大日本帝国が連合軍に対し和平に縺れ込む 作:風吹かば小説家など無名たる
≪風吹かば 小説家など 無名たる≫のですから。
ザザザザザッ
「今しがた
海上を飛ぶ、緑塗装の飛行機が5つほど。そのなかの一つの有象無象の名も知れぬ、搭乗員が何かについての無線を行う。
「は?よく聞こえない。ノイズが…もう一度言え」
エンジンが発熱した影響で無線は、ノイズが雑音がなり聞こえない。わかるのは暫定の情報だ。もはやモールス信号で会話したほうが早いのでは。
「ですから、■、」
ヒューウウウンッ
小さな、
小さな
風を切る音がした─
無線の真っ最中に敵機が急降下して飛来する。
「!
言葉を発することなく─、発せれず佐官は、佐官の『隼』は舞う。射撃が開始されるまで一秒たらず。
ドドドドドドドドッ
それは12.7ミリ機銃×6のバースト射撃を行う。
ガガガガッ
それは防弾の
「佐官!」
ヒューウウゥー
ヒューウゥー
ヒューウー
エンジンをやられ、翼を折られた『隼』はゆっくりと地に墜ちる。その一連を仕立てあげたのはヘルキャット*1。まさに地獄の猫である。一つ仕留めたのみで飽き足らず、いまは数あるうちの
「くそ!ヘルキャットだ。格闘戦に持ち込んでやる!」
操縦桿を傾け、エルロンが動く。そうして急カーブで攻撃を見事に避けきる。搭乗員の練度や重力加速度耐性もそうだが、『隼』は操縦性が素晴らしい。佳作である。
ヒューウウー
急降下して失った位置エネルギーを速度に変換し、機体を水平に戻して再び上昇しようとするヘルキャットを縦横ブレブレながら光学式照準器の中央に捉える。いや偏差分の修正をして若干上に捉える。
後ろはとった!仇だ!
「食らいやがれ!」
ガガガガッ
大きく風防を晒したヘルキャットを狙い撃ちにする。急いで姿勢変更しようとするものの【時すでに遅し】
ドーン
12.7ミリ弾で蜂の巣にしてやり一機撃墜。あとは…
ドドドドッ
銃声?こっちのほうに?けれども機銃の
しまった。
気づいた時には真上にヘルキャットが位置していた。敵討ちに集中にして我を忘れていたが、当然ほかの敵もいる。【時すでに遅し】お返しである。
「ハっ!?うわぁぁぁぁぁぁぁ」
火を吹きながら落ちていく。途中、風防から、翼の端が飛んでいくのが見えた。何かが分解されていくような音が何度も、何度も聞こえる。ここまで絶望的だと逆に落ち着いてくる。ああ、仲間はどうしているだろうか。もう3機ほどいた。知らないうちに撃ち落されていなかったらだが。高度6000メートルほどを飛んでいたはずなのにうねる
舞台かわって司令部に。
「それと…ということが昨日ありましてね」
「哨戒中の一式戦がF6Fに襲われ3機も失われたんです。代わりに此方は1機撃墜しております」
松本少将は返す。
「それでそれがどうしたのだ」
「そのなかの一人が死ぬ前に妙なことを無線に残していました」
「その内容は、なにかの影を見たとのことです。」
「影?襲ってきた敵機ではないのか、そうでないなら山影ではないのか」
「わかりません。ただ怪しいことがあったということで。失礼しました」
ガチャ…頭を下げたあと、報告しにきた男は部屋から出て行った。
一人になった部屋で思案する。F6Fは艦上戦闘機だ。そして影との関連性。影は航空母艦?なんれにせよ影が報告されたとき襲われたということだ。正直なんでもない気はするが。
ん?待てよ。影が報告されたのは何時ごろだったんだ。当然、夕方と朝だったら影の見え方も異なる。もはや論外である。必要な情報と前提がなければ、推察に考察。どちらも無駄みたいなものだ。
さぁて今日も要塞化と整備だ。少なくとも整備に関しては来た時よりよくなっている。井戸をほって、清潔な水を確保し、いま貯水タンクを建てている。道も広くなり、海岸の掩蔽壕に放置されたトラックも順次移動している。陣地に関しても海岸付近には新しい掩蔽豪を作り上げ、砲を置く。鉄筋コンクリート製のトーチカも大量設置だ。そしてここの基地周辺は最も防護の厚いエリアだ。来た時とは大違いである。
「このままのペースで一週間もあれば完成するだろう」
松本少将は確信していた。なにもなければよいと。しかしながら順調なときほど、足を掬われるものだ。警戒をして損はない。過去の戦訓を学べば左様なことがわかる。順調な時ほど失敗する。不安な時こそ成功する。実態はそのように感じることが多いからそんな風に思うのだろうが。わかりやすく言うなら負けが込んでるときに勝てば印象深いし、勝ちが込んでるときに負ければ印象深い。あたりまえの心理だ。
自慢の防御陣地も形となってきた。そんなときに報告された巨大な(そんな報告はないが推察)影。いったい何なのだろうか。この件に関しては松本少将にうすら寒いものが終始付きまとうこととなる。いいのかわるいのかそれが明かされるときは近い。われらは待ち構えているのだ。いつでも来いと。やっぱできるだけ来ないでほしいかな☆
「…哨戒機を飛ばすか」
ついに一つの答えにたどり着いた少将。でも飛行場は整備が足りないし、制空権もとられている。やるとしたらラバウルの航空隊にやってもらうか。ラバウルの航空隊も己だけでなくまわり庇護する戦力が残っているかは謎だが。いやでも、持ってきた飛行中隊の一部と水上機があれば偵察・哨戒ぐらいできるんじゃないか。使うとしたら…二式水戦あたりか。なんというか海軍と陸軍の協力を感じる。今までなら陸軍には水上機がいない!なんてこった…のような事態になったが海軍から借りて解決しているのだ。第一に陸軍が潜水艦とかを保持しているのがおかしいのだが。陸とは海である。
とりあえず悩んでいても仕方がないので、
「はぁ」
まだ忙しい仕事を憂い哀しむ松本少将。そんな彼に追い打ちといわんばかりの不穏の影が迫っていた─
東京 2月 3日
海軍某技術開発部
どこかの閉塞的な建物で少しのデジャヴを感じる会話がある。
「技術大尉、こちらの案はどうでしょうか?」
恐る恐るといったようにやや顔色を窺いつつ、紙面を見せる。
技術大尉と
「ふむふむ、なるほど」
計画書を渡した士官が顔に希望に浮かべる。
「ふざけているのか?」
「え?」
「十七試艦上戦闘機*2、要求がころころ変わるうえ、ハ43のことで三菱とずっとごねているではないか」
それは海軍の貴方も同じだねえ。
「いいかげん決めろと言ってるんだ。翼面荷重が130kg/㎡だか150kg/㎡だかな」
決めるのはそっちでは?
「妥協がたりないんだ。零戦より強くて使い勝手がよければそれでいい」
妥協(大幅に性能上昇)ねー。(´;ω;`)
「はい…」
その理不尽な言い分に内心納得できず、若干悪態をついてしまう。やばい、と思ったが気にされなかったようだ。
危なかったぁーと安心しながらラフな敬礼をして、扉を開け部屋から出る。
上司にうんざりしながら廊下を歩く。決して口に出さず、顔に出さず、零戦より強くて使い勝手がいいやつを作るのが大変なんだよとあきれる。計画書の性能もびっくり( ゚Д゚)するほど増加しているし。それに海軍のダメだしと三菱の無茶ぶりに板挟みにされ、惑わされているのはこっちなのだ。もっと、現場の技師はどれだけ苦労しているか。
それに最近は馬鹿げたものが多い。例えば局地戦闘機震電。エンテ翼というまったくもってノウハウのないものに戦争中挑むというのは無謀だし、計画値も速力400ノットとか、非現実的だ。400ノット出すなら、3000馬力級のエンジンが必要となるだろう。そのうえ、当のエンジンと離陸に大欠陥。あんなゴミ戦闘機の開発をするぐらいだったら、その予算を米の増産に回したほうがいい。絶対に。
コネで出世した能無し。
戦争に勝つことより保身を見据えるカスども。
おかしな要求とそれを黙認する上層部に自社のシェアを狙う汚い会社。
現実が見えていない馬鹿どもに呆けてしまう。俺だって、はじめは格好いい戦闘機に、戦艦に、戦車にあこがれて、それを作る技師になりたかったのだ。一応学校を卒業することはできたものの、肝心な技師にはなりそこね、使いっ走りになっている現状。闇が深すぎだ。でも、こうして技術職につけたから赤紙とかが来ていないのはありがたいことだ。内地にいれるだけで「幸せ」というものである。しかも今のところ東京に滞在できている。特に「九州行ってこい」みたいな事態は起きていないのだ。
あとは海軍と陸軍の差だ。海軍かっけぇと思って入ったが、あまりにもふざけすぎである。陸軍はそんなに見たことはないが、個人的な意見だと現実をみていないのが海軍で、現実をある程度みているがクズさが上なのが陸軍。実際問題、海軍のゼロ戦には防弾は特にないが、陸軍のハヤブサには防弾が少しあるのだ。正直ゼロ戦に乗るパイロットを憐れに思ってしまう。
俺がもし、
設計をするなら、口出しできるならば。汎用性・実用性を第一に、防弾、火力、操縦性、信頼性、速力、機動性。速力をうまく合わせた戦闘機をつくる。あっ、戦闘機よりは戦闘爆撃機のほうがいいか。一機種に定められたほうがいいしな。ほかにも生産性を重視して比較的に簡単に作れるようにしたりとか。最後は単純に発展性。機体にスペースを設け、あえて不完全な状態にしよう。少しの隙間なくできる限りの傑作にしても、結局はエンジンの換装ができないとか、武装を追加できないとか問題も発生するはずだし。整備性も悪くなる。完璧主義を俺は問題に感じている。米軍を出し抜く新鋭機とかだ。隣を走らなくてもいい。少し後ろを走ってるだけでいいのだ。細かいところは運用で、戦術で、練度で出し抜ける。今の例えでいくと戦術とは、トラックにトラバサミを仕込んだり。はまらなくとも威嚇の効果があるだろう。あとは内側のレーンを走るとか、体力に差があっても、体力を温存して一気に詰めたり、個々の技術で十分いける。
こう考えだすといろいろ出てくるので途中でやめることとする。
喫水線の長い影が見ゆる。それは複数あった。やや遠くから見るとわかる。米軍の戦艦だ。連装式の主砲を備え、数十ノットの速さで迫る。
向かう先はどこか?
当然、ニューブリテン島である。
この偉容なる戦艦は、戦艦たちは日本軍の強固な陣地に艦砲射撃を加えてやるために進む。タラワの戦訓である。艦砲射撃と空爆を入念にやるべし。破壊できなくとも相手の意志をそぐことも大事なのだ。米帝にはこれほどの戦力があると。合衆国だけど。
数隻の戦艦と数隻の巡洋艦、数十隻の駆逐艦。数隻の航空母艦。この調子ではわずか二日ほどで到着するだろう。さて陣地形成は間に合うのか…
こんな煽りをしなくてもわかるが、当然間に合わない。この場合どうする。間に合わないなら、間に合わすみたいなゴリ押し?それともサブプラン?すべてをなげうって逃げてしまう?海軍とかに協力を仰いで足止めしてもらう?
当然どれも意味をなさない。
松本少将は少将にまで上り詰めた男だ。なにかやってみせるだろう。できる限り精一杯のことを。
報告書
被害
一式戦闘機 3機 帰還機なし
戦果
F6F1機
キルレシオ1・3。この世の終わりといったところ。皇国ぅー!(※数年前までは帝国呼称でした)
人物紹介
〇小林海軍技術士官(小林宗一郎)
夢見がちな海軍では現実を見てきた(というより見せられた)のでギャップに苦しんでいる。
物語に出てきてかつ、人物紹介にのっているのでのちのち出世することが確約されている。海軍と陸軍をつなぐ鍵の一部に。
いよいよ緊張感の高まる時期です。連合軍に滅ぼされてしまうのでしょうか、皇軍は。