あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
――たぶんアラバスタだ。
砂漠らしい乾燥を肌に受け、私はそう思った。
目の前にいるロビンの格好を見て、時間軸もほとんど理解した。
「クロコダイルのところへ案内してあげましょうか」
「きみ、そんなことしていいの? 誤解しているなら申し訳ないんだけど、私、彼とは敵対関係にあるんじゃないかなあ」
「もちろんわかっているわ。ただ」
ミス・オールサンデーはいたずらに微笑んだ。
「道案内の代金を、もう貰ってしまっているから」
私は首を傾げる。
「……? なんだっけ!」
「フフ。あなたにとっては、簡単に忘れてしまうほどのことだったのね」
ぐ、グサーッ!
私はとっさに胸元を押さえた。出血しているかと思うほど、胸が痛んだからだ。
「私にとっては忘れられない思い出よ。あなたには、なんてことないことだったのでしょうけど」
ロビンはいつも通りの柔らかな口調だったが、私はまるでなじられているかのように感じていた。
「その……私って見た目よりちょっとだけ長生きしててね……だから人より忘れっぽくて……はい、言い訳です。すみませんでした」
「この責任、どうやってとってもらおうかしら」
「なんなりと、お嬢さん。きみを傷つけてしまった責任は取るよ」
「傷をつけられたんじゃないの。その逆よ」
傷をつける逆はなんだろう。
私は本当にわからなくて、彼女が悲しんでいないかと、顔色をうかがった。
これもやはり言い訳だが、ロビンとの思い出は多すぎて、すべてを覚えてはいられないのだ。
私は時間軸をめちゃくちゃに移動しながら、多くの人々に会ってきたが、その中でもロビンとはかなり多くの回数会ったと思う。
それは彼女が、あちこちを放浪しながら生きていたからだ。――私の生き方と、重なるところが多かったからだ。
「なあ。今きみはバロックワークスに身を置いているけれど、ルフィが全部壊すから、もう居場所がなくなるだろ?」
「勝つつもりなのね」
「もちろん。それ以外の未来は見えない」
うっかり未来予知じみたことを言ってしまうほど、私はルフィを信頼している。
「居場所がなくなるのは、居場所を破壊した我々の責任だ。だから、気が向いたら船においで。きっと船長も歓迎するよ。きみは素敵な人だから」
ロビンが素敵な人であることは、私が保証しよう。
しかし、こうも言っておかなければならない。
「私は一船員でしかないので、もし船長がきみを乗せないと言ったらそれに従うしかない。無責任に期待させる前に、これだけは釘を刺させてくれ」
私以外の皆も、船長が言えばひとまずは納得するはずだ。
乗せるも乗せないも船長判断だ。
「だが、私個人は、きみを歓迎するよ、ニコ・ロビン」
同じ船に乗れたら、どれだけ楽しいだろう。
その一部をすでに知っている私は、彼女ににっこり笑った。