あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
カイドウのところまでキングとジャックを連れて行くと、タイミングが悪かったのか飛び六胞がそろっていた。
ああもう面倒くさいな! 一旦無視!
「たのもーっ!」
「道場破り!?」
私の元気の良い声に、巨人族と見間違うほどの巨躯の女性が驚く。
妖艶な美女だ。おそらく花魁。
カイドウとデキているとさっきの彼らが噂していた、ブラックマリアだろうか。初見だ。
「キングがカイドウに質問あるってよ!」
「おれは彼女をカイドウさんの女だと思ってたんだが、それは間違いか?」
それを聞き、カイドウは高らかに笑った。
「ウォロロロロ! おれの女か!」
「ほら! ほーら大爆笑!」
カイドウを指さしながらキングに事実を突きつけてやると、カイドウは私に問うた。
「なるか?」
「なるかァ!」
ふざけたことを抜かしたカイドウを怒鳴りつける。
キングはそれを聞いて頷いた。
「まだ口説いている最中だったか」
「変な納得をするなーッ!」
なんだこのズッコケコント海賊団は!
こんなんで四皇名乗ってていいのか!
……赤髪海賊団もこんなもんだったなァ!!
「は? この女、相変わらず無礼すぎでありんす。今日という日はぶちのめすでありんすか?」
「やめとけよ姉貴……敵わねェって……」
飛び六胞のうち2人は姉弟のようだ。
いや、ワノ国では血縁がなくとも兄貴とか姉貴とか呼ぶのだったっけな。
私は彼らに会ったことがないが、彼らは私に会ったことがあるらしい。
これ以上百獣海賊団に知り合いを増やしたくないのだが……剣が鈍る。
せめて知り合うのが、斬りあう後ならいいのだけれど。
ジャックは真面目にカイドウへ忠言した。
「いいんですか、カイドウさん。この女はゾウで捜索の邪魔を……」
「構わねェ、昔馴染みだ」
「最初っからそう言え!」
いや、馴染みってだけでジャックと斬りあったことを許されるのもなんだか変か?
私はかつてカイドウのところの大看板ジャックに、そこそこの
当然斬ったことを後悔はしておらず、もっと斬っときゃ良かったという後悔ならしている。
ゾオン系の丈夫さを見誤った。
魚人族ってただでさえ丈夫だし、その上古代種のゾオンというのなら、もっと痛めつけても死ななかったのだな。
ここの海賊団の運用的には、弱い方が悪いということなのかな。
ジャックも見たとこすでにピンピンしている。何も問題がないということか。
カイドウは私に言った。
「今日は大事な発表がある、お前もついでに聞いていけ」
「ついでで聞いてくのは構わないが、本題はあるのか?」
「宴に決まってるだろ、ウォロロロロロ!」
「あ~……」
我々はその宴をぶち壊しに来たのだ。
もうそろそろ、皆が鬼ヶ島に忍び込んでいるところだろう。
私はこんなところでこんなことをしていていいのか?
囮的な役割を果たしているのか? うーん? もしかしてもうひとり私が
頭に酒が回って、細かいことは考えられない。今は全然戦う気分じゃない。
戦わなければならないとなれば当然やるが、この心積りではやらなければならなくなった瞬間に別の場所に飛んでしまいそうだ。
……ま、とりあえず宴は参加するか。
「じゃあさっきのとこ戻って酒飲んでくる、彼ら面白かった。それからカイドウの女ではないと念を押しておかなければ、根も葉もない噂が垂れ流しになる」
「おれを置いて行くなよ、うおおお~ん……」
「泣くなって! 部下の前だろ、しっかりしなさい!」
カイドウが泣きながら縋りついてきたため、私は足を止めざるを得なかった。
普段は非常に高いところにあるカイドウの顔が近くにあったので、服の袖で涙をぬぐってやる。
カイドウはデカいので涙の粒も大きい。袖がびちょびちょになったので諦めた。
こんなんで部下の尊敬を得られているのか本当に。
心配していると、一連の流れを見ていたササキがぽつりと言った。
「根も葉もあるだろ」
「根も葉も脈もない」
断固として否定する。
カイドウは人差し指を唇に当て、体をくねらせながら私にウインクを飛ばした。
「いっしょにいてくれよぉ〜ん゙♡」
「ぐ……ッ!」
ひるむ私に対し、フーズ・フーが言った。
「脈もあるじゃねェか」
「ねェよッ!!」
お、多い……!