プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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真夜中の攻防

 

 アジトは古びた倉庫を改修したものだった。

 

 酒を飾るための棚と憩いの場であるソファ、そして端っこに設られた謎の小さな畳コーナー。

 ちまっと並べられているのは刀の手入れ道具だろうか。

 粉のついたボンボンのようなものと油の入れ物が目につく。

 

 雑然とはしているが、どこか自由人であることを感じさせる風情あるアジトだ。

 

 ルパンがソファの対面にどかっと腰を下ろし、むすっとした顔をして肘をついた。

 

「で、あの黒い手は一体なんなんだ?聖剣から出ていいエフェクトじゃなかっただろうがよ」

「あれは対盗人用の仕掛けだよ。妖精達の影が手の形になって噴出していただけさ」

 

 私は聖剣の腹を撫ぜて、平然と微笑んだ。

 まだ夜は暗く深い。時間は十分にある。

 

 実のところ、聖剣に潜む妖精達は普段は眠っている。

 それを盗難防止機構が起こして、「遊んでいい獲物が来たぞ」と伝えるだけの簡素なものなのだ。

 

 言葉にして冷静に考えるととんでもない地雷システムだ。

 妖精を起こすなど、なにが起きてもおかしくない。

 今度からは封印しておこうかな……などとちょっとばかり思案する。

 

 ルパンの隣で立ったままソファにもたれかかる次元が帽子を引っ張り上げてこちらを見た。

 

「妖精って……マジに言ってんのか?」

「次元大介。君も心臓を盗られるルパンを見ていただろう?昔のブリテンにはたくさんいたんだよ。本当に、こういう事件もたくさんあった」

「おっかねぇー」

 

 ぶるっとルパンが震える。君、他人事じゃないんだぞ。

 

「制限時間はおそらく十二時間。その間に妖精を見つけて心臓を取り返す必要がある」

「手がかりはあんのか?」

「僕が聖剣を手にしたあの地点からそう遠くへはいけないはずだ。行くことができて1、2kmといったところだろう」

「人の心臓取るようなやつが野放しとか、大丈夫なのかよ」

 

 次元のもっともな疑問に、私は悪ぶってニヤリと笑って見せた。

 

「時間切れで君が死ねば妖精は自動的に聖剣に戻ってくるからね。特に問題はないさ」

 

 これは本当のことでもあるし、地味に霊基のストレス発散にもなっている。

 さっきからずっと荒ぶる霊基を「まぁまぁ王様ここはひとつ器の大きいところを…」等々宥めてここまで来たからな。

 やはりプーサーにとって盗人は地雷らしい。

 多少は霊基の溜飲を下げさせないと、うっかり手が滑ってルパンをズンバラリンと両断しかねない。

 

 私の殺気が伝わったのか緊張の走る室内にてゆっくりと聖剣を下ろす。

 自分の殺気を散らすためだ。

 

「まぁ、僕の聖剣なら近くまで行けばうっすら妖精のいる場所がわかるよ。夜明けが来るまでなら同行できるから、それまでに見つかることを祈るといい」

「……そりゃ随分と太っ腹だが、どういう風の吹き回しだ?」

 

 ルパンが訝しげに問う。

 私…というか、霊基がルパンをよく思っていないのは向こうも察しているのだろう。

 私は背をソファに預け、体に入った力を抜いた。

 

「僕の聖剣を狙っているという組織の情報を知りたいというのもあるけれど」

 

 そう言ってぱちりとルパンと目を合わせる。

 

「君の豪運に敬意を表して、力を貸したくなった。妖精相手に生き残るのは本当に難しい。それができるのは真に天に選ばれたものだけだ」

「……違ぇな。運を天に任せるのは三流の仕事だ。一流ともなれば、運は自らの力で掴んでこそだ」

「ふふ、そうだね。その通りだ」

 

 ルパン三世の矜持、かつて見たアニメの主人公の光を目の前にして、私はやや気分が高揚する思いだった。

 霊基は憤慨しているようだが…そこはグッと堪えてもらうとする。

 

「ひとまず、範囲内を一通り巡って……ん?妖精の反応がこの辺に、」

 

 ひょこ、と。

 ルパンの隣でソファに寝転がってくつろぐ蜻蛉の羽をもつ黒い小さな影がある。

 影はケタケタと笑い、飛び上がって己を捕まえようとする手をひょいと避けた。

 

 けたけた。くすくす。

 

 「こんの!捕まえろぉ!」とルパンが立ち上がって騒ぎ出した。

 黒い様がデカくてキモい虫みたいに見えるのか、不二子が悲鳴をあげて逃げ出す。

 

 妖精の影は上機嫌にキャハハ!と笑い声をあげて手を叩いている。

 完璧に舐めているようだ。

 五エ門を含めた大の大人三人を手玉に取り、私の肩に腰掛けると部屋にあったパンの袋を掠め取ったらしく優雅に食べ始めた。

 

「俺の朝飯!!くっそー舐めやがってこんちくしょう!」

「虫取り網とか持ってきたほうがいいんじゃねえかこれ」

「食い破られるのが落ちでござろう」

 

 しかし、見れば見るほど善良な妖精だ。

 追いかけっこで妖精の力を振るうつもりが全くないばかりか、みずからの規格まで人間に合わせて弱体化させている。

 本来、サーヴァント並みの力があるのが妖精というものだ。

 それを勝負が成立するほどまで自ら規格を落とすなど、信じられないとはこのことよ。

 

 というか本当に妖精かこれ?

 呼符単発星五鯖より奇跡だぞこんなの。

 

 そのまま手を掻い潜り、妖精は笑いながら部屋を出ていった。

 それを追いかけてルパン達も慌ててアジトを飛び出していく。

 

 私も行こうか、と思ったところでスマホがなった。

 コナン君から電話のようだ。

 「もしもし」と電話に出ると、コナン君が「夜中にごめんね。寝てた?」と心配そうな声が聞こえてきた。

 

「いや、起きてたよ。問題ないさ」

『むしろなんでまだ起きてるの。夜中だよね、そっち。というか、また出歩いてないよね?たとえば聖剣を取り戻しに勝手にルパンのアジトに乗り込んでたりとかさ』

「どっかで見てたりする?」

『正解なんじゃん!!!赤井さんの胃に穴が空いたらどうするの!!』

 

 ポコポコ怒るコナン君を「まぁまぁ」といなし、私は話題を逸らした。

 

「キャスパリーグは無事かい?大きくなってないよね?」

『うん。僕と一緒にメイドさんが作ってくれたラーメン食べてるよ。美味しいみたい』

『ふぉーう!!』

「それはよかった」

 

 『じゃあ、ルパンを追うのも程々にね』と言われながら電話を切れば。

 いつのまにか戻ってきていたルパンが背後から声をかけてきた。

 

「あのガキンチョ、黙示録の獣の出現を防ぐ力があるんだって?かーっ、立派になっちゃってまぁ!」

「ルパン、妖精を追いかけていったんじゃないのかい?」

「見失った。ちくしょー、あの小せえのバカにしやがって!」

 

 ぶすぶすと小さくなるルパンは若干哀れだが、聖剣を盗んだ罪があるので同情はしない。

 私は念のためルパンに釘を刺した。

 

「どこで聞いたのかは知らないけど他言はしないようにね。一応、世の混乱を防ぐために伏せているんだ」

「言やぁしねぇよ。ただまぁ、あんまし無理はさせ過ぎんなよ。あいつはまだガキなんだからよ」

「……そうだね。世界のために子供が犠牲になるのは良いことじゃない」

 

 シエル先輩曰く。

 たった一人の人間に救えてしまう世界なら、いさぎよく滅びるべきなのです。

 

 それが型月世界の根底に流れるルールであるのなら、今の状態は好ましいものであるはずがない。

 

「僕らも行こうか。今ならまだ聖剣の探知に引っかかるかもしれない」

「おうよ。はぁ、でっけぇ借りになっちまったな」

「あとできっちり返してもらうから、そのつもりで」

「おお怖い怖い」

 

 などと言って、ルパンと共に夜の街に繰り出したのであった。

 

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