大日本帝国が連合軍に対し和平に縺れ込む   作:風吹かば小説家など無名たる

2 / 9
誤字脱字・超絶不定期投稿・駄文の三拍子そろってますがぜひご覧に。
≪風吹かば 小説家など 無名たる≫のですから。


第一話 雲の下の機影

作戦室に二つの声がこだまする。どうやら二人は軍人で、会議しているようだ。

「いやはや…」

 

「苦戦続きでありますな…」

 

「はい…」

 

「いったいここからどう立て直したらいいものか…」

 

代わる代わるに苦心の意を漏らしている。

何を隠そう、帝国陸海軍は米軍に対し、逼迫していた。

時は1944年1月 南方戦線である。先日の戦闘では、駆逐艦「望月」が中破 駆逐艦「山風」が大破 戦果なしの大敗北を喫したのである。更にその日には飛行場に対する空襲があり、多数の航空機が破壊される憂慮な目にあったのである。そんな中、二人は反旗を翻す作戦を練っていたのである。

無精ひげを生やし、星のバッジのついた軍服を着ている男が松本少将。若そうな出で立ちの男が前野大佐である。

 

今回の議題は戦線の打破である。○○を攻撃とか、□□を輸送すべしとか、△△を実施せりとかである。大海原のように広々とした机のうえには大きな地図が見開かられている。それには戦局と戦力、赤と青の線、駒のようなものがある。

 

遥か北西の列島を指し、くるっと駒のようなもので手遊びをする。そしてそれを現在地に置く。

「そうでありますな……例えば内地の方から増援が来ればちょっとは楽になるでしょうか。」

 

「いや、どうでしょう」

前野大佐の言葉に二人して苦笑いをする。さらに話は広がる。関東軍は仕事してないんだから、こっちに送れとか、でも関東軍は精鋭が南方に送られて中身はほとんどなくなってるとか、与太話や世間話が続く。一応会議のはずなのだが。

 

 

 

 

 

すこしすると、二人は再び地図に目を向ける。

地図上での、オーストラリアの上あたりを指差す。

「ニューギニアの方は随分ひどいそうだな」

 

「物資がぜんぜんないらしいですね。海軍のことなので詳しくは知りませんが」

その言葉に大きくうなずく松本少将…

 

「ほかのひどいところと言えば…」

「ビルマはいまも散発的な反撃を受けているようで」

 

「ほかにもあると思うが、だいたい海軍のほうだな」

「情報共有が杜撰なのだ。全体的に。知らぬ間になにか起こるしな」

そういえばドイツも勝手にソ連を攻め込んでいた。祖国も対米戦争を仕掛けているが、半年先にやったのはドイツだ。発展して考えると日独伊三国同盟もアジアとヨーロッパでは離れすぎて意義は少ないな。まぁ技術国である伊と独の技術共有を受けれるのはいいことか。そう評価してもいちいち高額な技術料を要求してくるのはつらいが。

 

「でありますよね…」

 

「あの、私は思うのだが、正直ニューギニアってそんなに占領する意義あるか?」

 

「まぁ、資源があってもとるだけの技術がないらしいですし、戦線を広げすぎて分散されて、各個撃破されていると思います」

前野大佐はこっほんと、咳払いをして撤退すればいいのではということを加えて述べる。

 

しばらく会議(談議)に花を咲かせたところ、

 

ガチャ……

 

ドアノブが回り、男が入ってくる。突然だったにも関わらず二人は驚いていなかった。なぜならば、

 

「少将、会議は順調でしょうか?」

この男は山少佐である。松本少将の部下だ。

「ふむ、山少佐。…」

一瞬、悩みを見せ口を開く。

「一応、進んではいるよ」

 

「そうですか、それはよかったです。」

そう言って山少佐は安心した顔をした。

「では、予定通り呼んできます、時間なので」

そう言うと敬礼しながら山少佐は退出していった。

 

そうかそうか、もうこんな時間か。 と内心で思うと苦虫を嚙み潰したような顔を松本少将はした。

少しするとぞろぞろと山少佐に連れられ将校たちがやってきた。

 

なんと、、、

 

会議はまず少人数で行う前半と多くの将校が集まって行う後半があるのだ。

なんでそんな面倒な方式を、と思うかもしれないが

 

第一に時間内に将校たちが集まることが不可能だったこと。

 

んなもん延期すりゃいいだろという話だがそれも事情で不可能だった。

 

第二に松本少将の意向でいったん少人数で会議したいというものがあったこと。

 

 

残念ながら、この会議は一時間以上行われたが意見がまとまらず有意義なものにはならなかった。

 


 

翌日 黎明 上空にて──

 

海風の気持ちよい朝だ。()()()()聞こえてくるのは機械的な重低音と耳障りな雑音ばかりだが。

 

大空を我が物のように飛んでいるのは日の丸(国籍マーク)のついた飛行機が見える。

零式水上偵察機*1だ。

 

この日に限ったことではないが、偵察が行われていた。いや、哨戒やもしれんが。水上偵察機の名の通り、基地の水上から飛び立ちはるばるこの高さまで飛んできたのだ。高すぎて肌寒いほどだ。わかりやすいうと、雲の上だ。なぜここまで高く飛んでいるのか。

 

今回の目的は胴の中を見たら丸わかりであろう。

 

一見しまわれているから視認できないが、爆弾を搭載しているのである。なぜかというと潜水艦を吹き飛ばしてやるのが今回の目的だからだ。つまるところ、潜水艦を見つけたら、なお隙あらば爆弾をほうる。そして見つけたら、偵察機なのだから報告する。もちろん写真つきで。ここまで高空だと潜水艦なぞ見つからないと思うかもしれないが、雲の縫い目から航空写真を撮って怪しき存在があれば降下すればいいだけだ。この高さからも視認できるほど潜水艦は大きい。だいたい海上付近をとんでいても潜行していたらわからない。

 

 

 

 

雲の下に機影が映り込む。目標の潜水艦ではなかったが、それにはばっちりと(国籍マーク)が確認できた。

 

ワレ テッキ ヲ ハッケンセリ コウゲキ ヲ カイシ ス

 

基地に電報が入った。

 

機体が傷つかないように、しなやか、なめらかに、だが勢いよく急降下する。

速度計の数値が500km/hの大台を突破する。この速さのまま、着水したらフロートが飛んで行ってしまうだろう。さらに加速する。高度計が2000を数えたところでややスロットルを後退させ、速度が落ちたところでフラップを出して減速する。

 

完全に敵の後ろについた。

 

 

ガガガガッ

という爆音がした。7.7mm弾を背後から食らわせてやっている音だ。敵機はおそらく機影(シルエット)からしてPBYカタリナ哨戒機*2。基地に帰投する最中であろうか。安心して帰る途中であった敵の心を思うと悲しくなる、しかし帰してはやれないのだ。もう10秒近く射撃しているが、零式水上偵察機の火力では足りないようである。*3

 

カタリナには後部機銃があるはずだが、撃ち返してこない。最初の一撃で潰したのだろうか。何はともあれ好都合だ。

しかしながら防護機銃が使えないというのはわれと同じである。普通、零式水上偵察機は3人乗りの三座なのだが、人材不足で1人しかのせていない。3人で運用するものを1人で運用するのは明らかに問題だとは思うが意外とできている。操縦自体は1人でできるし、後部銃座はそんなに使わないし、観測はなんとかがんばる。

その1人が自分というわけだ。

 

ドンッ!!

カタリナは真っ二つにひしゃげ、火を噴きながら墜落していった。搭載していた爆弾に銃撃が当たったのだろう。そんなもの、捨ててしまえばよかったものを。

こちの零式水上偵察機も60kg爆弾×2を爆弾倉に懸架しているからとてもひとのことは言えないが…

 

ガガッ!!

今度は右から別のカタリナが銃撃を仕掛けてきた。よく見るともう一機いたのだ。被弾はしなかった。慌てて零式水上偵察機のパイロットは周りを見渡すがどうやら護衛はいないようだ。防護機銃の付いていない下面に回ると慌ててカタリナは爆弾を捨てた。しかし遅かった。落下する爆弾に銃撃があたり、直撃ではなかったが、破片が下部にあたりカタリナは炎上した。更に機銃射撃を加えてやり、3秒ほど撃ち込むと、もっと燃えた。だが、これでは埒が明かない。弾切れが先だ。側面にさっと回ると一か八かで風防を狙い撃ちした。パイロットを落とせればよいからだ。しかしなかなかあたらない。下からは射線がなかなか通らない。。後部機銃に撃たれる。後ろからは攻撃が通らない。上からは双発のエンジンと高翼が邪魔をする。狙えるのは唯一前からだろう。でもそれは難易度が高い。

 

どうやらそうこうしている内にエンジンにあたり、エンジンが止まった。

カタリナは双発機であるから片方のエンジンが止まってもしばらくは飛べるはずだが、

 

 

 

これは()()()だ。

 

 

 

煙を吹いたカタリナはどんどんと失速していき、やがて高度を落とし、海に真っ逆さまに落ちた。

 

撃墜を確認した零式水上偵察機はUターンして帰路につきつつ、電報を飛ばした。

 

ワレ ショウカイキ ヲ ニキ ゲキツイセリ

 

雲の下の機影が彼方へと消えていく。零式水上偵察機は特別、速力に優れることはないが、それでも200ノットもの速度だ。1分もすれば水平線からは確認できなくなっていた。基地に帰投するまで1、2時間もあれば着くだろう。それでも油断禁物、行きはよいよいを帰りはこわいと知られている。消耗した敵を追撃するのもよくあることだ。

 

喜ぶべきに帰るとき、とくに何か苦難はなかった。

 

その日の基地はお祝いムードだった。特に航空隊は。なんて非力な偵察機が単独で2機の哨戒機を撃墜したのだ。

「おい、お前!よくやったな!」

「はい!ありがとうございます!」

零式水上偵察機のパイロットはそう答えた。

しかし、この戦果はまぐれであった。護衛はいなかったし、先に発見できたのは自分だったし、風向きや位置も味方していた。それにたまたま弾が当たっていたから撃墜できたのであって、そうでなければおそらく逃げられていたであろう。だがそんなことは誰も知らないし言わないのだ。ただ皆は褒めたたえてくれた。それが嬉しかったのだ。パイロットにとっては。

「今日は飲むぞ!!」

そう言って将兵たちはなけなしの酒をちょろっとみんなのコップに注ぐのだった。

その中でも数人は酒を遠慮した。

「私はまだやることがあるので、お先に失礼する。」松本少将もその数人のうちであった。

もちろん言葉通りの意味も含まれてはいるのだろうが、何よりは大きいのは少将という立場の大きな者が一時の勝利に酔いしれていれるか、という思いであろう。だってたかが敵機を2機を撃墜しただけだ。一人で10機やってきたとかなら飲むか!となるが2機だ。明らかにおかしい。負けすぎて勝利に貪欲となっているのだ。総意と表現したら言い過ぎだけれども、ただ、これが全体的な、かつ一般的な感想・意見であることは否めないのが悔しい。そうして、宴もたけなわの頃、

 

 

ふと空を見る。──────

 

 

零式水上偵察機の機影が見えたのだ。まぁ、気の所為であろう。なぜならすぐ消えてしまったのだから。

たしかなんといっただろうか?あの零式水上偵察機のパイロットの名前は杉もr… まぁ後で聞こう。そう松本少将は思いを夜空に馳せると職務に戻った。

 

報告書

 

被害

駆逐艦「望月」 山風と航行中、急降下爆撃機隊による爆撃を受け被弾。死者7名。傷病者不明。被弾後基地に到着。中破

駆逐艦「山風」 望月と航行中、潜伏していた潜水艦による雷撃を受け右舷に被弾。右舷傾斜13度を記録。総員退艦後、糸島による爆雷処分を受けるも沈まず。死者不明。傷病者不明。大破

一式陸上攻撃機 12機損失

九七式重爆撃機 6機損失

三式戦闘機 1機損失

一式戦闘機 18機損失

 

戦果

PBYカタリナ哨戒機(爆装) 2機 撃破

 

惨状である。帝国の未来はいかに。

 

人物紹介

 

〇松本少将(松本明彦)

陸軍所属、少将。38歳。対米開戦前はドイツのように空軍を設立するべきだと主張したほか、戦艦は快速戦艦に全力集中すべきだと説いた。そのせいで上からの評価は芳しくなく、大佐止まりだったが、開戦後は昇進し少将に。(主人公)

 

〇前野大佐(前野茂)

陸軍所属、大佐。37歳。坂津少将の部下である。かつて山少佐と同じ部隊に配属されていたことも。(準レギュラー)

 

〇山少佐(山裕翔)

陸軍所属、少佐。32歳。坂津少将の直属部下で、かつては戦車乗りだったが、いまは前線から退いている。(準レギュラー)

 

〇杉森曹長(杉森照)

陸軍(航空隊)所属、曹長。25歳。カタリナ哨戒機2機撃墜の戦果をあげる。乗機は零式水上偵察機。(準準レギュラー)

*1
愛知航空機製の水上偵察機。特徴として零式観測機とよく間違われるということがある。(見分け方は零式観測機が複葉、零式水上偵察機が単葉である)

*2
PBYカタリナ哨戒機は多機能な機体であった。哨戒はもちろん、偵察、爆撃、救助活動などもこなした。今も水上での救助活動などに使用されている。

*3
陸軍海軍問わず7.7mm機銃は多くの軍用航空機に搭載されたが、防弾に重きを置く米軍機には有効打たりえなかった。




カタリナってカワヨ

望月と山風は本小説独自の架空艦です。
望月が秋月型駆逐艦の14番艦で、
山風が島風型駆逐艦の3番艦です。
それぞれ、
望月が秋月型駆逐艦の命名規則にのっとっており、
山風に関しては史実で島風型駆逐艦が1隻しか生産されなかったため、こういう命名規則だっただろうな、と書いております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。