あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
ヨサクは壊血病だった。
ナミの指示で絞ったライムを飲ませられると、即座に回復してジョニーと腕を組んで踊った。
さすがにすごすぎる回復力だ。グランドラインでもめったに見ない。
私は孤島からそれを見ていた。
あぶねえから、とジョニーに隠れているよう言われたのである。
否定する体力もなかった。実際大砲は撃たれてるしな。
メリーに傷がひとつもないことを見るに、あれはシロップ村を発ったばかりだろう。
試し打ちがしたかったんだろうな……当てたのはウソップか。さすが我が船の狙撃手である。
ヨサクとジョニーは、ゾロと知り合いだったようだ。
同じ賞金稼ぎをやっていたつながりだろう。
麦わら海賊団が安全だとわかると、ジョニーが孤島に戻ってきて、私に肩を貸してくれた。
ひとりでちょっと歩くくらいならまだしも、船に乗るのは難しそうだったので助かる。
「その手錠、ゾロの兄貴なら斬れるかも……!」
「いや……無理だ。海楼石はね……鉄よりよっぽど硬い……」
悪魔の実の能力者を封じ込めることが可能である、という有用性にばかり目を向けられているが、海楼石の頑丈さといえばあらゆる素材を凌駕する。
悪魔の実の能力が海楼石に通用したとしても、破壊することはできないのではないかと思われるほどだ。私も斬れたことがない。まあそれは、私が能力者だからかもしれないけれど。
あと、大抵の場合、斬りたい海楼石はその近くに斬りたくない能力者がいるので、うまく加減ができない私は、そもそも斬ろうとしないというのが大きな理由である。
「すまねえ、おれのせいで……!」
「ジョニー……言わなくていいよ」
「女神……!」
なんだかすっかり女神になってしまったな。
彼をかばったからではなく、自分の都合なのだが。
今ルフィにここまでの経緯を話したら、海楼石の手錠のカギをくわえて飛んで行ったあの怪鳥を追いかけて、行方不明になりそうなのだ。
私は今立つこともつらいほど力が入らないから、ルフィの無茶を止めることができない。
「ええ!? なんでここにいるんだよ!?」
私がジョニーと共に船に乗ると、ウソップが驚いている。
彼はおそらく仲間になったばかりだから、急にいなくなったり、急に出てきたりする私に、まだ慣れていないのだろう。
「みんな、会いたかったよー……今さ……ふふ。死にかけてて」
「笑いながら言うことかァ!?」
あんまりバカな状況だったので、うっかり自分で笑ってしまった。
もう一度ウソップが驚いて、ルフィがのんびり私に尋ねた。
「なんだ、オメーもカイケツビョーか?」
「いや……でもまあ……おなかはすいたな」
海楼石に触れているときの力の入らなさは、低血糖に似ている。
絶食を続けて、体に一切のカロリーが残っていないときのような。
「やっぱ必要だな、海のコック」
「海のコックを探すんなら、うってつけの場所がある」
ルフィが次の仲間について呟くと、ジョニーが言った。
それにより、我々の次の目的地は、海上レストラン・バラティエになった。
いつもなら、その時私はそこにいるだろうか、と思うものだが――海楼石の手錠がついている今なら、その心配は不要だろう。
そういう意味なら、海楼石もいいかもしれない。
これをつけている間、私は彼らから離れないで済むのか。
問題は力が入らないので、彼らを何かから守ってやることができないということだが……。
「バラティエか。元気にしてるかな……」
「知り合いいんのか?」
「ふふ……うん。元気にしてると……いいけど」
その後、なんやかんやあり。
ルフィが逸らした海軍からの砲弾がバラティエに飛んでいって、ゼフは頭部流血に全身打撲を負った。
まさか、我が船長のせいで元気がなくなるとは思わなかった。
代わりに頭を下げるのも難しいくらいだるいので……責任はルフィに自分でとってもらおう。