黒殲のベルゼルク-少年は見知らぬ世界でネクストを駆り無双する-   作:光波気取り

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ファーストミッション・前

 

 トーリが乗っているハンヴィーはもしかしたら天国に一番近い場所かもしれない。

 冷房の効いた快適な車内にはフローラルな香りが満ち、左右からは柔らかく温かい感触。カーラジオから流れているのは陽気なロックチューンだ。

 

 後部座席の真ん中で、少年はエッダとニケに挟まれるように座っている。

 ガーネット・ハーツを構成する傭兵のうち、前者は黒髪赤メッシュの好戦的なお姉さん、後者は赤髪の妖艶かつ理知的なお姉さんだ。どちらも己の肌の温かさ、柔らかさを知らしめるように体を密着させている。

 

(おっ落ち着かない……!)

 

 トーリは脳が蕩けそうなほど濃密な香りとその発生源である超絶美人なお姉さん二人に圧倒されるばかり。

 

 従者であるサキュバス型オートマタのフレスベルカは助手席。角がヘッドレストからはみ出ている。黒髪のサキュバスは車を運転している金髪ロングヘアのクールなお姉さん、イレーネにあれこれ質問していた。

 フレスベルカは一度振り向き、トーリに微笑みかけてきた。深紅の瞳は助け船を出す気はない、と静かに述べていた。

 

「どうした坊主? 酔ったのか?」

「良かったら膝枕してあげましょうか?」

 

 トーリがもじもじすると、ここぞとばかりに左右から話しかけてくるお姉さん。方やニヤニヤと意地悪そうに、方や妖艶に笑っている。

 

「だっ大丈夫です! そんな軟な三半規管はしていませんから。これからテストなので緊張しているだけです」

 

 トーリはもっともらしいことを言ってこの場を凌ごうとする。

 

「それならいいけど」

「辛くなったらいつでも言えよ。膝でも胸でもどこでも貸してやるからな」

 

 ニケとエッダは可愛がりチャンスを損ない残念そうだ。お姉さん達に申し訳ないが、トーリにもプライドがある。

 

「わたくしとしては、到着までトーリ様には休息いただきたく存じますわ」

 

 フレスベルカの一言がトーリの勝利で終わりそうだった戦況を一変させてしまった。

 

「私も賛成します。万全の態勢で臨むべきです」

 

 丁寧な運転でカーブを曲がりながらイレーネが口添え。

 

 勢力を取り戻したエッダとニケが、誰も拒めないほど魅惑的な太股叩いてみせ、

 

「保護者からも薦められたしよ」

「膝枕されちゃおうよトーリ君」

 

「~~~っっ!!」

 

 硬直してしまう少年。その耳元にエッダとニケは唇を寄せ、「どっちの膝にする?」と妖しく囁き、選択を強要してきた。

 

 果たして、トーリが選んだのはエッダの太股だった。ロケット型に突き出た巨乳が少年の頭に影を落としている。膝枕されると、筋肉質なお姉さんが持つ強さが実感させられる。

 

「残念だったなニケ」

「次の機会があるわ」

 

 勝ち誇るエッダを受け流すニケ。

 

「何なら腹の方に顔向けてもいいぜ」

 

 上機嫌で誘ってくるエッダ。言われた通りにすれば、腹筋が鍛え抜かれたお腹を拝むことになる。

 それだけでなく、ホットパンツに覆われた脚の間とも顔を近づけることに。

 

「この向きで大丈夫です」

 

 危険な誘惑を少年は辛うじて拒んだ。

 

 こうして、残りの道中はエッダの太股で鍛え抜いた女性の感触を体感することになった。

 

 

 ハンヴィーはヘイヴン・フォウの防衛を一手に担う民間軍事会社(PMC)ヴァルキリー・シールド・セキュリティ(V.S.S.)の基地に到着した。コロニー行政府直轄の組織だが、PMCの体裁を取っているのは外部への派遣業務も行っているからだ。

 ガーネット・ハーツもV.S.S.の指揮下に属している。

 

 一行は厳重に警備された格納庫に通された。そこにはマットブラックカラーの先鋭的なアーマードコアが鎮座している。ヴェアヴォルフ。トーリはそのネクストの名を心の中で呼んだ。

 

「試験区域にはAC搭乗後に輸送機で移動します。往還機の残骸から回収した武装も整備の上で搭載してあります」

 

 イレーネが言った。ヘイヴン・フォウ領土外縁部にある廃都市を利用した演習場にてネクスト"ヴェアヴォルフ"の性能試験を行う。それが少年の最初のミッションだった。

 

「アセンブルも試せるということですね」

 

 願ってもない話だった。イレーネが言う往還機とはヴェアヴォルフが格納されていた機体であり、軌道上から砂漠に落下してきたという。

 中にはネクスト用の武装とその弾薬、それに予備部品が詰め込まれたコンテナが入っていた。ガーネット・ハーツはトーリをコロニーに誘導した後、この往還機の回収に出向いたのである。

 

「ごめんね、フレームと内装はまだ許可が下りなくて」

 

「武器だけでも十分楽しめますよ」

 

「はっ! 楽しむか。言うじゃねえか坊主」

 

 少年の意気込みに愉快そうなエッダ。

 

 ヘイヴン・フォウは防衛力強化のため、ネクストの導入を進めていた。方々からパーツを買い集めており、ネクスト一機を組み立てるには至らない段階だが、ヴェアヴォルフのアセンブルに用いることはできる。

 

 フレームと内装が解禁された暁には、可能な範囲で理想のネクストを組みたい。それこそ、ガーネット・ハーツの三機のような企業混合の機体を。それがトーリの密やか野望であった。

 

 ヴェアヴォルフの反対側のメンテナンスベッドにガーネット・ハーツのACは固定されている。三機はレイヴンらしく複数の企業のパーツを組み合わせて構築されていた。

 

 ハイエンドノーマルのパーツを主に開発・製造しているのは三つの企業だ。クレスト・コンプレックス、ミラージュ・イニシアチブ、キサラギ・ユニオン。少し記憶と違うが、トーリにとって馴染みのある企業名だった。

 

 かつてACとだけ呼ばれ、戦場の王であったハイエンドノーマルはコロニーが保有する最強の機動兵器である。

 コロニーにおける統治企業の市場独占は軍事面にも及んでおり、一社のパーツでフレーム、内装、武装まで組み上げるのが基本。例外として部分的に他社製パーツを取り入れる程度だ。

 

 しかし、ヘイヴン・フォウは前述の三企業と取引しており、ガーネット・ハーツのACは混成アセンブルで構築されている。

 

「あちらの更衣室にスーツが用意してあります」

 

 数日振りに乗り込むACのコクピットを思い描いていると、イレーネに促された。

 

「あっはい。すぐに着替えてきます」

 

 逸る気持ちに足早になって更衣室に向かう少年。その後にサイハイブーツのヒールを響かせ、嫋やかに付き従うフレスベルカ。淫魔風オートマタが着替えに付き添うのは諦めている。

 

 正式には強化軽装甲服、略して強化スーツという名の色付きサランラップのような戦闘装備を着込んだお姉さん達がそれぞれの愛機に乗り込んでいく。

 極薄で光沢が艶っぽいスキンスーツ部分の色はイレーネが蒼、プロテクターは黒。エッダは黒紫のスキンに同じく黒のプロテクター。ニケは黒色のスキンに鮮やかな赤のプロテクターというカラーリング。

 

 そして彼女たちの搭乗機。イレーネは逆関節型のル・シエル。リニアライフルを主兵装にした高機動型。空の名の通り、蒼いカラーリング。エッダの漆黒の四脚は砲桜。重武装と機動性を両立したACだ。ニケの機体は軽二脚で純白のストレガ。背部に追加ブースター、目に見える武装はスナイパーライフルとレーザーブレードのみ。

 

 トーリはAMSを通してネクストと繋がった。ジャックにケーブルを差し込むと、ちくりとしてから、一気に光が溢れ、知覚が広がった。再び、今、この時から少年はヴェアヴォルフと一つだった。

 

「接続感度良好ですわ」

 

 後ろのシートにハイレグ型の衣装にも拘わらず大きく脚を広げて腰掛けるフレスベルカとも。

 

『ヴェアヴォルフ、起動しました』

 

 深呼吸してからトーリはイレーネ達に報告。

 

 ガーネット・ハーツとは通信ウィンドウが開いており、お姉さん達のバストアップ映像が視界の片隅に表示されていた。綺麗過ぎる顔、きらきらと輝くような瞳、そして形くっきりに光沢のある被膜で覆われ、先端が"つん"とした豊かな双丘までアップにされている。

 

『では私達についてきてください』

 

 ル・シエルが歩き始め、格納庫に地響きが起こった。

 

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