久々にダンまちにハマりまして、書きかけだったモノを無理やり書き上げました。言うほど話は進みませんが、いつもの事なので許して下さい……。
「「「乾杯っ!」」」
日も暮れ、多様な灯りが道を覆う夜闇を払う中、「火蜂亭」に集まった俺達は手にしたジョッキを勢いよく押し当てていた。
俺達の音頭に合わせてか、周囲のテーブルからもジョッキを叩きつける音が響き、気持ちのいい賑やかさが店内を満たしている。
「【ランクアップ】おめでとう、ヴェルフ!」
「おめでとう、ヴェルフ」
「これで晴れて
「あぁ……ありがとうな」
照れた様子で、はにかんだ笑みを浮かべるヴェルフ。目標を叶えられたことへの、隠しきれない喜びが現れており、それにつられて俺達の頬もつい緩む。
中層での強行軍や18階層での度重なる戦闘を乗り越えたヴェルフも、ついに【ランクアップ】したらしい。
発展アビリティは勿論『鍛冶』。ヴェルフの生み出す武具はこれからより強力に、より強靭に、ベル君達の冒険を助けるのだろう。
「というか、本当は昨日祝賀会だったんだろ?良かったのか?俺のせいで引き伸ばしちゃって……」
「おいおい、水臭いこと言うなよ。18階層まで来てくれて、あの闘いも乗り越えた。ズィーヤは俺達の仲間だろ?」
「そうです!ズィーヤさんにはいっぱい助けられましたし、僕らが一緒にお祝いしたかっただけなので、気にしないでください!」
「そうですよ。それに、ズィーヤ様には共同探索でも助けられましたし、日頃のお礼も兼ねてるんです!」
「君達……そういうことなら、気兼ねなく楽しませてもらおうかな!」
ジョッキに残った名物の蜂蜜酒を飲み干し、再び楽しい祝賀会へ戻る。蜂蜜酒は名物と言われるだけあってまったりと甘く、しかしクドくない。
酒の初心者であっても十分に美味しく飲めるだろうし、飲みなれた人も虜になる美味しさだ。
食べ物も甘い酒に合わせてか、塩系の味が濃いものが多い。そして、お腹を空かせた冒険者用に大ボリュームのステーキや串焼きなどお腹を満たすものもある。
神様は甘い酒は好きだろうか?あんまり好き嫌いする人じゃないから、何が好きか知らないことが多いんだよな……苦手じゃなかったら、今度一緒に来てみるか。
「これでヴェルフ様は、【ファミリア】のブランド名を自由に使うことができるのですか?」
「自由に、とはいかない。少なくとも
「まぁ、そういうものだよな。誰も尊崇する神の名を、汚したくなんてない」
「ましてや、自分の作品のせいでなんて、鍛冶師の名折れだからな」
真剣ながら何処か楽しげなヴェルフの表情は、これから生み出す自分の作品に期待と自信を持っているからだろうか?
18階層での死闘を経て、ヴェルフの中で何か変化があったのか、初めてあった時よりも純な輝きが燃える瞳に変わっていた。
共に死線をくぐり抜けた戦友に良い変化があったようで、勝手ながら俺も嬉しい。
「でも、これでパーティーは解消か……」
「ベル君……」
確かに、ヴェルフとの契約ではLv2になるまでの探索同行。それが達せられたということは、パーティーの解消に繋がったとしても不思議では無い。
寧ろ、そうすることが一般的な冒険者パーティーでは普通なのかもしれない。
パーティーを組むつもりのなかった俺としてはその辺の制度については分からない部分も多い。
「……ベルもズィーヤも、んな湿気た面すんなって。俺がそんなことで仲間を見捨てるようなやつだとおもってるのか?」
「いや、決してそういうわけじゃないが……」
「ベルには中層で何度も助けられた。命の恩人だ」
「そんな、僕の方こそ……」
「まぁ聞け。ベルとリリスケがいなきゃ、ここまで来れなかったし5回は死んでた。そんな恩人とこんなとこではいサヨナラなんてするわけねぇだろ?」
ズイっとベル君の目の前に突き出されるジョッキの中には、未だなみなみと酒が揺れていた。
「だからよ、好きな時に声掛けろよ。いつでも飛んでって、これからもダンジョンにもぐってやる」
「ヴェルフ……!うん、もちろん!」
溌剌とした笑顔でジョッキを掲げるベル君。懸念も解消され憂いの晴れた2人の表情は眩しく、思わず目を細めてしまう。
どうやら、ヴェルフのことを見誤っていたらしい。
鍛治職人としての誇りと執念が強いからこそ、それらに集中するかと思っていたが……それ以前の、仲間を大切にする人間性を甘く見ていた。
「ズィーヤもだぞ?」
「んっ?俺も?」
「おうとも。18階層じゃあ、お前の一撃に助けられた。冒険者としても鍛冶師としてもだ」
「冒険者は分かるけど……鍛冶師としても?」
「最後の一撃、ありゃ魔剣だろ。それも、《クロッゾの魔剣》に近いもんだ」
「……分かったのか」
「魔剣なんか大っ嫌いだ。だが、お前の一撃を見て、鍛冶師として負けられねぇと思っちまった。俺の作った魔剣に、負けて欲しくねぇなんて、恥知らずにもな」
恥を飲み干すように、ジョッキに注がれている酒を一息に煽る。
赤らに染まった顔は、酒気か羞恥か……それを考えることが、そもそも無粋かもしれないが。
「だから、ありがとうな。お前のお陰で吹っ切れた」
「こちらこそ。ヴェルフのお陰で、あの一撃が思いついた。だから、お互い様だ」
中身の半ばほどとなったジョッキを互いにぶつけ合う。カンッという軽い音だったが、俺達の信頼関係は深く重くなったという確信がある。
「はい、ではこれからもヴェルフ様はリリ達とパーティーを組んでいただけるということで」
「おう!装備の整備も任せとけ!」
「頼りにしてるよ、ヴェルフ!」
良かった良かった。仲良くなったパーティーがこんな形で解散となったら、少しばかり寂しかったからな。
「「「……」」」
「ん?どうしたんだ?3人とも黙ってこっちを見て」
「いえ、こういう時は乾杯をし直すものなのですが……」
「お前が一向に杯をあげないもんだから手持ち無沙汰なんだよ」
「あぁ、そういう事か。気が利かなくてすまないな。さ、ベル君、音頭を頼むよ」
「えっ!?僕ですか?!」
「当たり前だろ?パーティーのリーダーは君なんだからね」
「えっと……じゃあ改めて、よろしくヴェルフ!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
4つの杯がぶつけられた音が響く。酒場の喧騒に紛れるその音は、1度目の時と同じように、だが確かな変化を感じさせるものだ。
「そういや、ズィーヤのその腕、大丈夫なのか?」
「あぁ。見た目は多少痛々しいが、それだけだよ。日常生活に支障はないし、戦闘も問題ない。寧ろ、魔力の通りが良くなった気がして強くなったかもしれないな」
冗談めかして笑ってやれば、3人は困ったような呆れたような苦笑いを浮かべる。
それほどおかしなことを言ったつもりはなかったんだがな……。
「あはは、ズィーヤさんなら、本当に強くなってそうですね」
「底知れなさに関しちゃ、ベルといい勝負だ」
「リリとしては、ズィーヤ様の方が恐ろしいですよ。ベル様はまだ扱いやすいです」
「リリっ!?」
「あ〜ベルは分かりやすいからなぁ」
「ヴェルフまでっ?!」
「ベル君の純朴さは異様と断じてもいいからね」
「ズィーヤさんまでっ?!?!」
恥ずかしさからか顔を赤くして肩をすくませるベル君を3人で慰め、話題はまた移り変わる。
「ベルとズィーヤは【ランクアップ】しなかったのか?」
「僕はまだ」
「俺もまだ。そもそも、俺が【ランクアップ】したのは数日前だからね」
「そういえばそうだったか。ここ数日が濃いもんだから、随分前に感じちまうな」
「【
独力でゴライアスの進行を抑え、俺やベル君の攻撃する隙を生み出したリオンさんの功績は大きい。俺達にできたことは数多の冒険者が生み出した隙に持ちうる全力を叩き込んだだけだ。
そう思えば、リオンさんの強さというものが、際立って感じられる。
「……結局、なんだったんだ、あのゴライアスは?」
「さてね。ヘルメス様やヘスティア様は何か知っているようだったが……」
チラリとベル君を見るが、首を左右に振られてしまう。どうやら、ヘスティア様から何らかの説明を受けたという訳でもないらしい。
「安全階層に生まれたこともそうですが、何よりも普通の階層主よりも強化された能力」
「上級冒険者が虫みたいに吹っ飛ばされてたんだぞ?あんなのがこれからも続くようなら、命がいくらあっても足りゃしねぇ」
リオンさんやアスフィさんがいたからこそ、あのゴライアスを討伐することができた。推定Lv4が2人と、本物のクロッゾの魔剣、英雄の一撃が伴ってもギリギリの戦い。
17階層に生まれるという通常のゴライアスもあれほどのものならば、18階層に辿り着く冒険者は激減するだろう。
だが、ヘスティア様の零していた「神を抹殺する為に用意された」という発言を思い出せば、神がダンジョン内にいた事が異常事態の原因と考えられる。
では、何故ダンジョンは態々神を抹殺しようとしたんだ……?
「まぁ、これ以上は話してもしょうがないか……世間の方は今どうなってるんだ?」
ヴェルフの言葉に意識が戻された。
神とダンジョンの関係なんて今の俺が知ろうと考えるには深すぎる「未知」だ。ヴェルフの言う通り、これ以上考えたとしても無益だろう。
「ギルドが真っ先に箝口令を敷きましたから、都市や冒険者の間で目立った混乱はないみたいですね」
「エィラさんに少し探りを入れてみたが、ダンジョンの様子も平常通り変わりなさそうだ。掲示板じゃ、『リヴィラの街』が既に機能を取り戻してるそうだしね」
「逞しいこってぇ……」
「あはは……」
まぁ、ダンジョンの街なんてものは、常識外れの逞しさがなければ作ろうとすることも、維持することもできないんだろう。
「そういえば、ベル君達とヘルメス様達には罰則があったんだったか。それは、どうなったんだ?」
「リリも気になっていました。どのような内容だったんです?」
「えっと……【ファミリア】資産の半分の、罰金」
「それは……」
「……キツイな」
【ヘスティア・ファミリア】は新興ファミリアだから金額はそこまで──それでも痛手だとは思うが──だろうが、ファミリアで使える資金が半分になるというのは生活やもしもを考えると辛いものがある。
そして、【ヘルメス・ファミリア】はベル君達よりも厳しいものがあるだろう。
派閥の規模は大きく、アスフィさんの性格やファミリア全体の活動を考えればかなりの蓄えもあったようだし、凄まじい金額が請求されたんだろう……またアスフィさんが過労気味になってるんだろうな……。
「俺、今度アスフィさんに差し入れを入れようと思う」
「……神ヘルメスに振り回されて、ファミリアの資金も半分持ってかれて、【万能者】も散々だな……」
「お金を渡す時も、凄く重い溜息ついてたよ……」
脳内のアスフィさんが真っ暗な瞳で空笑いを浮かべている姿が浮かびあがる。いい加減、まとまった休日を取って休んで欲しいものだ。
ヘルメス様がいる限りそうとも言っていられないんだろうけども。
「……」
「リリ、大丈夫?」
アスフィさんの未来が暗い話もそこそこに、改めて料理に舌鼓を打っていると、ベル君が心配そうにリリへ声をかけている姿が目に入る。
「どうした?体調でも悪いのか?」
「あっ、いえ!すいません、少しぼーっとしていただけです」
「そう?でも、何か……」
「そうです!ベル様よ先日の事件で随分株が上がったことと思います。少なくとも、あの戦いに参加した冒険者たちには認められたのではないでしょうか?」
「う、うん……」
明らかに何かを誤魔化している。
リリは嘘をつくのが上手い。それはこれまでの経歴もあるだろうが、それ以上に人をよく見る観察眼と聡明さが理由だろう。
ヴェルフとベルにに目配せしてみれば、2人とも気づいているようだ。
察しのいいリリが、俺達が気づいていることに気づいていないわけがない。もしや、何かを気づいて欲しがっている?
だとしたら、誤魔化す理由も薄いか……。
ニコニコと明るく振る舞うリリをしばらく見つめようと、リリはその挙動を変えることは無い。つまりは、これ以上踏み込もうと、答えは出ないということの意思表示。
「ふぅ……まぁ、確かに。あの場にいた者たちにとって、ベル君は命の恩人。多少、名は知れる存在になったんじゃないか?」
リリの言葉に乗っかるように、口を開く。
ゴライアスにトドメを刺したあの一撃は冒険者たちにも見えていた事だろうし、ゴライアスを吹き飛ばす超火力を考えれば、ベル君の名前は大いに広まった事だろう。
「──何だ何だ、どこぞの『兎』が一丁前に有名になったなんて聞こえてくるぞ!」
これから過去の話を編集していこうと思います。基本ストーリーは変わりませんが、一部分が大幅に変化する可能性がございます。ご了承ください。
また、気長にやるつもりなので、編集やら投稿が遅くてもあまりに気になさらないでくださいね。
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