ふらふら   作:九条空

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ルフィ/キッド/ロー

 あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

 場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

 それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

「先に言っておく。私はビッグマムを攻撃できない」

 

 鬼が島に向かう船の上で、私はルフィ、ロー、キッドの3人に対し堂々と宣言した。

 堂々と言うことで、少しでも情けなさをカバーしようという試みである。

 私の発言に対し、ルフィはなんともない顔で言った。

 

「それなら前に聞いたぞ」

「ああ、ホールケーキアイランドで言っていたか」

 

 ルフィには私自身が事前に申告していたらしい。

 初耳だったキッドは私を鼻で笑った。

 

「ハッ、四皇相手に怖気づいたか?」

「違う。あんなにかわいい子を殴れないだろ」

「「「かわいい……!?」」」

 

 私の発言に対し、ルフィ、ロー、キッド全員がハモった。

 仲良いなこいつら。私はむっとしながら言い返した。

 

「かわいいだろうが」

「……」

 

 誰からも同意が得られなかった。

 ルフィに至っては唇をきゅっと引き結び、余計なことを言わないようにする配慮まで見せている。

 これは前(・)回(・)の反省だろうか。

 私には記憶がないが、ルフィはたまにとんでもなく失礼なことを言うので、ちょっと小突くくらいはしたかもしれない。

 

 まったく見る目のない男たちだ。

 リンリンはあんなにかわいいのに。

 かつては美しいという方が似合っていたが、今は再びかわいいに返り咲いたリンリンだ。

 

「同じ海賊船に乗っていたにも関わらず、喧嘩ばかりだったあの2人が手を組んだというだけで感無量だ。リンリンもカイドウも大人になってなぁ……その仲を裂くのは心苦しいよ」

 

 それを言うなら、ルフィとローとキッドがそれなりに仲良くしていることに対しても、妙な感動を覚えているけれど。

 

「私はカイドウを相手にするけどいいかな」

「カイドウはおれが倒す」

「いいやおれだ」

「喧嘩しないの」

 

 それなりに仲良くしているというのは、やはりそれなりに過ぎなかったようだ。

 ルフィとキッドはすぐに喧嘩を始める。

 たぶんローも、煽られたら一瞬でこの喧嘩に参加するだろう。

 

 カイドウ、あるいはリンリンという共通の敵がいるからこそ、限定的な協力関係がギリギリ築けているというわけだ。

 ならば、私がカイドウを取ってしまうとこの関係は崩れてしまうかもしれないな。どうしよう。

 

「あ、そういえば。私前にカイドウのこと煽っちゃったから、たぶんカイドウはルフィのこと殺したいと思ってる」

「おう! 望むところだ!」

「よかった、頼もしい。あのときは焦ったんだ。イーストブルーにカイドウが突っ込んで来るかと思った、この世の終わりすぎる、あっはっは」

「自分の船長の殺しでも依頼したのか」

 

 ローの言葉を手をひらひらと振ることで否定する。

 カイドウは別に暗殺者でもないし、私は誰かを殺したいのならばきっと自分でやる。

 

「私を自分の船に乗せたいなら、そうしろと言っただけだ。きみは死なないものな、ルフィ」

「当たり前だろ」

 

 さすが頼もしい我が船長だ。

 ルフィの力強い返答を聞いてにこにこした私とは反対に、ローが苦い顔をする。

 

「チッ、なんで四皇がお前を欲しがる」

「うーん、ほんとなんでなんだろうね。勧誘が一度で済んだのは白ひげだけだったよ」

 

 今の私の記憶の中では、という話なので、実はこれからまた何度かあるのかもしれないが。

 あるいは忘れているかもしれない。

 

「おい。まさか四皇全員がてめェに執着してやがるのか?」

 

 ローがドン引きしているような気もするが、それって私に対してではなく四皇に対してのリアクションであっているか?

 

「知らないよ、今から聞いてきたら? ここには四皇のうち半分もいるし」

 

 七武海と違って四皇はそれほど出入りが激しくなく、古馴染みばかりだというのが原因のひとつだろうか。

 続いて、私はまだ覚えていることを話す。

 

「これからの予(・)定(・)を話しておく。私はしれっと飲み会会場に潜入、適当なギフターズやウェイターズ、プレジャーズと友達になって酒を飲みながら、カイドウと大看板2人を足止め、飛び六胞と顔合わせて来る」

「やけに具体的な上とんでもねェこと言ってるぞ」

 

 ローのツッコミもなんのその。

 これは有言実行ではなく、実行したから有言しているだけだ。

 予定ではなく予知に近い。

 

「その間は余程派手なことをしなければ潜入に気づかれないだろう、クイーンも場を盛り上げているし。私は他にも少々やることがあって、そのあとにきみたちの方へ行くから、少し待たせるよ。足止めが必要になったら『頼む』とでも言ってくれ、すぐ行く。頼み方がかわいければかわいいほど、私も力を出せるから、よろしくな」

「バカが。誰が頼むか」

「ふっ……まだ若いキッドでは、カイドウほどのかわいさの威力は出せないだろう……」

「なんだとォ!?」

 

 このまま煽ったら、キッドはカワイイを追及してくれそうだな。

 このチョロさがすでにカワイイまであるが……。チョロいのは私の方かもしれないな……。

 

「おい、カイドウもかわいいのか」

「悔しいが……!」

 

 私が握りこぶしをつくりながら言うと、ローが呆れてため息をついた。

 

「そんなんで戦えるのか」

「大丈夫だ。今までに何度も戦ってきてる」

 

 カイドウは四皇の中で間違いなく、今までにいちばんこ(・)と(・)を構えた男だ。

 

「やはり、下手に意地張るのがよくないんだよな。認めよう、甘え上戸のカイドウはかわいい……!」

「「「かわいい……!?」」」

 

 これに関して同意を得られないことは、先のウェイターズらとの会話でわかっている。

 カイドウの甘え上戸を見たことがないからだ、という反論は使えない。

 宴会でプレジャーズが、どこがかわいいんだ、と本気で頭を悩ませているのを見ているからな。

 

「だが、それでも斬ろう」

 

 場合によっては、私がカイドウの首を斬る。

 別の場所で聞いた話によると、私とカイドウは斬り合いじゃなくて殴り合いをしていたということらしいので、そうはならないかもしれないが、これは覚悟の問題だ。

 

「丈夫な男は好きだ。いっぱい斬っても死なないから」

 

 そう思えるのは今日までかもしれない。

 死ぬまで斬ることになっても、やることをやろう

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