プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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時計仕掛けの摩天楼⑥

 

 高木刑事を見送ったあと、私は少しばかり不安になって現場を見守ることとした。

 

 風を操作して視界範囲を拡大。俯瞰するように森谷のいるあたりを高所から見渡すことにする。

 

 しばらくすると警察車両が何台も付近を囲い込むように止まり出した。

 あいにくそこは人通りの多い商店街の一角だ。

 その向こうに米花中央公園があるのだが……まだ爆弾を隠し持ったままの森谷を警戒して、そっと四方八方を警官で埋めている。

 

 と、おっと!

 ここで森谷が一足早く警察の姿に気がついた!

 気付くのがかなり早い。警察は慎重に動いていたが、それよりも森谷の注意深さ…というより疑り深さが優ったというべきか。

 手近な子供を人質に取り、ナイフを出して喚き出した。

 「そこに隠れているのはわかっているんだ!出てこい!!」と絶叫。

 

 買い物に来ていただけなのに突如子供を取られた母親が驚愕の悲鳴をあげて、一気に民衆がパニックになる。

 まずいぞこれは。

 森谷を落ち着かせるため、佐藤刑事を中心とした警察官がいく人か出ていったが、警察も伏せ札を残したいのか全員出ていく様子はない。

 

 そのすぐ裏では「危険ですので、落ち着いてゆっくり避難してください!」と警官達が避難誘導を行なっている。

 

 ふむ。

 仕方ないのでちょっと手助けしようか。

 

 風王結界を操作し、風の刃を森谷帝二へと向かわせる。

 狙うは奴自身……ではなく、奴が持つ安物のナイフだ。

 風を軽く捻り、私はナイフの刃を根本から切断した。

 

 あっけなくぽろっととれた刃に、森谷は一瞬呆けた様子であんぐりと口を開けた。

 

 魔術宝具としてみれば、実は風による声の伝達やらより余程簡単な仕事なんだよな、金属切断。

 風の刃は風王結界本来の機能にかなり近いし、風の射出はデフォルトで搭載された宝具効果の一つだからな。

 それに加えて私の地道な魔術鍛錬の成果もあり、今では風王結界は対軍宝具ぐらいには成長しているはずだ。

 

 ちょっと大言壮語かな……まぁいいか。

 

 武器が無くなったことに気付いた森谷が慌てて折れた刃を拾おうと身をかがめ。

 「確保ーッ!」という掛け声と共に警官達が一斉に雪崩れ込んだ。

 

 森谷は無事そこでようやく逮捕され、手錠をはめられておとなしく引きずられていったのであった。

 

 白昼の大捕物にスマホでカメラ撮影する人も多く見受けられ、本日のSNSトレンドはこれに決まりだな、とちょっと思うなどする。

 おそらく米花中央公園分の爆弾をまだ隠し持っていると思われるので、今度こそ警察にはしっかりしてもらいたいところである。

 

 そこでふと、ビルの影に剣呑な殺気を抱えた人間が数人、チラチラと森谷を伺っているのが見えた。

 おそらく暗殺を生業にしている類の人間だろう。しかもかなりの手だれだ。世界観がルパン三世に近い。

 ただ、今回は彼らが動くより一歩、警察が捕まえる方が早かった様子。

 

 舌打ちしているのが遠目から確認できた。

 さっきのナイフポロリが予想外の事態だったのだろう。

 

 たぶんだが、彼らは各国の上層部が派遣した人員なのだと思われる。

 今回、森谷はビーストⅣのいる建物を爆破しようなんて凄まじい犯罪を犯したのだからな。

 ほぼ人類に対する犯罪と言っていい。

 もしコナン君が死んでいたらそこで終了、文明と共に蹂躙されて人類は滅びていた可能性だってある。

 

 まあ、殺して溜飲を下げたい気持ちは分からんでもない。

 

 ここ最近では、コナン君に降りかかる数々の災いこそが神が人類に与えたもうた試練なのだとかいう言説すら出てくる有様だ。

 偉い人、あなた疲れてるのよ……。

 

 主人公という約束されし事件吸引機だから仕方ないね。

 

 なんにせよこれで危機は去った。

 あとはコナン君のデートだ!!!

 

 

 

 

 

 午後7時。

 ピンポーン、とチャイムが鳴ったので出てみれば、そこには灰原さんがむすっとした顔で立っていた。

 

 「邪魔するわよ」と一言クールに言って上がるあたり、取っ付きづらさが半端ない。

 奥から出てきたコナン君が「おー、解毒剤は!?」と喜色満面に走り寄ってくる。

 

「これ、解毒剤。前に言った通り、半日しか持たないからオールナイトの映画には流石に対応できないわよ」

「半日保てば十分だよ、蘭には途中までしか参加できないって言っておいてあるし」

 

 赤と白のカプセルをころりと取り出し、灰原さんは「あらそう。時間制限にはくれぐれも気をつけることね」と薬を渡した。

 なんともはや、見れば見るほど不思議な薬剤だ。

 

「若返りの霊薬か。つくづく凄いな。科学ももはやここまで来れば魔法の領域だ」

「そんな便利なものじゃないわ。単なる毒薬が、一時的に奇跡のように作用しただけ。本物の若返りの霊薬というならそれこそアーサーさんの領分じゃない?」

 

 そう言って灰原さんは皮肉げに笑った。

 表情の作り方がいちいち小学生じゃないんだよなぁ。

 

 しかし、若返りの霊薬か。

 ブリテン十三の宝であるグラズノ・アイジンの大釜をきちんと使えれば多分可能なのだろうが、今のところ私の腕では無理そうだ。

 紅子さんなら可能そうだが、果たして。

 

「しかし隠さなくていいのかい?工藤新一が小さくなった姿が江戸川コナンなんだって。一応前は隠してたじゃないか」

「もう今更でしょ。完璧に事情を把握されてる気配が満載だし、知っててもらった方が今後も行動しやすいと思って」

「まあ、全力で融通するけど」

「はは。そういうトコ人が良すぎるんだよ、アーサーさんは」

 

 コナン君はそう言ってバスタオルを羽織り、軽く解毒剤を飲み込んだ。

 

 一拍置いて、「ぐぅッ!?」と心臓を抑えてコナン君がうずくまる。

 

 科学によって成される「永遠」に程近い奇跡。

 おそらく完璧な不老という魔法の域を、魔術にまで貶める最高峰の科学が此処に成されるのだ。

 

 しゅうしゅうと不可思議な煙が立ち上る。

 そこにいたのは大きなバスタオルを羽織ったかの高校生探偵。

 工藤新一、その人である。

 

「そういえば、この姿では自己紹介してませんでしたよね。改めまして、江戸川コナンこと工藤新一です」

「かっこいいじゃないか。蘭さんが惚れるわけだ」

「っ、そんなんじゃ…」

「なんにせよ急いだほうがいい。待ち合わせは8時からだろう?」

 

 彼はこれから着替えもあるし身だしなみも整えなきゃならない。

 工藤君は慌てて服を取りに走っていく。

 

 彼が自室に入って10分ほど。

 出てきた工藤君は髪もセットし直したのか、ピシッと決めていた。

 

 服は僅かにフォーマル寄りで、差し色に赤が使われていて非常におしゃれだ。

 たぶん蘭ちゃんが赤が好きなのを意識してのものだろう。

 照れくさいのかやや顔が赤い。

 

 灰原さんが「まぁまぁなんじゃない?」とお褒めの言葉を投げかける。

 コナン君って根本的に美的センスは結構良いんだよな。

 両親の英才教育の賜物か、舌も肥えているし、耳もいい。

 格付けチェックとかやったら鬼ほど強そうなスペックだ。

 

 対して、庶民でしかない私と根が蛮族のプーサーのコンビではあっという間に画面外へ消えるしかない。

 プーサーそっくりさん。なんだそれただの私じゃねーか。

 

 

 そうして、「じゃ、行ってくる」と工藤君は顔が赤いまま夜の街へと繰り出していった。

 私はフォウ君を抱っこしながら、灰原さんと一緒にその勇姿を見守るのであった。

 

 このまま風王結界でデートの様子を見守ろうかなとも思ったが、流石にプライベートの覗きはマナー違反だ。

 

 ゆっくり楽しんでこい若人よ。

 

 彼の後ろ姿にちょっぴり切ない顔をする哀ちゃんを添えて。

 工藤君、罪深い男である。

 

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