工藤君のデートは大成功に終わったそうだ。
頬を赤くして「ただいま」と満足そうに目線を逸らして帰宅した彼に、私はフォウ君と手を取り合って喜んだものだ。
森谷も留置場で大人しくしているようだし、平和であることよ。
以降数週間、コナン君も私も大事件に巻き込まれることはなかった。
いくつか事件はあったものの、平和そのものだ。
語るほどのことといえば三つぐらいか。
一つは、世界的には大ニュースになった話だ。
先月二十日未明、バチカンに強盗グループが押し入って聖槍ロンギヌスが盗まれそうになったのだ。
銃器と爆弾を駆使した組織的な犯行によって警備員や一部聖職者に死傷者多数。
歴史に名を残すであろうその事件は、犯行グループ全員死亡(推定)ということで煮え切らぬうちに終わりを迎えたようだ。
具体的に何が起こったかというと、無事聖槍ロンギヌスを手に入れてしまった犯人たちに聖槍の天罰が直撃。
「嘆きの一撃」により犯人全員が塩の柱に変わってしまったということだ。
無事だった警備員などが目の前で塩の柱に変わっていく犯人を目撃したらしく、基督教徒を中心に世界的大ニュースに発展してしまった。
なにせ、天罰の実在とは神の実在。
これ以上ない程に聖書の神の存在を証明する現象が発生したことは、教皇庁も正式発表せざるを得ない大事件だった。
その上、神はお怒りと来た。
急遽特別なミサが執り行われ、人類の罪を雪ぐための祈りと懇願が信徒たちによって行われたそうだ。
私としては、「怖…ロンギヌス預けといて良かった…」しか感想はないがな!
型月において、聖書の神は神霊というよりどうも人理と密接に関係するシステム的なもののようだからな。
そんな超巨大システム、神秘側であるプーサーたる私は触らぬが吉というものよ。
二つ目は、最近日本のメディアに出たら「日本のゲーム好きな王」として私がバズり散らかしてしまったことだ。
世界中のTVメディアに常に追われている私だが、この度日本メディアの取材を受けることになったのだ。
しかも神秘とかの話ではなく、最近人気の「普段何してますか?」「初めて飛行機に乗った時のご感想は」系のプーサーの休日的内容で。
この流行、実はアメリカが発祥だ。
前に「アーサー王の日常を撮りたい」と目論んだTV局社長の肝煎りで、私の生活に密着するという12回放送の企画があったのだが、それが他の国でも大人気だったことに由来する。
流石に私は一人しかいないし忙しいので取材に応じるぐらいしかできないが……。
最近。
ようやく日程をもぎ取れたらしい日本のTVが「日本の一番好きな文化」を聞いてきたので、「日本製のゲームかなぁ」と答えたのだ。
好きなんだよ…古き良きJRPGであるドラゴンでクエストなゲームもそうだし、死に覚えアクション系のエルデンなリングも。
インタビュアーさんにすごく意外!って顔をされたが、実際私の趣味はゲームと飯なところがある。
霊基なんかも割とゲーム好きなのか、のめり込みすぎると直感がガシガシ働き出すので自分でスキル制限をしなきゃならなくなる。
ゲームで直感はかなり無法だからな……格ゲーとかで使うと向かう所敵無し過ぎて大会でトップも取れそうだ。
取材は工藤邸で行われたのだが、そこで話の途中、各作品に登場するドラゴンが好きという話になった。
プーサーも赤き竜だからとかそんなではなく、単純に私が好きなだけだ。
しかしそれだと格好がつかないので、せっかくなので美人のインタビュアーさんに映える映像を持たせるのも兼ねて風王結界を極小発動。
風を屈折させて幻覚を編み、やや狭い客間内に霊基の記憶にあるヴォーティガーンを再現した。
ついでに大気を震わせて咆哮を追加。
一応事前に「僕の知る竜」として幻影として実体化することを説明したのだが、意外と真面目にびっくりされてしまった。
「これはかつて僕と戦った白き竜の化身、魔竜ヴォーティガーン。こうして今見ると素材とか剥ぎ取れそうだなぁと思ってしまうのが、現代日本に毒されているところさ」
そう言ってからから笑えば、「アーサーさんの人生だけでゲームが何本も作れそうですねー!」と相槌が返ってきた。
プーサー過去編アクションゲームか。本当に作れそう。
なお、実際に後日某有名ゲーム会社からオファーが来たりもした。
何ならハリウッドから映画化の話も前々から来ている。
いずれどれかを受けることになるかと思うが、霊基のプーサーは現在渋い顔をしているところ。
どうも崩壊した円卓が黒歴史すぎて開帳したくないらしい。
円卓から目を離した5秒後には女性問題を起こしてる?なるほど……気持ちはわかる。
三つ目は来たるフォウ君との対決を見据え、アメリカの無人の荒野で戦闘訓練をしたことだ。
どこか戦闘に向いている空き地を貸して欲しいと米国に相談したのだが、流石は土地が広大なだけあり、すぐに荒野の一角を貸してもらえた。
ただまぁ、私の戦闘を観察しようと研究者とメディア関係者等々が大挙して一緒にやってきたが。
危険だから距離をとって撮影してもらったが、これじゃ思いっきり風王結界が使えないじゃないか。
ふむ、と思いつつこれも民間人を巻き込まない訓練だと思って戦闘を開始する。
展開した風王結界をぶん回し、砂を含んだ風速120mの暴風を顕現させる。
低木と草木が一瞬で地面から剥ぎ取られ、結界で操作して守っている撮影陣の方にも大気の影響でやや強い風が向かう。
もし範囲内に建造物があれば一瞬で粉砕してしまうため、とても市街地では使えない技だ。
さらに追加で風を用いた動きの拘束練習。
フォウ君を拘束できるよう、と一点に風を集中させる。
ほぼ視界が遮られるほどの暴風の中、エクスカリバーをできる限りの承認させる。
「十三拘束解放(シール・サーティーン)――円卓議決開始(ディシジョン・スタート)!」
心の善い者に振るってはならない
是は、人道に背かぬ戦いである
是は、精霊との戦いではない事
是は、私欲なき戦いである事
────可決。
四段階を解放してブッパすれば、大岩とその先一キロメートルを消滅させる一撃となった。
エクスカリバーの威力は想定の範囲内。
風王結界は霊基の覚えていたそれよりかなり高出力で、練習の甲斐あり満足のいくものだった。
元々内蔵されていた魔力で動いたのを、自分も魔力を通してよりマニュアル操作に近い形で動かせるようになったからこそのこの威力だ。
そんなわけで戦闘訓練は私も満足のうちに終わったのだが。
後日。
私のあまりの戦闘力に単独の軍事戦力みたいに各国に見られてしまったらしく、一悶着起きてしまった。
確かに威力の上がった風王結界なら現代軍事力をほとんど壊滅させられるからな。
軍事建造物を吹き飛ばし、戦闘機を墜落させ、戦車が宙を舞う恐るべき暴威だ。
エクスカリバーは言わずもがな。
半分も承認されれば街を焼き尽くす小型核兵器みたいな威力になる。
アメリカの国防大臣には急遽呼ばれ、今後の発表について三時間も協議することになった。
安全保障上のなんちゃらが力学として働いて、日本周辺の軍事行動に変化が起こることを懸念したらしい。
どのように口を出してもさらに厄介なことになる非常に繊細なポジションになってしまったのだ。
国連でも平和を求めるみたいな雰囲気で旗頭やってたからな。
付近で戦争が始まったら私が出ていくと思われているらしく、紛争地帯からもアーサー王に来てもらいたいという声が今後出てくるだろうとのこと。
うおおお現代の戦争なんてクソ泥沼化必須の地獄に関わりたくねー!!!
というわけで、私は長々と日本の防衛相を含めて話し合いをすることになってしまったのであった。
・今後の予定
水平線上のストラテジーを終えたら、本作品は一旦連載終了にしたいと思います。
ネタ枯渇ゆえ…スマヌな……