あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
「お前、いつもボロボロだな」
「え? きみには言われたくないかも。いつも傷だらけなくせして」
いつもふらふらしている私だが、今日は普段よりふらふらだった。主に足元が。
立っているのも辛かったので、メリー号の甲板にごろりと横になっていた。
いつのまにか近くにやって来て、いつも通りの筋トレを始めたゾロが、でっかい鉄の塊で素振りをしているのをしばらく下から眺めていたら、急にそう言われたのだ。
「船に乗ったばかりの頃なんて、特にすごくなかったかい。バギーだのミホークだのアーロンだの、ずっとボロボロだったし、そもそも絶食してた直後に仲間になってるし、万全だったことないんじゃないの」
「それもお前には言われたくねえ」
「えーっ」
私を一瞥もせずに、ゾロは言った。
「怪我がねえときに一戦、と思ってここまでゼロだ」
「それは申し訳ないねえ……」
見えないところの怪我は結構隠しているつもりだったが、バレてたか。
子供の頃の、戦えと迫ってくる癖が治ったわけではなかったらしい。
痛いなーと感じるくらいの傷を軽度、血が出てるなーくらいの傷を中度、折れたりえぐれてるなーくらいの傷を重度とすると、麦わら海賊団が発足して以降、軽度以下で船に乗っていたことがない。しかもまあ……ほとんど重度か、
能力の癖のせいだろう。深い傷を負っている時は、安心できる場所に飛びがちなのだ。安全かどうかよりも。
私は肉体的苦痛を避けるよりも、精神的安寧を保つことを重要視している。
「きみが子供の頃と違って、さすがに怪我してるときに戦ったらしんどいな」
「……そうかよ」
ゾロはようやく鉄の塊を一度甲板に降ろして、私を見た。
「本当に歳取らねえんだろうな」
「うん?」
「このまま戦う機会を逃し続けてヨボヨボになられたら困る」
「ワハハ」
笑ってしまったが、よく考えたらありえなくもない未来だ。
私は安心する場所に来るときは大怪我をしていることが多い。
つまり麦わら海賊団の傍にいるときは無事ではない――そしてゾロは麦わらの一味である。
彼の近くにいる私は、ほとんどの場合重症だ。
「きみがヨボヨボになって戦えなくなる可能性はあるな」
「……今やるか?」
「いやだー」
今だってあばらはバキバキだ。
折れているのかヒビなのか、チョッパーがどっちだと言っていたか記憶にないが「16本もォ!?」と叫んでいたのは覚えている。あばらってそんなに数あるんだ。
「きみが
「……」
「うわー。やっぱ文句言う気なんだー」
無言だったが不満が十分伝わってきた。
「相手が強ければ強いほど加減が難しいんだよ、私の剣は。殺しちゃうから」
「いいじゃねえか」
「いいわけあるか」
獰猛な笑みを浮かべて楽しそうにしたので、私は叱りつけた。
仲間を殺したいわけないだろうが。
「私が本気で殺そうと思っても死なないくらい強くなっておくれよ」
それにはまだ少し時間がかかりそうなのだ。
だがまあ、彼がヨボヨボになる前には、その時が訪れるだろう。