黒殲のベルゼルク-少年は見知らぬ世界でネクストを駆り無双する- 作:光波気取り
トーリとその従者を名乗るサキュバス型オートマタ、フレスベルカが案内された宿舎は市街地から離れた研究施設だった。装甲車から降ろされた時、施設の正門を警備する戦闘型MTの姿を見た。先に遭遇した二機のマシンよりも馴染みがある機体であった。
二脚型ACに近いフォルムの機体。肩部側面の追加装甲には北欧神話風の
トーリを乗せてきた装甲車や兵士の軍服にも同じ徽章があった。
(ローバストだ)
それは人類が火星まで進出した時代の二大企業、エムロード社が開発した戦闘MTだ。自分自身の記憶は曖昧だったが、ACに関する事柄ははっきりと覚えている。それになぜかACの操縦方法や工学的な知識までもが頭に入っていた。
きっとこの謎もフレスベルカは知っているのだろう。彼女は自分に代わって施設の代表者、所長が留守のため代理らしい、とやり取りしている。
「つまり、わたくしとトーリ様はこの施設に軟禁されるということですね」
「とっ取り繕わずに言えばそうなりますね。検査や警備の都合もありますので。ですがトーリ君が快適に過ごせるよう尽力しますし、当施設への滞在は最長一週間を目途に、その後は希望の住居をご用意するとコロニーの上層部で既に決定しています」
所長代理は茶髪に眼鏡の女性。ブラウスを大きな胸が押し上げている。温和な性格がはっきり出た顔立ちで、フレスベルカのはっきりした物言いと堂々とした態度に気圧されていた。
「僕は大丈夫です。寝られるベッドがあるだけで十分なので」
勇気を出してトーリは横から大人同士の話に横から口を挟んだ。それを受けてフレスベルカが姿勢を正す。
ハイレグレオタードの黒い布地と白い肌がコントラストをなすお尻が彼女の動きに合わせ、引き締められる様が見えて、トーリは赤面して俯いた。
「ご厚意に感謝いたしますわ。それではしばらくお世話になります」
「おっお世話になります!」
瀟洒に礼をするフレスベルカに遅れて頭を上げる少年であった。
エルセド技研、それがこの研究施設の名だ。軍事技術を含む先端技術の研究を行っているコロニーの中核の一つとのこと。
翌朝からさっそく検査を受けることになった。健康状態などを調べる一般的な検査の他、リンクスとしての能力を測定する検査も行うと事前に通達されていた。
まずはエアシャワーと殺菌灯で身体を洗浄する。そのためにトーリは衣服を全て脱ぐように指示され、その通りにした。
そして、今は背中合わせになっている柔らかく妖艶な気配を感じないよう努力しているところだ。
格式あるゴシックな意匠でハイレグな衣装を脱ぎ捨てた淫魔風お姉さんはその全てを曝け出している。
「言いそびれましたが護衛として検査に同伴する許可を得ています。お守りいたしますね、トーリ様」
脱衣を見守られるだけで済んだかと思いきや、自らもクリーンルームに押し入ってきたのだ。このエロサキュバスお姉さんはサプライズ好きのようだった。
室内は狭く、背中を向けているフレスベルカの体温が感じられそうな距離だ。そんな状況でお互いに生まれたままの姿を晒している。
これはアンフェアだ。トーリは衣服がなく、心許ない前を隠すような姿勢でそう思った。
赤面していたし、胸の鼓動も高まって検査に支障が出そう。一方、フレスベルカは平然としている。だから、アンフェアなのだ。
「フレスベルカまで裸になる必要ないのに」
「主が衣服を脱いでいる時に、従者たるわたくしが衣服を纏うのは失礼に当たりますわ」
「僕は全然気にしてないんだけど……」
そこで言葉を切ってからトーリは
「なら僕がお風呂に入っている時はフレスベルカも裸になるっていうの? 外や人前でも?」
と言ってやった。しかし、淫魔なお姉さんが今言った通りのことをしている姿をイメージしてしまう。ますます体温を上げてしまう少年であった。迂闊。
「それはそれ、これはこれですわ」
悪戯っぽい笑顔のフレスベルカ。
「都合いいなぁ」
ちょうど洗浄が完了し検査区画に続くドアが開いた。
トーリはフレスベルカに見られたらどんな風に揶揄われるか分からない状態の股間を隠すように、小走りで出ていく。
検査だけでなく事情聴取も行われた。
知っている限り正直に答えたが、流石に「僕は別世界の人間でその世界ではアーマードコアやMTが架空の存在でした」とは口にできなかった。間違いなく様子がおかしい少年と見做されてしまうからだ。
殆ど記憶がないので質問への回答は「分かりません」「知りません」の連発になり、申し訳なかった。それでも聴取担当者はそれでも怒ったり、不機嫌にならなかった。
カフェテリアなどの厚生設備は自由に使えた。その際にはフレスベルカがトーリに同伴して多数の職員の前に姿を見せたわけだが、その姿が困惑を呼ぶことはなかった。
見た目はサキュバス、その正体はナノマシンによるアンドロイドだという彼女の大崩壊以前の技術の産物という説明で、一応の納得が為された。
アンドロイドそのものは普及しており、過去により進んだものがあった、という理屈に筋が通る世界なのである。
当時はそれほどに技術が進んでおり、超光速航行の実現まであと一歩というところにまで漕ぎ着けていたという。
しかし、人類に黄金時代をもたらすはずだった技術は地球全土を巻き込む戦争によって失われたのである。
五日後。技研から別の施設に移ることになった。今後については、トーリの希望が叶う形に。
実のところ、ヘイヴン・フォウはネクストとリンクスの獲得を目指しており、大規模な投資を行い、研究環境の整備を進めていたのだ。
肝心のネクストそのものとリンクスの確保が芳しくないという所にトーリが転がり込んできたわけだ。
ヴェアヴォルフはヘイヴン・フォウひいてはコロニーという共同体単位がはじめて保有したネクストACであり、搭乗者であるトーリに対してヘイヴン・フォウ上層部と技研はネクスト技術の被験者になることを求めていた。
少年はそれ快諾し、Win-Winな契約を結んだのである。ACに乗り続けられるのならトーリは満足だった。
ヘイヴン・フォウの防衛を司るPMC、V.S.S.から選抜された精鋭がトーリの護衛につく。エントランスで待っていたのは金髪、黒髪、赤髪のお姉さん達。一度見たら決して忘れない鮮烈な美貌の傭兵チーム"ガーネット・ハーツ"だった。
三人はACパイロットとしてだけでなく、生身での戦闘にも長けている。ACに乗っている時もそうでない時もトーリを徹底ガードできる人選だった。
「トーリ達が来ました」
金髪ロングヘアのクールなイレーネがまず一言。
「緊張してやがんな、あの坊主」
黒髪赤メッシュの狂暴な美貌と戦闘的なスタイルのエッダは腕組みしながらニヤリと笑う。
「可愛らしいじゃない」
赤髪、琥珀色の瞳の理知的なニケが慈しみの眼差しを送る。
遠目に彼女たちを見た時からトーリはガチガチになっていた。はじめて会った時の肌に色を塗って大事な部分だけ装甲したような、ぴっちり強化スーツとは別方向に刺激的な恰好だったからだ。
イレーネ達の服装は統一されている。チームの制服のようだ。パッチが付いたジャケットを羽織っているが、インナーは黒いタンクトップでしかもお腹が丸見えの丈。
ボトムスは動きやすさ重視なのだろうか。短すぎるホットパンツで鍛えられた肉感的な太股の大部分が露出。
目覚めてからずっとフレスベルカと一緒にいて、彼女の色香には少し慣れてきたが、相手が違えば免疫は役に立たない。
「頼りにさせていただきますわ」
「お任せください。ガーネット・ハーツの名にかけてお二人をお守りします」
「おう、よろしくしてやるぜ!」
「フレスベルカさんだったかしら? 貴女とは仲良くなれそうね。こちらこそ、よろしく」
フレスベルカがまず三人と握手を交わす。
長身で豊満なボディのお姉たちの間では既に打ち解けた雰囲気が出来上がっていて、トーリは疎外感を覚えた。一人だけ男、しかも子供が上手くやっていけるのだろうかと急に不安になってくる。
「トーリ様も挨拶を」
「はっはい! イレーネさん、エッダさん、ニケさん、これからお世話になります! どっどうかよろしくお願いします!」
フレスベルカに促され、慌ててお辞儀をするトーリ少年。
「ずいぶん緊張していますね」
「名前覚えていてくれたのか。嬉しいぜ」
「ふふっ大丈夫。リラックスして、フレスベルカさんと同じくらい私達はトーリ君の味方でいるから。ね?」
イレーネはクールな眼差しでそれを静かに見守るが、残る二人は楽しそうにクスクスと笑い。
「それでは、車に案内します」
歩き出したイレーネの後に続く。
長い髪で後ろ姿が隠れているイレーネを除く二人、エッダとニケのお尻にトーリは誘惑されていた。
引き締まった腰から続くお尻は大きく綺麗だ。
太股の生地と合わせて、ホットパンツが破れそうでハラハラしてしまう。
一方、トーリの心配を他所にお姉たちは余裕綽綽、長い脚で颯爽と歩みを進めている。もしホットパンツが破れて魅惑のお尻が露出しても、平然と対処しそうだ。
無意識に魅力を振り撒き、いたいけな少年を魅了する美女たちの後ろを、トーリは必死でついていく。