大日本帝国が連合軍に対し和平に縺れ込む 作:風吹かば小説家など無名たる
贅沢は敵だ!
タイムリミットはわずか2日。そうとも露知らずな守備隊と司令部。
少将は一つの決断をする。
早朝の司令部。ここいらはずっと早起きである。これに際して当たり前と認識する読者もいるかもしれない。しかし、陸軍軍人は5時には起床ラッパがなるが、司令部は3時には起きるのだ。確実に働き過ぎだ。ちなみに夜12?時に寝る。
「─航空隊、ああ、哨戒機を新しく飛ばしてくれ」
「はい、その位置ですね。今から手配します。ええと……」
「1時間以内に二式水戦の編隊を飛ばします」
「では」
電話が切られる。もちろんこの通信が傍受されている可能性もゼロではない。と表現するよりは高確率で傍受されている。それでいいのだ。1時間以内に哨戒を開始するのだから、対応は難しい。それこそ近い位置に
哨戒機に哨戒させる場所は米軍の艦隊が居そうな海峡や海域だ。さいわい、まだ制海権、制空権は、完全に掌握できておらず潜水艦の1隻、2隻を逃してしまうという穴があるというだけであって微弱だけれども、さすがにすぐ近くは保持はできている。
我たちはできる手は打った。あとは果報は寝て待てに従うのみだ。
松本少将の内心には二つの考えが渦巻いていた。影は航空母艦
そんな思いでも哨戒偵察を敢行するよう命じたのは可能性からだ。米国というあまり好ましくないものから始まった国がいまや大国になるとは誰が予想できたんだ。可能性の獣をなにも手を打たず放っておくわけにはいかない。それが味方にするにしても、逃げに徹するとしても、叩き潰すにしてもだ。この世界大戦においてでは始まってしまった以上やるしかない。いま思い出せばあれは間違いだったのかもしれない。ハワイの攻撃は。むずむずするところはいろいろあるが、なにより敵軍、特に米国から卑怯な戦争行為と批判されたことだ。それを指しているのは予告なしの奇襲についてだ。こんなものすぐにわかる。個人的には宣戦布告がされていなかったのは大使館のミスではと考えているが、恥ずかしいながらわたしは結局、真相を知れていないのだ。立場が弱いことが存分に生きてきた。こんな思いはこりごりである。それに自惚れるわけでは絶対にないが、そろそろ中将に昇格したいのである。やはり派手な働きがないと昇格は難しいのか……
私のやっとことと言えば、対米開戦に関与したことと、日華事変に関与したことと、南方戦線に関与したことだ。
関与しかしていないな……
おおきな物事に主導したことなどただの一度も軍歴以来ない気がする。ただそれはおおきなとかは
価値観によるが。私の価値観では少なくともそんなことはないと思う。例えるなるば、会議に参加してそれなりに良いことをやったぐらいだ。別に会議を開いたわけでもない。
悲しきかなと、余韻に浸る暇はない。
さてと本題に入り、ことわざの実践あるのみだ。徹夜して倒れたら大事であるし自分で言うことではないが部下にもある程度の休息もとらせたので自分だけが休んでいるという状況ではない。
仮眠室に足を運ぶ。
後ろ姿は遠く。
軍靴の音は遠く。
それでも決して安心はできない。こんな場面で寝ていていいのか松本少将。
松本少将の仮眠より数時間後。
チクタクッ
チクタクッ
「だめだ。見つからなかった」
「これでは貴重な燃料の無駄遣いだ」
松本少将が考え出し、陸海軍双方の航空隊に協力を仰いだ作戦の報告はよいものではなかった。杉森曹長などを含め、ラバウル航空隊や南方の寄せ集め部隊が総出にせまるほど50機近く飛ばしたもののなにも「見つからなかった」のだ。
作戦会議室の中、広げられた地図には真っ黒な墨で描かれたバツ印が複数ある。
もう二度と地図として再利用できないであろう…(泣)地図が。
日本のおおむね制空権下にある近くの海峡と、海域。哨戒は実行されたのだ。ただし偵察されたのは比較的安全である本土方面により近い後方のほうであり、めぼしいものはなかった。飽くまで可能性つぶしの哨戒だったのだ。となると残るは珊瑚海や北太平洋のあたりが怪しい。もっともどこら辺をどの機体が最後に飛行していたかが把握できていればこんなことはなかった。不確実なことに惑わされるのは人の常だと、仕方がないと思うしかない。
飽くまで問題なのは心証のほうである。大言壮語して指揮系統の違うところにも協力を要請しながら
刻一刻と迫りゆくタイムリミット。心なしか時計の刻むチクタクといった音が大きくきこえる。
チクタクッ
チクタクッ
司令部の一室。松本少将の部屋から出て突き当たりのところだ。松本少将のほか将校が使うというか、『見る』とあるものがそこにはあった。
カレンダーだ。
その右書き*1の寂れたカレンダーがもう1日も経過してしまったことを示す。なぜ寂れてしまったのか─
まぁ…そう、このカレンダーについて松本少将はあまりいい顔をしていなかった。なぜかと言うと、松本少将は理系なので(?)英語と同じ左書きが好きなのだ。ンジンエとか極めて読みづらいし。
翌日 海岸
広く同じ光景が続く海岸に見張りがいる。2人の見張りは双眼鏡をもって観察する。
「なにもないな」
「今日も異常なしか」
……
「なあ
「ほら、あそこだよ。丸小島の左らへんに、50kmぐらい離れてるか」
「そうか?」
注意を行う、2人のうち1人。
「ただ単に波だと思うけどなぁ。間違った情報を言ったらしごかれるぞ」
タメ口を使っているあたり、同じ階級かつ、近い部隊であることが推測される。
「それもそうだな」
そのまま2人はボケーっとしている。数時間も連続しているのか、半ば職務を放棄している。とも受け取れるようなことをしている。帝国軍人の末端の意識不足に頭を抱えながらも、我思う。
やはりなにかいないか?
……
……
……
「飛行機がいる」…よな?
暫し静寂が流れる。仕事をしたくない2人の救世主はである静寂さんあえなく途切れる。海岸の監視という職務にかなう明らかに飛行機らしき物が発見されたからだ。
二人は目配せをする。ようやく真面目に仕事をし出す。形状から機体を推定する。しかし離れすぎていてよく分からない。
80km……
75km……
70km……
「双発、それなりに大型」
『B25*2?』
異口同音に放つ。
「……」
少し歩き、木のそばに置いてある土にまみれた通信機のふもとまで行く。通信機はちゃんと隠してあるようだ。少なくともこれに関しては仕事内容を遵守している2人。
カチ、カチッ
「周波数、は合ってるな」
敵ノ爆撃機ト思シキ不明機発見セリ。機種ハB25ト推定ス。数は50以上。距離は約50。高度は約6000。西海岸ヨリ*3。
異世界を想起させるような不気味なSIRENでなく、単に音量が大きく、そして音の間隔が狭い─つまりうるさいサイレンが響く。むろん全員に聞こえる。
チリリリリリリリィィィィリリリリリ!!!!
「空襲だぁ!」
「西海岸!」
「対空砲火、急げ」
米軍の攻勢を発端に各地にて動きが生じる。例えば飛行場ではパイロットが迎撃機に乗り込もうとする。小説的な表現として乗り込むとかではないのは、迎撃機たちを隠すために飛行場にはダミーが置かれており、本物の迎撃機は掩蔽壕に隠されていたため飛行場に並べるのに時間がかかったからだ。しかも機械化がなされていないために飛行場職員総出で手押しすることになっている。遅れすぎだ。
怒濤の勢いで大量の米軍爆撃機が殺到する。これに対し、守備隊は対空砲火を用意したり、土で汚れた不衛生な塹壕の中で伏せたりする。もちろんその中で伏せると、土が顔にべっちょりついたりする。ほかにも、塹壕の中は水が溜まりやすいから蚊の幼生のボウフラもセットだったりする。動くとボウフラがセッティングされた土が口の中に入ったりすることもある。松本少将が見たら腰が抜けて、泣きわめきそうだ。「もうだめだ、おしまいだぁ!」とかね。
「当たれぇ!」
1人が観測を行い、一人が照準を合わせ、1人が装弾を
担う。三人がかりで、とは記すも本来4人で扱うもの故、少々大変だ。帝国の深刻な人員不足がうかがえる。
手間取りながらも射撃する準備が整う。ホ式
ドドドッ
銃口から音が鳴った直後、ヒュウウーと風切音がした。
直後に分かるが命中音はなかった。
何十発も撃って装弾を繰り返すが、結局当たらなかった。そして返礼品に500
生憎、迎撃することも難しい。
「塹壕か、掩蔽壕に隠れろ」
1人叫ぶ。
迎撃することは無謀である故、そうする。近くになかったら走ってくぼみに屈む。
一兵卒のもののふが恐れおののくような空襲。
なんということに空にはB25だけでなくB24重爆撃機、コンソリーテッド社で開発され、正式採用された四発爆撃機。アメリカはこれ以外にも四発機としてB17やB29を採用しているのですさまじい工業力を持つことがわかる。 、も見えてきた。
「くそ、どうなってる! アメ公が発破をかけてきやがった」
「高度が高いせいで反撃もできない」
怒鳴りちらし、慌てる。
そこに一声。
「ま、まて、落ち着け。落ち着くんだ」
同僚に対し必死に呼びかける落ち着けとは言っているものの落ち着いてない一兵卒のもののふの
掩蔽壕まで逃げるんだ。俺たちは今日のためにこの作業をやってきてたんだ」
一目散に尻尾を巻いて、小銃の一つまで捨てていく。命大事にというわけだろう。小銃は工場で短い期間に大量生産できるが、人は短い期間に大量生産できない。とはいえ武器を捨ててまで逃げるとは陸軍軍人として敢闘精神に欠けるようではある。つまるところ、軍としては全員がガンガンいこうぜ、であってほしいのだ。(でも上層部までそれなのは嫌だと思う)
「何事が起きた」
話を聞きながらもむっとした表情を、そうでなくともいい表情ではないことがわかる、表情をしている。
それに、咄嗟に、燃え焼け、爛れる司令部の惨劇を横目に、前野大佐が返す。
「空襲です。最初の報告は7分まえです」
そこで間を置き、続けようとする前野大佐は言の葉を紡がなかった。
「理解した」
多くを語らなかった前野大佐の台詞に対し至近を観察し、飲み込む松本少将。さすがの観察力である。
「新しい指揮所を設定しよう。どこからばれたか知らんが今の司令部が壊れてしまったのでな」
付け加えて「まぁ今というか、前の指揮所には満足してなかったので、アメリカが撤去作業を代行してくれたことにはありがたい」と笑う。まるでドイツが未来でヒトラーが命令した奪取される都市を破壊することを、B17が代行した話のようである。未来にやられることになるので笑えないと思うが。
「了解しました」
異口同音に山少佐と前野大佐が言う。
とりあえず「アラウェ防衛戦」前哨戦ではわが軍の敗走である。「それ」を噛みしめながら後方へ逃げる。
後ろには開発時期的に退役するべき「隼」を駆る陸軍基地防空隊の英姿がまみえた─
その様子に関しては性能で劣る隼の搭乗員が「落ちながらも戦うべし」と飛行で、飛行言語で語るようにみえた。
報告書
被害
一式戦闘機 18機
三式戦闘機 4機
九五式軽戦車 2両
九八式軽戦車 1両
九四式いすゞ 11台
九五式小型乗用車 9台
火砲 26門
戦死19名
戦果なし
特にない(あとがきの内容が)
ある。
実のところわたしは気づかっているところがあります。それはだ。で終わるかである。で終わるかなんですよ。
なんかであるばっかだと単調ですよね。そう思いませんか?