あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
ふと気づけばメリー号に乗っている。
嬉しいことだ。私は浮かれながら、しかし船に覚えのない顔があることに気づいた。
正確には、顔も名前も知っている。ニコ・ロビンだ。
だがここにいる覚えがない、という意味である。
私はいつもの調子で、彼女に尋ねた。
「おや。どうしたの。迷子?」
「ふふ。いいえ。仲間になったの」
「そりゃ……」
私は口を大きく開けて、しばらく固まった。
いつかの未来で仲間のように傍にいるのを見た時も同じくらい固まりそうになったのだが、今回は、本人の口から直々に言われたのだ。仲間になったと。
私はロビンの仲間で、ロビンは私の仲間だ!
「ルフィ聞いた!? ロビン仲間になったって!!」
「おー。そりゃおれが仲間にしたからな」
「それもそうか! あはは! やったー!」
私は諸手を挙げて喜んだ。
「聞いたサンジ!? 嬉しいよね!」
「麗しの天使ちゃんの喜ぶ姿を見てたら、おれも天に昇りそうだ!」
「いえーい!」
ぴょんぴょん飛んで喜んでいると、腹のあたりからビリリという嫌な音が聞こえた。
服を引っかけて破いた音ではない。私は慌てて腹を押さえてうずくまる。
「やべ! はしゃぎすぎて傷開いた!」
「うわぁーっ! 医者ー!!」
「いやお前だ」
「おれだーっ!!」
ゾロにつっこまれて気づいたチョッパーが、慌てて処置に駆け寄ってくれる。
私の押さえている手をどけてその下を見た瞬間に、チョッパーがまた叫んだ。
「今度は何やったんだよお前ーっ!」
「これはねー」
説明しようと思ったが、その場に未来の麦わらの一味がいたのでできないことに気づいた。
うっかりしてしまった。それくらいロビンが仲間になったことに浮かれているということだ。
ああやっぱり仲間なのか、そうだったらいいなとずっと思っていたんだ。
私はともかく、チョッパーの質問に答えるべく親指を立てた。
「超強い敵に斬られた!」
「剣士か?」
「そこはどうでもいいだろッ!」
間髪入れずにゾロに聞かれ、そのゾロはウソップにつっこまれていたが、私はちょっと言葉に詰まった。
「剣を使うより別の攻撃の方が強い場合は剣士と呼べるのか?」
「いや、お前も真面目に考えなくていいから」
ウソップに言われたので、考えるのをやめる。
チョッパーの処置は的確で、素早かった。
「いつもは話し合いでどうにかなる相手なんだが、あまりにも機嫌が悪くて一撃貰ってしまった。年々癇癪がひどくなってる気がするよ、こういうのって歳取ると落ち着くものなんじゃないのか」
子供の頃から知っている相手なだけに、そう思わずにはいられない。
私が傍にいて時折コラッと叱ってあげられたら良かったのかもしれないが、私は根無し草なので、誰かの隣にずっと居続けることはできないのだ。ごめんねリンリン。
――ロビンに対しても、ずっとそう思って苦しんでいた。
傍にいて守ってあげられれば良いのにと、ふと出会えるたびに思っていたのだ。
彼女は旅の中でいつも疲れ、怯え、なにより寂しそうに見えたから。
これからは、私が傍にいてあげられない間も、船のみんながロビンのそばにいてくれる。
そして私はひとところに留まることができないが、いつかは必ず、ルフィの元に戻ってくるから。
そこにはロビンもいるのだ。これほど嬉しいことはない。