ふらふら   作:九条空

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ロビン

 あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

 場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

 それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

 どこかの路地だ。

 

 薄暗く、しかし潮の臭いが強い。港町のそれよりもだ。

 路地のすぐそばを、水路のように海水が流れているのに気づいて、私はここがウォーターセブンであると把握した。

 

 そして路地の先に、どこか所在なさげに立っている彼女に尋ねた。

 

「どうしたの。迷子?」

「……そうね。そうかもしれないわ」

 

 私はロビンが寂しそうな顔をしているとき、いつも迷子かと尋ねた。

 ロビンはいつだってそれを否定してきた。

 彼女が麦わらの船に乗ったと知ってからは、迷子かと尋ねることもほとんどなかった。

 麦わらの一味である限り、彼女は迷子ではないはずだからだ。

 

 しかし私は再び尋ねた。ロビンの顔が、また寂しそうだったから。

 そしてロビンは、初めて私の問いかけに肯定を返した。

 だから私は、ちょっと年上ぶって、昔の話をすることにした。

 

「ロビン。私はずいぶん長いこと根無し草をやってきた。まあ今もそうっちゃそうなんだけど……あちこちをさまよっては、どうせすぐ別れるからと友を作らない時期も長かった。それが変わったきっかけは何だと思う?」

 

 ロビンは、自分がどうだったか考えたかもしれない。

 彼女も私のように、長いこと根無し草だったから。ロビンは答えた。

 

「強くなったとき?」

「いいや。帰る場所ができた時だ。私がいつどこに行ったとしても、最後にはルフィのもとに帰ってくる。麦わらが目印で、皆のいる船が私の家だ」

 

 出航したときが麦わら海賊団の発足ではない。

 彼が少年の頃、私に「おれの船に乗せてやる!」と言ってくれたあの時が、麦わら海賊団の始まりで――私の人生の始まりだったと思っている。

 

「きみが迷子でなくなったとき、どれほど嬉しかったかわかるかい。昔の私のような顔をするきみを見るたび、胸が締め付けられるような気持ちになった。だが根無し草の私では、きみの家になってやることはできない」

 

 ロビンが仲間になったと、飛び上がって喜んだ日のことはよく思い出せる。

 あの日のうちに、束にあったニコ・ロビンの手配書の裏に、喜々として書き込んだものだ――『麦わら海賊団の仲間』と。

 

「メリーに乗ったきみを見るたび、もうあんなきみを見なくて済むと安堵した。かつての私とまったく同じ方法できみは救われたのだと、私はきみの家族になれたと、そう思ってたんだけど」

「思い違いね」

 

 そう言う彼女は、ミス・オールサンデーと呼ばれていた頃と同じ顔をしていた。

 路地には、いつの間にか背の高い男がいた。不思議な仮面を被り、正体はわからない。

 その男に「時間だ」と言われ、ロビンは男に着いて行く。

 

「さようなら」

 

 そう言ってこちらを振り返ることなく去って行く彼女に、同じ言葉は返さなかった。

 

「またね、ロビン」

 

 いつかの私が、彼女を取り戻すだろう。

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