難産とかではなく完全にモチベなかったから書けなかっただけです。
無理やり書きあげたのでこれからも更新は不定期になると思います。まぁ、元々不定期だからね、許して欲しいな!なんて……アッやめてっ、石投げないでっ!
「誇りを持って生きろ」
客のいない伽藍堂の店で、退屈そうに受付台に座る子供へ、無愛想な老人はそう言った。
「なんだよ誇りって。どっかに売ってんのかよ」
「違う」
唇を尖らせた少年の言葉を、老人は一瞬の間も無く切り捨てる。
商品棚でしゃがみこみ、先程まで帳簿に落としていた剣先のように鋭い目を少年に向けながら低く脅すような声色で諭す。
「それは、人が生きる上で最も必要なものだ。自覚なく背負い、無意識に捨ててしまうもの」
ギシギシと鳴る義足を引き摺りながら、カウンター近くの商品棚にしゃがみこむ。近くに寄ってくる長身の老人を、少年はつまらなさそうに眺めていた。
義足の足を慮り、何度少年が手伝うと言っても、商品の管理だけはやらせて貰えなかった。
子供ながらの純粋な善意を無碍にされたようで、少年はその事が全くもって面白く無かった。
だが、ただ手伝いに来ただけの少年には逆らうつもりも、逆らっていい理由もなく、子供らしく椅子の上で腹ただしげに足を揺らす他なかった。
再度帳簿を眺めながら、老人は真剣な声色で再度口をついた。
「今際の際であろうと、決して誇りを捨てるな。そうすれば、成すべきことが見えてくる」
「俺は今際の際なんて行くつもりないよ。死にたくないもん」
「……今は、それでも構わん」
書き終えられ、そっと受付台に乗せられた帳簿を足元の箪笥に戻し、再度受付に戻る少年の頭を、乾いた手のひらがひとつ無でる。
「ただ、忘れるな。それを忘れてしまえば、哀れな傀儡か人ならざる獣にしかならん」
木製の床を硬い義足で踏みしめて、店の奥へと向かっていく。その背中は細くか弱いはずなのに、少年には頂点の見えない大木のように大きく感じられた。
「ズィーヤ、誇りを持って生きろ」
「…………懐かしい夢だ」
まだ爺さんが生きてる頃の記憶。
耳にタコができるくらい聞いた言葉を、何故そんなに口にするのか、その疑問が氷解して、結局分からなかった会話の一幕。
ゴライアスとの決戦を乗越えた今なら、爺さんの言ってた『誇り』ってのも少しはわかる気がする。
18階層での戦いから数日。
戦いでの傷が癒え、【ディアンケト・ファミリア】の治療院から退院したのが昨日、今日は協力してくれたリオンさん含め、迷惑をかけた他組織への挨拶回りの予定だ。
「……イレギュラー、か」
ダンジョンには謎が多い。
何故生まれ、何のために魔物を産み、
今回のイレギュラーは箝口令が敷かれ、あの激戦を生き残った冒険者達もその戦いを声高に広めることはできなくなった。
それでも、人の口に戸は立たないと言うべきか、18階層で何らかの激戦があったらしい。という噂話は広まっているらしい。
「おはようございます。神様」
「おはようズィーヤ、体はもう大丈夫なの?少しでも辛いようなら、休んでいてもいいのよ?」
「大丈夫です。リオンさんやアスフィさんの応急処置とアミッドさんの魔法で全快しましたから」
「そう、それなら良かった。……その右腕は、治らなかったのね」
「あ〜……」
ゴライアス戦の最後、ベル君の放つ一撃のために魔法とスキルを全力で使うことで太古の魔剣を擬似的に現界させた。
俺は『クロッゾの魔剣』を真似したつもりだったが、どうやら作り出した魔剣は精霊、それも神に匹敵する大精霊の魔剣だったらしい。
資格のないものが扱えば相応の代償を与えられる大精霊の魔剣。擬似的にとはいえそれを扱った代償として、俺の右腕は黒く変色し、青白く発光する稲妻の軌跡が残った。
「アミッドちゃんとディアンケト曰く、神の恩恵に近い呪いとは言っていたけれど……異常があったらすぐ言うのよ?何とかできないか探してみるから」
「痛みも違和感も無いですし大丈夫ですよ。寧ろ、右腕だけ魔力の通りが良くなった気がしますし」
「それなら、いいんだけど……」
「大丈夫ですよ。それより、ステイタスの更新をお願いしてもいいですか?」
「……そうね。大活躍だったらしいし、相当上がってるかもしれないわね」
「ほとんどリオンさんとアスフィさんの功績ですけどね」
ホント、あの二人がいなかったら誰1人生き残れなかった。全員が死力を尽くしたから生き残れたが、やはり最も功績が大きいのはリオンさんだろう。
ヘイト管理に的確な指示、効果的な攻撃を連発してたし、彼女の活躍が俺たちの生存へ繋がった。
「んっ……しょっ……こうやって跨るのも、久々な気がするわね」
「そ、そうですか?更新したの、割と最近でしょ?」
「それだけ、貴方が居ないのが寂しかったってことよ」
「そ、そうですか……」
お、おおお落ち着け。背中に肉厚で柔らかな感触があっても耳元で囁かれても落ち着くんだ。そう、深呼吸……いい匂いするな?止めろ死ぬぞ。不敬ッ!
そうだ、神様にも何かと心配かけてるんだ。俺が不埒な妄想することで嫌な思いさせてはいけない。冷静に、冷静になるんだ俺。こんな情けない姿誰かに見せられるか?いや見せられない。
適当な、何か適当なことを考えろ……!1、2、3、4、5、r「終わったわよ」
「ほわァチャァ!!」
「ほわちゃあ?」
「あっ、いえ、ちょっとうつらうつらしてただけなんで、気にしないでください!」
「……そう?まだ体が疲れてるみたいだし、鍛錬や探索はしちゃダメよ?」
「そりゃもちろん。はい」
鍛錬じゃなくて体の整備なのでセーフですよね?
「……何だか納得のいかないことを考えている気がするけれど、いいわ。とりあえず、これが今の貴方のステイタスよ」
ズィーヤ・グリスア Lv2
力 :I3→H167
耐久:I1→F307
器用:I5→H197
敏捷:I4→H115
魔力:I10→F320
【発展アビリティ】
狩人:I
【魔法】
『
・魔力によって不定形の泥を生成する
・泥の形を1度だけ変えることが出来る
【スキル】
『
・魔力によって生成された物質の形を変える。
『
・嫉妬の深さによって経験値に超域補正
・感情の昂りによって力と魔力に超域補正
・嫉妬対象がいる限り効果は持続する
『
・魔法発動時、魔力と敏捷に高補正
・雷属性の魔法発動時、魔力に高補正
・呪い、魅了に対する抵抗力に高補正
・雷属性を持つ武具の強制破壊
・魔剣の強制破壊
見たことないくらいステイタスが伸びてるぅ……。
総熟練度上昇量が1000オーバー……あんまりステイタスの伸びについては知らないが、異常と言うことだけはビシビシと感じるぞ。
改めて、俺のステイタスとスキルは隠し通さないと行けないな。なんか見慣れない厄ネタも増えた気がするが。
「……かなり上がってますね」
「中層走破にイレギュラー、それに他の冒険者を助けるために頑張っていたんでしょう?その成果がステイタスに反映されたのよ」
「そういうものですか。……この新しいスキルって、やっぱり右腕の?」
「……でしょうね。私も発現させるべきか迷ったけれど、これも貴方の力になるかと思って発現させてしまったわ。相談もせず、ごめんなさい」
「いえ、気にしないでください。俺のためを思ってのことですし、この内容ならどっちにしろ発現させることになってたでしょうから」
魔法発動時の魔力・敏捷の補正に呪い・魅了への耐性。魔法を発動しまくる俺にとってこの補正はありがたいし、呪いや魅了のような精神面での抵抗力が問われる干渉への対策なんていくつあっても構わない。
デメリットとして、雷属性の武具と魔剣が使えなくなったが……元々属性エンチャントされた武具なんて持ってないし、魔剣も日常的に使うことはない。
強いていえば、ゴライアスに放ったあの一撃が魔剣に分類されるなら、戦いの選択肢が狭まって厄介なくらいだが、それでも他の戦い方は有る。
現時点では、発現させた方が得の多いスキルだろう。
「にしても、雷之呪腕ね……これ、やっぱり呪いだったのか」
「スキルの名称は本人の心持ちも関係していたりするから一概にそうとは言えないけれど……方向性としては呪い、あるいは興味じゃないかしら」
「興味ですか……まぁ、考えたって仕方ないですね。新しい力が手に入ったと思って喜んでおきます」
「そうね。そのくらいに受け止めていた方がいいかもしれないわ」
黒くひび割れた右腕には、稲妻が走ったような青白い線が入って、恐ろしくも神聖な雰囲気を感じる……かもしれない。
流石に大衆の面前で晒すのは
「さて、じゃあ、俺は今回の件で世話になった人達へのお礼と快復の報告をしてきますね」
「えぇ、行ってらっしゃい。気をつけるのよ」
まずは、戦いもその後も世話になったリオンさんに挨拶しに行くか。
***
「ごめんください〜」
『豊饒の女主人』に辿り着くと、店前をほうきで掃除していたリオンさんと目があった。
彼女は空色の瞳を少しだけ見開いて、次いで表情を柔らかにする。
今までと同じ無表情ながら、どことなく、18階層での一幕を経て彼女の性根の温かさみたいなのが滲み出すようになったように思う。
「グリスアさん。ご回復されたようで何よりです」
「リオンさんとアスフィさんの応急処置が良かったんでしょうね。幸い、後遺症も無いみたいです」
「それならば良かった。……右腕は、やはり聖女でも?」
「まぁ、何でも神の恩恵に類するものらしくて魔法の効きが悪いらしいです。ただ、違和感も痛みもないので、ちょっとしたオシャレだと思ってくださいよ」
少しおどけ気味で言ってみれば、リオンさんは綺麗な瞳にやや呆れを含ましてこちらを見つめてくる。
心配をかけた相手に対して言うにはちょっとダメだったか?いや、でもホントに気にしなくていいし……。
「はぁ……グリスアさんがそういうのであれば、私もこれ以上その話題に触れるのは止めておきます」
「お、お心遣いありがとうございます……」
「それで、本日はどう言った御用ですか?」
「あぁ、先日のベル君救出の一件、並びに、瀕死の俺を助けてくださって本当にありがとうございました」
姿勢を正して礼をする。
リオンさんがいなければ、ベル君を救出することもゴライアスを倒すことも、瀕死となった俺が生き残ることも無かっただろう。
紛うことなき、俺の、俺達の命の恩人である。
だからこそ、一番最初に礼を言いたかった。
「……その感謝を受け取ります。ですから、頭を上げてください。注目の視線が、少し恥しい」
「あっ、すいません。往来だったのに……」
「いえ、次から気をつけていただければ大丈夫です。……貴方達を助けたのは、あの森で話したことの通りです。ただ、友人を助けたかった。それだけの事ですよ」
ふっ、と微かに口角を上げた彼女は空色の瞳に優しい光を差し込ませる。
子供の俺が憧れた彼女がこれ程近くにいて、俺の事を友人と言ってくれた。それが、堪らなく嬉しい。
絶えず湧き出てくる感情を押さえ込んで、意識して笑顔を浮かべる。そうじゃないと、気持ち悪い顔をしてしまいそうだから。
「ありがとうございます。色々と。また、食べに来ますね」
「えぇ、お待ちしております」
「それじゃ、ミアさんと他の方々にもよろしく伝えてください!では、また」
「えぇ、また」
控えめに手を振ってくれるリオンさんに見えるよう少し大きく手を振り、次なる人にお礼を言いに行く。
感謝行脚とでも名付けるべきか、中々どうして、気分のいいものだ。
リオンさんの瞳と同じ色の下で、目的地に向けて駆けていく。
次は【ヘルメス・ファミリア】だな。
……ところで、リオンさんと話してる途中から、背筋がずっとゾワゾワしてたのはなんだったんだろうか?
今すぐに土下座しなければならないと思わされる不穏な予感の名残が、今も背中に残ってるんだが……?
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