プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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紅子の夢想

 

「と、いうわけなんだけど。何とかならないかな」

 

 場所は工藤邸。

 いつも通りコナン君を見張っているカラスに事情を説明してみれば、カラスは「そうね……」と悩ましい声を出して羽繕いをした。

 

 既にSPに関しては優作氏と結託して当日のみ変更済みだ。

 

 優作氏には「私の息子のことを考えてくださってありがとうございます」と深々と頭を下げられたのだが、とんでもない。

 本来自由に鮮烈に事件を解決していったであろうご子息に、私にはこの程度しかできないのだ。

 

 森谷に関しては既に手は打ってある。

 私が水盆に映した決定的証拠映像を動画で撮って、「こんなことがあったんだけれど」と警視庁に提出したのだ。

 あらゆる意味でど肝を抜かれたらしい警視庁捜査一課は大騒ぎだった。

 

 再現性を確かめるべく、警官達が見守る中でその場で金属トレイに水を張って映像を映すデモも行った。

 「なんというか、あまり乱用は控えていただけますと幸いです」と目暮警部に困り顔で諫言されてしまったので、やはり問題は山積みだ。

 プライバシーとかその辺に引っかかったんだろうな…まぁ、他人を覗き放題だもんな、この力。

 

 また、流石にこれだけでは引っ張るための公的な証拠とはいかないようで、追加の証拠を取得するために森谷邸周辺を張り込みすることになった。

 また爆弾を仕掛けにいく時に現行犯で捕えるのを狙っているとのことだ。

 

 あとは警視庁に任せておけば問題はなかろう。

 

 あとはビーストⅣ対策に紅子さんを頼るだけだ。

 私が事情を話すと、使い魔のカラスは頷いて口を開いた。

 

「行くのは東都内なんでしょう?なら、一日くらいなら私が古い絆の魔法を強化して一時的に効果範囲を広げれば問題なさそうね」

「本当かい!対価は何を支払えばいいかな」

 

 私が問うと、カラスはしばし黙った後大きくため息をついた。

 

「……今回はサービスしておくわ。本来ならこの対価は光の魔人に払ってもらわなければならない案件だし、貴方が支払うのは道理に合わないわ」

「そんなことないよ。僕が好きでしていることさ」

「それでも、よ。いいからありがたく受け取っておきなさい。それに、貴方から竜の息吹の余剰分を分けて貰っている量を考えたら、このぐらい些細なものよ」

「……すまない。ありがとう、小泉さん」

 

 私が頭を下げれば、彼女は目を細めてキッと私を睨め上げた。

 

「一介の魔女に偉大なる竜が頭を下げるなんて、あまり褒められたものじゃないわ」

「まさか。貴方こそがこの世を救った偉大なる魔女だ。首を垂れてしかるべきさ」

 

 私がいえば、目線を逸らしてはぁ、と彼女はもう一度ため息をついた。

 カラスが顔を隠すようにそっぽを向いた。照れているのだろうか。

 

 だがこれも私としては正直な意見なのだ。

 彼女がいなければ、彼女の魔法がなければ史上最悪の二日間でフォウ君はビーストⅣと化していたかもしれない。

 それを思えば全人類が尊敬するだろう最高の魔術師だ。

 そこに嘘偽りなどあろうはずもない。

 

 紅子さんは話を逸らすように早口で別の話題を口にした。

 

「私の教えた初歩の初歩、水鏡の魔法。早速使っているようね」

「ああ。自分の見ているものを水鏡に映す技術。実にためになったよ。これで今回の爆弾犯も捕まえられそうだ」

「貴方には魔法の才能があるようだし、精進を欠かさないようにしなさいな。次の課題の進捗はどうかしら?」

 

 課題、というのもまた難しいもので。

 ティーカップやワイングラスなど割れやすいものに魔力を込めて、落としても割れないようにしろというのが私に与えられた課題だ。

 型月でいうところの強化の魔術と転換の魔術を併用したものになるか。

 

 対象物に魔力を通して存在を高め、その意味を強める強化と、手を離しても効果が続くよう、魔力を物に定着させる転換。

 その二つが同時に必要になる中々に高度な魔術だ。

 

 ……とはいえ、私にとって高度というだけで魔術師にとっては初歩の初歩なのだろうが。

 

 今のところ、この非常に難しい課題に私は苦戦している最中だ。

 私は強化なら使えるものの、自己の強化のみかつ息をするようにできてしまうので他のものの強化なんて考えたこともなかったからな。

 対して転換はとんと経験がない。

 宝具に魔力を込めることぐらいならするが、魔力の保持は宝具の側が自動で行ってしまうので私が手を出す余地がない。

 

 今のところ、落とした安物のティーカップの割れ具合がヒビで収まってきている程度の結果しか出せていない。

 まったく、手を離すと急速に魔力が拡散してしまっていけない。

 

「今一歩、といったところかな。まだまだ先は遠いよ」

「次の課題もあるのだから早めに終わらせることね」

 

 フンスとカラスは息をついて毛繕いをした。

 厳しいお師匠様であるが、彼女には助けられてばかりだ。

 

 いずれ何かお礼がしたいのだが、どうしたものやら。

 

 

 

 

 

 

 アーサーの去っていく姿を見つめて、小泉紅子はガラス越しに大きくため息をついた。

 

 ただ隣にいるだけでも感じられる濃密な魔力は古代の息吹を感じさせる。

 彼は古の竜そのもの。

 ブリテンの赤き竜がただ人型になっただけの怪物。

 

 そんなものに魔法を教えるなんて、まったく奇妙な縁に絡め取られてしまったものだ。

 魔法は人の技術。古に人が怪物達に近づき対抗するために生まれた技術。

 竜に魔法を教えるなんて、釈迦に説法もいいところだ。

 

 今、紅子の家にある魔女の大釜はその古の魔力で轟々と唸りを上げている。

 

 その量は魔法であらゆるものを手中に収めるに十分で、まるで一夜にして大金持ちになってしまった気分だ。

 それでも、赤き竜からすればほんの少しこぼれた水程度の量でしかない。

 

 きっと、あのまま竜が魔術を修めていけば、それこそこの世の現象全てを統べる王になるだろう。

 ルシュファー様とて容易には止められぬ、古代の暴威となるのだ。

 

 それを思うと、紅子は少しだけワクワクした。

 

 古に失われた魔法の時代が再びやってくる。

 新しき法則である科学を乗り越え、神秘と未明の霧が支配する時代が、竜の羽ばたきで訪れるのだ。

 

 ……まあ、かの王の優しさを思うに、そんな日は来ないのだろうけど。

 

 そう自分の妄想を振り払って。

 紅子は少しだけ笑って、また大釜を調整する作業に戻った。

 

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