ふらふら   作:九条空

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クロスギルド

 あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

 場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

 それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

「なんだ姉ちゃん、換金に来たのか? 誰を殺した?」

 

 話しかけられた内容がよくわからず首を傾げると、男はこう言った。

 

「おいおい、まさかクロスギルドを知らねェなんてバカなこと言わねェよな!? ここは元バギーズ・デリバリー、現クロスギルドの拠点、カライ・バリ島だぜ!」

「おお~」

 

 男の説明でほとんどすべてを理解できたので、思わず拍手してしまった。

 

「やっぱな、千両道化のバギーに憧れねェ男はいねェよ! あ、アンタは女だが……」

「そうかそうか。そのバギーに会いに来た」

 

 別にそんな思惑があってここに飛んできたわけではないが、友がいるというのならば会いたいと思うのは当然だろう。

 

「簡単に会えるお人じゃねェ! が、海兵の首があるなら別だぜ」

 

 仕方ない。私は嘘が下手だが、目の前の男は素直そうだ。

 私でもなんとか言いくるめられる可能性が、3割くらいある。

 

「あー、もう首は送ってあって、話はついてるから。私の顔を見たらわかるので、案内してくれ」

「そんな話は聞いてねェが……」

「そりゃあきみ、大きい話だから内密に進んでるんだよ……」

 

 私は自分を指さして、男に言った。

 

「こういう特徴の女が来たって話して来てくれ。バギーがすっとんでくるよ」

 

 すっとんできた。

 

「何しに来やがったァ!?」

 

 能力を駆使してまで飛んできてくれるとは。

 バギーの大部分が私の目の前で浮かび、今は彼の足だけがえっちらおっちらこちらに向かって走ってきている。なんだか健気。

 

「遊びに来た」

「本当だろうなァ!? ま、まあ今お前に襲われても!? 返り討ちに出来るけどな!」

「なんだ、私に襲われるようなことをやっているのか?」

「ぎ、ギクゥーッ!」

 

 バギーは相変わらずだった。それが喜ばしい。

 最近は色々と情勢も変わっている。

 七武海はなくなったし、四皇も入れ替わった……くらいの時間軸のはずだ。

 

「自信がついてなによりだね。私を返り討ちに? ははは」

「おれ様の部下たちがなァ!」

「友達がいっぱいいていいね。紹介してよ」

「お前はおれのママかァ!? するわきゃねェだろアホんだらァ!!」

「じゃあ、旅中でうっかりきみの友達斬ったらごめんね」

「こっちだ、ついて来い」

 

 キリッとした顔つきに変わったバギーは、私をあちこちに案内した。

 私はクロスギルドの皆の名前を直接聞き、顔と名前を一致させていった。

 バギーの部下たちは「こんな下っ端にまで座長直々に顔見せを……!?」と感激し、バギーへの尊敬を高めていた。

 なんだか、私が思っていたタイプの仲良しじゃなかったな。カイドウよりよっぽど部下に心酔されている。

 

「……バギー、きみ……出世したなあ……」

「そりゃドハデにな!」

「あ゙?」

「皆様のおかげでェす!」

 

 バギーに案内された場所で、()()()と顔見せすることになった。

 両者ともに私の馴染みで、私はちょっと呆れた。

 どんな経緯でこんなことになったのだろう。

 クロスギルド大幹部の一人、ジュラキュール・ミホークに声をかける。

 

「ミホークも大人になったね」

「なにがだ」

「いや……え? 一応トップなんでしょ? バギーが?」

「……そうだな」

 

 ミホークがこんなに騒がしい男と行動を共にできるようになるとは、想像もしていなかった。

 ペローナと一緒に暮らして、多少騒がしいのに慣れたのかな。

 

「きみは暗躍が好きだからまだわかるけど……」

 

 もう一人のクロスギルド大幹部、サー・クロコダイルに言うと、彼は肩をすくめた。

 

「こいつの下だと思われるのは腹が立つがな」

「え? やっぱそうなんだ、あはは。バギーきみさ、後ろから刺されないようにね。あ、刺されてもバラバラになるから平気か、ははは」

 

 でもクロコダイルの鉤爪には毒仕込んであるからダメか、ははは。

 

「仲良くやってるようでなによりだねー」

「仲良く……」

 

 3人は微妙な表情を浮かべた。

 あまり仲良くはないのかもしれない。共同経営の会社をやっているのに?

 ビジネスとは難しいものだな。

 少々思案する。私、いつもクロコダイルとの距離の取り方に迷っていたのだよな。

 

「私はコブラとマブダチなので、きみと仲良くするのは正直ポリシーに反する。しかしともだちのともだちはともだちというし、仕方ないからともだちサービスを適応してあげよう、クロコダイル」

「そりゃありがたいね」

 

 クロコダイルは大人の対応だった。

 私も見習って、彼を無闇に敵対視するのはやめよう。

 バギーは自分を指さした。

 

「それはおれにも適応されてんのか?」

「バギーにはあんまりされてない」

「なんでだよ!」

「ともだちサービスのメイン項目は『できるだけ斬撃の軌道上に入れない』だから、バラバラになれるバギーは別にいいじゃん。……あ、それだとクロコダイルも別に斬っていい?」

 

 彼はロギアだ。覇気を込めていない斬撃なら無意味にできる。まあ私の場合結構覇気も込めるが……。

 

「よくねェ」

「おれも斬るな」

「じゃああんまり斬らないようにするね」

「あんまりってなんだァ! ともだちなら斬るんじゃねェよ!!」

 

 バギーによる真っ当な抗議である。

 異論がないのはミホークだけだった。

 

「おれは構わん」

「私が嫌だよ、斬り返されるじゃん」




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