プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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ベイカー街の亡霊③

 

 現在ホワイトチャペル地区よりお送りしています。

 

 先ほど怒られたからか少し神妙な政界財界の上層部の子供達と、少し肌寒いロンドンの街の一角で野宿なり。

 とはいえ、肌寒さを感じても体が冷えないあたり現実空間とは違うというか、不思議な感覚だ。

 

 私は上着を蘭ちゃんにかけてやってから、ぼんやりと思考した。

 

 今頃、外では原作とは比較にならないとんでもない大パニックがおきていることだろう。

 たぶん赤井さん経由でコナン君に鞘が預けられたということは伝わっているはずだ。

 

 だがゲーム内にフォウ君が単独顕現しているのは向こうにも見えているはず。

 幼いとはいえその獣としての権能の一端を見せられて、各国上層部も心穏やかではいられないだろう。

 

 恐らくは現場は完全封鎖、中継を繋いで各国では緊急の会合も開かれているかもしれない。

 

 鞘の効果もあくまで保険である以上安心はできないし、終末はすぐそこな状況。

 もし私がその立場なら肝を潰すに違いない。

 

 しかも鞘のなくなったアーサー王はゲームに敗北すれば死亡確定。

 

 ……いや、魔力放出で防御すれば意外と生き残れる気がするが、それは置いておいて。

 政界財界の子供達はまず間違いなく死んでしまうだろう。

 

 もしかしたら今頃シンドラー社長が「なんてことをしてくれたんだ」「ネットワークセキュリティはどうなっていたんだ」とか各国重鎮から詰められているかもしれない。

 下手をするとこの事件がフォウ君の存在を世に知らしめるきっかけになる可能性だってあるから、それもまぁいたしかたないことである。

 

 うーん四方八方に大惨事。

 

 少し霧がかかり、空気に紛れて肌と服にまとわりつく煤が黒っぽく跡を残す。

 さすがはスモッグで有名な19世紀ロンドン。実にそれっぽくてかっこいい。

 

「しかし、どうするんだいコナン君。犯人を捕まえるにしろ、僕たちには何の伝手もない」

 

 考えてみるに、子供向けのゲームとしては動線が凄まじく雑だ。

 ホワイトチャペル地区からホームズの家まで遠すぎるあたりも含めて、意図的にノアズアークが難易度の上昇を図っていると見て良いだろう。

 

「それならさっき警官が言ってたでしょ。レストレード警部に連絡だ、って。つまりこの場所にはホームズがいると考えて良い」

「新一のお父さんが考えただけあるのね。ホームズが出てくるなんて」

 

 普段ホームズ語りを死ぬほど聴かせられているだろう蘭ちゃんの素朴な感想に少しだけクスッときた。

 でも一般販売したらめちゃくちゃ人気出るのは間違い無いだろうな……とも思う。

 ホームズがお助けキャラになって自分で事件を解決するフルダイブ推理ゲーム。

 というか販売してほしい。

 

 こんな大不祥事を起こした以上、少なくとも三年は世に出られないとは思うが。

 

 その後はホワイトチャペル地区からてくてくひた歩くことになった。

 

 ホームズフリークでロンドンへの観光経験もあり、道を知っているコナン君が先導。

 私が後ろを警戒して最後尾をというパーティ編成だ。

 

 電脳世界である以上、気配察知は利かないだろうから念入りに後ろを確認する。

 

 ランダムエンカウントで後ろからジャックザリッパーに襲われても何の不思議もないからな。

 妊婦ばかりを狙う以上、そこまで警戒はしなくて良いかもしれないが……ゲーム的には夜出歩くと確率で襲われる、という仕様は実にありがちだ。

 プレイヤーの動きを制限しつつホラーゲームの要素を加えるのに実にいい塩梅だろう。

 

 ひたすら歩くこと1時間半。

 ゲーム世界だからか疲労が非常に少ないのが功を奏した。

 現実には水もなく歩くには小学一年生どころか大人だって辛い距離だ。

 

 コナン君の頭の上のフォウ君も「フォォオオ…」と暇そうに尻尾を揺らしている。

 

「おい、何だよその小動物」

「コナン君の飼ってるペットのシロですよ。すごく頭がいいんです、ね、コナン君!」

「歩美も抱っこしたい!」

 

 警視副総監の息子…というか、その皮をかぶったノアズアークが訝しげにフォウ君を指差した。

 その疑問はごもっとも。

 コナン君は「なんか不思議な力でついてきたんだろ」と察しているのか苦笑いするにとどめている。

 

「ここはゲームの世界だろ。何でペットが紛れ込んでんだよ」

「そういえば…どうしてでしょうね?」

「コナンが腕に抱いてたからじゃね?俺も鰻重だいてたら今頃ここで鰻重食えてたのかな…」

 

 子供達の牧歌的な反応に呆れた顔でため息をついたノアズアークだったが、その視線は鋭い。

 

 自分の支配するゲーム世界に突然現れたのだ。

 そりゃ警戒もするだろう。

 だが敵に教える義理もない。私は黙ったまま話が流れるのを待った。

 

 とまあ、そんなこんなでシャーロック・ホームズの下宿へと到着した。

 

 確かこの時は映画だとバスカヴィル家の犬事件で不在だったんだったか。

 時代がかったドアベルを蘭ちゃんが鳴らす、というか叩く。

 鈍い金属を打つ音が絶妙な風情となって耳に響く。

 

 目の前には221Bと刻まれた扉が一つ。

 あのホームズがワトスン博士と共に借りている下宿が、今目の前にあると思うと感慨深い。

 

 中から出てきたハドスン夫人は、蘭ちゃんに「ホームズさんにお伺いしたいことがあるんです」と言われて困ったように首を捻った。

 

「今ホームズさんは出張でいませんよ。なんでも、ダートムアとかいう田舎に出ているみたいで」

「ッ!…バスカヴィル家の犬事件!じゃあしばらくはホームズも戻らない…!」

 

 コナン君が愕然と「これじゃ振り出しかよ」とぼやいたのだった。

 

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