やっと新居が完成したぞ!!
工藤邸からさほど離れていない、高級住宅街の一角に設けられた一軒家だ。
厳つい真四角の見た目相応、軍事基地並みにバリバリに整えられた壁と天井。
地下シェルターも完備しており、入り口にはシークレットサービスが常時待機。
また、建物内の設備も充実している。
滅多に外に出られないコナン君を慮って図書室も設けられており、工藤邸書斎を超える量の膨大な書物が収められている。
図書室中央には特殊なガラスケースに収められた「ストランド・マガジン」が飾られ、人目を引く。
運動不足にならないようアスレチックコーナーも設置してあり、ちょっとした遊園地のような様相だ。
先日も少年探偵団が喜び勇んでやってきて、一通り隠れん坊に鬼ごっこに遊んでいった。
プレイルームには巨大なディスプレイが聳え立ち、各種ゲーム機に加えてコクーンが設置されている。
ノアズアーク用のPCもここに置かれており、頻繁にネットの海へと遊びに行く彼のために高速通信用の光回線が引かれている。
まあ。
総じて、よく取り繕われた牢獄といって差し支えないだろう。
時刻は朝。
ぽやっとコナン君と一緒に歯を磨きながら服を着替えている今日この頃。
今日は珍しく日本時間で活動ができる日だったからな。
生活リズムが乱れがちなので多少フラフラしているが、こうして一緒に生活できるのは彼の精神状態にもプラスに働くだろう。
フォウ君はいつも通り柴犬ぐらいにおおきくなってしまった体のままのっしのっしとコナン君の周りを彷徨いている。
どうも、フォウ君は自分の体が大きくなったことを忘れがちらしく、よくいつものマスコットサイズの感覚でコナン君にのしかかっては彼を潰しているのだ。
「むぎゅっ!?」「フォーー!?」という潰されたコナン君とフォウ君の悲鳴は私もよく聞く。
「あ、コナン君。おはよう。今日は僕、やっと一日オフだから家にいるよ。もし何か買ってきて欲しいものとかあったら言ってね」
「!珍しいね、いっつも分刻みのスケジュール感なのに」
「まったくね。今日休暇ができたのは偶然さ。今日面会予定だった首相が体調を崩したみたいでね。急遽休みになったんだ」
「そっか。ならたまには羽を伸ばしたほうがいいよ。アーサーさん、ホントに仕事漬けだし」
「もう鞘は僕に預けちゃってるんだから、健康には気を遣わないと」とコナン君が笑う。
竜の生命力にかこつけて今まで駆け抜けてきたが、たしかにそろそろ過労による突然死とかしそうで怖いところ。
流石にフォウ君を残しては死ねないので、赤井さんに言って仕事量を調節してもらうべきか。
私は朝の日課である設置した宝具たちの稼働確認をしつつ、埃一つない廊下を眺め見た。
この陰鬱な真四角の建物の警備には、一応私も一枚噛んでいるのだ。
FBIに一部貸していたブリテン十三の秘宝を全て返却してもらって、それを警備設備に流用したのだ。
ブラン・ガレドの角笛によって召喚された飛竜は私の風王結界によって常に透明化され、庭や窓を空から見張っている。
SPにはエリネドの指輪が配布され、身体強化済み。
緊急脱出用に地下シェルターにはモドロンの戦車が用意されており、生き埋めになったとしても構造物を破壊しながら脱出できるようになっている。
廊下には粛正騎士の影が彷徨くので少しばかり鬱陶しいが、通り過ぎる時には挨拶してくれる行儀のいい騎士である。
これらがある限り、コナン君は恐らくは大丈夫。
あとは私が紅子さんと協力していかに早く彼の代替となるビーストⅣの抑制機構を探せるかにかかっている。
そんなことを考えながら、私はコーヒーを淹れるとプレイルームの大きくて柔らかなソファに座ったコナン君に声をかけた。
「コーヒー入れたよ。アイスのブラック」
「あっ、ありがとうアーサーさん!」
「TVニュースでも見ているのかい?」
「うん。建築家の森谷さんが出てたから、つい」
「森谷さん?」
TVを見ると、どうも日本の建築家の特集らしい。
日本で最も高名な建築家、森谷帝二の手がける都市開発計画!とテロップが出ている。
森谷帝二?どこかで聞いたことがあるような……。
「まぁ、アーサーさんは関わってなかったからわからないよね。実はこの建物、森谷さんが設計してて、僕もちょっと要望を出すために話をしたことがあるんだ」
「この建物の?なるほど、それはお世話に…」
そこまで言って、ようやく思い出した。
森谷帝二。
記念すべき劇場版名探偵コナン第一作、時計仕掛けの摩天楼に登場する犯人にして連続爆弾犯だ。
左右対称に強いこだわりを持ち、犯行理由も「自分の設計した建物が左右対称ではなかったから」。
この新居の形を思い出すに、ほとんど真四角かつ左右対称だが……北面だけ、私の宝具を置く関係で壁の形が左右対称から外れてしまっている。
私は思わず天井を見上げ、顔を手で覆った。
そして脳内スレ立て。
返信するものはいないが、自分用の絶叫スレである。
【悲報】新居、爆破される模様【春の季語】