あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
飛んできた瞬間、地面に両足つくより先に、倒れ伏すローを足蹴にして転がす。
「てめェ……!」
「なんだ、自分でなんとかできたのか? てっきり追い詰められているのかと思った」
転がった先でローがにらみつけてくる。体はボロボロだが、元気そうだ。
藤虎に重力をかけられ、地面に這いつくばっていたので、もう死んでしまうくらいのピンチなのかと思ったのだ。
だから最も手っ取り早い方法、足で蹴ることでその場から退避させた。
1秒にも満たない時間で、そこまで詳細に見極めろというのは無理難題だ。
「あっしも耄碌しちまったか。どこから来たのか、てんでわかりやせんでした……」
「安心していい、私に会う人はみんなそう言う」
ローと相対していたのは、藤虎とドフラミンゴだった。
同時に相手にするのは無謀というものだ。なぜローひとりなのだろう。
海岸の方に、ナミたちがいる感覚がするというのに……まあ、そっちにも荷が重いか。
ここはグリーンビット、ドレスローザにほど近い島だ。
ドレスローザ本国に来たかったのに、やはり私は一生この能力と相容れないらしい。
「さてロー、うっかりきみを助けてしまったので、知らぬ存ぜぬはもう難しいな。私に何をしてほしい?」
「……両方足止めしろ」
言うや否や、ローは能力で遠方に飛んだ。海岸の方向だ。
そちらにはサニー号があるだろう。
同盟を組んだとはいえ、もうちょい言い方ってもんがあると思う。
これがルフィだったら、こんな言い方されてもいいけどな。ローは私の船長じゃない。
「囮にされたようだな?」
ドフラミンゴが私を煽ったが、首を横に振る。
「別に責めはしないよ。七武海と三大将をひとりで相手にするのは、彼にはしんどいだろう」
「フッフッフ……! 経験があるみてェな言い方だな」
「あー、どうだったかな。あったような気がするけど……いや全然私にもしんどいけどね……」
ローを追おうとするドフラミンゴに、ひとまず抜刀して斬りかかると、割って入った藤虎が私の一太刀を止めた。
えーと、今のドフラミンゴはまだ七武海なんだっけ?
だとしたら三大将に守られたとしてもおかしくはないということ?
しかし七武海にあるのは略奪する権利であって、海軍に守ってもらうようなことはなかった気がしたけれどな。
そしてローも七武海なんじゃなかったっけ……ああ、それこそもう脱退したことになったのか?
よくわからない。ローの立てる策略は私には難しい。
藤虎の妨害に遭い、ドフラミンゴにローを追わせてしまった。
ローのお願いが「足止めして
本気というか、やる気の話だ。「足止めしてくれよぉ~ん゙♡」だったらさらにやれたかもしれない。
藤虎の一撃が的確に私の首を狙ってくるのを見て、私は彼に尋ねた。
「……あのさ、三大将ならば、私のことは上から聞いていないか?」
「聞いたかもしれやせんねェ。しかし、
「あっはっは。こりゃ一本取られたな」
三大将ともなれば、私を殺すなと言われているだろう。
海軍によくある、理由を探ってはいけない命令のひとつだ。
視力がなく、顔写真を見比べることもできない男には、実行できない命令だろう。
事実がその通りでないのは、彼が私を
いいね、彼のことが結構好きになってきた。
殺されそうになって思うのは少々倒錯しているかもしれないが、私の嫌いなやつらの命令を無視しているのなら好感が持てる。
「アンタが今までやってきたことは、きっとみんな隠されて、あっしの耳には入ってきやせん。だから確かめてェ……アンタ、どんな人だい?」
私は世界政府を憎んでいるが、見ようによっては世界政府によって守られている。
懸賞金はかけられず、顔を晒されず、お尋ね者の立場に追いやられていない。
私が今までに潰した人間屋や
善人だと言うつもりはない。私は海賊だ。
「私は剣士ではないが、きみらがこう言うのには賛同している。『斬り合えばわかる』とね」
手のひらでくるり相棒を回すと、姿は
私と違い、相棒の方は結構本気らしい。
藤虎の持つ得物は相当の業物のようなので、あれ相手に張り切ってんのかな。
「違ェねェな……お手合わせ願いやす」
「応とも」
必要とされるのが悪くないと思っているから、私の刀でいてくれる。
私も刀の切れ味に恥じぬよう、精いっぱいやることにした。