目の前を通り過ぎる人の波を避け、電柱に寄りかかっていた私は手元の携帯電話に視線を落とす。
画面に表示されているのは結里とのトーク履歴。
『次の休み、この前広告で見たスイーツ食べに行かない?』
『結里が時間あるならだけど』
『行く!絶対いk.』
『絶対行くよ!』
『じゃあ13時くらいに〇〇公園前で待ち合わせね』
そこまで読み直してふぅと1つ息をつく。
画面を切り替えるとそこに表示された時刻は13時20分。
既に待ち合わせの時間はとっくに過ぎており、先程心配で送った文面にも既読はつかないままだ。
まさか忘れているのか、それとも何かあったのか、色んな考えが頭をめぐる中
「と、桃花ちゃーん!」
人混みの向こう側から聞き覚えのある声が響く。
いつもと違い髪をサイドテールでまとめ、服装も普段の制服とは違い白を基調としたワンピース姿。
急いで走ってきたのか息を切らしながら私の目の前にやって来ると彼女は凄い勢いで頭を下げてきた。
「遅れちゃって本っ当にごめんなさい!」
「何かあったの?」
「そ、その....桃花ちゃんからのお誘いだったからビシッと決めたくて...最後まで着て行く服で迷っちゃって、気づいたら.....」
「はぁ...まあいつも通りで安心した」
私は特に問題があった訳で無い事に内心ホッとしていた。
だが結里の方は遅れてしまった事に申し訳無く思っているのかしょんぼりとした表情を浮かべ尻尾まで元気なく垂れている。
(うーん、気にしてないから別に良いんだけど)
「その服似合ってるよ、可愛いね」
私としても彼女にはあまり気にしないで欲しいし、そういえば折角頑張ってくれた服の感想を言ってなかったと、先程見た時に思った事を伝える。
彼女は私の言葉に一瞬ポカンとしていたが、徐々に口元が上がりパァという音が聞こえてきそうな程の笑顔を浮かべた。
「桃花ちゃん〜!!!」
「ちょ、危な...!」
一気に調子が戻り猛スピードで抱きついてくる結里を押さえ込み、私達は目的のお店へと歩いて行った。
「もう少しかな」
ニコニコと笑いながら自身の腕を私に絡ませ尻尾をブンブンと振る結里を横目で見ながら、私は歩を進めて行く。
そうしてしばらく歩き続ける事30分、お目当てのお店が眼前に見えてきた。
「いらっしゃいませ〜!」
店内はそこそこ賑わっていたが何とか待つ事なく席に着き、対面に座った結里も目をキラキラと輝かせながらメニューを見ている。
幼い子供の様な結里の姿に笑みが溢れるが、かくいう私も普段は食べられない美味しそうなスイーツの写真に気分が上がっていた。
「じゃあ私はこのいちごパフェで」
「私はキャラメルショコラでお願いします!」
店員を呼び注文を済ませて待つ事20分。
運ばれてきた商品に少女達は再度目を輝かせ、手を合わせてからお互いそれを口に含む。
パフェの中に沈むほど積まれたいちごの味が口いっぱいに広がり、それに合うように添えられたアイスやクリームも口溶けが良い。
キャラメルがチョコと絡み合い、それぞれが組み合わさる事で絶妙な甘さを引き立てている。
口の中でとろける食感についつい頬が緩んでしまう。
「ん〜!美味しい!」
結里は片手で頬を支えながら幸せそうな満面の笑みを浮かべている。
そんな彼女を前にしているのもあるのか、桃花自身も同じ様な顔をしている事に本人は気づいていない。
するとふと結里が動きを止め何かを考え込み始め、私はどうしたのだろうと首を傾げる。
「はい、桃花ちゃん!あーん♪」
結里はスプーンでキャラメルショコラを一口分とると、そのまま私に向けて差し出してきた。
「ほら、桃花ちゃんにも食べて欲しいし」
「それなら自分でとれば....」
「駄目駄目!折角のチャンs...私が食べさせたいの!」
そう言いズイッとスプーンを押し付けて来る結里。
まあ彼女が企んでいるのは丸わかりだが、彼女の食べる姿を見て味が気になっていたのも事実。
「...あーん」
私はしょうがないと口を開き彼女のスプーンを受け入れる。
「えへへ♪どう?」
「美味しい」
いちごパフェとはまた違った甘さを味わいながらふと目の前で嬉しそうにショコラを頬張っている結里を見ていると、ある考えが頭をよぎる。
私は自身のスプーンでパフェを一口サイズ分すくうと
「はい、結里」
「........へ?」
先程彼女がした様に、今度は私が彼女の口元にスプーンを差し出した。
「ほら、さっきのお返し」
「.....え!え!?」
結里は突然慌て出し手をわちゃわちゃと動かしていたが、やがて深呼吸をすると目を瞑りながら恐る恐る口を開けパフェを受け入れた。
「...お、美味しい....です」
口をモゴモゴと動かしながら顔を真っ赤に染める結里。
「....さっきそっちもやった事でしょ」
「そ、それはそうだけど!自分でするのとされるのじゃ違うの!」
「そういうもんなの?」
それからしばらく、顔を赤くしたまま無言でショコラを食べる結里を桃花はため息混じりに見守っていた。