大日本帝国が連合軍に対し和平に縺れ込む   作:風吹かば小説家など無名たる

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誤字脱字・超絶不定期投稿・駄文の三拍子そろってますがぜひご覧に。
≪風吹かば 小説家など 無名たる≫のですから。


第二話 資は心より来る

いきなり本題に入るが、いまわれら物資不足に陥っている。

 

直接、松本少将の口から述べられたまごうことなき事実である。

 

松本少将らは比較的前線の基地にいる。

具体的にはラバウルより少し北西に行ったあたりの島、マヌス島ロレンガウだ。

昨年までは周辺の海域は比較的安全だったが、1944年に入っては見違えるほど危険な海域になったのだ。

潜水艦が跋扈し、輸送船は多くが撃沈される有様となった。これにより前線の陸軍に運ばれる物資が多く失われる様となった。別に海軍の輸送船が撃沈されることはそこまで問題ないが、連鎖的に積載された物資がなくなることが問題なのだ。

 

それでも、備蓄した物資だったり、現地生産をしたりしていたが所詮は焼石に水。

 

ガタが来るのである。

 

それに、毎日のように頻発する空襲の影響もある。まだここは本格的に被害を受けていないが…

 

最初の松本少将の台詞には続きがあるが、述べるまでもないだろう。よくある戦意高揚のアレだ。

しかしながらその演説を行った松本少将もあまりこの状況をよく思ってはいなかった。なにせ支那事変では物資不足で苦労した様子が脳裏に浮かび上がるからだ。

 

「それにしてもどう物資不足を解決するか」

「畑は…すでにやれるだけやっているな」

「海運だけでなく空輸をしてみれば…いや制空権の問題が」

「資源のあるところへ進出すれば…いやもうやっているか」

松本少将の独り言は続く。

 

 

しばらく(約1時間)すれば、思考はまとまったようで紙に熱心に書き込んでいる。

その案は航空母艦などを利用して艦載機で対潜戦闘を行いつつ輸送するというものである。確かに一部の航空母艦には貨物船などの民間船を改装して作っているものもあるため輸送はできなくもない。

 

 

 

 

 

 

 

しかし冷静になって見返してみれば無茶苦茶である。点を挙げてみれば、当然海軍が空母を貸してくれるワケがない。それに艦上機を艦載すれば物資はそんなに積めない。だから修正するなら護衛空母で輸送船団を護衛。というのになるだろうか。ハッ!奇しくもこれじゃ米軍の戦法と似てしまっている。特にカサブランカ級航空母艦に。生憎だが週刊空母の用意はできない。

発想は良いと思うのだが…

 

「まぁ、できる範囲でやってみようではないか」

「意気込みが大事なのだ。意気込みが」

そう言い聞かせると一か八かの信条で電文を本部。つまるところ大本営に送った。

特に偽装工作はしていない。バレても支障はないだろうし、もうバレてるだろうし。

 

その内容は要約すると、物資の輸送を増やしてくれ。というものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして返答が来る。早すぎるくらいだ。さすが大本営、こういうときは早い。very nice!

 

 

 

が、油断はよくない。長期的に思考を行って重要であると普遍的に判定されるのは表面でなく内容の方であるからだ。電撃戦が好きな砂漠の狐ならいざ知らず。

 

 

 

 

その返答は

 

「検討する」

 

という旨の実質的な拒否で終わったのだ。少し考えたらわかるが、できたらやっているのだ。それにやっているんだろう。精一杯…

でも、とりあえず()()()()()というチャレンジ精神が今の高級将校には足りないのだ。具体的には戦力を出し渋り、いつまでたっても戦艦が主戦場にたたなかったりだ。松本少将は陸軍の人物である。仲の好ましくない海軍にそういう話を口出しするのは難しいのだから、海軍が…などと考えても仕方がないのだ。解決するにはなにごとも実行せねばならないのだ。戦争が難しいところは下手に実行したら成功しないどころか、損害を負う可能性があるところである。

 

大本営は最近怪しいことを言うようになったなと思う。初期のころの大本営発表は航空写真などを付随していた。ほか、数値もまともよりだった。信頼性が比較的高かったのだ。今は戦艦1隻撃沈とかが頻繁に流れてくる。もうすでに米軍艦隊壊滅しているのではと。普通に考えて十中八九、少しは盛られているだろう。それがプロパガンダというものだ。米軍も存在しない艦の撃沈を報告したりしているというのは決定的である。

 

そんなとき一つの報告が届いた。

 

 

ノック音がする。

 

「入っていいぞ」

 

ガチャ……

ドアが開くと前野大佐が現れた。

 

「少将どの、大本営から通知が」

噂をするとなんとやらである。

──────────────────────────────────

 

 

1944年1月26日 午前6時

 

仮にも陸軍将官である、松本少将は本土での会議に召集の命令をかけられた。

それは前々から計画されていた ()()()()()()() についてだそうだ。

 

「少将どの、幸運を祈っております」

 

「少将、ご健闘を祈ります」

 

プロペラの爆音に若干掻き消されながらも強い声で応援を送られる。

 

飛行場には前野大佐や山少佐など約10人の将校が集まっていた。そして粗方あいさつを終えると、厠にもいったしと、やるべきことをすべて確認し、腰にさしている九四式拳銃を見渡し、セーフティがかかっていることを改めて接触して理解する。その後はゆっくりと自身の乗機───二式複座戦闘機*1に乗り込む。が、それはぎりぎりのところで成せなかった。後ろを振り返ると敬礼をしてくれていたのだ。多くの人たちが。これは返さなくてはと歩みを止め、敬礼し返す。そして中断していたことをコンテニューするように素早く乗り込む。今回乗り込んだ二式複座戦闘機は愛称で「屠龍(とりゅう)」と呼ばれている。

なぜ乗機に屠龍が選ばれたのかと言うと、まず一つ、前提条件ではあるが陸軍機の中では二人乗りであったこと。これにより松本少将自身が運転しなくてよいのだ。そして二つ目に速力に優れること。三つ目に目立たないこと。

 

あなたはお分かりいただけただろうか。

 

二つ目までは分かるが、三つ目はなんだなんだと。

 

これは過去の戦訓を活かしたものである。米軍から一番目立たない機体はおそらく零式艦上戦闘機*2か、一式戦闘機*3であろう。理由としてはこの2機はよくいるから。というわけがあるが、なのになぜ、屠龍が目立たないのであろうか。それはさっきも記したが過去の戦訓から来るものである。

 

1943年の冬、2月の東南アジアでとある事件が起きたのだ。

あらすじを記すと、まず、かの著名な山本五十六海軍大将、もとい山本長官は前線視察のため、ラバウルからブーゲンビル島のブイン基地を経て、ショートランド島の近くにあるバラレ島基地に赴く予定を立てた。そこで米軍に動向を察知され、ブービンゲル島上空で襲撃されたのだ。

 

このとき、山本長官は一式陸上攻撃機に搭乗していた。そして護衛に零式艦上戦闘機が数機ついていた。

傍から見れば怪しさ満点である。爆弾の積んでいない一式陸上攻撃機に多くの護衛がつくなど、前情報がなくとも重役かなにかの護送をしているのだろうな。とまるわかりである。しかしながら、不幸中の幸いというべきか山本長官は無事だった。

 

だがこれは山本長官はたまたま助かったというだけなのである。こんなことを繰り返してはならない。だからこそ比較的目立たない屠龍を使用しているのだ。

他にも護衛は一式戦闘機と三式戦闘機と屠龍の混成である。更にダミーの編隊も用意しており万全である。まぁ根本原因の暗号が米軍にバレている、ということにはうまく対策できず解読が若干難しくなった程度であったが。だが、大本営も新しい暗号については研究中らしく今年の春までには大成するらしい。

 

そんなこんなでもう離陸である。あんなに暑くてしかたのない、飯もまずい基地が恋しく思えてきた。所謂なくなって気づくものというものであろうか。

 

「付き合いはこの空の旅だけで終わるやもしれんが、よろしく頼む」

 

「いや、わたしこそ少将どのの護衛ができてうれしいです」

そう言い終わったら、スロットルを押し上げる。もう、エンジンは、ついている。

 

離陸まですぐだ。

 

ガタガタガタガタッッ

 

空気が、震えるように、感じる。

 

ハ102改エンジンの馬力がすぐそこに感じるのだ───本当に強く振動が───直に伝わる。

 

ヒュヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴー

 

独特な地面と降着装置の車輪(ランディングギア)のこすれる音がする。振動に驚いていたら、いつの間にか猛スピードで滑走路を走る。

だんだんと機体が上にあがり、揚力が作用し 浮 く

 

 

 

操縦手の技術は卓越だと思った。きれいなV字編隊をあっ、という間もあるかないか、というほど素早く形作ったからだ。こんな素晴らしい飛行機乗りは珍しい。名前を聞きたくなった。今すぐにでも褒めたたえてやりたいのだ。君は優秀だと。少なくともこの屠龍の操縦手だけでも……と思ったが、気を抜くのはやめにしよう。

 

外を見渡すとどんどん上昇していっていることに気づく。そんなに重力加速度(G)は感じないが、おそらくわたしを気遣ってのことなのだろう。そうでなければもっと高度を一気に上げるだろう。わたしならそうする。

 

風防があるので、空気を直に感じることはないがそれでもひるんでしまう。猿でも分かるほどに例えると、ゴールネットがあってその1メートルぐらい後ろに立っているとする。このとき豪速球の選手が突っ立っている自分の顔面目掛けてボールを投げるとする。実際にはボールはネットに阻まれ当たらないのだが反射的に回避運動をとってしまうような。

 

特に喋ることもなく数時間ほど経つと、モールスか何かの電文が送られてきた。操縦手が操縦中に解読すると、こう話した。

「少将どの、やつらがまんまとダミーにひっかかりましたよ」その顔は下卑た笑みにまみれていた。

でもわたしも思わずニッコリしてしまったが故、下卑たとかそう評する権利は持ち合わせていない。

 

「良いことではないか。ダミーを用意しておいた甲斐があったということだろう」

米軍も少々驕っていたのだろう。

日本軍め、やつら、性懲りもなく同じような電文でやりとりしているぞ。今度こそは仕留めてやるぞ、と。

10分もすれば、新しい電文が送られてきた。

どうやらその内容は米軍を返り討ちにした、ということであった。これで一回勝利だ。いやまだ勝利とは言えないかもしれない。前回はP38*4を使って襲い掛かってきたので、同じように今回もP38で来るだろうと踏み、対P38*5を徹底し勝ったのだと。この電文にいやみんなと断言していいかはわからないが、みんなうれしそうである。もちろんわたしもうれしいが。近くを飛んでいる三式戦闘機のパイロットの顔が一瞬見えたが、やはりうれしそうに見えた。

 

そこから、一時間ほど飛ぶと、どこか知らないところの飛行場に到着した。景色的にフィリピンなどであろうか。南国雰囲気が味わえるが場所だ。が、普段から南方にいるし、それに南国雰囲気を味わう時間の余裕も心の余裕もない。もううんざりだ。南国には。

 

 

 

うれしいことにここには30分も留まらないのだ。まぁ慣れてくるとうるさいだけの飛行機もどうか…とりあえず飛行機の燃料を補給したり、用を足したりすればおさらばだ。

30分も留まらない記したけれどもかなり時間がかかった。10機以上に燃料を満タンほど注ぐのだろうから時間がかかるのは当然だが。

 

そこまで来れば本土(日本列島)まで一直線に進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやくたどり着いた。

 

1944年1月26日 午後3時 日本 東京

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書

 

被害

一式戦闘機 7機 うち帰還機5機

二式複座戦闘機 9機 うち帰還機7機

三式戦闘機 1機 うち帰還機1機

 

戦果

P38 6機 うち撃破未確認4機

*1
計画名称はキ45改。陸軍の強い要求から、当時の異常なまでの双発戦闘機ブームで、双発重戦闘機として作成される。しかし、格闘性能がすこぶる悪いほか、本来の運用でも実力を発揮しなかった。そのことから評価はいいものではなかった。

*2
増槽をつけた状態では長大な約3000kmにも及ぶ航続距離を得た。また徹底された軽量化があり、格闘性能は非常に高い。そして20mm機関銃の重武装で一躍戦闘機の頂点に躍り出た。しかし戦争が後期に差し掛かったころには旧式と化していた。

*3
計画名称はキ43。格闘性能に優れるほか、取り回しなどの信頼性に富み大量に生産された。

*4
P38は初期型に関しては日本軍から「めざし」と呼ばれたほか、ぺろり(P)と食える3(ろ)8でペロハチと呼ばれ侮れていたが改良を重ねた後期型に関しては高い防弾性を持ち、速力や加速力も目を見張るものがあり、なにより上昇力が圧倒的で一撃離脱戦法で日本軍の戦闘機を圧倒した。

*5
P38は格闘性能に優れない。また一撃離脱を行った後は急降下で距離を離してまた上昇するということを行う戦法が確立されていたが、三式戦闘機などの機体強度に優れる機体はP38の急降下に追いつくことなどが可能だった。




屠龍にしろ、隼にしろ、鐘馗にしろ、飛燕にしろ陸軍機はそういう名称が愛称なのに対して、海軍機は雷電やら、流星やら、紫電やら、天山やら制式名称なんですよね。そこの違いが面白いです。
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