プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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ベイカー街の亡霊④

 

 ホームズの下宿から出た頃には日もとっぷりと暮れていた。

 

 時計塔を見るに、すでに残り人数30人。

 かなりハイペースで人数が削れていっている。

 

 やはりアクションゲーム勢と比べて、ホラーアドベンチャーであるオールド・タイム・ロンドンはゲームテンポが遅い。

 特にバトルゲームであるコロセウムなんかは死に覚え的な側面が強そうだからな。

 復活無し、というルールからすると出だしの遅いオールド・タイム・ロンドンが生き残りやすいのは仕方ないところである。

 

 モラン大佐のいるトランプ・クラブを目の前にして、私は右手を握っては緩めを繰り返した。

 これが私の初戦闘になるだろうが、どこまで動けることやら。

 実際問題、アバターの状態では気配察知が使えないのが結構痛い。まるで耳が詰まったかのような不快感だ。

 

 「僕が裏口から様子を見てくる!」と言って走っていくコナン君の後ろ姿を見ながら、私はちらりと諸星君に視線を向けた。

 

 コナン君の後を追うようにこっそりと裏口から侵入しようとする諸星君と滝沢君──たしか与党政治家である滝沢さんの息子だったか──に後ろから声をかける。

 

「こら。どこへ行く気かな?」

「げっ、お前…!」

 

 慌てて逃げる滝沢君を尻目に、諸星君…ノアズアークが斜に構えた笑い方で懐から拳銃を取り出した。

 くるくると器用に銃を回す姿は実に様になっている。

 

「あいつにばっか手柄を立てさせるっての無しだろ。王様よぉ」

「……確かにこのロンドンだけゲームテンポが遅いからテコ入れしたくなるのはわかるけれど。あまり強引な手は無しじゃないかな、ノアズアーク」

「ッ!」

 

 ノアズアークが動きを止めた。

 私が彼の正体を確信していることは脳の電気信号を読み取っている向こうもよく理解していることだろう。

 

 ノアズアークは陰惨に目を細め、こちらへと問いかけてくる。

 

「何故わかった?」

「直感。こと戦闘に関しては未来予知並みに使えるんだ。だから探偵のように証拠を見せろと言われても無理だよ」

「はっ、そうかよ。特に王様は不確定要素の塊だからな。念入りに機能制限したんだが……勘でバレてちゃ世話ないぜ」

 

 降参するかのように両手をあげて、ノアズアークがふっと笑った。

 

「それと、さっきの行動は諸星秀樹のパーソナルデータからエミュレートしただけだ。例え本物だろうと同じことをしただろうぜ」

「……あの子、跳ねっ返り過ぎやしないかい?警視副総監の子だろうに。大丈夫かなぁ」

 

 つい本音が漏れてしまう。

 拳銃奪って反社の軍団に殴り込みに行くのは盗んだバイクで走り出すよりファンキーだろお前。

 

 というかこれ、外にライブ配信されてるんだったか。

 普通に諸星警視副総監の公開処刑みたいになってないか?

 

「それと、俺を止めても無駄だぜ王様。ここはノアズアークの領域。プログラムを少し弄れば…」

「!」

 

 トランプ・クラブの中から銃声がする。

 おそらく設定を少し変えて無理やり忍び込んだコナン君を敵に発見させたのだろう。

 

 慌てて蘭ちゃんが渦中に駆け込んだ。

 それに続いて少年探偵団もダイナミックエントリー。

 子供達も顔を見合わせて大きく頷く!「俺たちも行くぜ!」「少年探偵団!」「出発!!」

 止めてよして、おあぁ、全面戦争になっちまう!

 

 私もノアズアークを置いて慌てて割れた窓から飛び込んだ。

 できる限り生存者を増やすには、私が一秒でも早くごろつき共を始末するより他ない!

 

 なお、フォウ君がさらっと壁を蹴ってごろつきの顔へ弾丸のようなマーリンシスベシフォーウを決めていた。

 あれは痛い。

 

 私の方も戦闘開始だ。

 ぐっと手を握って聖剣を顕現させようとして、電子世界じゃそんなの無理ということに気づき方針変更。

 周りにいたごろつきを素手で蹴散らして長い火かき棒を奪い取り、火かきカリバーとして運用を開始する。

 

 向かってきた八人ほどの首を軽く刎ねて、光彦と歩美ちゃん狙う悪党を背中から串刺しに。

 返す刀でもう二人ほど腹を掻っ捌く。

 

 血が出ずグロ表現もないのでCEROにも対応していて大変よろしい。

 私も神秘無し手加減無しだとイギリス暗黒時代風ラフファイトにならざるを得ないからな。

 子供達に見せるのはあまりよろしくない。

 

 そうしてあっという間にゴロツキたちは数を減らし、残ったのはモラン大佐と数人のみとなった。

 子供達は全員無事。というのも、私にゴロツキたちの視線が集中したのが大きいだろう。

 視線が子供達にそれた奴から先に刈り取っていったからな。

 

 これに焦ったのはモラン大佐だ。

 人数で勝っていたはずの下っ端達が蹴散らされ、明らかに劣勢に立たされている。

 拳銃という絶対の武器を持ってはいるものの、人数の差は如何ともし難い。

 とすると……。

 

 「何のようだ、お前たち」とモラン大佐が拳銃を構えながらこちらへと問うてきた。

 やはり、舌戦で時間稼ぎしようとするわな。

 コナン君が待ってましたとばかりに口を開こうとして。

 

 

 パタンと正面の扉が開き、整った身なりをした老人がするすると進み出てきた。

 原作通りだとするのなら、その名はジェイムズ・モリアーティ教授。

 

 ロンドンの暗黒面を反映する、悪の形代である。

 

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