投稿頻度は浜で死にました。
「チナツと◼◼◼は共通点が多いよね」
普段通りに業務を進めていると、何の脈絡もなく先生からこんな言葉が投げ掛けられた。
「考えたこともなかったですが……どうなんでしょうか?」
向けられた視線に首を傾げると少し考えるような素振りがみられる。そこから先生へ視線を向けると普段通りの穏やかな表情を浮かべていた。
火宮チナツ。キヴォトスにおける混沌の象徴であるゲヘナ学園において、治安維持の役割を担う風紀委員会に所属する生徒。戦闘により生傷が絶えない同委員会の救護担当であり、皆の暴走を止めるストッパー役。
そんな彼女と共通点が無いとは言えないだろうが、そこまで多くないと同時に思う。まあ今考えたばかりなので思いつかないだけ、と言えなくもないか。
そうしてチナツと共に首を傾げてると先生の声が聞こえた。
「まず二人とも眼鏡をかけてるでしょ?」
まあ、そうですね。
「チナツは風紀委員会で、◼◼◼はシャーレで事務処理をしているでしょ?」
「確かに私は救護を担当していますし、前線よりはそういった仕事の方が多いですね」
「武器も拳銃を使ってるよね」
「確かにそうですが、私の拳銃と◼◼◼さんの武器は似ても似つかないと思います。そもそも拳銃と呼ぶにはあまりにも……」
「そうだっけ?戦闘の時もじっくり見れるわけじゃないし見間違えたのかな」
共通項が多いのか存外違うのかよくわからないな、と考えながら目の前のタスクを片付けていく。要は外見的特徴や口調、事務仕事や暴徒の制圧といった共通項からそう思われてるということ。比較されたところで何も思わなかったが、チナツの様子を見るにどうにも違うらしい。
「そう言われるとそうですね……◼◼◼さん、使用している銃を見せてもらってもよろしいですか?」
そう言いながらチナツは自身の拳銃『サポートポインター』を取り出す。一瞬緊張が走ったがそういった意思は見られない。はぁ、とため息を吐いてからホルスターから愛銃『メシア』を抜き、込められた弾を取り出す。
「◼◼◼、見せてもらっても?」
弾は抜いてありますしいいですよ、と返して先生へ持ち手を差し出す。どこか嬉しそうに先生は受け取った。大人ってこういうの好きなんですかね。
「自分で触ったことがなかったけどすごいね、確かにチナツの拳銃と全然違う」
「傷はついていますが手入れが行き届いてますね。かなり長い銃身に頑強な構造の回転式拳銃……装弾数は5発、それもかなり大きい銃弾を使用するようです。それだけ反動も大きいはずですが……」
「こうして見ると◼◼◼の銃は、チナツのより攻撃的な気がする」
先生の護衛を担当する以上、敵を確実に制圧できなければ意味がありませんから。
「以前ゲヘナの不良生徒を制圧する際にも見させていただきましたが、敵の中心に突撃して制圧している様子は圧巻でした」
「ああ、この間くれた要請のことね」
その節はどうも、と返してチナツが話を戻す。
「委員長をはじめとして、風紀委員は◼◼◼さんのように戦闘を行う方が多いです。委員長が最たる例で、ゲヘナで悪事を行う者にとって恐怖の象徴ともいえるでしょう」
ふと、眼鏡越しにチナツの瞳に影がさすのが見えた。
「それに比べると私は地味といいますか、他の方と比べて胸を張れるものがないといいますか……すみません、愚痴みたくなってしまって」
確かにゲヘナ学園には頭のネジがぶっ飛んだ生徒が多数在籍しているし、秩序を守る側の風紀委員もその例に漏れず色々とおかしい。お前のことだぞ横乳。
しかしそれはあくまで相対的な評価であり、彼女も彼女でハジケてる部分がある。それ以前に、異常が正常なゲヘナにおいて正常であるのは異常である。だからチナツが地味とは微塵も思わない。
その旨を話すとチナツの表情に戸惑いがみえた。
「自分が所属する学園を異常と言われるのはちょっと……」
美食研究会と温泉開発部。
「そこは極論すぎませんか?」
あと風紀委員の行政官。服どうなってんすかアレ。
「そこは……すみません」
「チナツが謝る服装ってどういうこと……?」
今挙げた例は極論もいいところですけどね。でもそんな環境で自身が染まらずに自我を確立しているのは強みと言っていいと思います。
「そう言われると……どうなんでしょうか」
「らしさとか強みって自分から見ると分かりにくいものだからそう感じるのもわかるよ。無理に見つける必要もないけど、一人ひとりに確かにあるものだってことは覚えておいてほしいかな」
「……わかりました、いつかその言葉の意味を理解する時まで先生の言葉を信じます」
最後は先生の言葉に納得できたのか、表情にも明るさが滲み出ていた。アイデンティティの話となると少し身構えてしまうが変な影響を与えずに済んだとホッとしている自分がいた。
「……今までの話を踏まえて先生に聞きますが、私と◼◼◼さんは似ていると思いますか?」
話が一段落したと思ったらチナツが話題を戻してきた。先生の話を聞いた上でどう映っているのか気になったのだろう。話を振ってきたのは先生だし、ここは綺麗に締めてもらおう。
「うーん、そうだね。共通点は多いとは思うけど」
少し考える様子を見せ、ニカッと笑いながらこう言った。
「あんまり似てないんじゃないかな」
だったら何で話題に出したんだよ、とチナツと二人目を合わせた。
カセットコンロの火に温められ、ケトルに入れた水がボコボコと沸き立つ。すかさず火を止め茶葉を入れておいたポットに湯を注ぎ入れ蓋をする。茶葉の量、水の温度、容器の材質、そういった細部に気を配ってこそ紅茶の真価が発揮される。ハスミの教えだ。
ポットにティーカップを3つをトレイに乗せ食堂を後にする。茶菓子は事務室に幾つか置いてあっただろうからそれでいいだろう。漏れ出す香りと色彩に出来の良さを確信し、高揚感と罪悪感を抱えて事務室へと歩を進めた。
先生とチナツはというと必要な書籍を探しに図書館へと向かっている。目的の本を探す時間を計算に入れた場合、このタイミングで事務室に戻れば紅茶が一番美味しい瞬間に飲んでもらえるだろう。二人はどんな反応を示してくれるだろうか。
期待を胸に事務室の扉を開ける。しかし中には先生とチナツの姿がなく、机に散乱している書類だけが目に映った。やっべこれタイミング間違えたかな、と思ったが書籍を取りに行くにしては時間がかかり過ぎている。
ただ二人が駄弁っているだけなら問題はないだろう。生徒と交流を深めるのも先生として重要な役割だし、そこにどうこう言う権利もない。しかしそうでない可能性もあるだろう、時期を考えれば尚更。
それからは早かった。紅茶を乗せたトレーをデスクに置き、代わりにタブレットを上着の裏に忍ばせる。図書館へ走りながら銃のシリンダーをスイングアウトさせ、スピードローダーを用いて弾を装填する。右手にリボルバー、左手には腰につけていた警棒をとり、侵入者を排除する準備を整える。装備を手にすると幾らか落ち着きを取り戻せた。
図書館へ到着し、中から見てない所に身を隠す。銃声や足音がない点から敵襲の可能性は低いだろう。だが万が一ということもある、警戒は怠らないようにしよう。既にこの世界では何が起ころうともおかしくはないのだから。
そうして図書館に入ろうとする私の眼前には。
仰向けに倒れた先生と対面する形でチナツが倒れかかっていた。
は?
「いたた……チナツ、大丈夫?」
「私は大丈夫です……先生こそ怪我はありませんか?」
「私も大丈夫だよ、少しばかり痛むけどね」
互いを気遣う様子は悪いものではない、二人とも無事であったことは寧ろ喜ばしい。備品にも損傷はあまりないようで、そこだけ見れば安堵の表情を浮かべるべきなのだろうが。
「すみません、上に覆い被さるような体勢になってしまって……」
「落ちてくる本から私を守ろうとしてくれたんでしょ?」
「そうですが、なんというか……その……」
疑問符が頭上に浮かんだような表情をする先生。わかっていないのか、逆に理解しながらもこの状況を保っているのか真意は不明だが、まあそこはとりあえず置いておこう。
「どうしたのチナツ、やっぱりどこか痛めたの?」
「いえ、決してそういうわけでは!体は大丈夫です、はい」
問題はお前だチナツ。
いつまでくっついていやがるんですかねこの女は。顔を赤らめて胸を押し付けて、状況に恥じらいを感じているように見えながらも離れようとはしない。確信犯だ。
先生にはそういった様子はみられない。流石に学生相手に欲情するとなると通報案件なのでそこはいいのだが、アンタからも離れるように言いなさいよ。あれか?気づいてないふりして堪能してますよーグヘヘ~ってか。ロリコンめ。
正直二人がそのまま盛り合おうがどうしようがどうでもいい。これからドロドロの泥試合になっていくことは明白なのだから、この段階で結論を出すというのも悪くはないのだろう。ある意味での終戦、或いは独裁なのだから。
問題は紅茶だ。今も事務室に置き去りにされているアレは既に熱を失い、想定よりも長く蒸らされ苦味と渋みが色濃く抽出されてしまっているだろう。自己ベストに並ぶ出来だったためか、それに対する憤りも増幅しているらしい。
だから私は武器をしまい、スマホを取り出して二人を写真に収めた。
「ッ!」
「◼、◼◼◼?」
シャッター音を聞いた二人の視線が瞬時にこちらを向く。先生の表情は驚愕の色しか見えないが、チナツのそれは状況を理解してしまったためか赤から青に色が変わっていた。その様子が面白いのでもう一度シャッターを切る。
「また撮りましたね◼◼◼さん!?」
ええ、大変面白い状況だったのでつい。
「◼◼◼、私たちは……」
大丈夫ですよ先生、ちゃんと理解しています。何かしらのアクシデントによって本が落下しチナツさんが庇った結果がこれなのでしょう。これは不慮の事故であるということは理解していますとも。
「そうなんです、だから◼◼◼さんが思うようなことは……!」
はて、私が何を思っていると?状況はちゃんと理解しているつもりでしたが……別な意図があったということですか?
「い、いえそんな事は!」
「見てたのなら助けてほしかったかな?」
物音がして敵襲かと思って来ましたし、危険な様子であれば助けようとも思ってたんです。ですが大きな怪我も物損もないようでしたので問題ないと判断しました。
「そうなんだね、ありがとう」
いえ、それが私の仕事ですから。それはそれとしていつまで乳繰り合ってんですか。
「ち、違いますよ!?」
再び表情を赤くしながらチナツがすごい勢いで起き上がる。赤くなったり青くなったり大変な様子だ。リトマス紙かよ。
「あくまで先生の無事を確認するためで、そのような意図は決して……!」
二人に紅茶を淹れていたんですよ。それはもう会心の出来でして、ウキウキしながら事務室に戻ったらいないし。物音がしたから心配で図書室に走ってきたら二人してイチャコラしてやがるじゃないですか。というか今の今までくっついといて説得力ないですよ。
「◼◼◼、あまりチナツを」
オメーも早く起きろやロリコンが!
「しまった藪蛇だったか!」
という訳で少しムカついたので写真はヴァルキューレと風紀委員長に送っておきますね。
「ごめんなさいそれだけは!」
「◼◼◼、ヴァルキューレって?」
ヴァルキューレ警察学校。キヴォトスにおける治安維持を担っている組織です。
「なるほど、キヴォトスにも警察ってあるんだね。でもどうしてそこに写真を」
生徒に手を出しましたからね。
「出してないよ!?」
風紀委員長にもシャーレの業務を知ってもらおうと思ってましたし、丁度いい写真が手に入りました。
「お願いします、怒っているのはわかりますがそれは!」
いや怒ってないです、単純に面白そうなので……。
「余計にたちが悪い!」
では私は業務に戻ります。ちゃんと本を片付けてから来てくださいね?
そう言い残して図書館を後にする。少しばかり意地悪がすぎたかと反省はしているが、それはそれとして仕事を放り出してイチャつくのはいい気にならない。あの卑しか女は多分今後もやらかすので釘を刺すぐらいが丁度いいだろう。
フォルダから先程撮影した写真を削除しながら事務室へと戻る。デスクに視線を向けると先程置いた紅茶がいじけたように佇んでいた。本来のポテンシャルから程遠い現状は本望ではなかっただろう。まあ悪いのはロリコンとドスケベサキュバスだし私は悪くない。
紅茶をティーカップに注ぎ口にいれる。やはり温度が下がり余計な渋みが強く主張してしまっている。流石にこれを飲ませるわけにもいかないので、二人が戻って来るまでに飲み干してしまおう。
こちらシャーレの窓辺より。
今日もシャーレは平和です。多分。
スミレの新衣装マジで来ましたね、良。
ハイランダーの生徒が実装されましたがまだアビドス3章できていません。助けて。
あの3人だとアオバがなんか刺さりました。