SEED DESTINYに00要素を混ぜ込んでみたら、より一層gdgdになった件について   作:種再燃祭

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本日も深夜アップ。
いや~、このシリーズも遂に80話ですw
そしてキリの良いところでリデラードのオーブ滞在篇のラストエピソードになりました。
さて、シンとリデラードの結末と行く末は……

甘さは……控えめ?








第80話 少女の告白と”こいのうた” 【挿絵入り】

 

 

 

 

 

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「さて、今日もお勉強の時間だね?」

 

「だな。たまにはこういうのも悪くない」

 

 リデラードがオーブを訪れてから三日目。

 本日も図書館でお勉強タイムだった。ただし、場所はリデラードの宿泊しているホテルからほど近いオノゴロ島の中央図書館に変更されたが。

 そして、昼食を取り、リデラードの調べ物がひと段落ついたとき、

 

「シン、例えばさ……遺伝情報だけで就ける仕事とか全部決まるとしたらどう思う?」

 

 ふとそんなことを聞いてきた。

 

「それってディストピアまっしぐらじゃないのか? それは後天的要素を全て排除するってこったろ? リデラード、例えば性格とか趣味嗜好ってのは、遺伝子より後天的要素、例えば生活環境なりなんなりの方が強いぞ?」

 

「う、うん。まあ、そうだよね……」

 

 ちょっとたじろいたようなリデラードだったが、

 

「遺伝子的に向いてるって合致しても、性格的に向いてないってケースもザラにあるだろうし……それに『就きたい仕事』と『遺伝的素養』が合致してるってかなり幸運だぞ? それってやりたい仕事と言うならば”才能”が一致してるってことなんだし」

 

 まあ、統計学的にみれば一致する確率は高くは無いだろうことは容易に想像がつく。

 

「で、でもさ、それを国民全体に……世界全体が『才能と仕事が一致した民衆』になれば、世界はずっと効率的に動くような気がしない?」

 

「そうかぁ? 例えば、『先生になりたい奴が遺伝子的に向いてるから軍人になれ』って言われて、まともに戦えると思うか?」

 

 ”アロウズ(ARROWS)”に所属しているシンらしい物言いだった。

 

「でも、好きとやりたいと才能が一致しないって不幸なことだと思う。それって才能の無駄って意味だし……」

 

 それは逆説的に『そうあれと作られ、進む道が決められた”アコード”が恵まれている』という意味である反面、『やりたい事を得ることができない』という境遇に対する自虐にも聞こえた。

 

「才能を生かすことが幸せだとは思わないけど? 俺は」

 

「どゆこと?」

 

 

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「人生、楽しんだもの勝ちってことだな。やりたいことやって、好きなことやって、それで挫折するのも失敗するのもまた人生じゃねーの?」

 

 そうシンは朗らかに笑うが、

 

「……私は嫌だな。失敗するのも挫折するのも怖い。何か生まれてきた意味を失いそうで怖いよ」

 

「もしかして、リデラードって明確な失敗とか挫折とかしたことないクチか?」

 

「……うん」

 

「そりゃまた”不幸”だな」

 

「不幸? 失敗したり挫折しなかったことが?」

 

「ああ。成功体験ってのは存外に得る物が少ないんだ。何しろ『こうすれば上手くいく』って最適解一つしか見えなくなることが大半だ。人間ってのは、『こうすればもっと上手くいった』って考えるより、『たまたま上手くいっただけの成功』を確固たるものにしちまうことがダントツに多い生き物だ。そして、経験ってのは死なない限りは『上手くいかなかった時』の方が圧倒的に手に入る。どうしてだか分かるか?」

 

「失敗の経験が積み重なったところで無意味じゃない……」

 

「果たして本当にそうか? 上手くいかなかったってことは、『どうして上手くいかなかったのか?』を真剣に考える。上手くいかなかった理由をあれこれ探す。経験ってのはそういう時に醸成されると俺は思うぞ? もっとも……」

 

 シンは苦笑いしながら、

 

「全てを他人のせいにしたり、”運が悪かった”って一言で済ませて経験を不意にしちまう奴もいる。結局は人それぞれなんだけどな。それに一度しかない人生、誰も代わりに生きちゃくれないだろ? なら自分の意思で決めてやりたいことやってみたほうが”面白い”だろ?」

 

「自分の意思かぁ……」

 

「なあリデラード……”やっておけばよかった”とか”やってみたかった”より、『やってみて失敗した』、『やらなきゃよかった』の方がよっぽど納得しやすいと思うぞ? 自分自身に」

 

 

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「……シンってまるで挫折や失敗をしょちゅうしてるみたいだね?」

 

 小さく笑ってリデラードがそう聞けば、シンは真顔で

 

「いや、まんまそうだし。挫折や失敗なんて日常茶飯事だぞ? 例えば、そうだな……”アロウズ”で一番弱いパイロットって俺、いやダリルさんやハワードさんなら何とか互角か? それでもコーラサワー大尉には未だ勝ち星0で、キラさんやグラハムさんに至っては、勝ち筋すら見えてませんです。試行錯誤の日々です。ハイ」

 

 どうやらシン、比較対象が悪すぎる事に未だに気づいていないようだ。

 

「シンでもそうなんだ」

 

「俺なんざ大したことないって。上には上がいるってことさ」

 

 諦観ではない。その赤い瞳は諦めている者の目ではない。

 ただただ、日々現実と向き合い、それでも「今の自分」を受け入れ、客観視して、それでも向かうべき先を見据える者の強い意志の籠った自然体故の眼差しだった。

 

「シン……」

 

「ん?」

 

 リデラードはすっと立ち上がり、

 

 

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「ちらっ♡」

 

「お、おい」

 

 すかさずリデラードはシンにぴとっっとボディタッチし、

 

(リデラード、マジ可愛いんだが……どうしてくれよう?)

 

「へぇ~。私、身長も無いし、胸も平たいけど……シン、ドキドキしてくれるんだぁ?」

 

「ば、バカ! キラさんじゃあるまいし、胸の大きさにこだわりはねーって!」

 

 すかさず上官に流れ弾を飛ばすシンだったが、今日も『図書館ではお静かに』でお開きになってしまったようだ。

 

 

 

 気がつくといつの間にか夕暮れ時になっていて、

 

「シン、ちょっと海岸線、散歩しない?」

 

「いいぞ。夕飯にはちょっと早いしな」

 

 

 

 

 

 

 

⌚⌚⌚

 

 

 

 

 

 

 

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「オーブの海に沈む夕陽も綺麗だわ……」

 

「そうだな。うん、悪くない眺めだ」

 

 それは夕陽のことなのか、はたまたリデラードのことなのか……

 

「私さ、悩み事や考え事があると、故郷でもよく一人で海へ行くんだ」

 

「良いな。確かに海を見てると、俺も心が落ち着く気がするよ」

 

「あのさ、シン……」

 

「うん?」

 

「私、”南アフリカ統一機構”のパスポート持ってるけどさ、祖国って呼べる場所はユーラシア連邦に組み込まれちゃってるんだよ」

 

 ユーラシア連邦はその名の通り、本質的には複数国家の寄り合い所帯である連邦制国家であり、イメージ的にはロシアと周辺国とEU、バルカン半島勢力が結びついて成立したような印象がある。

 そして、その成立経緯の中で飲み込まれていった小国が多くあったのは周知の事実だ。

 なんのことはない。ロシア革命→第二次世界大戦→冷戦時代の最大膨張期のソ連と大差ない流れだ。

 

「それでね……」

 

 リデラードは不意に真剣な、いや覚悟を決めた表情で

 

「実はこう見えてリデラードさん、ユーラシア連邦からの祖国再独立を目指す闘士の一人なんですよ」

 

「ふーん」

 

「ちょっと! リアクション軽くないっ!? あれ? もしかして信じてもらってない……?」

 

 しかしシンは事もなげに、

 

「いや、リデラードがユーラシア連邦のエージェントだってんなら大問題だけど、『ユーラシア連邦からの独立を狙う勢力』なら大歓迎さ。ユーラシア連邦の国力削げるし」

 

 うん。紛れもなくオーブ国民の本音だ。

 

「うわぁ~。オーブ人のガチ本音を聞いた気がするよ」

 

 せっかくの世紀の大告白の筈が緊張感が見事に霧散して、リデラードは思わず気の抜けた笑いになってしまう。

 

「まあ、あれだ。今はともかくかつては『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入せず』なんて掲げていた国だからリデラードたちの活動に積極介入するとは思えないけど、まあ……間接的側面支援くらいはするんじゃない?」

 

「?」

 

「いや、オーブとユーラシア連邦、オマケに東アジア共和国はどう転んでも敵国同士だし。そのうち揉め事の一つでも起きれば『リデラードたちにとって都合の良い展開』くらいなるかもしれないだろ?」

 

「あははっ! それはまた不確定要素だねぇ~」

 

「世の中、案外何がどうなるかわからない物だぞ? それに現状考えると、そんな低い可能性じゃないと思うんだよなぁ~。ユーラシア連邦とぶつかるの」

 

「うふふ。そうなるように期待しちゃうよ♪」

 

 そして、綺麗にリデラードは微笑み、

 

「ねえ、シン」

 

「ん?」

 

 

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「色々ありがとう♡」

 

「ああ」

 

「リデラードさんは明日帰るんだけどさ」

 

「そっか……寂しくなるな」

 

 それが触れなくても、心を読まなくても本当の気持ちだってわかるのがリデラードには何だかやけに嬉しかった。

 

「うん。また……会えるよね?」

 

「おう。連絡先、渡しておくよ。簡単に会えなくても繋がることがいつでもできるって考えれば、いくらかマシだろ?」

 

「ふ~ん。シンはいつでもリデラードさんと繋がっていたいと?」

 

「まあ、リデラードならそれも悪くないか。なんか居心地いいんだよな」

 

「そっかそっか」

 

”CHU♡”

 

 それは唇同士が触れるだけのような優しいキスで……

 

「続きは、次に会えた時にね?」

 

「……ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあ、ここで終われば奇麗な『幼い恋物語』で終わったのだろうが……

 

 

【挿絵表示】

「結局、最後の日までシンに空港まで送って貰っちゃってる私って一体……?」

 

 そう苦笑するリデラードに、

 

「まあ、暇なんだ。付き合わさせろ」

 

 そう翌日、リデラードのオーブ滞在最終日に、シンはホテルをチェックアウトしたリデラードをバイクに乗せて空港まで送りに来たのだった。

 シンのバイクは大型クルーザータイプ、バイクにしては荷物を乗せるスペースが大きめで多めだったことが幸いした。

 そして今はオーブ国際空港の出国ロビー。最後の逢瀬にはある意味、ぴったりな場所だろう。

 

 結局、大きな波乱も何か決定的な出来事もなく、二人の再会は終わった。

 だが、それでも良いのかもしれない。

 きっとシンとリデラード、この二人にとって”今はまだ”その時ではないのだろう。

 

(ん? この曲って……)

 

 

 

生きてゆく力が その手にあるうちは

笑わせてて いつも いつも

うたっていて 欲しいよ

 

きっとこの恋は 口に出すこともなく

伝わることもなく 叶うこともなくて

終わることもないでしょう

ただ小さい小さい光になって

あたしのこの胸の温度は下がらないでしょう

 

欲を言えばキリがないので

望みは言わないけれど

きっと今のあたしには あなた以上はいないでしょう

 

生きてゆく力が その手にあるうちは

笑わせてて いつも いつも

側にいて 欲しいよ

 

きっとあなたには 急に恋しくなったり

焼きもちを焼いたり 愛をたくさんくれて

愛をあげたい人がいるから

ただ小さい小さい光のような

私の恋心には気づかないでしょう

 

でもそんなあなただからこそ

輝いて見えるのだから

きっと今のあたしには あなた以上はいないでしょう

 

教えてください神様

あの人は何を見てる?

何を考え 誰を愛し

誰のために傷付くの?

 

生きてゆく力が その手にあるうちは

笑わせてて いつも いつも

側にいて 欲しいよ

 

La La La ……

 

 

 

 ふと二人の耳に届いたメロディー、それは……

 

”こいのうた”かぁ……ラクスさんのこの曲を聴いた時、何だか無性にシンに会いたくなっちゃったんだよね」

 

「それは光栄と……と言うべきか?」

 

「そうそう♪ このリデラードさんに想われたんだぞ? 光栄に思いなさいって♡」

 

 リデラードは優しく微笑み、

 

「シン、いつか”ファウンデーション王国”って名前を聞くことがあったら、遊びに来てよ。今度は私が案内してあげる♪」

 

「ああっ! 必ず行くよっ!!」

 

 

 

 そうしてもう一度、どちらともなく自然に別れのキスをして、リデラードはオーブを発った。

 だが、二年前のように『もう会うことはないかも』という気持ちをリデラードは抱かなかった。

 

 さて、ここで一つ台無しな話でもしよう。

 シンとリデラード、やっぱり2年前と大きく違った。

 それを成長と呼ぶかただの変化と呼ぶかは人それぞれでいい。

 いずれにしろ、人は変化するものであり、本人が変化しないとしても周囲を取り巻く状況は容赦なく変わり、相対的には変わってしまう。

 時間とは無情に流れ、あるいは積み重なり、時折酷く残酷な物になってしまう。

 

 再会を約束したシンとリデラードにどんな未来が待っているのかは、もう誰にもわからない。

 

 なぜならもう、あまりにも大きく”運命”は変わってしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シンとリデラードの別れには、いつもラクスの歌があるようです(挨拶

前作では、”明日への扉”で今回は”こいのうた”……何となく2年前とニュアンスの違いが伝わったでしょうか?

シンもリデラードも2年分成長しているわけでして……
それに「秘密」を打ち明けたリデラードは、「今度はシンをファウンデーション王国に招待する(=ファウンデーション王国をシンを招待できる国にする)」ことをモチベーションにしそうです。

そうです。もうこの時点で「原作と似て非なるファウンデーション王国の建国」がほぼ確定したと言っていいでしょう。

書いておいてなんですが、割と「爽やか風味あっさり味の別れ」かなぁ~と思ったんですが、まあ、恋愛初心者の二人ですしw

というか舞台裏なんかは次回の後書きとかにちょこちょこっと書くかも?

あー、次回は後日譚とか、そんな感じになると思います。

皆様にはシンとリデラードの邂逅、楽しんで頂けたでしょうか?

次回もどうかよろしくお願いします。
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