アキの死体は残らない   作:アーチマン

20 / 25

みんなー待った? いや…なんなんだこれは!

永遠の悪魔書きにくいんじゃ!!!!

※永遠の悪魔に関する考察・ご都合主義設定が入ってます。



公安対魔特異4課VS永遠

 

 

 

「永遠の悪魔には弱点がある」

 

 アキはそう言って刀を抜く。特異4課のメンバーはアキの言葉の真意がよく分からずに困惑した。

 姫野がとりあえず反論する。

 

「でもアイツの言い分を信じるなら、アイツの弱点はこの階に無いんでしょ? それとは別の弱点ってこと?」

「いや、それと同じ弱点(心臓)だ。永遠の悪魔の強さを支えるのは無限に増える体積と人間を閉じ込める胃袋で、悪魔の言葉通りなら、普通倒せるはずもない相手だ」

「でも?」

「でも、アイツは明確に心臓を弱点だと言い、()()()()()()()()()()()。ここが本当の胃袋じゃなくても、永遠の悪魔にとってかなり本体に近い場所であるはずだ。なら俺たちのするべきことは自ずと決まってくる。胃袋をぶち破って心臓を斬ればいい」

「……すんごいハイリスクな作戦だね」

「それでも、胃袋を破ることができれば俺たちの勝ちだ」

 

 今まで散々に苦しめられてきた永遠の悪魔による8階の永遠回廊。アキは永遠の悪魔がそこを胃袋と呼んだことに賭けることにしたのだ。

 

 全く根拠は無い。もし悪魔の言い分が事実と違えばそれだけで大きなリスクとなる。しかし今のアキにとってそのようなことは些細なものだった。

 

 死なない悪魔はいない。弱点が弱点として機能している悪魔はカスだとダインロットが言っていた。ならば永遠の悪魔も殺せる。可能性はあるのだ。

 

 アキの諦めの悪さは『死』でさえも覆せないものだ。それをたかだか『永遠』程度で覆せるわけがない。

 

「狙い目は永遠の悪魔が出てきた部屋だ。あそこは外の身体に繋がっている可能性が高い。繋がっていなくとも、内部の心臓まで辿り着けるかも知れない。永遠の悪魔の身体を刻んであの部屋まで辿り着く。これが今回の作戦だ」

「んなら俺の出番だな! チェンソーんなれば悪魔の身体を切り刻んでいけるぜ」

「……いや、デンジには別の役割がある。とりあえず俺とパワーが前に立って悪魔と戦うので、姫野先輩は【幽霊】の腕で悪魔を削ってください。ヒロカズとコベニはどうする?」

「ひ、ひぃ……わ、わたし…わたし、にはむり…で、出来っこないですぅう!」

「…ぉ、お…俺はやります! やらせてください!」

 

 話を振られた荒井ヒロカズと東山コベニはそれぞれが別の反応を示した。向上心旺盛で新進気鋭な荒井と臆病ですでに泣いているコベニのそれらの反応はアキの予想通りだった。

 

「よし、じゃあヒロカズも前で悪魔の注意を引いてくれ」

「はい!」

「それと姫野先輩、コベニをお願いします」

「あ、うん……じゃなくてね!? ほ、本当にそんな脳筋な作戦で行くの!? もっとこうなんか……あるくない?」

「超合理的です」

「マジでか」

 

 ポカン…と姫野は惚けたように口を開けたままそう言う。姫野は澄ました顔で計画も何も無いような作戦を言ってきた早川アキを少し訝しむ。

 その原因は何かしらの原因で今まで通りの最強デビルハンターとしての動きができないはずの早川アキが出すにはあまりに強気な作戦にあった。

 

 だが、アキに発破をかけた手前、バディである自分がアキを信じないというのは如何なものかという考えが浮かんだ。しかし、姫野はアキが作戦を立てる姿を見たことが無かったのだ。少し不安が残る。

 

 ウンウンと唸る姫野を見て早川アキが口を開く。

 

「大丈夫です姫野先輩。もし作戦が上手く行かなくても俺らならどうにでもなりますよ。今までと同じです」

「アキ君…!」

 

 そして姫野は考えることを止めた。いや、正確には考える必要がなくなったのだ。

 

 姫野はずっと前から、早川アキを信じていたから。

 

「デンジ」

「あぁ?」

 

 最後にアキはデンジへと声をかける。デンジはパワーに絡まれていたが、肩に絡まれていた腕を弾いてアキのところへ歩いてきた。

 

 アキは言う。

 

「デンジ、お前が永遠の悪魔討伐の鍵だ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 コツコツと、ホテルのカーペットを踏み鳴らす音が響く。公安対魔特異4課の5人がホテルの一室から出てきたところだった。しかしそこにデンジの姿はない。

 

 永遠の悪魔はそれを見届けて言った。

 

「人間」

「人間よ、契約を受ける気になったか」

「愚かな人間よ」

「チェンソーはどこだ」

 

 対してアキは返す。

 

「悪いとも思っちゃいないが、俺達は公安のデビルハンターなんだ。悪魔は殺す」

「愚かな」

 

 戦闘はそこから始まった。

 

「パワー! ヒロカズ!」

 

 まず始まったのは永遠の悪魔の膨張だった。一室からはみ出る程度だった悪魔の肉体は今や廊下に長く伸びる程度の体積を誇っていた。無数のヒトガタが浮かび上がり、アキ達を力で潰そうとしてきた。

 

 対する公安対魔特異4課はアキ、パワー、荒井がそれぞれ迫ってくるヒトガタに対応していた。

 

「ギャアァァ!!」

「ギャハハハハ! 血じゃ血じゃぁ! ワシを恐れよ! キモ悪魔め!」

「グッ……チィ…力が強すぎる…!」

「ごめん! ゴーストじゃ抑えるので精一杯!」

 

 だが斬ったそばから増殖し続ける。後方の姫野も幽霊の悪魔の腕を使って試していたが、有効打にはなり得ないと判断した。

 デビルハンターとして今回初めての悪魔討伐である荒井は、悪魔の力の強さに慄いていた。

 

 この作戦の布陣は、まずアキが廊下の中央で『永遠の悪魔』の攻撃を一身に受け、アキが捌ききれなかったものを荒井とパワーが処理していくという形を取っている。

 全力で生き残るための悪あがきのような戦法だ。少なくとも勝つための戦術ではないことは確かだ。無限の体積を持つ『永遠の悪魔』にとっては、相手が防御寄りの戦闘をするのはこれ以上ないほど都合がいい。

 

「(この人間達にこの永遠の悪魔が殺されることはない)」

 

 永遠の悪魔はそう結論づけた。懸念していたチェンソーの少年デンジは永遠の悪魔から隠されるほどに()()のだろう。人間に宿るほどにチェンソーは弱っているのは知っているが、まさか対面もできないほどだとはなんと都合のいいことか。

 

 思わず笑みを浮かべてしまう。目の前の人間・魔人を消耗させて殺し、隠れているチェンソーの心臓を喰らえば、どれだけの恩恵が与えられるのか。きっと自分の想像をはるかに超えたものに違いない。

 

「人間よ、最後の慈悲だ。チェンソーの心臓を差し出せ。そうすればお前達は無傷で解放しよう」

「クソ喰らえ!」

 

 浮ついている永遠の悪魔の無意識の提案。それは人間達への最後の慈悲だと永遠の悪魔は思っているが、実際はチェンソーに対する恐怖によるものだと永遠の悪魔が気づくことはなかった。

 

 永遠の悪魔は増殖し、廊下に満ち溢れる。4課はジリジリと奥へと追い詰められていた。人間を簡単に壊せる程度の力を持った悪魔の肉体は確実に4課の体力を削っていた。

 

「ぐあ!」

「ヒロカズ!」

 

 最初に脱落したのはヒロカズだった。悪魔の攻撃に対応しきれず肩を握り潰された。咄嗟に姫野のゴーストが助けに入りことなきを得たが、傷が大きい。戦線に復帰は難しかった。

 

「ハハハハハハハハハハ!」

「ヒヒヒヒヒヒ」

「お前達ではこの永遠の悪魔には敵わない」

「たった三人。いや、もうじき二人だ。もうすぐで死人が出るだろう」

 

 傷を負った人間。疲弊が見て取れる魔人。戦わない人間。まともに動けるのはたったの二人だというのはお互いに理解していた。

 だが、アキの目には未だ屈しない意志が輝いていた。彼はずっと、永遠の悪魔を観察していた。彼はずっと、永遠の悪魔の全ての個体が完全に油断する瞬間を待っていたのだ。

 

「姫野先輩」

「…オッケー、勝負はここからだね」

 

 アキの呼びかけのあと、姫野はゴーストの手を飛ばした。それは永遠の悪魔の肉体を透過し、壁を透過し、最後の伏兵の元へ作戦の始まりを告げた。

 

 

ヴヴン

 

 

「なんだ?」

 

 

ヴヴン!!

 

 

「いや、これは…この音は…!!」

「ヤツだ!」

「来るぞ」

「チェンソーが来る!!」

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!

 

 

 チェーンソーの音。それが今までを静寂にしてこのフロアを突き抜けた。

 

「…………!?」

 

 だが音の主は姿を現さない。怪訝に思った永遠の悪魔だが、その瞬間、身体から伝わる感覚により全てを理解して顔を青ざめさせた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 数十秒前、姫野によって放たれたゴーストの手はデンジの肩を叩いた。それが作戦の合図だと聞かされていたデンジは胸のスローターロープを引き抜いた。

 

「アイツの作戦とかどーでもいいけど、美女とのベロキッスがあんだ! 悪魔はささっと殺しちゃいますよ〜〜!」

 

 変身してそう勢いづいたデンジは腕から生えたチェンソーを使って壁を破壊し始めた。目指すは永遠の悪魔が溢れ出た部屋である。

 

「ばあああ!!」

 

 そして全ての壁をぶち壊し、デンジは永遠の悪魔が溢れ出た部屋に辿り着いた。中にいた永遠の悪魔は全ての顔が驚きと恐怖に包まれていた。

 

「なっ! チェンソー!!」

「なぜここに!!」

 

「そりゃあ、てめぇをぶっ殺しに来たんだよおおお!」

 

 永遠の悪魔は部屋の真ん中の床と融合していた。いや、融合しているように見えているが、そこから生えるようにして永遠の悪魔はこの空間に発生しているのだろう。

 

 デンジが腕を振るう。

 

「「「ギャアアアアア!!」」」

「てめぇの痛そうな声聞くとよお…! チェンソー生えた腕の痛みも気持ちよく感じるぜええ!」

 

「ギャハハハハハハハははははははは!!」

 

 

 

「お前、斬られた痛みとかはちゃんと感じるんだろ。『痛い』と言ってたしな。そんで斬られた痛みゆえなのか、斬られた『顔』は少しの間動かなくなる」

「まずは、人間を殺す!」

「殺してからチェンソーを…」

「心臓は別の空間にあると言ったな。そしてお前は8階のあらゆるところから出てくることはできないらしい。つまり最初にお前が溢れ出てきた部屋が本体と繋がる場所ってことだ」

 

 悪魔の弱点である心臓が無ければ、悪魔は活動できない。つまり、こうして8階に存在する永遠の悪魔は心臓と繋がった状態だということである。

 デンジが永遠の悪魔と心臓を切り離すことができれば、この無尽蔵な永遠の悪魔の大きな肉体は死ぬだろう。

 

 デンジには心臓と肉体を切り離す役割を与えた。この考えが間違いではないのなら、この悪魔は心臓と切り離されて肉体的に死ぬ。永遠の悪魔の本体は死なないだろうが、大きく消耗はさせられるだろう。

 

 しかし、永遠の悪魔はニヤリと笑う。

 

「私を心臓と切り離そうとしているのか」

「無駄だ」

「何も私に影響は与えられない」

「心臓と肉体的に繋がりがなくとも私は死なない」

 

 アキは少し狼狽えたが、すぐに気を取り直した。

 

「…さっきチェンソーの音が聞こえた時、お前は確かに何かに焦っていた。少なくとも心臓は地続きというわけだな」

「底の抜けたおざなりな作戦、お前達では心臓に到達することは不可能だ」

「…今日から、大胆さを売りにしていく予定だからな」

 

 

 

「うるぁ!!」

 

「痛いぃぃ!」

「ア、アァ…!」

「だが弱くなってる!!」

 

「ぜーんぜん、痛くねぇなあ!!」

 

 壁のように膨れ上がった永遠の悪魔から伸びてくる腕を腕から生えたチェンソーで斬り裂いては悪魔の身体を抉るデンジ。時折対応しきれずに悪魔の指が身体に食い込むが、タフさは人一倍であるがゆえに勢いは一向に衰えることはない。

 

 流した血は永遠の悪魔の血を飲むことで代用し、まさに不死身の悪魔人間と化していた。永遠の悪魔は常に押され続けている。

 

「てめぇの根っこが分かってりゃあ、身体切り倒すのが楽でいいなああ!」

「アアアアア! 近づくなああああ!!」

 

 物理的な抵抗はもはや無意味だと悟った永遠の悪魔はデンジに対してではなくこのフロアに対して力を行使した。

 瞬間傾き始める床。デンジは元いた部屋に戻されるように傾く床にへばりつくしかなかった。

 床が側壁になる頃には片腕を壁に刺してどうにか部屋に留まっていたが、それも永遠の悪魔の追撃によって妨害された。

 

「ぬわっ!?」

 

 落ちる。ホテルの部屋十数個分の高さからの落下。一般人であれば致命傷を負うレベルだ。

 落ちる。デンジは数秒の落下の間にすでに永遠の悪魔には一泡吹かせる戦法を編み出していた。

 

 デンジは腕のチェンソーを床に向けて狙いを定めた。

 

「ここぁ壁ぶっ壊すと正反対に出るんだろ! 悪魔(てめえ)の能力使わせてもらうぜぇ…!」

 

 エンジンを吹かす。

 デンジは今一番下にある壁、今は床と称するべき壁をそのチェンソーで破壊した。現れるのは当然元壁の天井からだ。

 

 そうした考えが及んでいない永遠の悪魔は対応が遅れた。それが命取りになる。反応した時にはすでにデンジは悪魔の根元を捉えていたからだ。

 

「悪い悪魔は伐採だよなああああ!!」

「「「ギャアアアアアアあああああああああ!!」」」

 

 デンジのチェンソーは永遠の悪魔の肉を斬る最中で更に回転数を上げ、血飛沫を一身に受けながら永遠の悪魔を叩き斬ることで床と悪魔を分離させた。

 だが、斬った床から更なる永遠の悪魔の肉体が生えてくる。心臓から切り離された部分も含めるとさも分裂したかのようだ。

 

 デンジは永遠の悪魔を叩き斬ったあと、当然のようにまた落ちていき、天井に戻った拍子に生えてきた永遠の悪魔の肉体を掴む。

 

 彼はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「てめえの心臓はこの向こうにあるってことかあ!?」

「ま、待て!」

 

 デンジは永遠の悪魔が生えてくる部屋の床にチェンソーを突き刺した。それは床であるのに対して、チェンソーから伝わる触感は肉のそれだった。どう考えてもドンピシャでアタリだとデンジは直感した。

 

「てめえに恨みはねぇが、ベロキスが待ってんだ」

 

 そう言ってデンジがさらに奥にチェンソーをぶち込もうとした瞬間、側面の扉に放置されていた永遠の悪魔の肉体がデンジを骨が折れるほどの力で掴み、彼を床から引き抜いた。

 

「てめっ! 切り離した方も動けんのか!?」

 

「つ、捕まえた!」

「殺せ!」

「頭だ。頭を狙え!」

「いや、心臓を奪え!」

 

 永遠の悪魔に生える無数の腕がデンジの頭を強く殴る。掴まれている肩も砕け、脇腹も抉られそうになる。

 

「勝った!」

「哀れ! チェンソー!」

「愚かな人間に取り憑いた負け犬!」

「心臓を寄越せ!!」

 

「ウルっせーなあああ! やれるもんならやってみろよ!」

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!

 

 口でスローターロープを引っ張る。チェンソーがエンジンを吹かす。デンジは肩が潰されるのもお構いなしに文字通り肉を削られながら右腕の拘束を解いた。エンジンを吹かしたことでその傷もたちまち癒えていく。

 

「ッラァ!!」

「「「アアアアアアア!」」」

 

 そしてその自由となった右腕をデンジを拘束する永遠の悪魔の身体に突き刺した。

 永遠の悪魔から流れる血が再生しない。そこでデンジは気づいた。

 

「なるほどなァ! この部屋の床から切り離された身体は再生も増殖もできねぇのか!」

「チェンソオオオおおお!」

「てめえは永遠の悪魔じゃねえ…! 悪魔みてぇなただのゴミだぜェ!」

「や、やめ…!」

 

 デンジは腕を振り回し、部屋の入り口を塞いでいた永遠の悪魔の顔を滅多刺しにした。再生する気配は無い。分裂個体がデンジに割いていた意識はどうやら死んだようだった。

 

 デンジは後ろから伸びてくる永遠の悪魔の腕をチェンソーで切り裂く。

 

「そーだった! 本体もぶっ殺さねえとなあ!」

 

「ひぃ…!」

「捕まえろ!」

「早く殺せ!」

「し、死にたくない!」

「増殖するな! 8階と繋がる穴を塞げ!」

「別の場所に退避させろ!」

 

「デンジ!」

 

 悲鳴をあげる永遠の悪魔と相対するデンジだったが、アキの声に顔をあげた。アキは天井になっている壁からこちらを覗いていた。どうやらデンジが底に作った穴からこちらを覗いているらしい。

 

「心臓の場所分かったか!?」

「あの床ん中ってのは分かってらァ!」

「よし! ならもう少し時間を稼いでくれ!」

「いんや、この悪魔は俺がぶっ殺すぜ!」

「は…ちょっと待て! 床の奥にあるからと言ってチェンソーが届く位置にあるかは分からないんだぞ!」

「ならあの悪魔の身体に潜りゃあ良い!」

 

 デンジはそう言って跳躍し、永遠の悪魔と繋がる床の穴にチェンソーを突き刺した。

 

「「やめろおおおおおお!」」

「痛い痛いって言葉ぁ聞こえてたぜええ! この穴もちょー痛くしてやれば塞げねえんじゃねぇかあ!」

「「「アアアアアアア!!」」」

「お邪魔しまぁす!!」

 

 デンジは床に生える永遠の悪魔の肉を削ぎ落とし、床の内部をチェンソーでぐちゃぐちゃにして強引に潜り込む。

 

 痛みと恐れに悲鳴を上げる永遠の悪魔だが、デンジを止めるために体内を操り、デンジの全身を押さえつけた。半ば強引に体内に入ったデンジであったため、狭い体内ではうまくチェンソーを振り回すことができず、抵抗ができなかった。

 

「ギャハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「まずい! 中に入られたぞ!」

「だが押さえた!」

「体内は私のテリトリー。チェンソーだろうともはや動くことはできないはず!」

 

 その言葉通り、デンジは抵抗虚しく肩を砕かれ足を折られ、情けない悲鳴をあげた。呆れたのは上から見ていたアキだ。

 

「あんのバカ…!」

「いや、こっちの方が良かったかも! 私のゴーストでも位置が分からない心臓を狙って潰すのは難しいから、デンジ君に探してもらおう!」

 

 姫野はそう言ってゴーストの腕を永遠の悪魔の体内に潜り込ませる。そしてすでに死んでいたデンジの胸のスローターロープを引っ張った。

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!

 

「あぁー、さいっこうの気分だぜええ!!」

 

「なんだ!?」

「なぜ復活する!?」

「分からない! 怖い!」

「ダメだ。殺せない! 追い出せ!」

 

「ゼッテー出てってやらねー!!」

 

 チェンソーを振るい、永遠の悪魔の体内を切り刻むデンジ。殺されても気絶させられてもエンジンを吹かして蘇るその様を間近で見ていた永遠の悪魔は恐怖で錯乱していた。

 

 デンジの悲鳴と笑い声で状況を把握しているアキと姫野は顔を見合わせる。どうやら考えていることは同じらしい。

 

「「アイツ、イカれてる(ね)!」」

 

「なんでそんなに嬉しそうなんですか!」

「いやー、デンジ君思ったより強いよねー。びっくりしちゃった!」

「報告書と実戦を見た限り、アイツの身体能力と戦闘センスは目を見張るものがあるとは思いますけど」

「それで不死身なんでしょ? めっちゃ優秀じゃん!」

「でも悪魔から狙われてるやつが悪魔の体内に突撃すんなよって思いますけどね」

 

 アキと姫野はデンジが消えていった穴を見つめながら各々の思いを吐露する。アキと姫野の反応はそれぞれ異なっていたが、ただ一つ、彼らの中に燻るものがあった。

 

 それは闘志であり、勝機だ。見据えるのは永遠の悪魔ではなく、銃の悪魔だ。

 

 今までに類を見ない存在。イカれた人間性。その全てがデビルハンターとしての才能を示している。それらがアキ達を惹きつける。

 

「デンジ君とアキ君なら、きっと銃の悪魔だって殺せる」

「当たり前です。アイツがいなくてもやりますよ」

「ならきっと、永遠の悪魔なんて敵じゃないよね」

 

 姫野はそっと立ち上がる。その目は決意に満ちていた。

 

「だからといって、後輩のさらに後輩に良いところ持っていかれるわけにはいかないね。私の意地を見せてやる」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「心臓…どこだァ!」

 

「痛い痛い痛い痛い!!」

「助けて! 痛いのは嫌だ!」

「逃げろ!」

「アイツを追い出せ!」

「心臓に近づかれてる!」

 

 永遠の悪魔の体内は酷い有様だった。一面血塗れで苦痛のままの顔が散らばり、まだ動いている顔も苦しそうに歪んでいた。そしてそのどれもこれも全て、たった一人の悪魔的存在によるものなのだった。

 

 チェンソーマン。殺しても殺しても蘇る高位悪魔。弱り切っているはずの悪魔だというのに…!

 

「見つけたぜぇ…テメェの心臓!!」

「アアアアア!!」

 

 何度も殺した。何度も壊した。だが全てを嘲るように蘇る。永遠の回復能力(専売特許)よりもなお不死身のその再生力。弱っているのは明白なのに、それでもまだ届かないのか…!

 

「チェンソオオオオオオ!」

「うぉっ!? テメェ…はなせ!!」

 

 もうなりふり構っていられない。心臓が近いのだ。幸い押さえつけ身動きを取れなくすることは可能であるから、その隙に逃げることはできる。8階にはもう身体がなく、あとは穴を閉じるだけで済む…チェンソーマンは一度殺してから蘇生する前に捨てーーー

 

「…や、クソの悪魔君」

「ーーー!? にんげ」

「ばいばーい」

 

 瞬間、気づいた時にはすでに眼前にまで迫っていた眼帯の女が何かを撫で回すように手を回し、拳を握る。

 

 

グチャ

 

 

 潰れた音。何かが潰れた音だ。微かな空虚。私の悲鳴が聞こえる。私の嘆きが、嗚咽が…………あぁ…これは、私のーーー

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ふぅ…」

 

 ゴーストの腕は最も優秀な働きをした。永遠の悪魔の心臓を潰したのだ。それを成した彼女は力が抜けたように死んだ永遠の悪魔の死体を見る。

 

「永遠の悪魔討伐完了。ありがとね、デンジ君!」

 

 永遠の悪魔の死骸に潰されているデンジを見ながら、姫野は血の海で無邪気に笑った。

 

 

 





 今作の永遠の悪魔さんは謎だった8階空間への発生源を、床に空間的な穴を開けてそこから身体を溢れさせていたということにしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。