ふらふら   作:九条空

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ゾロ/ルフィ

 あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

 場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

 それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

 しばらく塀の外からルフィの勧誘を眺めていたが、めちゃくちゃなやり取りに笑いをこらえきれず吹き出して、ゾロに「誰だ」と言われてしまった。

 バレてしまっては仕方がない。

 私は大人しく海軍基地の塀を越え、ルフィの隣に立ち、縛り付けられたゾロに「やほー」と挨拶をした。

 

「……縮んだか?」

「きみが大きくなったのでは?」

 

 私はゾロが小さい頃と今のサイズになっているのしか見たことがないので、これは彼にとって、たぶんかなり久しぶりの再会なのではないかと思われる。

 その一言目がこれなの面白いな。

 

「なんだ、知り合いなら話がはえー。仲間になったらいいじゃねえか」

「ああ?」

 

 ゾロが私と顔見知りなのを見て、ルフィがそう言う。

 私はルフィと肩を組んで、ゾロの顔を覗きこみながら、笑顔で言った。

 

「一緒に海賊や~ろう」

「はあ!?」

 

 九日間縛り付けられていた割には元気なリアクションだった。

 

「お前海賊だったのか!?」

「あれぇ? 言ってなかったか」

「言ってねェよ!」

「あれえ~?」

 

 てっきり、どこかで言ったことがあると思っていた。

 私は基本的には嘘をつかない主義なので、「海賊か?」と尋ねられれば「うん」と言うだろう。

 しかし私は犯罪者っぽくないのか、そう聞かれたことはあんまりない。

 ゾロ相手ならばどこかでそういう話をしていたのかと思ったが、まあそうか、あの頃のゾロに興味があるのは剣のことだけだった。……今もか。

 

 しかし、ではなんだと思われていたのだろう。旅の剣士?

 私の特性上、船に乗ってあの村を訪ねていたわけではないし、海賊と思われないのも当然か。

 船もなしに突如現れる不審者と思われていたのかな。それは真実だ。

 

「見逃したか? 賞金首の並びにお前の顔を見てねェぞ」

「ああ、ポスターにはなってない。私はシャイでね、目立つのは避けてるんだ。だがこれから私の船長がどんどん目立つよ、ゾロも並んでポスターになると良い」

「しかも船長はてめェじゃねェのか」

「船長って器じゃない。かなりの頻度で船に乗ってないだろうし」

「おう、船長はおれだ」

「いえーい、ルフィ船長かっこいいぞ~」

 

 ルフィが腕を組んでふんすと息を吐いたので、私はその隣で拍手をした。

 海賊になりたてではしゃいでいるルフィが見れるのは今だけだ。ゾロは呆れた。

 

「なんて気の抜けるやつらだ」

「わははは」

「じゃ、おれはヘルメッポから刀奪ってくる」

「いってらっしゃい、私はここで待ってるよ。基地の中で知り合いに会ったら気まずいし」

 

 ルフィはのしのし歩いて行った。

 いきなり海軍基地に喧嘩を売るところからスタートするなんて、なかなか好調な海賊生活の滑り出しである。

 ああ、私が見ていない間にすでに海賊に喧嘩を売っていたのだっけ?

 これほど短時間に、海賊と海軍両方に喧嘩を売るなんて、やはりルフィには海賊王の才能がある。

 

 ルフィと共に海に出る前までの時間軸ならば、私はそれなりに海軍とよろしくやっていた。

 暴れ回る賞金首を倒しても荷物になるから賞金はもらわない、というのが好かれる一因である。

 

 海賊かと問われれば基本的に「うん」と返してきた私だが、聞いてきたのが海兵だった場合は「うーん?」くらいの返答をしている。

 正面切ってやり合うのが面倒なので、なんとか誤魔化せないだろうかという一抹の希望にかけているのである。私がよっぽど平和ボケした顔をしているのか、実際誤魔化せることもある。

 

「おれは世界一の大剣豪になるため海へ出た。そのうちてめェも倒す」

「おお~」

「そう思ってきたが、仲間になっちまったらできねェだろうが」

「おお~?」

 

 ゾロがルフィの仲間になるのをためらう理由のひとつが、私であるらしい。

 

「そうか、友人だったら斬り合いをしていいけど仲間だとアウトなのか……」

「ダチでもアウトだろ」

「そんなことないよ、剣豪ともなれば友達とも斬り合うって」

「どんな理論だ」

 

 ゾロとも真剣で斬り合ったことがあるし、ミホークとも斬り合ってきた。

 

「ともかく。剣豪になるということは、戦うべきは剣士だろう。ゾロ、私はね――」

 

 相棒を呼び寄せて、海軍基地の屋上から飛んできた銃弾を弾く。

 ゾロが縛られているのは見晴らしの良い場所だ。

 そこで呑気に会話していれば、斧手のモーガンに盾突くものとして殺されもするだろう。

 

「剣士じゃない」

「じゃあコックか?」

「コックでもない」

 

 今回愛剣はフライパンの姿で現れた。とんでもなくやる気がない。

 たしかにここには戦い甲斐のある敵もいなければ、私にもやる気がないし当然だろう。

 でもイーストブルーにおいて、手で銃弾を叩き落したらさすがに怖いかなと思って……。

 

「ま、確かに殴ったり撃ったりよりは斬るのが得意だけど、私の獲物は剣に限らない。『麦わらの一味の剣士』の名は君にあげるよ、ゾロ」

「仲間になるって言ってねェだろ」

「大丈夫、なるから」

「話通じねェのかお前らは」

 

 ルフィと一緒くたにされて、私は笑った。仲間らしくて非常に良い。

 駆け寄ってきたコビーがゾロの縄をほどこうとするのを見ながら、手の中でフライパンを回した。

 

 屋上から騒音がするので、ルフィが暴れているのだろう。

 いやあ、これからどうなるのか楽しみだ。私もフライパンでできるくらいのことはしよう。

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