アキの死体は残らない   作:アーチマン

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ぐえええ!スランプ!!



因果の悪魔の傲慢

 

 

 

 とある決戦の翌日。アキはホテルにいた。月曜日なのにである。それは別に早川アキが不真面目で仮病をしているというわけではなく、普通に寝込んでいた。

 

 そも真面目人間の極地にいてもおかしくない早川アキという存在が入学という新シーズン早々に仮病など使うわけもなく、疑うことすらも不躾な話であった。

 

「アキー。はいこれ多分風邪薬」

「多分とか………まあ、良い」

 

 ガチャリとドアが開いて少年のような見た目をした人が入ってきた。だがよくよく見ればその異質さが目立つ。髪は宇宙の暗闇と輝きを煮詰めたような濃藍色、瞳は人間にはあり得ないシルバー。だが最も重要なのは、その側頭部に生えた角である。

 

 それは彼が悪魔であるという証だった。因果の悪魔ダインロット。そのホテルの一室には悪魔と人間が屯していた。

 

「どう? 効いた?」

「こんな早くに効くか」

 

 アキの顔は青白かった。何故なら頭の痛みと全身の筋肉痛がアキの精神をガリガリと削っていたからだ。

 

 無理もない。彼は死闘を演じたばかりの一般人。普通なら勝てるはずのない敵を200以上のコンテニューを経て打ち倒した精神的致命傷を負った戦傷者である。

 

 彼の脳みそは前例のない莫大な情報の処理に追われて巨大な負荷を負ったがために大きな悪影響を受けていた。発熱、頭痛、吐き気、その他諸々。

 しかし生きている。死ぬ以外は軽傷なのがこの世界だ。毎日ゴミのように人が死ぬことを知っていればその幸運の最たるを知るだろう。

 

 だが、結局のところ早川アキは衰弱していた。

 

「ずっと考えてたんだが、死んだら少し前に巻き戻る能力は不便じゃないか?」

「え? そう?」

「あぁ、こう…任意の起動で巻き戻せるようにできないか?」

 

 アキの言葉にダインロットがうーんと唸る。そして一言。

 

「無理っすねぇ……」

「無理か…」

「できはするんだけど、個人的に使われたら不都合な時に使われる恐れがあるんだよね」

「ああ、すること自体は可能なのか」

 

 なんとも歯噛みの悪い返答。アキとしては疑わざるを得ない。『不都合な時』というのは一体いつなのか。そもそもそんな時が来ること自体が意味が分からない。なんせ契約を結んだ身だ。そういった知識は共有するのが常識ではないか。

 

 しかし今のアキはボソボソと喋ることしかできない。追求をする余裕がない。もう喋るのだって億劫なのだ。

 

「あ、僕ちょっと用事があるからさ。アキは寝ててよ」

「ああ」

 

 だからアキはダインロットが珍しくアキから離れることにも違和感を持たなかった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 黒塗りの車が市街地を走る。閑静な街中に響く重低音。エンジンが音を鳴らす。

 

 車の中には三人のデビルハンターが乗っていた。彼らは一様に黒いコートを被り、沈黙を保っていた。だが一人の男が声を上げる。

 

「マキマさんが……人に会いに行くなんて珍しいですね」

「そう?」

「えぇ、任務以外で出かけるのは上に呼ばれた時くらいだと記憶してます」

「まあ、間違ってないね。でも今回は私が気になったことの延長で、重要な人材の確保に繋がる可能性があります」

 

 男に話しかけられた赤毛の女は…マキマはそう返す。男の方もそのことは理解しているのか、反論はしない。

 

 この日、マキマ達一行は公安に届いていた『狼の悪魔』討伐依頼を解決した一般人を訪ねるところだった。狼の悪魔と聞けば強い悪魔だと思うだろうが、悪魔全体で見れば中堅が良いところの悪魔である。

 

 日本の狼が絶滅して久しい。人類の文明の発展に伴い、狼の被害は人間の脅威となることは少なくなった。今ではかっこいいなどと舐められた認識を受けているのが実情だ。

 

 けれど未だに動物系最強格を保っている。質の良い民間であれば討伐できるだろうというのが正直なところ。ところが既に狼の悪魔は民間人を5人喰らい、推定では更に多くの人間を喰らっているとされる。

 デビルハンターを良いようにあしらい、ここ最近良いように暴れ回った悪魔が狼の悪魔なのだ。

 

「少なくとも、民間デビルハンターを出し抜いた悪魔を殺してみせたその一般人の手法には何かあるはず。何かしらの悪魔と契約をしている危険性も十分にあります。接触し、保護。必要があれば制圧、殺害も目処に入れておいてください」

「「了解しました」」

 

 人間が悪魔を殺すなど、前代未聞だ。訓練をすれば弱い悪魔に勝てることはあれど、悪魔の力を借りずに悪魔を殺すのは基本的にあり得ない。

 

 その一般人には何かある。偵察をした限り怪しいところは無かったが、まだ完全には掴めていない。必ず何かはある。それがまだ動向を掴めていない地獄のヒーローなのか、それともーーー

 

 そう頭に考えを巡らせていると、不意に窓の外に違和感を覚えた。マキマの(うつろ)の目線の先、少し遠くのマンションに人影が映る。

 

 マキマは()()()()()によってその存在を知覚した。純白に染まる大きな三対の翼。金髪碧目の女。頭の上にはまるで天使のような輪っかがあった。

 

「あれはーーー!」

 

 瞬間、黒塗りの車が巨大な音を立てて爆発した。いや、爆発に巻き込まれたといった方が正しい。車が爆発したのではなく、空間が破裂したのだ。

 

 マキマは無事だった。それはマキマの一声を聞いた男がマキマを引っ張り車を離脱したからである。運転していた男は死んだが、今はそれどころではない。

 

「ありがとう。須郷君」

「いえ…俺もマキマさんの声に助けられました。それより今のは…」

「随分と厄介な存在に絡まれたようだね」

 

 ソレは、空を飛んでいた。晴天の中を優雅に飛び、マキマ達の目の前で停止する。

 

 男は驚愕した。その姿があまりにも天使そのものだったからだ。悪魔。しかし公安にも天使の悪魔がいる。であれば目の前の存在は一体。

 

 男はマキマの方を見た。相変わらずの不敵の笑みで目の前の存在を見続けている。しかし目は離さない。彼女も目の前の存在を警戒しているのだ。

 

「マキマさん…あれは、一体」

「あれは、悪魔だよ。でも普通の悪魔じゃない。とある存在によって、はるか昔の時代から復元された古き悪魔の一体。おそらくは天使の悪魔」

「ふ、復元…? そんなことが可能なんですか…」

「参ったね…ということは今、()は日本にいる。須郷君も戦闘体勢に入った方がいいね」

 

 困ったという様子のマキマ。天使の悪魔を見れば彼女は無表情でまるで生気の無い顔をしていた。喋らず、変化がないためかもしれないが、まるで死んでいるかのように見える。

 

 ふと気づけば、天使の悪魔はリコーダーのようなものを持っていた。それを指揮棒のように前に突く。

 

『アウロス』

 

 瞬間、澄んだ音が響き、須郷とマキマは何かに潰された。地面が抉れるように凹む。何か巨大な圧力によって彼らは押し潰されたのだ。

 

 しかし、潰されたはずのマキマは生きていた。彼女は潰れた道路に立ち上がる。それと同時に天使の悪魔は膝をつき、血を吐く。

 

 それを尻目に、マキマは口を開く。

 

「いるんでしょ? 出てきたらどうかな」

「やだなぁ。僕はずっと君の後ろにいたのに」

 

 声はマキマの後ろから聞こえた。マキマは冷静に振り返る。そこにいたのはあどけない、そこらのゲーセンにいてもおかしくないような少年。だが実態は克服できない恐怖を内包する悪魔だった。

 

 その悪魔は、歴史に度々現れては全てを引っ掻き回す悪辣な魔王。その存在が今日ここに現れたのは、マキマとしても想定外である。彼女の使役する全ての嗅覚は彼の存在を掴むことは叶わなかった。

 

 その悪魔の号名は不明である。度々存在が示唆されるようになった1500年代の資料にも号名は挙がらず、ただ分かるのは彼が『超越者』の枠組みに入れられる者であるということのみ。

 

 推測はできるが確定はしていない。ゆえの不明である。

 

「それで…わざわざ私と接触を持った理由は何?」

「お前を殺しにきたんだよ。支配の悪魔。鬱陶しい小蠅が」

 

 誘い込まれた。そう思った時にはもう手遅れだった。この一連の騒動は全てマキマを罠にかけるための罠だったのだと彼女は悟る。

 

 絶体絶命。超越者の前においては残機の数など紙切れと同義。前準備無しのマキマは格上に弱いのだから、地獄送りにされるのは時間の問題であった。

 

 だが…

 

 かの悪魔が歴史に現れるのは、決まって大事件の前触れの時である。それはマキマが一番よく知っていた。必ず来ると分かっていた。その存在を知ったその日から。

 

 そんなマキマが対策をしないはずがない。

 

 マキマは超越者から放たれた敵対宣言を聞いた瞬間、自らの能力を働かせる。それは遠く離れた公安の天使の悪魔に作用する。

 

「寿命千年使用」

 

 作り出されたのは禍々しい槍。マキマは手元に現れた槍を持つ。目の前の超越者はそれを余裕そうに、まるで何の脅威でもないかのように見ていた。

 

 そもそも悪魔としての格が違うのだ。いかに高位の悪魔であるマキマが足掻こうがどうにもならない格差がある。それに血を吐いていた天使の悪魔もすでに回復し、マキマは囲まれてしまった。だがそれでもマキマは余裕の態度は崩さない。

 

 マキマはそんな状況で冷静に言う。

 

「ちゃんと働いてね、須郷君」

「マキマさんの邪魔するんじゃねえ!!」

 

 突如、潰れたはずの人間から声が上がる。マキマの隣で潰された人間が急激に再生を始め、異形の存在へとなる。

 

 長剣の武器人間

 

 それはまるで剣を彷彿とされるような異形の人間であった。悪魔ではない。人間でもない。さりとて魔人というわけでもない。

 悪魔よりも高い不死性を持ち、悪魔の能力を獲得した人外。須郷ミリとはそのような選ばれた存在であった。

 

 瞬間、天使の悪魔の翼が切り落とされる。復元され理性が薄い天使の悪魔では俊敏な須郷ミリに対処できなかったのだ。代わりに天使の悪魔は複数の管が付いた縦笛を吹いた。

 

『パンパイプ』

「うお!? 目が見えねぇ!?」

 

 悲しいことに、現段階の須郷ミリの戦闘経験はごく少ない。初めに翼を斬れたのなら先に首を斬れば良かったものを、須郷ミリは飛んでるからという理由で翼に執着してしまった。

 

 彼は暗闇の中、ハープの美しい旋律を聞いた。

 

『キタラ』

「いっっってえええ!」

 

 須郷ミリは上半身と下半身を真っ二つに切り裂かれた。慌てて右腕を人間に戻し、鞘のように引き抜く。須郷ミリの変身トリガーである。

 トリガーを引いたことで別れていた上半身と下半身がくっつく。と同時にかけられていた視野のデバフも解除される。

 

「なるほど、変身したらこれ治るってわけか」

『キタラ』

「うおおお!?」

 

 流れ出す旋律を聞いて、見えない凶刃を避けるためにがむしゃらに走り回る須郷ミリ。新進気鋭に登場したかと思えば、彼は苦戦を強いられていた。

 

 対するマキマは、あちらとは違ってゆったりとした殺し合いをしていた。槍から放たれた極光が目の前の超越者を貫通したかと思えば、マキマの身体がバラバラに弾け飛ぶ。しかしお互いに無傷。

 

 しかもお互いに意識を目の前の戦闘ではなく、他の方へと向けていた。

 

「え? いや、別に支障ないと思うよ……だって…いや、あれ? 物語をぶっ壊すのが目的なんでしょ?」

「そろそろかな」

 

 マキマがそう言った直後、須郷ミリがマキマの近くに着地する。見れば天使の悪魔は頭から血を流して倒れていた。

 

「マキマさん、やりました!」

「プリンシ、回収」

 

 マキマの一声。刹那、極光が超越者の頭を穿つ。その瞬間、マキマ達は透明マントを被るかのようにその場から消えた。

 それを復元した頭で見送る。超越者は疲れた顔で言った。

 

「はぁ…焦ったぁ…」

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

709:名探偵

くぁせぶなねしkpねやa'm!!!!

 

710:名無しの転生者

お、落ち着きたまえ…静まりたまえ…

 

711:名無しの転生者

言語能力ぅ…

 

712:名無しの転生者

イッチ…お前、お前ぇ…!

 

713:名無しの転生者

名探偵がこんだけ怒り狂うのは初めて見たかも…

 

714:名無しの転生者

お主…あの祠を壊したんか…。終わりじゃあ…名探偵の祟りがぁ

 

715:名無しの転生者

>>713そうか?

 

716:一般通過超越者

いやごめんて。僕もどうすればいいか分からなくってさ…

 

717:名探偵

>>716だからって……マキマに存在を知らせるなんて馬鹿すぎる!!!これじゃあ対策してくださいと言っているようなもんやろ!

 

718:名無しの転生者

さあ始まりました。記念すべき第一回スレ板戦争。荒ぶるのは名探偵。迎え撃つのはイッチ。この戦いは一体どうなってゆくのでしょうか

 

719:名無しの転生者

名探偵はなんでこんな怒ってるの?

 

720:名無しの転生者

>>719原作への影響をできるだけカットしたかったんちゃう?

 

721:名無しの転生者

わ…わぁ…!

 

722:名無しの転生者

落ち着けよ名探偵。探偵ってのは落ち着きが必要なんっじゃあないか?

 

723:名無しの転生者

>>721名探偵が怒ってるからこの子泣いちゃったっ!

 

724:名無しの転生者

まあ、正直言ってイッチ超越者だからゴリ押しでもいけるやろ

 

725:一般通過超越者

まさかマキマが来るとは思わなかったからさ。接触されたら困るし、でも守ったら関係疑われるし…だからアキを利用してマキマを罠に嵌めましたよーみたいな展開が良いかなって。

 

まあ殺してないから…

 

726:名無しの転生者

まあまあ、名探偵も一旦落ち着こ?

 

727:名無しの転生者

いやぁ、ワイらも煽動した甲斐があったもんやで

 

728:名無しの転生者

>>727クソ鬼畜野郎だな

 

729:名無しの転生者

マキマといえば…マキマは救済対象なん?

 

730:名探偵

…すまんな。冷静じゃなかったわ。考えてみればイッチに勝てる存在なんか中々おらんし、万能能力だからな…あの状況じゃあれが最適解だったかも…しれん…

 

731:名無しの転生者

早くナユタに会いたいなー

 

732:名無しの転生者

>>718何言ってんだコイツ

 

733:名無しの転生者

というか、マキマ殺しとけば良かったんじゃ…

 

734:名無しの転生者

>>729救済対象…だと思うよ?

 

735:名無しの転生者

>>729対等な存在がいないからってタチの悪いアイドルに執着してる年増しババアに慈悲は無い。

 

736:名無しの転生者

よかった…名探偵の祟りは治ったんじゃ…

 

737:名無しの転生者

>>735は?

 

738:名無しの転生者

>>735はあ?

 

739:名無しの転生者

>>735確かに、一般スケールに直すとそうなる…のか?

 

740:名無しの転生者

>>730未練たらたらで草

 

741:名無しの転生者

>>735殺すぞ

 

742:名無しの転生者

>>735てめえは俺を怒らせた

 

743:名無しの転生者

>>735殺意がこれだけ大きな衝動だとは思わなかったよ。

 

744:名無しの転生者

おっと?

 

745:名無しの転生者

第二回戦争する?

 

746:名無しの転生者

>>733けど二部ではマキマがいないせいで治安悪化、違法建築諸々の問題ががが

 

747:一般通過超越者

マキマに関してはマキマ派とナユタ派がすんごいので、まあ…将来の自分に丸投げしよう。

 

748:名無しの転生者

そんなんでええんかイッチィィィィィ!

 

749:名無しの転生者

今後の展開に変な影響あるかもだぞイッチィィィィィ!

 

750:名無しの転生者

>>749アキが支配されてないからすでに変な影響は出ていると思われ…

 

751:名無しの転生者

!? ってか今思ったんだけど、早川家どうするん? イッチとかいう邪魔者がいるんだが

 

752:名無しの転生者

おい、年増しババアって言った奴。他が忘れてもワイは忘れないからな

 

753:名無しの転生者

>>751由々しき問題だ…

 

754:名無しの転生者

>>752ご、ごめん

 

755:名無しの転生者

由々しき問題なのか?

 

756:名無しの転生者

てかそもそもアキのところにデンジとパワーが預けられるかも分からんぞ

 

757:一般通過超越者

大丈夫。もう全部ゴリ押せば良いかなって…

 

758:名無しの転生者

ゴリ押ししてくる超越者とか物語一巻で終わらせる気か?

 

闇の悪魔さんを見習え

 

 





次回から原作期に行きます…
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