ふらふら   作:九条空

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ウソップ/フランキー/サンジ

あっちへふらふら、こっちへふらふら。

私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

「あ゛ー……上陸したくねー……」

 

私はサウザンド・サニー号の甲板で寝っ転がりながら、いわゆる駄々をこねていた。

それを見たウソップが、珍しげに言う。

 

「お前が島に入ってはいけない病になるのなんて、初めてじゃねえか?」

「うん……いやァ……ここで会う約束をしている人がいる以上、船でただ待ってるわけにはいかないんだが……」

 

ウソップとフランキーは、船のコーティングのためにサニー号で待機している。

サンジは宝の守りだ。

だから私も、彼らと共にここで待っていれば、少なくともしばらくの間は、シャボンディ諸島に上陸はしなくて済むのであるが。

それもなんだかなあ、ここにきっと私を待っている人がいると思うと、申し訳がないのだ。

 

「アンニュイな天使ちゃんもかわいいよ♡」

 

ため息をつくとサンジが褒めてくれる。

麦わらの一味としてここにいるだけで楽しいから、私が彼らの前で憂鬱を見せるのは珍しいことだろう。

ウソップは自分の腕をさすりながら私に聞いた。

 

「なんかあんのかこの島……!?」

「あ、ウソップが楽しくなくなるから言わないよ」

「もうこの時点で楽しくねーよ! いろいろ想像しちまうだろうがー!」

「ウソップの妄想力には及ばないか。んじゃいやな理由を話すけど……」

「話すけど……?」

「奴隷売買が盛んなんだ。私苦手なんだよね」

「それってつまり……うっかりしてると捕まって奴隷として売られるってことか……!?」

「うん」

「ヒィーッ!」

「大丈夫大丈夫。ウソップだったら安いからあんま狙われないよ」

「喜んでいいのかそれはァ!?」

「健康で若い人間の男だから低い相場でもまあ50万はつくけど」

「詳しいな!?」

「奴隷商をいくつ潰したと思う?」

 

私も数えきれないほどだ。

奴隷を売る人間も、奴隷を買う人間も、大嫌いだ。

奴隷にするために人を攫う連中ももちろん嫌いだ。

奴隷というビジネスを見て見ぬふりする連中には反吐が出る。

ここシャボンディ諸島は、そういう連中ばかりなのである。

 

それでまかり通るのは、海軍本部が近く、三大将がすぐに飛んでくるかもしれない、という抑止力があるからだ。

海軍本部の睨みが、奴隷売買の存続に関して働いているなど、耐えがたい。

私は額を押さえ、怒りのあまり自分の頭に爪を立てそうになるのをなんとか堪えた。

フランキーが自分を親指で指しながら質問する。

 

「このスゥーパァーなおれだったらいくらだ?」

「変態か。50万よりは値がつきそうだな」

「種族は変態なのか」

 

ウソップにつっこまれたが、本人が変態を自称しているのである。

奴隷を買う人間は、とにかく珍しいものが好きだ。

フランキーのように、半分改造人間だと、オークションではかなり値がつくだろう。

本人がオークションでもこの突き抜けた態度を崩すことがなさそう、という目測も含めてだ。

しかし、高く買われたからといって大事にされるとは限らない。

 

私はやっぱり額を押えて、自分の衝動を閉じ込めようとした。

あー奴隷のこと考えるとイライラする。

シャボンディ諸島を見ているだけでそれを思い出してイライラする。

 

「はー。私が暴走して奴隷商人全員ぶん殴って奴隷解放戦線始めようとしたら止めてね。できるだけ自制はするよ」

「苦手ってそういう方面でか」

「みんなもいるのにそんな面倒ごと起こせないでしょ。こういうときはひとりのがいいなって思うけど」

「ひとりだったらやるのかよお前……」

「……やる」

「しまった。聞くことで逆に覚悟を決めさせちまったかもしれねえ」

「……うん、だから、みんなといるときは……やらない」

「ぜってえ一人にしちゃいけなくなっちまった……」

 

いや、一時的に私がひとりになったところで、島に仲間たちがいるのならそれは危なくてできない。

 

奴隷解放戦線、似たようなことは既にやったことがある。

あの時は大変だった。さすがの私も半死半生で……わりとそれはよくなっているな。

本当に、()()()()()()だと大変なのだ。

 

「もし私が奴隷商売に関して我慢できなくて暴れたら、なにして止めてもいいからね」

()()()()()()……!?」

 

反応したのはサンジだ。

彼が考えそうなことと言えば――私は対サンジ用の冗談を言った。

 

「キスしてもいいよ」

「お゛れは……! 苦しむ人たちを思って天使ちゃんが悲しんでいるというのに……! 自分のことばっか考えてなにをやってんだ……!!」

「うわあ」

 

サンジが船べりに頭をたたきつけ始めた。

フランキーがサンジを指さして、私に何気なく尋ねた。

 

「ああいうタイプの変態はいくらだ?」

「ああいうタイプの変態が売られているところは見たことがないな」

 

ジャンルはなんなんだ。

 

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