定などなど予定は目白押しだ。
片道11時間ものフライトを終えて現地時間はわずかしかないのに、予定は分刻み。
赤井さんがずっとそばについてスケジュール管理をしてくれているからいいものの、目の回るような忙しさである。
……いやあんた、哀ちゃんの護衛はどうしたよ。
などと思ったりもしたが冷静に考えればキャメル捜査官がちらっと仕事を押し付けられていたから、その時に一緒に哀ちゃんの警護を任されたのだろう。
悪いFBIだ…。
さて。
テレビ出演について、軽く内容を紹介しよう。
大筋は貴人の正体、すなわちアーサー王の実在について発表番組、ということらしい。
ナショナル・ブロードキャスティング・カンパニー(NBC)やアメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC)が揃って時間を設けたとのことで、2時間みっちり大ボリュームだ。
初っ端、番組はアヴァロン探索の映像を流す手筈になっている。
これはCGではない!としきりに注釈をつけて8分間のキャメロット城を含めた内部映像を映すようだ。
これは最近私がカメラを持って撮影班と共に撮りにいった画像で、割と手間がかかっている。
なにせドローンやら最新機材やらを大量に持ち込んで、撮影クルー達がめちゃくちゃ熱心に撮っていたからな。
特にキャメロットについては命の危険があるから表層のみだと決めていたのに、ディレクターが興奮状態で突貫しようとするので止めるのに苦労した。
この際、機密のため入り方──私と一緒に黄金のリンゴを食べて東京から入る──は放送されないこととなった。
安全のためというのもあるし、東京で無駄な被害が出そうだという配慮でもある。
そうして「アヴァロンの実在」を示した後は、私、すなわちアーサー王の実在に話が移る。
まず、これまでのアーサー王の歩みと歴史のおさらい。
そして私がもたらした各種不可思議なアイテムの科学的検証。
最後にアーサー王本人の身体能力等科学で説明のつかない実物の生放送実演といった献立だ。
アーサー王の歴史は文献を参考としつつ、私からの聞き取りも結構あった。
日中のガウェインを軽く昏倒させる意味わからん強さのヴォーティガーン、エイリアンクイーンみたいなピクト人の王等々、語るべきところは山ほどある。
霊基の記憶を辿っていけば人外魔境で、とんでもねー猪なんかがバンバン出たからな。
妖精の怖さだったりもやはり語るべきポイントだろう。
円卓の騎士全員、妖精と聞けば緊張で冷や汗が出るレベルの恐ろしい存在だ。
この話のうちどの程度が実際に使われるのかは知らないが、ひとまず語れるだけ語ることとする。
国際アーサー王学会も協賛してるとかで、学会員の重役がアメリカまではるばる飛んできたらしい。
私もよく知らなかったのだが、なんでも、イギリスのポスト・ローマ時代の資料はあんまり残ってなくて、アーサー王の史実性を明確にするのはなかなか難しいらしい。
なので、「本物のアーサー王出現」は歴史家にとって大注目ワクワクそわそわの出来事なのだとか。
飛んできた質問は具体的には下記の通り。
Q:ベイドン山こそがアーサー王の戦死したカムランの丘なんですか!?
Q:『カンブリア年代記』の記述をどう思いますか!?
知らん知らん知らん知らん!
霊基が覚えてるのはまだ神秘の残ってた時代のテクスチャなんだから、今のイギリスとは地続きの異世界だと思ったほうがいい。
ログレスが崩壊したと同時に最後の神秘が剥がれ落ち、テクスチャが切り替わったのだ。
歴史もその時点で細かいところが神秘の含まない形で編纂され直したので、現状の歴史学として立証できる話ではなくなっているのだ。
また、政治評論家からは「現代の政治問題について古の王はどう考えるか?」とか「現代のリーダーに大切なものはなにか?」とか冷や汗吹き出すような質問があった。
困ります……困ります……。
すがるように霊基に聞いても「なにそれ…僕に聞かれても……というかそれは僕が聞きたい」ってしおしおになってしまったし。
ひとまず「かつて脅威とは外から攻めてくるものであり、外敵から身を守ることこそが騎士の役割であった。僕もそのように考えていた」みたいにいいこと言ったふうにしたり顔をすることを答えてお茶を濁した。
実際プーサーの時代は内政とか語るレベルの情勢じゃなかったし騎士は唐突に旅に出るしではちゃめちゃだったからな。
専門家達もなんか凄く含蓄のあることを聞いた、みたいな顔をして会議が進んでいったのでこれで番組的にもあっていたのだと思われる。
全くひでぇ目にあったぜ。
この特番は後日配信もされるらしいので、恥は少ないほうがいい。
ちなみに、途中でTV会社の偉い人に「現代におけるアーサー王の一日」って番組を撮りたいんだが密着取材していいか、とか聞かれてまた冷や汗が噴き出る一幕があった。
最近でこそ忙しくしているが、私の普段はポアロで未成年相手にアコギな商売をする日々なのである。
普段はバイトしてるんだ!なんて言えねーよ!
まあ、そこで担当官がすっと入って事務所NGを出したからことなきを得たのだが。
しかしそこからもずっと諦めずに偉い人は「初めて飛行機を見た時の感想は!?」「タクシーは乗りましたか?その時馬との違いをどのように感じたのかぜひ教えていただければ!!」と必死で食いついてきた。
どうやらプーサー初めての現代生活を放送したいらしい。
駅の改札でもたつく王を添えて。
なにそれちょっと面白そうな番組じゃん、なんて心惹かれなくもない。
最後の剣舞の方なら余計なことは喋らないで済むし、楽なものであった。
仮設プールで作った湖と丸太を吊った広いアスレチック場にて数分間の剣舞である。
TVに映る剣舞会場にはたくさんの観客がいて、そこでちょろっと剣舞を見せるだけの簡単なお仕事だ。
風王結界の練習がてら、軽く暴風で流れを作り、観客席に砂埃が行かないように調整して3次元駆動を行う。
歓声、そして声援。
変な思い出になってもらっても困るからカリスマBを使いながらかっこよく。
これなら円卓の皆様もご納得いただけたのではないか、と思いながら。
この度の撮影は無事終了したのであった。
・円卓の評価(剣舞編)
★★★⭐︎⭐︎
>肩に力が入り過ぎているようだ。要精進ですね。
>どうも霊基の手綱を上手く握れていない様子…ポロロン
>腰抜け野郎!気合い入れろーッ!そこだッ右に薙げ!!
>モードレット卿、座ってください
>ま、初心者にしては健闘した方だろ