SEED DESTINYに00要素を混ぜ込んでみたら、より一層gdgdになった件について 作:種再燃祭
さて、C.E.72年も半ばの7月に入った。
この月のトピックは、オーブの”特別収監者”、一般的言うと「オーブに拘留されていたザフト捕虜」のプラント送還が本格化し出したということだろう。
まず大前提として、「オーブは政治的理由から”オペレーション・スピットブレイク”以降のプラントを国家として認めておらず、故にザフトは国軍ではなく
なのでオーブがザフトに対して行ったのは、あくまで「国際テロ組織ザフトに対する警察行動」であり、警察の装備では重武装民兵組織に対応できないため軍がそれを代行する”代行軍”にて対処した……という建前だ。
これも当然の話で、仮にプラントを国家、ザフトを国軍としてしまうと、オーブ本土攻撃をされた以上は報復でプラント本国への攻撃と停戦が最低ライン。可能なら占領、降伏という所まで持っていかなければならなくなる。
世相から考えれば、戦時中の代表首長ウズミが「パトリック・ザラの独裁によりプラント評議会は機能を失い、既に国家の体を成してない」としなければ、プラントの”全ての砂時計”に対する全面攻撃が世論として出ても不思議では無かった。
無論、仮に本土への全面攻撃前にプラントが降伏すれば、政治的にも経済的にも軍事的にも悪夢以外何物でもない”占領統治”が待っていた事だろう。
故にオーブはプラントは国家ではなく自治共同体と定義し、独裁者パトリック・ザラに乗っ取られ、自警民兵組織がザラ派とそのシンパにより私兵化されテロ組織となったという体裁にしたのだ。
だからこそオーブは、国家間の国際条約である”ユニウス条約”には「オーブはプラントを国家として承認していない。故に戦争もしていなければ、いかなる条約も締結できない」と参加せず、戦争していない故に「戦争捕虜は存在しない」という立ち位置をとっていた。
とはいえ、だ。
”終わらない雨事変”の亡命希望者は置いておくとしても、”オペレーション・スピットブレイク”の僅かな残存ザフト兵、ボアズ攻略戦で降伏してきた者など普通の意味で捕虜はそれなりに居たのだ。
オーブの法律に照らし合わせれば、本来ならば「武装してオーブを攻撃した無国籍テロリスト」など問答無用で処刑であるが、それをしてしまえばどう考えても政治的禍根にしかならない。
そこで「特殊な事例故に情状酌量の余地あり」という名目で時限立法で”特措法”が制定され、テロリスト呼びは流石に外聞が悪い(”テロリストに情けをかけた”という前例や口実にされたくない)ので、ザフトの捕虜は最終的に”特別収監者”という名目が与えられたのだ。
国家として認めないと言ってる以上は公式な外交チャンネルは存在しない事になっているのでので「非公式な外交チャンネル」を通じてオーブはプラントと捕虜総監に関する予備交渉を開始、そして”ユニウス条約”が効力を発揮するC.E.72年4月1日を待って交渉を本格化させた。
それなりの根回しがあったせいか交渉自体はスムーズに進み、早くも5月には「特別収監者のプラントへの引き渡し」が開始された。
ちなみにプラントやザフトには諸事情により公式に「オーブ人の捕虜」は存在しないので、捕虜交換という手は使えないのが何とも歯痒い。
だが、話がややこしいのはこの先で、プラントへの帰国希望者は問題ないのだが、問題となったのは「オーブへの亡命・移住希望者」が少なからず居たのだ。
しかもオーブには希望者全員を受け入れられない事情があった。
オーブは国是として、「ナチュラルとコーディネイターの共存共栄」を掲げており、思想的にそれに相容れない者を不穏分子となるのが分かっていて受け入れる訳にはいかなかったのだ。
何もこの手の思想チェックはザフトやプラント人だからという理由で行われるのではなく、「広義な意味でのオーブへの移住希望者全員」に行われるものであり、例外を作るわけにはいかなかった。
例えば、先に話題に出したザフト将兵の大量脱走事件の”終わらない雨事変”には、オーブへの亡命希望者が思想チェックで撥ねられるケースが多く存在したし、世界各地から難民申請や移民申請をしたコーディネイターも必ず思想チェックは受ける。
オーブは国内において「国家間対立上等」の気風があるが、反面、「ナチュラル、コーディネイター、その中間であるハーフコーディネイターやクォーターコーディネイターの人種間対立は厳禁」としているのだ。
つまり、先の事変で少なからずいた「ラクスのそばに居たいが、それはともかくナチュラルは劣等人種」などという亡命希望者は一発アウトでプラント送還対象になっていた。
無論、プラントとの外政折衝やオーブの内政問題のみならず、曲がりなりにも安全保障条約相手国である大西洋連邦との兼ね合い、友好的な中立国との意見調整、仮想敵国であるユーラシア連邦や東アジア共和国に付け入る隙を与えないよう注意せねばならない……
新オーブ代表首長として矢面に立ち事態の収拾にあたったウナト・エマ・セイランは本気とも冗談ともつかない口調で、
「やれやれ。儂の生涯の中で、最も成功したダイエットになったな」
とぼやいていたらしい。
危うく”政治狸”だの”妖怪狸”だのと親しまれて(?)いる二つ名を返上せねばならなくなったということだろうか?
ちなみに政治を学ばせる為に秘書の1人をやらされていた一人息子は過労でぶっ倒れて病院送りになったらしい。
⌚⌚⌚
だが、そんなオーブの状況を虎視眈々と見ていた人物がいた。
「この状況、使えるわね」
他の誰でもない、暫定とはいえプラント最高評議長のアイリーン・カナーバだ。
カナーバの”正体”はさておき、彼女の現在の立ち位置から考えれば好機到来だ。
『円滑な帰還事業には、相互理解が必要不可欠』
とウナトとオーブに遠回しな関係改善を打診してきたのだ。
オーブは確かに”ユニウス条約”で縛れる相手ではないが、逆に言えば「ユニウス条約に縛られない関係」を再構築する事ができる。
戦後のこの時期を考えると、かなり旨味のある話だった。
厳密に言えば、オーブは両国の関係に関わらず、さっさと捕虜送還を行いたかったし、例えば、連絡事務所に使う一区画を除いてさっさとボアズをプラントに投げたかったのだ。
しかし、捕虜の早期受け入れだけでなく、ようやくひと段落つきそうな国内のザラ派(特に過激派)の公職追放などの排除を呼び水に、
『凍結しているザラ家の資産と”ターミナル”のフロント企業と資金を出し合ってボアズを買い戻したという青写真を実現させるためには、オーブの協力は不可欠』
よりによって”アスラン・ザラの処遇”まで絡めて要求、いや”両国関係改善を前提とした協力体制の確立”を言いだしたのだ。
”アスランの処遇”、いわゆる”アスラン・ザラ問題”は、オーブとしても実に頭の痛い問題だった。
アスラン・ザラは確かに”史上最悪の独裁者”、”人類だけでなく地球上の全ての生物を滅ぼそうとした狂人”の一人息子だ。
だが同時に、義勇兵としてヤキン・ドゥーエ戦に参加し、自らの手で父親に引導を渡しているのだ。
もうこれだけで、アスラン・ザラという少年が如何に面倒臭い存在か察して頂けるだろう。
何しろアスラン、プラントに残っているだろうザラ派にとり、怨嗟を集める”報復の対象”であると同時に、パトリック・ザラの血を引く”新たな象徴”としても使えるのだ。
どっちに転んでも、あるいは生きてても殺されても種類と深度が変わるだけで、いずれにせよ面倒事と厄介事が簡単に予想されるという、まさに”歩く厄ネタ”である。
おまけにアスランは捕虜ではなく「亡命して参戦した義勇兵」だ。
オーブに留まることが一番安全な判断なのは、オーブ政府も分かっていた。
だからこそ、身の回りのお世話から夜のお世話まで行うおつきの(あるいはお手付き済みの)三人のメイドと共に未だにオーブへの在住が許されているのではあるが……かと言っていつまでも政治的時限発火装置のようなアスランをオーブにおいておきたくなかったのも本音だった。
実際、戦争の早期終結を望んでいたオーブにとり「アスラン・ザラの政治的価値」は、パトリック・ザラを討ち「実に息子にすら賛同されない独裁者」とすることで「ザラ派がプラントの総意ではない」事を示し、またそれをプロパガンダ動画として世界中に拡散したことで「プラントの潔白とアリバイ」をアピールする時点で既に終わっていたのだから当然だろう。
ただ、その時点ではザラ派の残党が不穏な動きをしていたために、ハイリスクだったためにプラント本国に戻すことはできず、ようやく”ユニウス条約”施行後数か月たち、ある程度の安全を確保できる状態になったと判断できるようになった(ただし、それでも本土は危険ということでボアズ居住を推奨されたが)のだが……
(関係改善ねえ……)
オーブ新代表首長ウナト・エマ・セイランは思考する。
プラントの暫定最高評議長アイリーン・カナーバの提案のやらしいところは、「オーブにとってこれといった国益の損失や不利益」はないところだ。
これが”ユニウス条約”以外の何らかの条約でオーブを縛ろうというのなら話は違ってくるが、今回は「あくまでプラント市民の送還と引き受けの円滑化」が目的だ。
オーブ国内に残しておいても、国費を浪費するだけでデメリットにしかならないプラント産のコーディネーターの放逐はむしろオーブにとっての利益だ。
「何が”奇跡のカナーバ”だ。中身は中々大してとんでもねぇ
そうウナトは苦笑する。
”奇跡のカナーバ”
それは軍事的にも政治的にもプラント優位とは言えない状況で、プラントを「独立国として旧プラント理事国に承認させ」、国家として存続できる十分すぎる条件を引き出すことに成功したカナーバの二つ名だ。
後世の歴史書に”第一次連合・プラント大戦”と記されるこの戦いの本質とプラントの本懐が「プラントの独立戦争」だったということを考えれば、実はプラントの方が”ユニウス条約”では勝利条件を満たしていた……そうであるが故の”奇跡”だ。
もっとも前作を読んで頂いた皆様には、それが普通の意味での奇跡などではなく、種も仕掛けも裏もカラクリもある事だと察していただけるだろう。
そう、アイリーン・カナーバとはイノベイド、それも情報型の一人であるのだから。
ただ、彼女は間違っても「オーブの間者」ではない。その立ち位置は、あくまでイノベイド、”首魁リボンズ・アルマークの意向でプラントに送り込まれたエージェント”なのだから。
”イノベイドの依り代”であるオーブに大きな不利益をもたらすつもりはないが、その第一の目的は……『戦後におけるプラントの存続』。
故にイノベイドの強みを十全に活かして立ち回り、そしてこうして成果と結果を出した。
そして、捕虜の送還とアスラン・ザラの引き渡し出汁にして、関係改善を行いプラント存続を万全な物としたのだ。
地球連合でも、ユーラシア連邦と東アジア共和国には「プラントを攻めたい意思はあっても、肝心の宇宙戦力が無い」ため、当面は安牌。
さっさと戦後復興で一儲けしたい大西洋連邦にとり、”ユニウス条約”は都合が良いので遵守するだろう。
だが、オーブは旧プラント理事国ではない為にプラントに攻める意思は希薄だが、問題はそこではなく「一国の意思決定だけでプラントを攻撃でき、また一国の保有戦力だけでプラント全土を殲滅可能」だということだ。しかも”ユニウス条約”をはじめ、国家間条約を締結して縛ることは、現時点では不可能なのだ。
そんな国に「関係改善を行う」ことは立派な安全保障であり、上手く立ち回りいずれ友好関係を築ければ、「プラントの国家再承認」を狙っていける。
結局は、オーブの狸とプラント狐の化かし合い、これはそういう話であった。
アスランネタであっても、アスラン・ザラ本人が出てくるとは言ってない(挨拶
という訳で、このシリーズ初の政治ドロドロネタですw
カナーバ:「捕虜とアスランの引き受け出汁にして、関係改善図ったろ(そしてゆくゆくは国家再承認)」
ウナト:「いや、そりゃ確かに損はないし、捕虜も息子ザラも引き取ってもらわんと困るんだがな」
とまあ突き詰めればこんな感じで。
カナーバさん、”暫定”評議長な自覚はあるので、今のうちに「プラント存続」の道筋をしっかり作っておきたいみたいですね~。
まあ、今のうちに関係改善しとかないと、後々面倒なことになりそうですしねェ(暗黒笑顔
それに国家再承認されないと、オーブと条約結べないしw
次回はちょっと未定で。
どうか応援よろしくお願いいたします。